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ラスボスだった使い魔-番外編03



※おことわり

 今回はスーパーヒーロー作戦、およびスーパーロボット大戦シリーズより、版権作品のセリフのやり取りをかなり節操なくそのまま引用している部分が多くあります。
 これらの元ネタを知らないと全く面白くないと思いますので、閲覧の際にはご注意ください。

 なお、ゲームよりほとんど(若干アレンジしている部分もありますが)そのまま会話を抜き出していますので、原作と多少異なる箇所がございます。
 ご了承ください。



○番外編03:ユーゼス・ゴッツォによる恋愛考察



(『恋愛』とは何だろうか?)
 ユーゼス・ゴッツォは真剣に悩んでいた。
 先日、『魅惑の妖精』亭という居酒屋でギーシュと雑談をした折に、どういうわけかやたらとギーシュから『君はもう少し恋愛について学びたまえ!』などと言われてしまったのである。
 しかし、いきなり『学べ』と言われても困る。
 ……自分は地球や自然を愛したことはあっても、特定の個人を愛したことなど68年間ほど生きてきて一回たりともないのだから。
(『恋愛』……男女の恋、か)
 ちなみに、ユーゼス本人はこのテーマをいたって真面目に考えている。
(男と女が惹かれ合う……むう、性的欲求と何が違うのだろう……)
 だが、やはりと言うか何と言うか、根本的な所でズレていた。
 この男は28歳の時に一度死にかけて以降、40年間に渡ってほとんど一人きりで研究ばかりしていたので、『人と人とのコミュニケーション』や『団体行動』などを致命的に苦手としていた。
 ましてや『女性と面と向かって話したこと』など、その間には皆無と言っていい。
 その40年の結果として、女性を見たとしても、
「生物学上で見れば女性だな。それがどうかしたか?」
 とか。
「美人? 確かに顔立ちは整っているが、それだけだろう」
 とか。
「『可愛い』……要するに庇護欲をかき立てられるということか。ふむ、ある意味では自衛手段の一つなのかも知れないな」
 とか、こんな反応を返すようになってしまったのである。
 ある意味では純粋だが、またある意味では可哀想な男なのであった。
(……『恋愛』……何なのだ……?)
 当然、こんな人間が一人で『恋愛』について悩んだところで、答えが出るわけがない。
 …………と言うか、そもそも答えのない問いではあるのだが。
(分からない……)
 とは言え、分からないことを分からないままにしておくのは、ユーゼス・ゴッツォのポリシーに反する。
(……何とか解決の糸口はないものだろうか)
 うーむ、と唸るユーゼス。
 以前クロスゲート・パラダイム・システムの開発に難航していた時は、いきなりラオデキヤ・ジュデッカ・ゴッツォが現れてシステムを完成に近付けてくれたのだが、今回はそう上手くはいかないようだ。
「……………」
 何とはなしに、窓の外を見る。
 青い空。白い雲。緑の森。そして飛んで行く青い小鳥。
 眺めたところで自分の疑問が解決するわけではないのだが、それでも疲れた心を癒すには……。
「……む?」
 いや、ちょっと待て。
 青い小鳥?
「…………ふむ」
 何かを決心したのかユーゼスは一度だけ頷くと、窓を開けてその小鳥に呼びかけたのだった。

「……で、あたしに『恋愛』について聞かせて欲しい、と」
「そうだ。私の素性をある程度知っていて、人付き合いもそれなりにありそうな者と言えば、消去法でお前しかいなかったからな」
「何だか引っ掛かる言い方ですね……」
 微妙に不機嫌そうな声で、異世界ラ・ギアスに生息する『ローシェン』という鳥の姿を模したシュウのファミリア(使い魔)、チカが答える。
「でも……まあ、確かにあなたの知り合いの面子からすれば、一番の適役はあたしかも知れませんね」
 ギーシュ、キュルケ、タバサ、モンモランシー、ルイズ、エレオノール、そしてシュウとチカ。
 ハルケギニアにおいてユーゼスとそれなりに親交の深い人間はこのくらいだが……この中でまともに『恋愛の相談』を持ちかけるとすれば自分だろう、とチカは自負していた。
 もっとも、チカ自身にも恋愛経験などはサッパリ無いのだが、そこは生まれつきの頭脳の回転とひらめき、発想力が物を言う。
「ふふふ。あたしに精神コマンドがあれば、その中に『ひらめき』があるのは確実です」
「何の話だ?」
「いえ、特にお気になさらずとも結構」
 そしてチカはわざとらしくゴホンと咳払いをすると、もったいつけながら話し始めた。
「えー、ユーゼス・ゴッツォさん」
「うむ」
「ハッキリ言いますが、『恋愛』とは言葉で説明が出来るものではありません。これはあくまで感覚的、感情的なものですからね」
「……そうなのか?」
 知ったかぶりの知識を振りかざすチカの説明を、ユーゼスは真剣に聞いている。
「はい。心理学とかの本に書かれてるものを読んだって分かりません。『単なる情報』として提供されたものを、概念として納得することは難しいのです」
「ほう……」
 ユーゼスは感心した。こんなにスラスラと自分に分からなかったことを説明してくれるとは、やはりこのシュウ・シラカワの使い魔に相談したのは成功だったかも知れない。
 だが。
「では、どうすれば良いのか? それは……」
「それは……?」
「ナマの恋愛を見るのです!!」
「…………………………?」
 何だか、いきなり話が分からなくなってきた。
「……『ナマの恋愛』とは、何だ?」
「要するに『恋人同士のやり取り』とか、『ラブラブな様子』とか、あるいは『複雑な恋愛模様』のことですよ。
 それにより、あなたの中では『恋愛とはこういう物なのだなぁ』という認識が生まれ、それと現実の恋愛をすり合わせつつ、やがて確固たる恋愛概念を築いていくのです」
「???」
 分かったような、分からないような。
「…………つまり、どういうことなのだ?」
「他の人たちの色んな恋愛を見て、間接的にあなたも恋愛の経験値をゲットしよう! ってコトです!!」
「色んな恋愛、と言われてもな……」
 恋愛とは、そんな風にそこかしこに溢れているものなのだろうか。
 仮にそうだとしても、夏期休暇中の今では学院に人もほとんど残っておらず、恋愛を見ようにも見ることが……。
「なーに言ってんですか。あなたにはせっかくクロパラって便利なものがあるんですから、それを活用しましょうよ」
「クロパラ? ……クロスゲート・パラダイム・システムのことか?」
「他に何があるんです。って言うか長いんですよ、システムの名前。略すべきですって」
「考慮はしておくが……」
 しかし、クロスゲート・パラダイム・システムを使って『恋愛』について調べるとは。
 今までになかった発想である。
「……ふむ」
 まあ、必ずしも成果が得られるとは限らないが、やってみる価値はあるかも知れない。
 そのようにシステムを使った場合、どうなるのか興味もある。
「では実験の意味も含めて、試してみるとするか」
「そう来なくっちゃ!」
 そして脳内のクロスゲート・パラダイム・システムを起動させる。
 大々的にクロスゲートを開くと問題が起こるかも知れないので、あくまで自分とチカの脳内に映像と音声を投影するのみに限定させ、『他の世界』へのゲートを開く。

 軸(アクシス)対象、『恋愛』および『男女関係』。
 該当空間における軸を中心とした『過去』の情報の収集を開始。
 空間座標軸は……。
(取りあえずは、私が元いた世界だな)
 ―――設定完了。
 該当空間における軸を中心とした『恋愛』および『男女関係』の情報の収集を開始。


「……ダン、どうして逃げたりしたの?」
「アンヌ……。……僕は……僕は人間じゃないんだ。M78星雲から来たウルトラセブンなんだ!」
「……………」
「びっくりしただろう……?」
「いいえ。人間でも宇宙人でもダンには変わりないわ。たとえ、それがウルトラセブンでも……」
「……西の空に明けの明星が輝く時、一つの光が宇宙へ飛んでいく。それが僕だ。
 さよなら……アンヌ」
「待って、ダン! 行かないで……!」
「地球がピンチなんだよ!!」

「うおおおおおおっ!!」
「止めなさい! アレンビー、聞いてちょうだい!」
「うるさいぃぃぃっ!!」
「アレンビー……あなた、誰かに操られているの!?」
「ドモン! ドモン! ドモンはどこなのぉっ!?」
「アレンビー……あなた……」
「どこなのよぉ、ずっと、ずっと探してたのに……ずっと、ずっと憧れてたのに……私を一人ぼっちにしないで! だって、私……」
「!!」
「私だって、ドモンのこと……好きなんだからぁぁぁぁぁっ!!」
「アレンビー……」


「ふむ、これが『恋愛』か……」
「いやいやいやいや!!」
 頷いて納得しかけたユーゼスに向かって、慌ててチカが制止をかけた。
 どうして止められるのか分からないユーゼスは、不思議そうにそんなチカを見る。
「……何か問題あるのか?」
「う、うーん、問題がどうのこうのって言うか、シーンやセリフのそこだけ見せられても正直リアクションに困るって言うか……とにかく、たった二つだけを見て全てを判断したような気になるのは危険じゃないんですかね?」
「それもそうか」
 しかし、もう自分のいた世界の目ぼしい『恋愛』は無さそうだ。
 アンリエッタの一件の時に思い浮かべたドモン・カッシュとレイン・ミカムラ、ヒイロ・ユイとリリーナ・ピースクラフト、バルスキーとローテールの三つについては、もう自分は見ている。
 と、なると……。
「……他の世界も見てみるか」
「何だか激しく嫌な予感がしますが、取りあえずやってみましょう」
 と言う訳で、情報収集範囲を『可能な限りの広範囲』に広げてみる。


「……カミーユって言うんだ。よろしく」
「私はフォウ・ムラサメ」
「フォウ・ムラサメ……? 難しい名前だな……」
「仕方がないわ。そう付けられてしまったんだもの」
「そりゃそうだ」
「カミーユか。優しい名前ね……」
「……………」
「うふふふっ……自分の名前、嫌いなのね?」
「どうしてさ?」
「顔に書いてあるわ」
「……そうかい?」

「見つけたぞ……カテジナに付きまとい、つくづく私の行く手を阻んでくれた少年!」
「あなたがカテジナさんを変えてしまった!」
「彼女の望んだことだ、子供の出る幕ではない!」
「あなたの弱さがカテジナさんを迷わせたのが、まだ分からないんですか!」
「少年に何が分かる! 女王の弟にされてしまって貴様らと戦うことになった私の苦しみが!!」
「……フフフ……二人の男が私を賭けて戦っている……。
 戦え……クロノクル、ウッソ……。
 私の手の中で戦いなさい……勝った者を私が全身全霊をかけて愛してあげるよ! あはははははっ!!」

「君、よろしかったら名前と電話番号を」
「名前はミリア。電話はない!」
「明日の夜9時、幸せの森公園で会ってくれる?」
「承知!」

「……やっぱり私はお邪魔だったみたいね……ごめんなさい……」
「違うんだよ! それは君の誤解……!」
「! ……違うだなんて……誤解だなんて……!」
「あ……」
「あんまりだわ……あんまりよ!!」
「ミンメイ!!」
「……せっかくまた会えたのよ……私なんかに遠慮することないわ。早く彼女を追いかけてあげて……」
「………」
「同情なんて……された方がみじめよ……」

「ガロード、今日こそケリをつけさせてもらうわ。あなたとの勝負にも……私の気持ちにも」
「やめろ、エニル! 俺はあんたと戦ってる時間もないし、戦いたくもない!! 俺はティファを助けに月へ行かなきゃならないんだ!!」
「ティファ……ティファ・アディール……」
「そうだ! あんたもフォートセバーンでティファと会ってるだろ!?」
「……そう……あの子があなたの……。……なら、覚悟はいいわね!」
「くそっ! この分からず屋め!!」

「私はディアナ様をお守りする親衛隊であることを誇りに思います。だからこそ、キエル・ハイム嬢、あなたと出会うことも出来ました」
「ありがとう」
「守るべきご婦人を二人も……いや、もっと持てるかも知れないのです。この役職は……」
「それが嬉しい? 殿方は……?」
「はい」
「お目はディアナ様に吸い付いたままで……?」
「……本物の眼は他のご婦人を物色中です」
「存じております。そのために赤いサングラスをお外しになれないのでしょう? いやしいお方……女王もご存知ですよ」
「……存じています」

「私は大佐に従うだけです……」
「いいのか?」
「愛して下さっているのなら……」
「いてくれなければ困る、ナナイ……」
「シャア・アズナブル……いえ、キャスバル・ダイクンでいらっしゃりたいから疲れるのですか?」
「父の名前を継ぐのは辛いな……。君のような支えがいる……」

「いつかは比瑪が話し掛けることを試したんだから、今度は俺が試してみるさ」
「出来るよね? 依衣子さんを助けることだって……」
「オルファンもね」
「トマト畑、直さなくちゃならないから……」
「……怒るなよ。恨みは忘れろ、ネリー・ブレン!」
「―――オルファンさん! あたしの一番大切な人をあげるのよ!
 あたしの愛してる人なんだから!! さみしくないでしょ!!?」

「アイナー! アイナ・サハリンなんだろ!? 覚えていないか!?
 俺だ! シロー・アマダ!
 ……生きているなら、返事をしてくれえっ!!」
「本当に……本当にシロー・アマダ……!?」
「覚えていてくれたか……無事でよかった。また会えるなんて……思わなかった」
「私も……!」

「行くぞ、レントン! 行くぞ、俺! 俺はあの子の所に飛んで行く!!」
「急いで、ニルヴァーシュ……!」
「ねだるな、勝ち取れ! さすれば与えられん!!
 アァァァイ・キャァァァン・フラァァァァァァァァァァイ!!」
「君……」
「出来た……本当に出来た! カットバックドロップターンが俺にも出来たんだ!」
「え……」
「君のおかげだ……君がいたから出来たんだ! 君、最高だ!
 俺は君が好きなんだ!」
「はあ?」
「君だから出来たんだ! 君じゃなきゃ、駄目なんだ! 俺は……君が大好きだあっ!!」

「そうだ! どうせ聞こえるなら聞かせてやるさっ!」
「ほぉ! 何か思い付いたようですね! 最後の足掻きですか!」
「……サラ、好きだ!! サラ! 愛しているんだ、サラー!!
 エクソダスをする前から好きだったんだ! 好きなんてもんじゃない、サラのことはもっと知りたいんだ! サラのことはみんな、全部知っておきたい!
 サラを抱き締めたいんだ! 潰しちゃうくらい抱き締めたい!!
 ……心の声は、心の叫びで掻き消してやる! サラ、好きだぁー!! サラ、愛してるんだよ!!
 僕のこの心の内の叫びを聞いてくれ、サラさん!
 クラスが同じになってから、サラを知ってから、僕は君の虜になってしまったんだ!
 愛してるってこと、好きだってこと!
 僕に振り向いて! サラが僕に振り向いてくれれば、僕はこんなに苦しまなくたって済むんです!
 優しい君なら、僕の心の内を知ってくれて、僕に応えてくれるでしょう。僕は君を僕のものにしたいんだ! その美しい心と、美しい全てを!
 誰が邪魔をしようとも奪ってみせる! 恋敵がいるなら今すぐ出てこい! 相手になってやる!!
 でも、サラさんが僕の愛に応えてくれれば戦いません。僕は、サラを抱きしめるだけです!
 君の心の奥底にまでキスをします! 力一杯のキスを、ドコにもココにもしてみせます!!
 キスだけじゃない!! 心から君に尽くします! それが……僕の喜びなんだから!
 喜びを分かち合えるのなら、もっと深いキスを!!」

「シュウ様……全て、終わりましたのね。これからどうなさるおつもりですの?」
「さあ……どうしましょうか。ともあれ、今の所はゆっくり休みましょう」
「この前みたいに、いきなり何も言わずに地上に行っちゃったりしないでくださいね。もう、私とシュウ様は一心同体……離れられない運命ですのよ」
「ちょっと、サフィーネ! ずーずーしいですわよ! あなたなんて、ヴォルクルスに操られちゃえばよかったのに!」
「ほほほ、シュウ様に処女を捧げるまでは、私は死んだりしないの」
「……また言ってる。大ウソつき」

「マサキ、これからの質問にハッキリ答えてよ」
「何だよ、俺にとばっちりが来るのか?」
「あのさ……あたしと、ウェンディさん、どっちが好きなの?」
「でえっ!? そ、そういうことか!? ちょ、ちょっと待て!!
 ……だからだな、それはその、なんて言うか、料理にたとえると……」
「日本料理とフランス料理と、どっちが好きかなんて決められない……なんてのはナシだよ。恋をTPOで使い分けたりされちゃたまんないからね」
「うっ……」
「さあ、ハッキリ言って、マサキ!」
「そ、それは……その……」
「あ、ちょ、ちょっと待って!! こ、心の準備が……」
「……ウェンディさん、意外と自信家なんだ」
「やだ、違うわよ……その、ダメだったとしても、泣かないようにしようって……」
「それは……あたしも同じよ」
「う~……この雰囲気で、どうしろって言うんだよ」
「でもね……誰も傷つかない恋なんてないんだよ……一番悪いのは、みんなを傷つけることだけど……」
「わ、分かったよ。
 俺が好きなのは……」


 一通り見終わったチカは、頭を抱えてブツブツと呟き始める。
「きょ、極端すぎる……。って言うか、コレ『愛憎劇』とか『修羅場』もいくつか入ってるし……」
「よし……。これで『恋愛』についての情報収集は完璧だな……」
「ちょ、ちょっとお待ちなさい!!」
 とんでもないことを口走ったユーゼスに、辟易しながら歯止めをかけるチカ。
 何の知識もない状態でいきなり今のを参考にされたのでは、何をしでかすのか分かったものではない。
 ……いや、何をしでかすのかちょっと見てみたいような気もするが。
 とにかくここは止めるべきだ。
「む?」
「あ、あのー、自分で勧めておいて何なんですけど、コレはもう参考にしない方が良いんじゃないですかね?」
「何故だ?」
「何故って、そりゃアンタ……」
 その理由が分からないようでは、どうやら良くも悪くも効果はなかったらしい。
「…………はあ」
 チカは、これ見よがしに溜息を吐いて呆れる。
 何だかもう、どうでもよくなって来た。
(もう処置なしって言うか、生まれる前からやり直すくらいしか方法が無いんじゃ……?)
 ……見ている最中、ついうっかり『場面の登場人物』をユーゼスとかエレオノールとかルイズとかに当てはめちゃったりもしたのだが、そこは秘密にしておこう。
「しっかし、見当外れでもあなたが『恋愛』について考えてる様子なんてイングラム・プリスケンが見たら、気が狂ってるんじゃないかと思うんじゃないですか?」
 と、何気なく言ったチカの一言に、ユーゼスがピクリと反応した。
「む……そうか、イングラムか」
「え?」
 何だか嫌な予感がする。
「もし私自身のコピーであるイングラムが『恋愛』を経験しているのであれば、理論上はオリジナルの私にも『恋愛』を理解することが可能なはず……」
「え、ええ~!?」
 アンタらの因果の鎖は、もう切れてるんじゃなかったっけ……と言おうとしたが、(方向性はともかく)何だか頑張っているユーゼスを見ていると、そんなことも言えない。
 ……取りあえずチカは、黙ってその『イングラムの恋愛』とやらの場面をユーゼスと一緒に見ることにした。


「……アヤ。お前にもしものことがあった時は……俺がお前を守ってやる」
「少佐……!」
「我々が開発している究極の人型機動兵器SRXの要はお前だ。俺は……お前を失うわけにはいかない」
「少佐を……信じていいんですね?」
「もちろんだ」
「分かりました……私の妹、マイや母の死を無駄にしないためにも……。
 そして、何よりもあなたのために……全力を尽くします」
「………」
「それでは……失礼します」
「……………。
 所詮は……人の心の甘さが生み出した欠陥品か」


 駄目だこりゃ、と心の底からチカは思った。
 そこに愛はあるのかい、とも思った。
 そしてユーゼスがどうリアクションを返すのか、とても不安になった。
「……………」
 恐る恐る銀髪の男のいる場所を見るチカ。
 そこには、自分の鏡像の行動や言動から導き出された結論を『知識』として吸収しようとする馬鹿がいた。
「そうか、つまり『恋愛』とは対象への依存や利用しようとする意思が……」
「全然、違ぁあああう!!!」
「何?」
 チカは全身全霊でツッコミを入れるが、ユーゼスはいまいちピンと来ていないようである。
 畜生もう駄目だ、とばかりにチカは叫んだ。
「ああ、もういいです! あなたは恋愛に関して色々考えるの禁止!! 中途半端に頭の良い人が抽象的なことを考えると、ロクなことにならないってことがよく分かりましたよ!!」
「……いきなりどうした?」
「どうしたもこうしたもあるかぁああああああ!!
 つーか何ですか、アンタらの系譜は!! アンタは超朴念仁、イングラムはロクなことをしねぇ、ヴィレッタはズレてる、クォヴレーは天然って、何この一族!!??」
「いや、お前が知っているイングラムとヴィレッタ……それとクォヴレーとやらの行動は、私には直接関係のない並行世界での出来事なのだが……」
 造ったのは『並行世界のユーゼス・ゴッツォ』かも知れないが、少なくとも『この自分』は関与していない。
 だがチカはそんなことお構いなしに叫び続ける。
「それだって、大元はアンタでしょうが!! つまりみんなアンタが原因なんだよ!!」
「…………むう」
 まあ確かにイングラムの人格や性格や行動原理については、ある程度だが自分がベースになっているはずである。
 ユーゼスは自分の記憶や人格などを、完全にイングラムにコピーしたのだから。
 ……逃れられない因果律なのか、後に擬似人格のプログラムミスによって独自の人格を持ってしまったが……。
「しかし……ふむ」
 だがよくよく考えてみれば、今まで見てきたのは所詮『他人の恋愛』である。
 自分以外の人間の感情など、そうそう理解が出来るはずもない。
 それが分かっただけでも収穫だろう。
「そうだな……『恋愛』とは理解しようとして理解が出来るものではない、ということは分かった」
「……ま、あなたにしちゃ上出来なんじゃないですか?」
 チカとしても、下手に理論立てて考えられるよりはこの結論の方が多少マシというものである。
 そして微妙に脱力しつつ、『そう言えば御主人様とマチルダ様のところに戻る途中だったっけ』などと自分の用件を思い出す。
 と、そこに……。
「ちょっと、ユーゼス! ギーシュと飲みに行ったり、本を読みふけったりするのもいいけど、ちゃんとわたしの実家に行くための仕度もしてるんでしょうね!?」
 ユーゼスの主人である桃髪の少女、ルイズがドアを開けてやって来た。
「……って、あら? ミスタ・シラカワの使い魔じゃないの。使い魔同士で何か話でもしてたの?」
「まあ、そんなところだ」
 別に間違ってはいないので、ユーゼスはルイズの言葉を肯定する。
「それはともかく、ちゃんと仕度はした?」
「いや、まだだ」
「はあ……。……あのねぇ、今度の帰郷はアンタをわたしの家族にお披露目する意味もあるのよ。それなのに肝心のアンタがそれじゃ、わたしの面目が丸つぶれじゃない!」
「お前の面目など知らんが……」
 よく分からないが、この主人は『家族』とやらに対して色々と思うところがあるようだ。
 しかし……。
「……ふむ。『家族』か」
「いや、もうやめときなさいって」
 ―――まだ何もしようとしていないのに、何故かチカに止められてしまった。


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