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ゼロの黒魔道士-38


チョコボを育てるときに重要なのは、十分に走れる広い場所があること、なんだって。
「……で、こっちがボコで、あっちがココなの?よく見分けつくね……」
今朝は、シエスタの家でお世話になったお礼に、色々と手伝っているんだ。
「ショコボ番ならあたりまえさっ!」
っていうことで、ボク達はチョコボの世話をしている男の子(シエスタの弟さんなんだって)と、
タルブ平原の真ん中ぐらいまで来たんだ。
若いチョコボは、3日に1度は思いっきり走らせないと、ストレスで羽が抜けちゃうらしい。
あ、ボク達っていうのは、ボクと、デルフと……
「おほっ!け、結構速いな、これは!」
「……ギーシュ、ちゃんと首の辺り持ってないと危ないよ~?」
……チョコボは、馬よりも乗りやすい。羽がある分、座り心地が柔らかいからなんだ。
でも、それは揺れないっていうことじゃなくて、むしろ馬よりも速い分……
「大丈夫さ!こう見えても乗馬はぁぁぁああぁぁぁ!?」
……ちょっとした段差を飛び越えるときは、しっかりつかまってないと、ギーシュみたいに落ちちゃうんだ。
「っだ!?いたたたた――しかし、これはなかなかハマりそうな感覚だなぁ」
「……大丈夫?」
「ふっ、なんのこれしきっ!!」
……ギーシュって、ホント打たれ強いなぁ……見習おうっと。

ゼロの黒魔道士

~第三十八幕~ 襲撃

タルブ平原は今日もいい天気で、お日さまの光がまぶしかった。
おねえちゃん達も来ればよかったのにって、思う。
お土産のワインを選ぶんだって言ってたけど……

コケたギーシュを助け起こしていたら、おっきな影がお日さまの光を遮ったんだ。
「……うわ、おっきい船……」
「ん?お~!あれは我がトリステインの旗艦、メルカトール号じゃないか!」
「軍艦なんだ……え!?じゃまさか……」
まさか、戦争?この間の嫌な感じがまたしてくる。
「ハハハ、違う違う!これも結婚式の式典の一つさ!ほら、もっと遠くに他の船も見えるだろ?」
ギーシュが指さした先は、ラ・ロシェールの岩場のあたり。
よく見ればいくつもの飛空挺が並んで浮かんでいる。
なんとなく、かしこまっているって感じがする。
「……あ、本当だ……あれ、全部軍艦なの?」
「うむ。アルビオンの艦隊もおっつけ来るだろう」
「……え!?アルビオンの!?」
アルビオンって言ったら、この間のウェールズ王子の……今は、ウェールズ王子の敵の人たちがいるところだ。
「不可侵条約を締結しているしね、此度の結婚式にも有力者が来るそうだよ。
 だから、今日は、そのお出迎え式ってわけさ。――最も、軍事力を見せつける意味合いが強そうだが」
「……なんか、ややこしいんだね、結婚式って……」
「仕方ないさ、王族だしね」
今一、なんで敵同士が結婚式に参加したりするっていう理由が分からなかった。
……あ、でも、結婚式に参加できるほど、平和ってことなのかなぁ?
……うーん、頭がグルグルしてきて全然分からないや。
「おふたりさ~ん!ショコボ達が飽きてきてるぜ!とっとと川の方まで行こう!」
見ると、ボコ(ボクが今手綱を握っている方のオスチョコボ)が、退屈そうに「クェ~」って鳴いた。
「……あ、ゴメンゴメン」
今日の予定は、チョコボを河で水浴びさせること。
十分あったかくなってきてるし、そこで捕れる川魚がまたおいしいんだって。
「――しかし、見事な艦隊群だなぁ」
遠くに見える艦隊に、ちょっとだけ不安になりながら、ボクはボコにまたがったんだ。
5羽近くもチョコボがいると、ちゃんと見てないと勝手にあちこち行ったりする。
今日は、暑くなりそうだなぁと、飛空挺の通り過ぎた空を見上げて思ったんだ。


ピコン
ATE ~炎の記憶~

爽やかな早朝――というにはいささか日が高いと、彼女、アニエスは思った。
「ぬぅ?」
目が覚めると見知らぬベッド。とはいえ、横に男がいるわけでもなし、何も困るわけではない。
「ぬぬぬ?――ふむ」
何やら記憶が欠落している気がするが、ともかく、旅先で慣れぬベッドで寝たためだろう。
野宿が多かったこともあるし、久々に綺麗なシーツで寝れたから、このような違和感があるのだ。うむ、そうなのだ。
部屋に汲み置かれていた水で眠い目をこじあける。
うむ、何も問題は無い。爽やかな朝だ。
そう納得したところで、腹が空いたので、愛用の剣を持って彼女は部屋から出ることにした。

「お、剣士様!お早いお目覚めでっ!」
2階の宿部屋を降りれば、酒場を兼ねた宿の食堂だ。
店主の愛想の良い、くだけた会釈が出迎える。
ただ、『早い』というのは若干皮肉めいたものを感じる。はて、粗相でもしただろうか。
記憶があやふやであることから、考えられる可能性を試す。
「――あ~、すまん、店主。昨晩の払いを忘れていたか?」
何しろ、昨晩の記憶が曖昧だ。確か昨晩、この宿に来たときに部屋代は前払いをしたものの、
その後の飲み代を払った記憶が無い。それなりに飲んだという記憶はあるのだが。
「いえいえ、結構でございますよ!“お友達”からたんまり頂いたんで!」
「“友達”、だと?」
はて、おかしな話だ。気楽な1人、傷心旅行。自分を見つめ直す旅に、“友達”とは?
「あら?その様子じゃ覚えてらっしゃらないんで?」
「何の話だ?」
本当に分からない。あるいは昨晩、そこまで酩酊していただろうか。
「ほれ、昨日そこのカウンターで剣士様が1人で飲んでいたら男共が寄ってきて――ほれ、剣士様美人だから――」
ゆっくりと思いだす。確かに昨晩は1人で飲んでいた。うむ、確か最初はワインだった。
そうしたら、下品な男共が確かに言い寄ってきたんだ。うむ、揃いも揃ってアホ面だった。あぁ確かにそうだった。
『一緒に飲まないか』、という内容をどうしたらあぁも下心たっぷりに言えるのだと感心したのだ。
はて、そこからどうなったのだ。彼女の記憶は、少し進むとまた袋小路に陥る。
「――で、剣士様が“わたしに酒で勝てるとでも?”っておっしゃって――」
「な!?」
記憶の海を必死で探る。うむ、言いよられた後、ワインの後だ。
蒸留酒を飲んだ記憶がある。そうだ、コニャック、いやウィスキー、いやいやシェリーだったか。
ともかく、マグの縁ひたひたまで入っていたものを飲んだ。うむ、そこまではなんとか記憶がある。
と、いうことは、その蒸留酒が原因か。
飲みすぎるとはなんたる不覚。剣士として恥ずべき行為に、彼女は猛省する。
いや待て。下劣な男共と飲み勝負をしたというのか、このわたしが。
それこそ剣士たる者の行為としては下の下。何をやったと、いや何もされているまいな。
彼女の不安が、思考を満たす。
「――いやぁ、この商売長いですけどね、27人抜きってのは初めて見ましたわ!」
「に、にじゅうななにん!?」
多すぎる。そこまで飲んだというのか。いやおかしい。
あぁでも、そういえば3人目ぐらいまでは顔が浮かんでくるような。
「そいつらは早朝に叩きだしましたよ。そこに転がってちゃ商売の邪魔ですしね」
「あー、えー、あー……」
どこからだ、どこから記憶が無いのだ。むしろ何を飲んでいるのだ、飲み尽くそうとしているのだ。
昨夜の自分を頭の中で何度もののしる。あぁ、全く、剣士らしからぬ行為を粛清するための旅路で、何たる不覚を。
彼女の頭痛は、二日酔い以外の理由からもたらされる物だった。
「朝食の代金もいただきましたんでね、お好きなもんおっしゃってください。すぐ作りますんで」
「――とりあえず、飲み物を」
とりあえず、食事をしよう。うむ、その後考えるべきだ。彼女は、向きあう問題を、過去から現在のものへと移した。
「へい、当店自慢のおいしい水にしますかい?それとも、迎え酒で?」
「――できれば、ミルクを」
朝ならば、栄養価の高い物を摂取すべきだ。ましてや、迎え酒など、そこまで堕落してはいない。
しかし迎え酒を勧められるほど昨日は飲んでしまったのか、何たることだ。
問題点を切り替えたはずが、再び昨日の失態を反芻し頭を抱える彼女であった。
「はいはい~!」
 ・
 ・
 ・
「ふむ、うまかった――」
宿の食事は完璧だった。
再建中の『女神の杵亭』ほど高級では無いし、荒くれ共のたまり場であるような店ほどボリュームもない。
だが、丁度いい。この宿屋の朝食は、まさに朝食らしい朝食だった。
端がカリッカリになるまで炙られたベーコンの塩味が、目玉焼きの半熟の黄身と合わさる。
わざわざ暖めなおしてくれたらしいライ麦のパンとミルクの相性は長年連れ添った夫婦以上と言えよう。
単純ではあるが、隅々まで配られた心づかい、まさに感服すべきであると、彼女は思った。
朝食の代金は受け取っていると言ったが、これならば自分からチップを弾んでやるべきだろうか。
「気にいっていただけたようで。デザートにフルーツは?」
「あぁ、いいな。いただこう――そういえば店主、何やら外が騒がしいが?」
食べながら、気にはなっていた。人々のざわめき、窓から見れば、通りには人だかり。
屋根に昇る男共の姿も見える。そして、時折通り過ぎる巨大な影と、それに合わせた「おぉ~」という歓声――
「はいはい、あれはですね、新生アルビオン政府の客がほれ、例の結婚式に参加なさるそうで」
そうか。つまりは貴族のお偉い様のご訪問というわけか。そのために船を何隻も出しているというわけか。
「――大仰なことだ」
平民から徴収した税金をこうした力の誇示に使用することに、アニエスは若干の怒りを感じた。
やはり、貴族は貴族なのだろうか。
先日出会った貴族達――とはいっても、嘴黄色いひよっこもいいところだったが――はマシだと思ったのだが。
「へへっ、確かに!貴族様のやりなさることは理解しかねますわ!」

果物を待っていると、やおら巨大な雷鳴が、外から響く。
「っ!?何の音だ!?」
反応してしまうのは戦士たる所以か、剣を急ぎつかむ。
臭う。なんだ、このチリチリと鼻の奥にこびりつくような臭いは。
「祝砲でございましょ?やたら派手にぶちかましますもんで――」
「祝砲、だと?いや、それにしては――」
おかしい。空砲音にしては、重い。空砲の臭いにしては、火薬臭い。
そして何より、なるたけ戦場に近い所に居続けた感覚が告げる。

空気が――おかしい。

感覚に従い、店外まで一気に駆ける。違和感の正体は、蜥蜴の舌のような鮮やかな赤色で空に現れていた。
「ひ!?ありゃ燃えてんのかっ!?こりゃおったまげた!?なんだって――」
落ちる、船。炎に包まれてだ。逃げ惑う物見の人々。
通りは蜘蛛の子を散らす様相、屋根の上からは慌てて飛び降りる様が見て取れる。
彼女の、アニエスの目は、落ちる船に釘付けになっていた。
焦げる臭い、朱にゆらめく巨大な炎。彼女の忌まわしい記憶が、幼き日の炎の記憶が、呼び起される。
全てが炎に包まれる、慣れ親しんだ家も、よく遊んだ広場も、空も、地も、何もかもが燃えている。
涙はすぐ乾き、母を求める声は煙で潰され、父の腕は炭となりカラカラと崩れ――

「――店主!ただちに町民を避難させろっ!」
一時、その記憶を封じ込める。今の彼女は、剣士アニエスだ。力の無い幼子では、もう、ない。
「へ、へい!?」
「街道沿いはダメだ、川沿いに、今すぐだっ!」
「いやちょちょちょ、ちょっとお待ちくださいよ剣士様!?一体全体なんだってんで――」
「――戦だ!」
幼子のころは知らなかった空気が、辺りを漂い始めている。間違いなく、これは戦場のものだ。

「い、戦って、そんな、あんた冗談は――」
言っているそばで、上空から、轟音とともに巨大な鉄塊が飛来する。
破裂音とともに巨大な船が煙をあげる。掲げる旗からそれがトリステイン船籍であることが分かる。
息をする間に、上空ではいくつもの轟音が鳴り響きだす。
燃え盛る船が地に落ちきるまでに、新たな船が今にも沈みそうだ。
呆れるほどに、これは、戦場だ。
「こ、こりゃおったまげ!?」
「いいか、直ちに町中に避難を呼びかけるんだ!」
「わ、分かりましたっ、す、すぐに互助会で連携して――って、剣士様はいずこへっ!?」
「――胸騒ぎがする」
お偉方が、上空で突如の艦隊戦、それをラ・ロシェールの民に見せつけた。
貴族共が、互いを潰しあうだけで満足するわけがない。そんな甘い糞共がいるものか。
そして、ラ・ロシェールを仮に落すならば、船だけで足りるわけがない。
「一番近い町への入口は!?」
「へ、へい、それならば出て右へ行ったら大通で、そこからまっすぐ……」
「すまんっ!頼むぞっ!」

そこにいるのは炎で乾いた涙を流した幼子ではない。
そこにいるのは内に炎を宿した剣士である。
炎の記憶が彼女に与えたもの、
それは、二度と、二度と何かを失い泣きたくないという決意。
その決意が、彼女を走らせた。
戦場へ。
炎の臭いが燻ぶる、忌々しき、戦場へ。




「こりゃおでれーた――」
「え、あ、あれって燃えてるよね!?」
「――あ、あぁ……ど、どういうことだ?メルカトール号が!?」
「しょ、ショコ!デビー!落ちつけっ!!」
川のほとりで、ボク達はそれを見ていた。
まず異変に気づいたのは、チョコボ達。
それに続いて、周りの林から小鳥たちが一斉に逃げ出した。
ボク達が気づいたのは、やや遅れておっきな雷みたいな音がしたときだった。
炎をあげて落ちる船。小型だけど、その炎の熱さがこっちまできそうなぐらい真っ赤に燃えていた。
その後、続けざまに、耳元で太鼓を乱打するような音がして、
トリステインで一番おっきな船らしいメルカトール号から煙があがる。
そんなに遠くない空で起こってる事態に、頭がついていくのには、少し時間が必要だったんだ。

そして、頭が起こっていることに追いついたとき、嫌な予感が、本当に胸とお腹の奥底から嫌な予感が、こみあげてきたんだ。
「……ねぇ、ギーシュ、この間のモットおじさんの話、覚えてる?」
「っ、その話はもう――」
ギーシュは、何を勘違いしたのか、別な嫌そうな顔をする。
「そっちじゃなくて!戦争がまだ起きない理由の話!」
「――あ、あぁ。確か――大義名分と、軍資金問題だっけ?それがどう――まさか!?」
ギーシュも、気づいたみたいだ。
ボクは、詳しく知らないけど、先に落ちたのはトリステインの船じゃないっていうのは、
飛んできた順番でなんとなく分かる。
その前の、大きな音、儀礼用の祝砲ってギーシュは言ってたけど、その順番だけを見ると、
まるでトリステインの祝砲が、アルビオンの船を落としたように見える。
「……あれ、大義名分になる、よね?」
戦争を、起こしてしまうのに十分すぎる理由。誰かが自分たちを傷つけた。
単純な、すごく単純な理由。……だからって、戦争が起こしていいわけは無いけど。
「ま、まてまてまて!!ぐ、軍資金の問題があるだろ!?まさか短期決戦を狙う気か!?」
もちろん、そっちの問題もある。でも、頭の隅っこで、ずっとひっかかっていたことが、今つながった。
「……この間の、ラグドリアン湖で……」
「――?――っ!?アンドバリの指輪か!?」
水の精霊が失って、今はアルビオンの自称・皇帝っていう人が持っているらしいアンドバリの指輪。
死んだ人を無理やり従わせて、動かす、人の命をバカにしたようなマジックアイテム。
それを使って、兵隊さんを作れば……嫌な考えだけが、頭に浮かぶ。
「……死んだ人って、お給料も食糧も、いらない、よね……?」
「と、ということは――」
目の前の光景と、考えていることが一本の線でつながる。
メルカトール号が黒い煙をあげて、林の中に沈んでいくのが見える。

ボクは、ボク達は、この事態を前に、どうすればいいかって、考える余裕は無かった。
「……ギーシュ!」
「――ビビ君!」
たった、それだけの言葉。ボクもギーシュも、考えていることは同じだって思った。
ボクはボコに、ギーシュはココに、それぞれまたがって、手綱をしっかりと握りしめる。
「あ、お、おい、あんた達!?」
「ゴメンねっ!!チョコボは後で返すから!!」
ボコのケヅメが、川の水をパシャンッと蹴りだす軽い音がして、
ボク達は風よりも速く、駆け出したんだ。

昨日見た夕日と、昨日出会った人たち、そしてボクが願ったことのために。
頭に浮かぶのは、アレクサンドリア、ブルメシア、リンドブルムの姿。
ボクが、ボク達が、事前に何かができれば……そう思ったことは何回かある。
何もできなかったかもしれない。何もできないかもしれない。
それでも、それでも……
「……戦争なんて、起こさせやしないっ!!」
何もやらずに悲しむなんて、そんなことはできやしないから。


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