あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-27


 太陽がまだ昇っていない朝方。月も雲に隠れ暗闇が広がっていた。
そんな中、学院全体に漂う不穏な空気に鋭敏に反応したのは、僅かに3人だけであった。
アーカードはムクッと起き上がり首をコキコキと鳴らすと、横で寝息を立てているルイズを起こした。
タバサはすぐに着替えて杖を取ると、階下のキュルケの元へと向かった。
アニエスは剣を抜き、扉の前で奇襲をかけるべく静かに息を殺した。


「一体なんなの?」
ルイズはわけもわからず促され、手早く着替えながらアーカードに問い掛ける。

「感じんか?」
アーカードに言われ、ルイズは疑問符を浮かべながら神経を集中させる。
なんとなくだが・・・ピリピリしているような気がした。

「なんだか変な緊張感がある・・・・・・のかな?」
「んむ、それが分かれば充分だ」
その瞬間、怒声と叫び声、さらに大きな音が聞こえてくる。ルイズは一拍置いてからハッとして、着替えるスピードを上げた。

「さて、一体何者なのかの」
アーカードは窓際へと立ち、学院全体を見渡す。襲撃者は既に各塔の制圧をしているようで、人影は見えなかった。


 ルイズが着替え終わりローブを羽織ったその瞬間、ドタドタと足音がし、扉が開け放たれた。
アーカードはゆったりと振り向き、ルイズは反射的に跳躍し、ベッドの上に置いてあったサーベルを取りつつ反対側へと着地した。

 恫喝の言葉でも言おうとしたのだろうか。何かを言い掛けようとした襲撃者は、隠れたルイズの姿を見て即座に杖を向ける。
その上でもう一人の少女にも注意を払っている事から、相応の手練れであることが窺えた。

 ――――――襲撃者に待っていたのはチョップの洗礼であった。
鼻血を吹き出し、次いで蹴りを入れられて水平に飛ばされ、部屋の外まで転がり倒れ伏した。
手刀とヤクザキックを入れたのは、アーカードではなく、当然ルイズでもない。
無数の目と手足が生えた――――棺桶であった。

「な・・・!!何それーーーーーッ!!」
ルイズは心底わけがわからない展開に声をあげる。
アーカードの所為で色々と破天荒なモノを見てきたルイズだったが、さすがにこればっかりは想定の範囲外であった。

 襲撃者の奇襲を上回る驚愕に、頭がついていかない。
暫くして、『ソウイウモノ』なんだと理解した時、アーカードと棺は揃って煙草を吹かしていた。
ルイズは落ち着いたところで、大きく嘆息をつき口を開く。
「・・・・・・一体何が起こってるの?」


「とりあえず、あやつに聞いてみるとしよう」
そう言うとアーカードは、失神している襲撃者のところまで歩いていく。
胸倉を掴むと、いきなり平手を浴びせた。
「おきろーおきろー」
極限まで手加減された往復ビンタは、少しずつ力を増して頬を叩き続ける。

 ルイズは後ろからその様子を覗き込み、これじゃ余計眠ってしまうんじゃないかと心の中で思う。
すると、走る音が聞こえてきた。その方向に目をやると、走ってくる女生徒と、それを追い掛けるメイジが見える。

 敵メイジはアーカードとルイズ、そして倒れた仲間を見やる。すぐさまただならぬ状況と判断し、呪文を唱えた。
「ふせろ」
アーカードの言葉に、ルイズは即応し身を屈める。
自分たちの脇を走り抜けようとする女生徒を、アーカードは足を突っかけ転ばせ、自分は仁王立ちしたまま風の魔法をその身に受けた。


 ルイズは目を鋭く襲撃者を睨み付けた。アーカードは魔法を喰らったので、即座に動けないだろう。
敵メイジが二発目を撃つ前に、覚悟を決めた。床を蹴って、敵との間合いを詰める。
左手に持った鞘から、居合いの要領でサーベルを抜き放ち、相手の手を杖ごと切り裂いた。

 敵メイジは一瞬驚いた表情を見せたが、怯むことなく残った左手でナイフを取り出し襲い掛かった。
迫りくる危険にルイズは、無意識に返す刀で敵の頭に白刃を走らせた。

 三寸切り込めば人は死ぬ。
襲撃者も例に漏れず、その場に斃れた。

「あっ・・・・・・」
ルイズの口から息が漏れる。
緊張が解けて、早まった動悸が、伝う汗が、理解し難い昂揚感が、ルイズを支配していた。

「はあ・・・はッ・・はッ・・・・・・はあ・・・はッ・・はあ・・・・・・」
うつ伏せに倒れる襲撃者から、血が少しずつ広がる。
刃を鞘に戻すのも忘れ、ルイズはその光景を見つめ続けた。


「死んだの」
ルイズは一気に現実に引き戻される。
風の刃に三寸以上切られても死なない、人に非ざる使い魔の言葉。

「識域下できちんと反応し、対処できたようだな。んむ、日々の鍛錬がちゃんと血肉となっているようだ」
剣先に目を向ける。既に乾きつつある血の赤色が、鈍い輝きを放っていた。

「・・・・・・どうした?初めて人を殺した事に、ナーバスになっているのか?」
ルイズは何も言わず目を瞑り、血を拭き落とさず剣をそのまま鞘へとしまう。
アーカードの方へと振り向くと、頭を抱えて震えている女生徒が視界に入った。

 アーカードがその身で受けた魔法の余波が、当たらないようにと転ばされた女生徒は、一向に立ち直ろうとはしない。
「仕掛けなければ主か、そこの女が危なかった」
殺らなければ、殺られていた。そんなことは百も承知だ。

「・・・・・・わかってるわ。でも、あまり気分のいいものじゃない」

「う・・・ん・・・・・・」
アーカードの後ろで呻き声が聞こえる。
気絶していた襲撃者が目を覚ましたところであった。

「なん・・・・・・ぐっ・・がッ・・・」
アーカードはすぐに男の首を掴み、顔を覗き込む。
「知っていることを全て話せ」

 男は目だけ動かして状況を確認する。倒れ死んでいるだろう仲間が目に入った。
「ッッ!!なっ・・・なんなんだ、クソ!・・ッ・・・言うわけねェだろうが」
アーカードは掴んだ手に、少しずつ力を込める。
「おまえに拒否権はない」
「うぐ・・・・・・お・・俺が言う義務はないね・・・」
アーカードに物怖じせず、男は悪態をつくように笑う。

「ふむ・・・・・・既に覚悟を決めている目だな、よく訓練されている。尤も、私が直々に拷問すれば、その覚悟は後悔へと変わるだろうがの。
 お前は全ての情報を吐き出した上で、殺してくれと懇願する。・・・・・・だが生憎と、そこまで悠長にしている時間はない。道具を準備するのも面倒だ」

 そう言うとアーカードは、グリッと頭を上に向かせ首を抑え付ける。
「洗いざらいしゃべってもらおう、おまえの命に」
そう言うと大きく口を開け、アーカードは首筋へとむしゃぶりつく。
「ご・・・ぼお゛・・が・・・・・・ご・・・お゛・・・・・・ごおがばッがッ・・ごッ・・・おあ゛」

 聞いたことのないような鈍い音、その光景にルイズは目を背ける。
いくらアーカードが化物・・・・・・吸血鬼とはいえ、見た目は人間と変わらない。
傍から見れば、人間が人間を咀嚼するのと変わりはないのだ。
その行為を正視することは、ルイズには憚られた。


 男が絶命したところで、アーカードは咀嚼するのを中断した。
「敵は・・・・・・アルビオン側が雇った、全員がメイジの傭兵部隊。数は18人だな」
そう言うと、アーカードから伸びた影が襲撃者二人を飲み込み始める。
骨が軋み折れ、肉が散り潰される音と共に、血の跡すら残さず消えてしまった。

「これで残りは16人」
薄っすらと笑みを浮かべてアーカードは立ち上がる。

「なんでそんなのが侵入してるのよ!?」
「フリゲート艦でここまできたようだ。・・・・・・見知った顔が手引きしていた」
「見知った顔?」
「土くれだ」
「・・・・・・フーケが?」
「ここら一帯の地理に詳しいからだろうな。さらに一人風のメイジがいるようだが、もう既に艦は撤退してるようだ」

 ルイズは少し考える。20人弱というと、分隊どころかちょっと少ない小隊規模。
それも全員がメイジと言うと、これはもう戦だ。しかも寝入っている時間帯に奇襲を掛けられた。
戦争慣れしてない上に、秩序が保たれていたこの学院の敷地で、プロ相手に素人の生徒達じゃどうしようもない。


「・・・・・・目的は?」
「学院は数多くの貴族の子弟がいる。男どもは戦争に行ったとて、女生徒だけでもまだまだ数は多い。
 王都からも適度な距離で、ここを政治的カードとして抑えておくのは、非常に効果的ということだ」

「なるほどね。・・・・・・人質か、厄介ね」
ルイズは心底困った顔を浮かべる。それはアーカードも同様だった。
「そうだな、人質となると厄介極まりないな」

 ただの戦闘であるならば、大して危惧することはない。
なにせこっちには、命令すれば喜び勇んであっという間に敵を殲滅してくれる、無敵の使い魔がいる。
だが最悪建造物の破壊等はしょうがないとしても、人命の被害だけは無視することはできない。

「銃士隊と先生達はどうしてるかしら」
「既に殺されているやもしれんな、生かしておく理由もあまりない」

 ルイズは黙り込む。
見知った者が死ぬかもしれないという状況。
突然襲い掛かってきた非日常。だがそれでも打開するしか選択肢はない。

「とりあえず、タバサと合流しよう」
「・・・・・・?なんでタバサ?」

 ルイズの問いに、アーカードは「愚問だな」と言った風に答える。
「まず間違いなく・・・この危機的状況に気付き、いち早く退避しているだろうからな。強い駒は多い方がいい」




「ジャンとルードウィヒ、遅いですね」
襲撃者の一人、ジェルマンが言った。
「二人は上の階だったな」

 『白炎』のメンヌヴィルは、怪訝な顔をして考える。
周りには既に60人強の女生徒達が、ロープに縛られた状況にあった。
「反撃にあってやられてたり・・・・・・なんて」
ジェルマンが冗談交じりに言った。

 女生徒達はまるで抵抗の素振りを見せず、自分達はあっという間に制圧できた。
仮に応戦してくる者がいたとして、精々一人や二人だろう。
それなのに二人が揃ってやられて戻ってこないというのは考えにくいが・・・・・・。

「・・・・・・ん~?」
メンヌヴィルは何かに気付く。
「今いる奴らだけ連れて食堂に行くぞ」
「へ・・・・・・?ジャンとルードウィヒは待たないんで??」

 メンヌヴィルは寮塔を見上げる。
「ジェルマン。戦場で生き残る為に、大事な事はなんだ?」
「はぁ・・・、自分の力量を把握すること、無謀な夢をみないこと、取り乱さず平静を保つこと――――列挙したらキリがありませんね」

 ジェルマンの言葉を首を振って否定し、メンヌヴィルは静かに答えた。
「幾多の死線を潜り抜ける歴戦の強者に共通するものはな・・・、類稀なる"危機感知能力"だ。
 根拠がなくても、肌で危険を感じ取ること。言葉では形容できない第六感。それが何よりも重要なんだ」

「はぁ・・・・・・?」
ジェルマンは気の抜けた声で返した。
「わかるんだよ、ヤバいと。俺の中の何かが警鐘を鳴らしているのさ」
「考えにくいですが・・・・・・。それじゃあ、どうするんですか?多分予定の半分くらいしかいないと思いますよ。
 残った連中も素人とはいえ、腐ってもメイジです。例え烏合の衆でも徒党を組まれたら、やはり何かと面倒なのでは?」

 メンヌヴィルは振り向き、恐怖で震えている女生徒達を眺める。
「問題ないだろう。これだけ人質がいる以上、余計な手出しはできまい。反抗するなら何人か見せしめに殺してやればいい。
 しかし・・・・・・退屈な仕事だと思っていたが、なかなかどうして楽しめそうだ・・・・・・ふふっ・・ははっはははッはははははははは!」

 メンヌヴィルは狂喜じみた笑い声をあげた。




 襲撃者の難を逃れて残った生徒達は一箇所に避難させ、戦う気概のある者達は一所に集まり様子を窺っていた。

「食堂で篭城か・・・・・・ますます厄介だな。兵糧にも事欠くことはないし、広すぎず狭すぎず・・・魔法を使うにも都合がいい」
胡坐をかいたアーカードが、緊張感のない声で言う。
「どうするの?5分経ったら人質を1分ごとに一人殺すって言ってるし・・・・・・」
差し迫った状況に、ルイズが意見を求める。
「とりあえずは、女王陛下を呼ぶと伝えればよい」
「何を馬鹿なッ!!」
アーカードが淡々と発したその言葉に、思わずアニエスが叫ぶ。

「本当に呼ぶわけじゃ・・・・・・ない。時間を稼ぐ」
真意を読んだタバサが、言を付け足した。
「そうねぇ、なんにせよ時間が欲しいわ。ここは嘘でも呼ぶって伝えないと、誰かが犠牲になっちゃうし」
キュルケがさらにフォローする。アニエスは渋々納得した。

「まっ・・・・・・そういうことだ、とりあえず私は人質の位置を確認してこよう」
アーカードはスクと立ち上がり、音を殺して歩いていく。
時に情報は何よりも大事。相手の状況の把握の為に、壁抜けで偵察をしてくるのであった。


 アーカードの姿が見えなくなったところで、それまで黙って何かを考えていたコルベールが口を開く。 
「私は・・・・・・、女王陛下を呼ぶべきだと思う。彼らはプロだ、連中は殺す事など厭わない。生徒達が傷つけられることは決して――――」
「貴様はアルビオンの狗に屈しろと言うのかッ!?陛下の御身を危険に晒すなどッッ!!?」

「・・・・・・少し落ち着いて、アニエス。今のこの状況に焦るのもわかるし、責任感を感じてるのもわかるわ。
 でもいい策が思いつかない時は、姫さまや枢機卿に意見を求めるのも一つの手よ。正直言って、今の状況は私たちの手に余リ過ぎる。
 強硬手段に出て誰かが死んだら、それこそ深刻な・・・・・・いえ・・大問題になりかねない。自分の子供を見殺してまで、戦をしようとする親がいる?
 王家への忠誠にも大きく関わることよ。姫さまがどのような決断をなさるかはわからないけど、少なくとも私たちが勝手な判断をして動くことじゃない」

 感情が高まっているアニエスを嗜めるように、ルイズが言う。
「くっ・・・・・・、確かにラ・ヴァリエール殿の言うことも尤もだ」
目を閉じて二度三度深呼吸し、アニエスは心を落ち着かせる。
感情的になっていては、妙案が思い浮かぶものも浮かばない。冷静に情報整理することが肝要だ。


 ルイズは考える。
いくら人質の位置と敵の配置がわかっても、人質を傷つけることなく全員を倒すなんて不可能に近い。
唯一、方法があるとすれば――――――自分の『虚無』だ。
(そう、エクスプロージョンで範囲指定すれば・・・・・・)
タルブの決戦で、人を傷つけることなく風石だけを消し飛ばしたようにすればいい。だが―――――。
(特定の人物だけを殺すなんて・・・・・・)

 ――――――自信がない。人質以外の傭兵達だけを消し飛ばすなんて。
訓練していれば別だ。だが魔法は全く以って練習していないのだ。きちんと詠唱して放つなどタルブ以来。
それで万が一人質に何かあったら、当然取り返しなどつかない。魔力がどの程度溜まっているかも定かではない。
後のアルビオン侵攻作戦にあたって、『虚無』も戦略のカードとして組み込まれている。
それを勝手に切ってしまえば、成功したところで・・・・・・以後の任務に支障をきたす可能性も有る。



「いい作戦があるわ」
既に内容を知っているタバサ以外の視線がキュルケに集まる。
「聞こう」
「単に不意を突こうにも、向こうは確実に警戒している。なにより人質が危険よね?」
「そうね、こっちは誰一人として人質を傷つけられちゃいけない。でも向こうは人質が一人になるまで、他を犠牲にすることができる」

 キュルケは自信を孕んだ笑みを浮かべ、何かを取り出した。
「なにこれ、紙・・・?」
「これにはね、黄燐が入ってるわ。紙風船にして飛ばしてあとは発火させるだけ。爆発して光と音と煙を放つ。
 まぁ人質には、これくらい我慢してもらわないとね。それで、光と音で奴さんらは怯んで、煙が食堂の視界を閉ざす。
 正常な視力を失い、煙も相まってまともな視界を確保する事は不可能。同士討ちの危険性を考えれば、おいそれと魔法も使えなくなる筈よ。
 まっ、それ以前に冷静な判断力を取り戻す前に制圧するつもりだけど。私達は煙の所為でちょっと見えづらいって程度だしね」

「悪くない、いや・・・面白い」
「う~ん・・・・・・」
「危険だ!相手はプロなのだ、その手の小細工には慣れている」
アニエス、ルイズ、コルベールと、三者三様のリアクションが返ってくる。

「逃げ腰で、自分は碌な提案もせず、ただ否定的な意見しか言わない人は少し黙っていてくださる?」
キュルケが軽蔑の眼差しで、教師と生徒という立場を無視して、言い放った。
「その通りだ、こちらの士気まで下がる。やる気がないなら他の生徒達と共にいればよかろう」

「いや、私は・・・・・・」
コルベールが何かを言い掛けたところで、ルイズが口を開く。
「とりあえず、アーカードを待ちましょう。あれで奇襲の計略は誰よりも詳しいし、荒事にも慣れてるわ」
「賛成」
タバサもそれに同意し、アーカードを待つことになった。






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