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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-47


漆黒のバラと炎蛇

ルイズがマリコルヌをしばいたりぶっとばしたりして、
ギーシュがケティとモンモランシーを舌足らずに褒め称える。
マーティンは死霊術の対策を思案しつつ、ルイズの魔法練習に付き添ったりして過ごしている。
キュルケは対抗して更に修練に励み、タバサはハシバミ草を貪るように食べ続け、
ついにマルトーに完敗宣言をださせた。
学院長はというと美人秘書の形をしたガーゴイルを経費で購入しようとして、
教師たちに止められる。

「なんでじゃ!ここの最高責任者はわしじゃよ!?」
「どう見てもいかがわしい機能付きでしょうが!!」

そんな平和な魔法学院とはうってかわって、トリスタニアでは厳重な警戒体制の中、
ある犯罪者の捜索が行われていた。要所の警備をしている衛兵達が総出で、
王宮の図書室に忍び込んだ盗人を捜しているのだ。大胆にも白昼堂々犯行に及んだ盗人は、
現在も城下町を逃走中である。

「おい、そっちにいたか?」

杖に明かりを灯して、暗所を捜索する衛兵だが捜索は難航しているようだ。

「いえ、こちらには」
「まったく、賊は何処に行ったというんだ!」

ちゃんと仕事に取り組む衛兵は早々に別の場所におもむくが、
明かりを灯して探している衛兵は、暗くじめじめした路地裏に留まっている。
盗賊ギルドとつるんでいる彼は、盗みに入った盗賊に目を合わせた。

「グレイ・フォックスの旦那に付き合うお前さんも大変だな」
「いいえ~。慣れてますから」

危なかった危なかったと収穫を手にシエスタは微笑んでいる。
次からはもっと上手くやってくれよ、と衛兵は右手を出す。
もちろんですよ、と盗人は金貨を5枚渡した。

「そら、さっさと行け。ここには『誰もいない』んだ」
「はーい。それでは失礼しますね」

どこにでも、金がもらえるならそちらに流れる者はいる。
盗賊ギルドが信用できる組織であることもあって、彼の様な衛兵も多い。
その多くは『革命』による無意識の内のパラダイムシフトが起こっただけかもしれない。
つまり大きいは、正義というパラダイムに移行したということだ。

シエスタは影の様に路地裏を駆けて、裏口からある建物に入る。
中はきわどい服装の妖精さんがたくさんいる店だ。

「あら、シエスタじゃないの」
「ジェシカ。スカロンおじさんはどこ?」

いとこが経営する「魅惑の妖精亭」はギルドの活動拠点でもある。
店長のスカロン氏は平民でオカマだが、裏世界では「影滅」の二つ名で知られており、
影も形も無いほどに無くなってしまった証拠品すら見つけてくる凄腕の情報屋である。
その情報力は盗賊ギルド発足前から一部の貴族も利用していた。
尚、チュレンヌは下っ端な為、ギルドに参加して初めてそんなことを知ったとか。

シエスタはジェシカからもらった妖精亭の服に着替えて、
店の中へと進む。入り口で接客をしているスカロンに目配せすると、
はいはい、とスカロンは他の娘に任せてシエスタと一緒に裏へ入っていった。


個室にて、スカロンは控えめながらもポージングを決めながら、
シエスタを見る。

「ダメじゃないのシエスタちゃん。警備に見つかっちゃうだなんて」

シエスタは苦笑いを浮かべて、弁解をする

「いえ、見つかる気は無かったんですよ。でも」

チチチ、と指を振ってから、スカロンは首を振った。
妙に様になっている。

「一流の盗賊は、尻尾すら掴ませないの。それでこそトレビアンなのよ。
 今のシエスタちゃんはまだまだ一流には遠いわ」

経験が足りていないと目で言われ、あうとシエスタは落ち込んだ。

「オイタはこれくらいにして……今日盗ってきた物をみせてくれるかしら?」

コクリと頷いて、シエスタは一抱えある書類の束を渡した。
シエスタも文字は読めるが、公文書の様な難しいものを読むことは出来ない。
だから、内容の確認のために博識なスカロンに物品を渡しに来たのだ。

眉間にシワを寄せ、スカロンは小さくうなった。

「『魔法研究所実験小隊』……噂には聞いたことがあったけれど、
 えげつない連中だったようねぇ。始祖に近づくってお題目の名の下に……
 あらまぁ、これじゃガリアの北花壇騎士団の方がカワイイくらいだわ」

ペラリと書類をめくる度に、恐ろしい内容が明らかになる。
古代に使われていた魔法の再現という、何の意味も持たない行為の為に、
たくさんの人間が犠牲になっていた。
またそのいくらかが、黒い金の為に犠牲になった事もすぐに分かった。

「今の方針に変わった事を、神様に感謝しないとね。マジックアイテムの値段が下がったのも、
 今のアカデミーのおかげよ」

スカロンは悲しそうな顔で内容を確かめていき、ついにお目当ての報告書を見つけた。

「ダングルテールの異端排除、これね。立案したのは高等法院のリッシュモン。
 あいつか。昔から色々と黒い噂が絶えなくて、いけ好かない男だと思ってたのよ。
けれど、妙ね……この作戦で二人を除いて小隊は全滅しているわ」

実力者が揃った小隊が、魔法を使えない平民に遅れを取ることなどありえない。
それまでの戦績から考えてもそれは明らかだが、報告書にはそう書かれている。

「ダングルテールで何があったのか。もう少し調べてみる必要がありそうね。
 リッシュモンの事はこっちで調べるわ。シエスタちゃんはダングルテールの生き残りからお話を聞いてきて」

シエスタは驚いてスカロンを見る。

「生き残りって…、みんな死んだんじゃないんですか?」
「ホラ話じゃなければ、今この街に一人いるわよ。傭兵やってるんですって」


美しい顔つきに細く鋭い目をたずさえた女は、トリスタニアの路地を歩いている。
髪は短く、鎧を着こなす様は男顔負けで、その表情は近寄りがたい雰囲気を作り出す。
背中の剣は使い込まれているようだった。
最近傭兵として名を上げている彼女は、久しぶりに顔なじみに会いに来たのだ。

「おお、アニエスじゃねえか」
「お久しぶりです、師匠」

武器屋のドアを開けると、少し寂しげな主人が出迎える。
アニエスは礼儀正しく礼をした。

「よせよ。そんな大層なことするんじゃあねぇ。それと、師匠っていうのも無しだ」
「あなたは伝説の英雄じゃないですか。ならそれ相応の礼儀は必要でしょう?」

アニエスは朗らかな顔で、武器屋の主人を見る。ケッ、
と武器屋の主人は居心地が悪そうに頭をかいた。

「昔の話さ……今日はどしたい?」
「数日こちらに滞在する事になったので、顔を見に来ました」
「そうか」

ぶっきらぼうに言い返して、男は黙った。アニエスは辺りを見回すと、
いつも調子の良い事を言っていた剣が無いことに気が付く。

「デルフ……売ったんですか?」
「ああ、お前に渡しても良かったんだが、動く時が来たんだとさ。あいつ、あのガンダールブの左手だったんだとよ」
「なんですって!?」

そんな驚くアニエスの後方、武器屋のドアが開く。
メイド服姿のシエスタが入ってきた。

「おぉ?フォックスのとこの腕利きじゃねえか。どした」
「ちょっとお聞きしたい事がありまして、ダングルテールにお知り合いがいたとか……」
「ああ、ならこいつだよ。おういアニエス……大丈夫か?」

主人がヒラヒラとアニエスの顔の前で手を振る。あ、と正気を取り戻したアニエスは、
気恥ずかしそうに笑う。

「で、アニエスに何の用なんだ?」
「いやー……言いにくいんですけど……」

アニエスは少し汗をかいているシエスタを見る。
鋭く視線は彼女を貫くが、どこか生暖かい優しさを含んでいた。

「さっさと言え。おおかた異端の教義の愚かさについて説きにでも来たのだろう?」

ダングルテールの住人は元々アルビオンの高山地方に住む異端の一派である。
シエスタは首を横に振り、そんなことではありませんと弁明する。

「では、何が聞きたいのだ?」
「あの日……何が起こったか」

ああ、そりゃ言いにくいだろうと主人は思った。
アニエスはふむと遠い目で天井を見る。

「確かに、聞きにくい話題ではあるな。少し辛気くさいが、
 聞きたいのなら話してやらんこともない」

是非、とシエスタが答えたのを聞いてから、アニエスはとつとつと話し始めた。


「あれは今から20年前、わたしがまだ9つの時だったか、
 ヴィットーリアと名乗る女性が漂流して来た。
 重症を負っていたが、村のみんなの看護のおかげですぐに良くなった。
 彼女はロマリアの生まれで、敬虔なブリミル教徒だった」

「え」

シエスタの知る異端者像と言えば、ブリミル教を毛嫌いし、
それに関係する物は壊さないと気が済まない連中、そんな危険な思想の集団である。
アニエスは、またかとでも言いたげに肩を落とす。

「あのな。確かにわたしや村の人々はお前達にしてみれば異端だろうとも。
 だが人外の化け物ではないぞ?話をすれば理解しあえる。同じ人間なのだからな。
個人的にロマリアで私腹をこやす連中はさっさと死んで欲しいが。
 話を続けるぞ。彼女が来て1ヶ月程経ったある日、メイジ共が来た。
 子供やけが人は一つの小屋に集められ、大人は皆戦った……当然、負けたがな。
 小屋に火が放たれ、子供は裏口から外へ出た。メイジはそれを魔法で殺していったよ。
 最後に残ったのは、わたしとヴィットーリアさんだった」

ふぅ、と息をついて、再び口を開く。

「ヴィットーリアさんが炎で燃え、わたしだけになった時、彼女からもらった指輪が光ったのだ。
 指輪が砕けて奇跡が起こり、メイジ共は死んだ」

「奇跡……ですか?」

シエスタの問いに、アニエスは頷いた。

「黒きバラをたずさえたお方だった。古き昔、
アルビオンを聖母サーシャの願いで空に浮かばせた精霊、アズラ様が降臨されたのだ」

シエスタは吹き出した。アズラと言えば、自分のギルドの守護神(らしき何か)のノクターナルと、
とても仲の悪い人の生死や死後をつかさどる神様のはず。
それよりなにより、この世界じゃデイドラは人を殺せないとシエスタは聞いていた。
アニエスは吹き出したシエスタを見て、ああ、とため息を吐く。

「わたしは正常だぞ?これは実話だからな。アズラ様はおっしゃられた。
村人はその命と引き替えに子供たちを救おうとしたのだと。
 本来彼のお方は人間のいさかいに手を出したりはしないのだが、
 その様に感銘を受け、わたしの命をお救いになられた。
 疑問に思ったさ。何故わたしだけなのかとな」

アニエスは、自嘲気味に笑った。武器屋の主人はあまりいい顔をせず、それを眺める。

「ただ宿命によってあらゆる命に終わりがあり、
 ただ偶然によって終わりを迎えなかったのがあなたの命なのだと言われたよ。
 そして、生き残ったわたしはたまたまやって来たこの人に助けられたというわけだ」

武器屋の主人はああ、と低い声で呟いた。

「その、あー、アズラさまだかなんだかは良くわからんが、
 ダングルテールには知り合いがいてな。そいつに会いに行った時、
 たまたまこいつを見つけたんだ。しばらくは俺が面倒を見て、
 それから独り立ちして、たまにこうして顔を見せに来る」

そういう仲だ。と主人はぶっきらぼうに言った。

「な、なるほど」

神様相手なら勝てる方がおかしいと言えるのかもしれない。
ノクターナル様も本気を出したら強いのだろうか。
シエスタは、何故小隊が壊滅したのかを知った。

「ところで、何故お前はこんなことを聞いたのだ?」

アニエスのもっともな問いに、シエスタは所々をぼかして話す事にした。
ノクターナルはNGかもしれないし、ギルドの深いところは教えるわけにはいかないからだ。

ついでにこの人の知っている教義も教えてもらいましょう。
『聖母サーシャ』。ミス・ヴァリエールやティファニアさんが言っていたサーシャと何か関係があるかも。
とシエスタは話しながら、アニエスから情報を引き出そうと決めたのだった。


オスマンに天誅を下し、コルベールは自身の研究室に戻った。
イスに座り「愉快なヘビ君2号」をニヤニヤしながら見ていたが、
ふと、昔の事が頭をよぎる。

ダングルテール。かつて何百年も前、アルビオンから移住してきた人々が開いたとされる、
その海に面した北西部の村々は、常に歴代トリステイン王にとって悩みの種であった。

彼らはブリミル教以外の宗教を信じる異端の集まりで、ロマリアから煙たがられているからだが……、
アルビオン人独特のひょうひょうとした気風を色濃く残し、
飲むところをきっちり飲んだため、激しく弾圧されるということもなかった。
つまるところ、彼らは要領よくやっていたのである。

二十年前、自治政府をトリステイン政府に認めさせ、異端教徒の寺院を開いた。
それがためにロマリアの宗教庁ににらまれ、圧力を受けたトリステインの軍により鎮定された、
と当時の文献には残っている。

二十年前のその日、コルベールは部隊を引き連れてダングルテールにやって来た。
一片たりとも忘れられない、ずっと頭に焼き付いて離れない鮮烈な記憶だった。
疫病の拡大を防ぐため、全てを焼き払えと命令されて彼はその通り任務を行った。

「変な連中だ。こいつらは平民だよな?それにしてもガキがいない」

彼の右腕だったメンヌヴィルが不思議がったが、
コルベールは何も言わず、まだ手が付けられていない家々を燃やし始めた。

「どこかの家に隠れているはず、か。さすがは隊長殿だ!」

子供たちは燃える小屋から飛び出してきて、それらは全て燃やされていった。
最後に出てきた女が少女を庇って炎を浴びた時、奇妙な現象が起こった。

何かが割れる音がしたかと思うと、突風が吹き荒れ炎を全てかき消す。
強い風につぶった目をコルベールが開くと、そこには青白い髪の褐色の女が立っていた。
片腕に黒いバラを持つその女性を見て、コルベールは言いしれぬ恐怖を感じた。

人間の姿をしているが、鎧に身を包んだわけでもない華やかな女の姿だが、
コルベールはその場を動けぬ程の恐怖を体に刻み込まれた。
何があっても、この女と戦ってはならぬと今までの経験からの勘が警告し続ける。
だが、それが分からぬ者がいた。

「あぁ?まだいたのか。まぁ、すぐに燃やすんだけどな!」

メンヌヴィルの火炎は景気よく女に向かう。
だが、女に当たる前に炎は消え、何故かメンヌヴィルが燃え上がった。
青い炎はメンヌヴィルを包みこみ、骨すら残さず燃やし尽くす。
周りにいたメイジ達は驚いて距離を空け、魔法を放つ。
だが全てかき消され、小隊のメイジ達はおののいた。
女は何もしていないのに、メイジ達は炎に焦がされて死んでいく。

「た、隊長!こいつはかないっこねぇ、逃げましょう!!」

近くにいた隊員に引きずられるように、コルベールは逃げ出した。
幸い、化け物のような強さの女は後を追って来なかった。
この任務が異端狩りであったことを彼が知るのはずっと後になってからである。

生き残ったコルベールは贖罪の為として部隊から逃げ出し、
オールド・オスマンに雇われた。
そして火を破壊以外の何かに使う為に研究を続けている。

「何故、わたしは生き残ったのだろうか。生き残ってしまったのだろうか」

いっそあの時、炎に燃やされてしまっていればこんな気持ちにならずに済んでいただろうに。
この二十年ふと己を責めてばかりのコルベールは、そんな嫌な気分から逃げるように、
円筒に錬金をかけ始めた。


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