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ゴーストステップ・ゼロ-18


レコン・キスタの襲撃を退けた一行は、アルビオンへ向かう貨客船マリー・ガラント号に乗り込み、空の人となっていた。
乗り込んだ当初は、風竜とグリフォン等という滅多に見られない幻獣で直接乗り込んで来たルイズ達に、暫くパニックに陥った船員達だったが。法外な報酬と2人のメイジ(ワルドとタバサ)が協力を申し出る事で、何とか首を縦に振らせる事に成功する。

しかし、舷側から離れていくラ・ロシエールを眺めていた一行の中にヒューの姿はなかった。




ゴーストステップ・ゼロ  シーン18 “Promise & pirate”

    シーンカード:レッガー(災難/予期せぬ不運。苦渋。絶望。不本意な屈従を求められる。)




ラ・ロシエールが微かに見える程マリーガラント号が離れた頃。ルイズ達(といっても、船内にある風石に魔力を注いでいるワルドとタバサ、船室で眠っているヒューを除いた3人だが)は不景気な顔を突き合わせていた。

「ところでルイズ、ヒューは大丈夫なのかい?」
「そうね、本人は大丈夫だって言ってたけど…あの顔色は無いわよ。真っ青通り越して土気色だものね。」
「……分かんない、ヒューはいつもの事だって言ってたけど。」
「けど?」

キュルケの質問に、ルイズは召喚した当時の記憶から印象に残っていた事柄を話し始める。

「確か、召喚した時もかなり顔色が悪かった事は覚えているわ……。最初見た時、行き倒れた平民かと思っちゃったもの。
 それから…そう、ミスタ・コルベールが使い魔の説明をしていた時に、“死ぬまででいいなら引き受ける”とか…どうとか…。」
「ちょっとルイズ、それって…。」
「ヒューは病人だった、って事かい?」
「その可能性は高い…いいえ、間違い無くかなり深刻な状態なんでしょうね。」

ルイズが口にした結論にキュルケは口を閉ざした、今からならタバサのシルフィードでラ・ロシエールに送れるだろうが、そうなるとニューカッスルに入る際、レコン・キスタの包囲網を抜けなければならなくなる。
一応、此方にはワルドを含めればスクエア1人・トライアングル2人・ドット1人という陣容だが、ヒューのお蔭でワルドがレコン・キスタの一員である事は明白だ。病身とはいえ、最大戦力の一つであるヒューが抜けるのは避けるべきだろう。
しかも、ヒューが抜ける事は即ちタバサもいなくなる可能性が高い、そうなると最早絶望的ですらある。
意を決したキュルケが口を開こうとしたその時、覚悟を決めた表情のルイズが話し始めた。

「けど、ヒューは連れて行くわよ。」
「ええっ!そ、それはまたどうしてだいルイズ?今からならタバサのシルフィードでラ・ロシエールに送れるじゃないか。」

ルイズの言葉に驚いたギーシュが質問をする。

「ええ、連中がいるかもしれない所にね。現状で安全な場所といったら、それこそ学院か姫様の庇護下、後は私達の実家位ね。
 しかも、そこまで送ったら間違いなくタバサとシルフィードはこの任務に復帰できなくなるわ。いい?ギーシュ、この任務はタバサとシルフィードがいるといないとでは危険や困難の度合いが段違いなのよ。
 それにヒューに関しては戦力以外にも知恵袋としていて欲しいの。」

ギーシュに対するルイズの説明を聞いていたキュルケは内心喝采を送っていた、流石はヴァリエール!こうでなくては、張り
合いがない。
そう思ったキュルケはギーシュに駄目押しの提案をする。

「そうね、ヒューの状態は思わしくないけど、上手くすればニューカッスルで治療が受けられるかもしれないわ。ならいっそ
の事、ヒューを連れて行くべきでしょう。」
「むむむ、確かに2人の言う通りか。シルフィードがいなくなると必然的に敵陣を抜けなければならないし…、ニューカッスルなら王家付きのメイジもいるだろうし、ヒューにはそこまで我慢してもらうしかないね。」
「それじゃあ私はヒューの具合を診てくるわ、ワルドとタバサが来たら説明しておいて頂戴。」
「ええ、任されたわ。ヒューにはしっかり休んでおく様に伝えておいて。」

ルイズはキュルケとギーシュに後の事を任せると、ヒューが休んでいる船室へと下りていった。



ヒューが眠っている船室の前まで来たルイズが控えめにノックをすると、いくらもしないうちに中からデルフリンガーの声が
響いてきた。

【誰だ?】
「私よデルフ、ヒューは?」
【嬢ちゃんか……入んな、相棒は寝ちまってるから静かにな。】

一瞬、立ち去ろうかと思っていたルイズだったが。頭を振ると、ヒューを起こさない様に気を付けて中に入る。
いくつかの簡素な寝台が置かれているだけの部屋、そんな寝台の一つでヒューは静かに寝息を立てていた。
寝顔を見てみると、乗り込んだ頃に比べて幾分顔色が良くなった様に見えた為、ルイズは安堵の吐息をつく。
ヒューの額に浮かんだ汗をそっと拭ったルイズは、鞘から半分だけ抜いていたデルフリンガーに話しかける。

「ねぇデルフ、ヒューから何か聞いてる?」
【ん?何かって何をだい?】
「例えば…病気の事とか。」

ルイズの言葉にデルフリンガーは沈黙していたが、ぽつりぽつりと話し始めた。

【相棒からは特に聞いてねぇよ。】
「そう…」
【ただ、オレサマには持っているヤツの事がある程度分かる能力がある。それで良ければ話してやる、聞きたいか?】

ルイズの心はデルフの言葉に激しく揺れた、恐らくヒューに直接聞けばすんなり話してくれるだろうと思う。
けれど本人に直接そんな事を聞くのは残酷な事ではないだろうか。
ルイズは2番目の姉カトレアの事を思った。カトレアは生まれた頃から病弱で、領地からほとんど出た事が無いほど身体が弱い、そんな姉がもし自分の死期を悟っていたとして、それと知らずにもしも自分が姉に病気の事を聞いてしまったなら……。自分はどれほどの後悔に襲われるのか、そんな恐ろしい事は聞けるはずがなかった、ただでさえトーキョーN◎VAはハルケギニアよりも医学が進んでいたのだ、N◎VAで治せなかった病がハルケギニアで治せるかと問われたら、難しいとしか言えない。
だからヒューに聞く事も出来なかった。召喚した時の言葉から想像すると、彼自身長くない事を悟っていたのだ、だから使い魔にもなってくれたのだろう。

ふと、視線を感じて顔を上げると、寝ているはずのヒューと目が合う。

「よう、ルイズお嬢さん。どうしたんだ?今にも泣きそうな顔して。」
「な、何でもないわよ!それより身体の具合はどうなの?フネに着くなりいきなり倒れちゃったからびっくりしたじゃない。」
「ああ、ちょいと無理が祟ったのかもな。心配したかい?」
「そりゃあね、一応私は御主人様なんだし、使い魔の健康管理位当然よ。ニューカッスルに着いたらお城付きのメイジに診て
もらうから、しっかり休んでおきなさい。」
「……そいつはありがたいね。ところでルイズお嬢さん。」
「何?」
「聞きたい事とかあるんじゃないか?」
「っ!な、何の事?別に無いわよそんなもの。」
「そうか、悪かったな変な事を聞いて。」
「…スープか何か貰ってくる。少し寝てなさい。」

そう言うとルイズは足早に部屋から出て行くのだった。

「デルフ」
【何だい?相棒】
「お前、お嬢さんに何か言ったか?」
【オレサマが知っている限りでいいなら相棒の事を教えてやるとは言ったけどな、結局聞かずじまいだったよ】

デルフの答えに苦笑すると、ヒューは話を続ける。

「なるほど、俺なんかよりよっぽど優秀だよ、お嬢さんは。」
【そりゃあどういう意味だ?相棒】
「詳しい症状は分からないだろうが、俺が長くないって事を確信してるんだろう。」
【本当にどうしようもないのか?】
「無理だな、第一今まで生きていた事からしてファイブカード…ありえない位ツイてたって事なのさ。
 とりあえず、可能性としてはクローニングによる再生治療が挙げられるが此処では無理な相談だし、仮にここがN◎VAだ
ったとしても治療には時間も金も足りない、XYZだ。」
【で、あとどれ位持ちそうなんだ?】
「そうだな、長くて1週間って所じゃないのか?
 何とかルイズお嬢さんとの約束は守れそうだから、俺の終わりにしては上等な所だろう。」
【約束?】
「“お嬢さんの魔法を見つける”、“俺が死ぬまでなら一緒にいる”ってな。
 このハルケギニアで最初に交わした約束さ。」
【そうかい、じゃあこの仕事は何がなんでもやり通さなきゃあな。】
「ああ。」

溜め息にも似た言葉をデルフリンガーに返したヒューは、再び泥の様な眠りに落ちていった。


翌日、ヒューは喧騒の中で目覚めた。身体の芯から響く痛みを押し隠しながら寝台から立ち上がるのとほぼ同時に、ルイズ達
が部屋に入ってくる。

「ヒュー!大丈夫なの?」
「この騒ぎだ、そうそう寝てもいられないだろう。アクシデントか?」

ルイズの言葉に答えながらヒューは<弥勒>を装備する。
そして、ヒューの質問に答えたのはルイズではなくワルドだった。

「空賊だよ、ヒュー君」
「空の海賊という事か…、ハルケギニアならではだな。」
「抵抗しようにも僕とミス・タバサは風石に力を送り続けていた所為で、碌に魔法が使えない。
 しかも連中に上をとられている、お手上げだよ。」

ヒューは話しながら次々と装備を整えていく、最後にデルフリンガーを鞘に収め直して、右手に持つと苦々しい口調で一言ぼやく。

「空賊が出るとは聞いていたが、まさか本当に出くわすとはな。」
「君は知っていたのかい?」
「可能性としてな、10人以上のメイジが乗り込んでいる空賊がいるという情報があった。」
「10…それはまた」
「何で言わなかったの、ヒュー。」

ルイズの疑問にヒューは肩を竦めながら答える。「知った所でどうしようもないからさ」と。

「どういう事だい?」
「ギーシュ、例えこちらのメイジの全員が魔法を唱える事が出来る状態だったとしても、連中が唱える魔法の方が多い。
 しかも上を抑えられているからな、障害物もあまり意味が無い、こういった状況では手詰まりだよ。
 一番良いのは出くわさない事、次が逃げる事なんだが…どうも連中は襲い慣れている様だな。
 子爵、貴方のグリフォンは此処からでもアルビオンに辿り着けるかい?」
「厳しいな、ミス・タバサの風竜ならば問題はないだろうが……。」
「じゃあ、しょうがないな。ここは潔く降参するしかないだろう。」

ヒューが出した結論に、皆不満はあるものの納得したのか、全員で甲板へ向かう事となった。

一行が甲板に出ると、そこにはマリーガラント号の船員と空賊であろう男達が向き合っている。甲板の中央には魔法で眠らさ
れたのか、シルフィードとヴェルダンデ、そしてワルドのグリフォンが寝息を立てている。
船室から出てきたルイズ達を見て空賊達は喝采を上げた、貴族の身代金は普通に貨物船を襲うよりも金になるからだ、もちろ
んそれなりの危険は伴うが、手に入る金額と比べれば十分以上の見返りだろう。

空賊達の声に身じろぎをした一行(ヒューとワルドは平然としていたが)に、空賊のリーダー格らしい眼帯をしたの男が部下
を3人引き連れて歩み寄ってくる。

「へぇ、貴族の客まで乗せていたとはな、しかも別嬪揃いときた。
 俺達のフネに付いている大砲が見えるのなら手前ぇ等も杖と剣を捨ててもらおうか。
 おう、この客人から武器を預かって差し上げろ。」

ルイズは屈辱に震えながら空賊達に杖を渡したが、男を睨み付ける目は一瞬たりとも逸らさなかった。

「お前等は俺達のフネに来てもらう、嬢ちゃんみたいな目をしている奴は手が届く所に置いておかねえと何しでかすか分かったもんじゃねえからな。」


そうして、ルイズ達は空賊船の船倉に押し込められる事となった、杖や剣といった一目で武器と分かる物は全て取り上げられ たが、それ以外の荷物は全て持たされている。
船倉にある小ぶりな舷窓から外を見ると、どうやら移動を再開したようだ、マリーガラント号はこの空賊船に曳航されている
のだろう、大人しく追従していた。

「ワルド、これから私達どうなるのかしら。」
「希望を捨ててはいけないよルイズ、勝利はいつだって最後まで諦めなかった者にこそ与えられるんだ。」
「そうね、この任務は何としてでもやりとげないと、トリステインで生きる人々が危機に陥ってしまうんだもの。」

決意も新たに「むんっ」と気合を入れたルイズは、ワルドが自分を暖かい目で見ている事に気付いて顔を赤らめた。

「…ワルド、私何か変な事を言ったかしら?」
「ん?ああ、いや君は立派な貴族になったんだな…と思ってね。」
「いいのよ、別にお世辞なんて言わなくったって。私はコモンマジックもろくに使えないダメメイジだってちゃんと分かってるんだから。」
「ルイズ、貴族らしくある事と優秀なメイジである事、そして良き貴族である事は決して等しくはないんだ。」

そう言った時のワルドの表情は、自嘲・怒り・悲しみ…何と表現したら良いのか分からなくなる物だった。
ただ、ルイズはもしかしてこれこそがワルドの本当の顔なのではないだろうか?そう思ってしまい、何故だかこの男が哀れに
思えて悲しくなる。

「ワルド?」
「いや、もうよそう。ただ、今の気持だけは忘れないでいてくれると嬉しいと思ってね。」
「大丈夫、忘れないわ。だって色んな人から教わった大事な事ですもの。」

そう言って笑ったルイズを、ワルドは微笑ながらも決して届かない物を見る目で眩しそうに見ていた。


それから小1時間経った頃だろうか、船倉の扉が開かれると頭を剃り上げた大男が現れて全員に告げる。

「お前等、お頭がお呼びだ、さっさと出ろ!」

船倉に閉じ込められてからというもの、一言も言葉を出さなかったヒューが苦笑いを浮かべながら、一行の最後尾に付いていく。

「やれやれ、何とかなりそうじゃないか。」




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