あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの黒魔道士-42


「ビビちゃん、働き者ですね」
小さな森の中の村だから、黒魔道士の村とやるべき仕事はほとんどおんなじだった。
水をくんだり、薪をひろってきたり、木の実やキノコの採取に、家畜の世話……
今ボクが手伝っているのは、「リリパット・ブレッド」っていうパンを作るための小麦袋を運ぶ仕事。
結構重いけど、袋を小分けにしているからそれなりに運びやすい。
「え、せっかく世話になってるのに、何もしないのは悪いし……」
動けるんだから、タダでごはんをもらったりするわけにはいかないなぁって思うんだ。
看病とかしてくれていたみたいだし……
「いいですのに。ゆっくり休んでていいのよ?」
「そーだぜ、相棒~!怪我してブッ倒れてた後だってのによぉ」
起きてから1日、怪我をしてから4日が経っていた。

ゼロの黒魔道士
~第四十二幕~ その扉の向こうに

「――ん~!あー、眼が~……テファ~、お茶にするー?」
土くれのフーケ、本当の名前はマチルダって言うらしい。
ロングビルとか、色んな名前があるなぁって思うけど、
よく考えたら、役者さんだって役によっていろんな名前があるよね?
きっと、この人はいろんな役を演じなくちゃいけなかったんだろうなぁって、そんなことを考えたんだ。
「はい、マチルダおねえちゃん」
「――なんだい、チビ助、気が利いてるじゃないか」
昨日も、同じぐらいの時間にお茶にしようって言ってたから、紅茶の準備はもうしていたんだ。
……って言っても、ボクがやったのは、せいぜいコップを温めるのと、運ぶだけだったんだけどね。
紅茶を淹れるのは、まだ人によって好みがあるから難しいって思う。
シエスタとかは何の苦もなく、それを何人もの貴族の人にやってるからすごいなぁって思うんだ。
「相棒、鍛えられてるからなぁ、雑用に関しちゃ」
「……そうかなぁ?」
鍛えられてるって言っても、そんなに大したことは無いと思う。
まだまだ、覚えなくちゃいけないことはいっぱいある。
でも、覚える時間もいっぱいあるから、ちょっとうれしいな。
「ビビちゃん、スコーンでいい?」
「あ、うん!ありがとう、テファ」
昨日もそうだったけど、アルビオンのお茶菓子って、ちょっと美味しい。
ルイズおねえちゃんにいくつかもらって帰れたらいいなぁ……
ルイズおねえちゃん、甘いものに目が無いから。

「――そうそう、悪いニュースだ。やっぱりあと1ヶ月はアルビオンから船は出せない見込みだと」
紅茶にミルクを注ぎながら、マチルダおねえちゃんが教えてくれた。
この間のタルブ平原での戦闘行為は終わったけど、警戒状態が続くだろうし、
さらにゲルマニアやトリステインからの経済制裁の動きがあるだろうってマチルダおねえちゃんは予想していた。
経済制裁っていうのは意味がよく分からないけど、要は、アルビオンから出る船を港に入れないっていうことをやるらしい。
だから、ダメ元でいくつか当たってみるって言ってくれてたんだけど……
「そんなぁ……せめて、無事を伝えられるだけでも……」
「トリステイン含め、ゲルマニアも噛んでるからねぇ。情報統制も万全さね」
お手紙なんかも無理みたいだ。
ルイズおねえちゃんに、あんまり心配かけたりしたくないなぁ……
「んじゃ、裏ルートととかねぇのかよ?姐さんよぉ?」
デルフが聞く。なんか、いつの間にかデルフとマチルダおねえちゃんが仲良くなってるみたいだ。
ボクが寝ていた間に、何かあったのかなぁ?
「裏っつってもねぇ、相手が表のトップじゃ並の裏ルートじゃダメだし、大きな所は鼻がきくからもう逃げてるしねぇ」
「マチルダねえさん、そんなことなんで知ってるの?」
「ん?い、いやいやいや、クジャの奴がそんなこと言ってたんだよ!」
マチルダおねえちゃんが、ちょっと焦っていた。
テファには、泥棒してたこととかは秘密みたいだ。
信頼してるなら、言っても大丈夫とは思うけど、色々事情があるのかなぁ?
「クジャさん、色々知ってるんですね~」
「……そういえば、クジャは、どうやってアルビオンの外に?」
クジャに頼るのはなんか嫌だけど、もしかしたらその方がいいのかもしれない。
だけど、やっぱり嫌だなぁなんてことを考えつつ、一応聞いてみた。
「飛龍を個人所有してるし、ゲルマニア貴族にも顔がきくからねぇ、アイツは」
「でも、いつも、いつ帰ってくるか分からないよね、クジャさん」
「そっか……」
クジャはオークションハウスを経営したり、色々働いてるみたいだ。
……悪いこと、してないといいけどなぁ……

「なんだい?ホームシックってヤツかい?」
色々考えてたら、マチルダおねえちゃんに笑って指摘された。
ホームシック、なのかもしれない。
でも、お家が恋しいっていうよりも、ルイズおねえちゃんが心配なんだ。
「うーん……みんなに、迷惑かけちゃってるみたいだし……」
「あら、ビビちゃん、お手伝いしてくれるし、全然問題無いですよ?」
「あ、そうじゃなくて……ボク、使い魔だから……」
使い魔の役目は、主人を守ること。
ここにいて、ルイズおねえちゃんに何かあったらどうしようって、妙な心配がつきまとって離れない。
「相棒、真面目だからなぁ~!まぁ、あの娘っ子が騒いで暴れる前に帰っておきたいわな」
「うーん……暴れるっていうか……」
なんとなく、ルイズおねえちゃんは、すっごく泣いている気がするんだ……なんでだろ?

「ま、今はじっとしてるっきゃ無いだろうさね。下手に動いてもしょうがないときはある」
「ここにいる間は、ここを自分の家だと思ってくださいね?」
「う、うん……」
ともかく、今は機会をうかがう他はない。
もっと情報を集めてみようと思った。
必要だったら、村の外に出向いていって、噂とか聞きに行った方がいいかもしれない。
明日まで何も無かったら、そうしようと思った。
 ・
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「おれっちとしちゃー敵陣を突破して船を奪うって作戦もアリとは思うん――おん?」
デルフの物騒な話を聞きながら、食器の後片付けをしていたら、急にデルフが黙ったんだ。
「……え?」

魔力の集中っていうのかなぁ。
何かが集まるような感覚。
何かが生まれるような、何かが開くような……

小さなシュンッて音、それと共に現れたのは、白い光の壁。
魔力がこもっているのか、光がときどき波紋のような渦をまいて虹を作っている。
見た目は、真四角の壁がその場に立っているだけ。
なのに、何故か、“扉だ”ってそう思ったんだ。

「――こりゃ、おでれーた」
デルフは、驚いている。
「っ!?チビ助、あんた何やらかしたんだい?」
マチルダおねえちゃんが、部屋から顔を出してきて、ボクの仕業だと思ったみたいだ。
「ビビちゃん、どうしたんで――な、何なの、これっ!?」
テファも驚いている。

そして、ボクは……“扉”から声が聞こえた気がしてたんだ。
「……呼んでる?」
「呼んでるってぇ、誰がよ?」
「……ルイズ……おねえちゃんが……?」
泣くように、か細い声。消えそうな、かすれ声。
だけども、はっきりと、ボクを呼ぶ声がしたんだ。
「娘っ子が?」
「――ってことは、これ“召喚の門”?入る側はちょっと違うわけか」
この光の扉の名前は“召喚の門”っていうらしい。
マチルダおねえちゃんが不思議そうな顔をしてたけど、納得しているみたいだ。

ともかく、ルイズおねえちゃんの声が聞こえて、ルイズおねえちゃんが呼んでいる。
それ以上の、情報はいらなかった。
帽子をキュッとかぶりなおして、気合を入れる。
「……テファ、マチルダおねえちゃん……ボク、行かなくちゃ!」
「急だねぇ。まぁ、達者でやんな」
「え、え?あ、あの、ビビちゃんお元気で?っていうかマチルダねえさん、これって何なの?」
「それじゃ……またね!」
手をふるのももどかしく、ボクはデルフを片手に、光の扉の中へと入っていった。

いつか帰るところに、帰るために……


ピコン
ATE ラフ・メイカー

涙で濡れた部屋に、ノックの音が飛び込んだ。
誰にも会える顔でなし。涙の少女は答えない。

ルイズは部屋にこもりきり、膝を抱えてベッドの上。
壁を背にしてシーツをかぶり、濡れた頬は酷い有様。
この状態が、もう3日は続いていた。

魔法が使えた喜びは、失った悲しみには及ばない。
やっと届いたと思ったなら、喜び分かつ者は消えにけり。

どうして?なんで?
繰り返される疑問符は、剣となって彼女の心を突き刺した。

私はどうして、なんであの時、
刺さった傷口からは後悔の渦が流れ出て、彼女を縛る鎖となる。

ビビに聞きたいことはもっと沢山あった。
彼の語る異世界の物語はまだ終末を迎えていなかった。
ビビに見せたいものはまだまだ一杯あった。
もうすぐ訪れる夏休みの予定をこれから立てるはずだったのに。
ビビともっともっと歩いていきたかった。
やっと堂々と、一緒に肩を並べて立てるところまで来たと思ったのに。

何も言わず、何も言えず、彼は旅立ってしまったというのか。
信じたくなかった。信じられなかった。

振り返れば、棘のある言葉ばかりを彼には投げかけた。
辛くあたっていたこともある。
素直になりきれなかった自分の姿を思い出しては、悔恨の槍でそれを貫く。
傷つくのは、自分だと分かっていながら。

「私――馬鹿だ――」

カラカラになった声が、大洪水の部屋へ転がり落ちた。

『そのとおりね』

それにかぶさるように、部屋に同意の声が飛び込んだ。

「っ!? きゅ、キュルケっ!?」

隣室の者の名を問うも、その姿は目に見えず。

『あなたドア開けてくれないんだもの。だからちょっとこんな感じでね。タバサもいるわよー?』
「――趣味悪いわよ!ひっこんでなさいよっ!」

以前、盗聴されたことがあったと思いだす。
今回のはその応用だろう。風魔法を操るタバサもまたいるらしいのがその証拠だ。

『まぁ、いいじゃないの。壁を挟んでおしゃべりするってのもオツでさ』
「誰が、あんたなんかと――」

顔を見られるわけではないが、涙をぬぐってせいぜい強がって見せる少女。

『いいじゃない!ほら、あんたと私って――えーと、ほら、そのー……』
「――何よ」

隣室で戸惑う様子が見えるようだ。
仇敵であったキュルケが戸惑う様子は、昔ならば滑稽だと一笑するところだろうが、
泣いていたためであろうか、そんな気持ちは一切湧かない。

『だ、だからほら、アレよアレ!もう、分かりなさいよ!』
『友達』

今まで黙っていた少女の声が、言葉を補った。
友達。
それは、ルイズが心の奥底で求めた物だった。
求めていても、生来の意地の厚さと貴族としての体面が、表に出すことを許さなかった、ささやかな夢。

『た、タバサ!?』
『違う?』
『ち、違わないけど!ほら、もっとこうやんわりと――』
「――ありがと」
『え?』

心が、弱っていたからだろうか。
あるいは、涙で仮面が取り外されたからだろうか。
素直な感謝の意が、喉の奥から自然に出てきた。
自分には、自分を心配してくれる友がいる。
なんだ、こんな近くに夢を叶える存在があったんじゃないか。
別な後悔が、浮かんで消える。

「――少し、楽になったわ」
『――そんなら、いいわ』

抱えた膝を少し崩し、そっと壁に体を預ける。
冷たい無機質であるはずの壁が、ずっとあたたかい物に感じられた。

しばらく、しゃべった。
しゃっくり混じりの泣き声で、恥も外聞も無く、しゃべり続けた。
それはたわいも無いこと。
それは意味の無いこと。
ただただ、寂しさを言葉で埋めるため、かれた声でしゃべり続けた。
友が、ずっと傍にいたはずの友が、それに優しく応えた。

『――不思議なものよね、こんな風にしゃべってるなんて』
「――そうね」

すっかり疲れた泣き声は、相手を認める優しいもの。
それでも失った悲しみは、そのもの自身でしか埋められない。

『みんな、あの召喚の日から始まったのよね――可愛い男の子が召喚されて』
「――召喚……」

思い出すのは春風舞うあの日のこと。
とんがり帽子のみすぼらしい、それでもどこか愛らしい、そんな少年が現れた日。
何度、孤独を救われただろう。今まで見ていた世界が、どれだけ変わっただろう。
物語の歯車は、その日から、動き始めたのだ。

「――我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」

気がつけば、杖を取り出し、あの日と同じ呪文を唱えていた。

「――五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし、"使い魔"を……召還せよ」

時の歯車は、巻き戻ることは決してない。
だけど、もう1度、あの日の奇跡が起こって欲しかった。
全てを破壊しつくすような魔法を使いたいわけじゃない。
今はそれを望まない。
今望むのは、失った友との再会。

うんともすんとも言わないで、静寂が部屋を満たした。
溜息1つが零れ落ち、嗚呼、自分は結局ゼロなのか。
残酷な真実が涙へと変わり、またとめどなくあふれ出ようとした。

奇跡の呼び水は、無垢なる祈り。
祈りは、光へ。
光は、扉に。
涙の煌きを覆うような光の扉が、静かに優しく部屋に現れる。
赤く腫れた眼を見開き、少女の視界は光で満ちる。

「――ビビ?」

語りかけるは求める者の名。
新たな道を示した優しき友の名。

「……ルイズおねえちゃん?」

光の中からおずおずと、怯えながらゆるやかに、
懐かしき姿が形を作る。

「――ビビ!!」
「ルイズおねえちゃん、良かった!無事だっ、いたっ!?」

小さな意地が、顔を出し、流した涙を隠すように、妙な仮面を作ってしまう。

「このバカッ!大馬鹿っ!野良犬だってね!?1日やそこらで帰ってくるもんよ!?」
「う……ごめんなさい……」

あぁ、本当に大馬鹿だ。
この私を待たせるなんて。
泣いていいのか、笑っていいのか、怒っていいのか。
仮面の顔が、本音を隠しきれずにグジャグジャに崩れる。

「このバカッ!犬以下っ!大馬鹿っ!あんたなんて、あんたなんてっ――」
「……ルイズおねえちゃん……」

相手をはたいた拳で、涙を1度ぬぐいさる。
どうしようもないほど、呆れるほど、単純な言葉を、言うのを忘れていた。
やっぱり、私、馬鹿だ。
ちっぽけな意地の薄っぺらな仮面はすぐに剥げ、言いたかったことが素直に口に出る。

「――おかえり、ビビ」
「……ただいま!ルイズおねえちゃん!」

もう、離したくないとばかりに、少女は小さな友に抱きついた。
それは、今までに無いほど、素直な笑顔であった。
 ・
 ・
 ・
隣室で杖をしまうは青髪の少女。
壁の向こうの音が、途切れるように消えた。

「え、ちょっと!なんでやめちゃうの!?」

赤髪の少女が文句を言う。
うっすらと、彼女も泣いていた。

「これ以上は、野暮」
「う~ん、しょうがないわねぇ。じゃぁせめて、乾杯する?ビビちゃんの帰還を祝って」

野暮、と言われてしまえば、スタイルにこだわる淑女のたしなみとしてやめざるをえない。
ならば、ここで小さなお祝いをしようと、黒猫のラベルの描かれたボトルを取り出す。

「ワイン?」
「そ!タルブで買っておいたのよ!あんたの好きそうなおつまみもあるわよ。えっと、ギサール・ピクルスだったかしら」
「もらう」

クセがかなりある漬物の類。これも、シエスタの曽祖父が広めた物らしい。
独特の風味が友人の好みに合うだろうとしっかり購入しておいて正解だった。

「――うん、それじゃ、小さな隣人の幸せに!」
「乾杯」

グラスの音が、小粋にチンとこだました。
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ちなみに、

「きゅいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!感動的なのねっ!まさにハッピーエンドなのねっ!
 きゅぃぃぃぃ!ハンカチが、厚手のハンカチが欲しいのねっ!きゅい、きゅい、きゅいぃぃぃぃぃ!!」

窓の外では、野暮天な龍が、何やら泣きながらのたうちまわり、
知り合いのサラマンダーに「うるさい」と呆れられていたというのは、また別の話。


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