あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの君

 夜。トリステイン魔法学院の女子寮の一室にルイズはベッドの縁に腰掛けていた。
 窓は開け放たれ、柔らかい月光が差し込んでいる。
 心地よい夜風が頬を撫で、風にそよぐ草木のざわめきが耳に心地よい。
 ルイズはおもむろに立ち上がり、何時までも自分を無視する男に指を突き付けて、声高らかに宣言した。

「私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。貴方のご主人様よ!」
「フウッ、それは、何度も、聞いた。フウッ」
「じゃあ、キチンと返事しなさいよ!」

 漸く返事をした使い魔にルイズは激昂する。
 そんなルイズの前で影が揺らめいている。部屋を照らすランプは魔法の道具であり、光が揺らぐことはあり得ない。
 影が揺らいでいる原因は、ルイズを怒らせた使い魔が規則正しく立ったりしゃがんだりを繰り返しているからであった。
 男は白を基調とした修行衣のようなものに身を包み、腰には短刀を刷いている。顔立ちは整っており、引き締まった腕には魔術的な刺青が彫られているのが見える。
 奇妙なことにこの男は、召喚されてから一時も休まずに、何らかの筋力トレーニングを行っているのであった。

「それで、どこまで話したっけ?」
「ここが、フウッ、未開の、リージョンであり、私が君の、フウッ、使い魔に、なることを、フウッ、承諾した、ところまでだ。
 フウッ、外界と、接するのも、悪くない。それにまた、あの時の様な、フウッ、昂ぶりが、得られる、フウッ、かも知れん。」
「そう。でもアンタなんでずっと筋トレしてんのよ。なんか意味あんの?」
「フッ、酔狂な。フウッ、よかろう、教えよう。私は、フウッ、努力が、好きなのだ。
 フウッ、時が、流れている、以上、フウッ、努力、努力するのだ。
 フウッ、一瞬、たりとも、フウッ、無駄には、しないのだ」

 そう言って、次は腕立て伏せを始める。
 額には汗が滲んでいるが、気にした様子もない。
 その様子にルイズは頭痛を覚えるが、深く追求することはせず話を続ける。

「こほん。そ、それで、使い魔としての心得なんだけどいい?
 使い魔の役割として、主人と五感を共有する事が出来るんだけど……
 無理な様ね。何も見えないもん」

 時の君は、筋トレをこなしながらも一応は聞いているようで、無言で先を促す仕草をする。
 その態度にルイズは怒りを覚えたが、熱くなってはいけないと自らに言い聞かせる。
 相手のペースに乗って舐められては成らない、私が上でコイツが下だという事を判らせなくては為らせねば。
 ルイズは、怒りを精神力で押さえ付けて話を続ける。

「げ、原因の究明は後でする事にして、次にいくわよ。
 主人の望むもの、希少な鉱石や秘薬の材料を集めてくる事だけど、出来る?」
「この、リージョンの、フウッ、地理や植生は、知らないので、フウッ、無理だ」
「えっと、じゃあこれが一番大切な事なんだけど……。
 使い魔は主人を守る存在なのよ。 その能力で、外敵から主人を守るのが一番の役割なの!
 あんた、トレーニングばっかりやってるんだったらそれなりに強いんでしょう?
 何が出来るの? 言ってみて」

 その問いに、時の君はトレーニングを中断する。

「並のモンスターなら敵ではない。
 あと、野球も得意だ。草野球の助っ人も出来るぞ」

 そう言って、どこからか取り出した1メイル程の細身の棍棒で、素振りを始める。
 狭くはない室内だが、棍棒を振り回して大丈夫なわけがない。
 素振りをする度に調度品を掠り、小さな傷をつけている。
 程無くして素振りを終える。そして、どうだと言わんばかりにルイズを見つめている。
 ルイズは何かに耐えるように、小刻みに震えながら質問を発する。

「そ、その野球って言うのは何なの?」
「野球を知らないのか? スポーツの一種だ、今度教えてやろう。きっと気に入ると思う」

 何の頓着もない様子に、ルイズの疲労はピークに達した。つまり、どうでも良くなった。
 良くない事だとは思うが、問題を明日に持ち越すことに決め、ルイズはフラフラとした様子で立ち上がる。

「い、色んな事があり過ぎて、眠くなっちゃったわね……」

 そう言ってルイズは……


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         【タイムリープ】

          時を吹っ飛ばす。

「『タイムリープ』この術は、相手を時間の流れから切り離し……
 そして対象は、この時間の中で動いた足跡を覚えていないッ!」

「空の雲は、ちぎれ飛んだ事に気づかず!……」
「消えた炎は、消えた瞬間を炎自身さえ認識しない!」

「結果だけだ!! この世には結果だけが残る!!」

「未来という目の前に……ポッカリ開いた落とし穴を見つけ、それに落ちる事がなければ、人生は決して沈む事がない。絶頂のままでいられる、私は……!
 この世界で、絶頂を極めるのはこの私だー―っ!」


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「で、犯行の現場を見ていたのは誰かね?」
「この3人です」

 高価な調度品で飾られた室内に声が響く。
 先に尋ねた声の主は、この学院で院長を務めるオールド・オスマンであり、それに答えたのは頭髪が寂しい中年男性教師コルベールである。
 時はまだ早朝であり、外の景色は白んでいる。

「えっ、えっ??」

 我等のご主人様ことルイズ・(中略)ールはキョロキョロ周りを見回す。
 その様子に、隣に居た褐色の肌と癖のある赤毛を持つ、ロングヘアーの少女‐キュルケ‐は呆れる。
 もう一人の、ルイズより更に小柄で短い青髪の眼鏡少女‐タバサ‐には、表情の変化は見られない。
 時の君は、廊下でスクワットをしているので部屋には居ない。
 そんなルイズの様子は無視して、コルベールは説明するように促す。

「なにきょどってんのよヴァリエール? 早く説明しなさい」

 それを聞いてキュルケは、なぜか呆然としているルイズに、説明するようせっつかせる。
 ルイズは、「何で私が……」と小声でブツブツ言っていたが、昨夜の出来事をゆっくりと思い出すに連れ、落ち着いてきたようだった。
 落ち着いて昨日の夜の出来事を反芻しながら、説明を始める。

 要約すると、巨大な30メイルはあるゴーレムが突然現れ宝物庫の壁を破壊した。
 黒いローブを着たメイジが宝物庫に侵入し、『黄金の杖』を奪い逃走。
 ルイズら3人は、あとを追いかけたが見失ってしまった。と、いう事だった。

 その証言と現場に残された犯行声明より、ホシは『土くれ』のフーケと特定されたが、話し合いはそれ以上は進まず、教師らの責任の擦り合いが始まった。
 そんな状況も、オールド・オスマンの秘書ロングビルのもたらした情報により、進展することとなる。

「フーケは学院から徒歩で半日、馬で4時間かかる、人が立ち入らないような森の廃屋に潜んでいます」


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        【カオスストリーム】

 やあ(´・ω・`)
 ようこそ、時間妖魔のリージョンへ。
 この術酒はサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。

 うん、「また」なんだ。済まない。
 仏の顔も三度までって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

 でも、このキーワードを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
 「ひらめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
 殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
 そう思って、この術を作ったんだ。

 じゃあ、注文を聞こうか。


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「とうとう、この時が来たのね……」

 ルイズは、レコン・キスタとの決戦を前に、今までの出来事に思いを馳せる。

 初めは小さな切っ掛けだった。
 土くれのフーケの捜索に名乗りを上げたのが始まりだった。いや、そもそもの始まりは『黄金の杖』が、この世界に持ち込まれたときからかも知れない。
 そして、時の君が『黄金の杖』の正体を明かさなければ、こんな未来には為らなかっただろう。そうルイズは確信している。
 ルイズは空を見上げる。空は蒼く透き通り、雲はゆっくりと西へ流れている、降り注ぐ陽光に緑は萌えて、風が土と太陽の匂いを運んでいる。
 その光景は、此れから起こる国の存亡を掛けた戦いなど、忘れそうなほどに美しい。
 この戦いは、どちらが勝ったとしても。新たな歴史の一節として大きく名を残す事だろう。
 ルイズは思う。この日の為に出来得る事は総てした。仲間たちもきっとそう思っている筈だ。
 それを無にしない為にも、この戦いは何が何でも負ける事など出来はしない。
 ルイズは胸元で、強く握り拳を固める。

「なー、なー、嬢ちゃん。そんなに力んでちゃ、出来ることも出来ないぜ?」

 ルイズの心中を察したかのように、忠告する声が響いた。
 ルイズは手に持ったデルフリンガーに目を落とす。  
 『これ』は口は悪いが言っている事は正しい。
 が、何時も余計な事ばかり言っているくせに生意気だ。そう思い、ルイズは憎まれ口を叩く。

「そうね、たまにはいい事言うじゃない」
「『偶には』は、余計だぁよ。俺は何時だって良い事言ってんよ」
「ふふっ、それもそうかもね」

 ルイズはデルフリンガーに微笑みかける。それは、肩の力が適度に抜けた自然な笑顔であった。
 2人は今まで幾つもの修羅場を共に乗り越え、気心の知れた相棒同士である。
 そうして、ルイズが覚悟を決めたのを待っていたかのように、敵がその姿を現した。
 敵は皆同じ服装に身を包んでいる。
 その中には当然、レコン・キスタを率いるオリヴァー・クロムウェルの姿がある。
 ルイズは、クロムウェルではなく其の隣の人物に険しい目を向ける。
 ルイズが睨みつける先には、髭で長髪の男が居た。ルイズの婚約者でもあり、トリステインを裏切ったジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドである。
 2人の視線が一瞬交錯する。それだけで、2人はお互いが敵であるという事を再確認した。
 そして、レコン・キスタの精鋭達がウォーミングアップを始めるのを見て、ルイズも仲間達の元へと歩いて行った。

 トリステインの精鋭達とレコン・キスタの精鋭達が正面を向きあって整列している。
 両国の精鋭達はそれぞれ25人づつ、計50人の強者共が静かに闘志を燃やし、時が来るのを待っている。
 クロムウェルとアンリエッタが読み上げられる試合規定と条約文に調印を行い、ウェールズが選手宣誓を行う。
 試合前の一連の儀式を終えてから、主審を務めるマザリーニ枢機卿による試合開始の宣言がなされた。

 「プレイボーール!!」


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  ・
   ・


 かくして、ハルケギニアの野球の歴史は始まった。
 この試合において、トリステインは見事レコン・キスタ打倒した。
 その後も、ロマリア、ガリアを相手に連勝を重ね、ついにはエルフと聖地シリーズで戦う。
 聖地の解放を経て、エルフと人間は和解の道を少しづつ歩んで行くのであった。
 当時の戦いを詳しく知る資料はないが、ゼロ(ノーヒットノーラン)の二つ名を持つ虚無の担い手が居たと伝えられている。
 その虚無の担い手は、インテリジェンスバットを携え相手の魔球を打ち取り、虚無の魔法を駆使して打者を翻弄したのだという。
 その虚無の担い手の名は知られておらず、ミス・ゼロの名前だけが後世に伝わるのみである。



 ◆◇◆



 野球は血の流れない代理戦争として生まれたが、世界情勢が安定してくるにつれ、徐々に野球は市井に浸透していった。
 王政が廃され、メイジ=貴族ではなくなった今では、代理戦争の手段としては用いられなくなり、娯楽の一環として多くの人々に愛好されている。
 ここ旧トリステイン王国では、誰でも一度は野球をした事があり、好きなスポーツのダントツ1位は野球である。
 その熱の入れ様は、女子リーグが結成されるほどである。

 旧トリステイン王国の首都トリスタニアのブルドンネ街を、少女と中年男が肩を並べて歩いていた。
 町並みは数百年前の面影を殆ど残してはいない。幅が5メイル程しかなかった通りが、倍以上の広さに成り、街ゆく人々の格好も全く違う。
 そんな街中を、少女はピンクブロンドの髪を揺らしてズンズンと大股で歩いて行く。その少し後ろを、もう初夏だというのに黒いコートを纏った金髪の中年が人を食った笑顔を浮かべてついていっている。

「それでどこに行くのだ?」
「昨日の試合でアンタの実力は見せてもらったし、あの高慢ちきなグラモンを打ち取ったご褒美に、道具を一式揃えてあげる。」
「別に、学院の部室にある道具を貸してもらえれば、十分なのだがねぇ」
「だめよ、そんなの!
 いいこと? 自分に合った道具を使うのが一番良いのよ」
「それで目的の店はまだかね?」
「もうすぐよ。少しは待ちなさいって」

 大通りから外れて裏通りに入る。あまり日に当たっていない場所なのでジメジメしているのだが、悪臭などは無い。 
 暫く2人が路地裏を進むと、四つ辻に出た。

「あそこが目的地よ」

 少女が指し示すのは、ショーウィンドウに様々な道具が展示されているスポーツ用品店であった。

「ココは隠れた名店よ。そんじょそこらの店より良い物を扱っていて、よく私も利用するの」
「ほう。それは楽しみだ」

 男は顎を撫でながらニヤリと笑う。
 2人が入店するとドアに仕掛けられた鐘が鳴り、カウンターで煙草をふかしていた店主が顔を上げる。
 店主は少女の姿に気が付くと、営業スマイルを顔に浮かべて声を掛けてきた。

「これは、これは。ヴァリエールのお嬢さん、今日はどういった御用向きで?」
「こいつに合ったグローブとバットを見繕ってくれない? あと、スパイクもね」
「承知しました。それでは失礼して……」

 店主は煙草を灰皿に押し付けてから、中年男に近寄って無遠慮に身体つきを調べる。
 男は体を弄られて顔を顰めるが、特に文句は言わずに測り終えるのを待つ。
 一通り調べ終えると、店主は暫く待っていてくれと言い残し、店の奥へと消えていった。

「少し店の中を見て回ってもいいかね?」
「手短に済ませなさいよ?」

 一応の断りを入れてから、男は店を見て回る。
 そして、古びたバットを手にした時に異変は起きた。

「んんー!? からかってやろうと思ってたが、てめ『使い手』か。いいぜ俺を買いな」
「ほう? 喋るバットか」
「もしかしてコレ、インテリジェンスバット?」

 行き成りの出来事に2人は驚きの声を上げる。その騒ぎに店主も気が付き奥から姿を現す。

「やいデル公! お得意様にちょっかい掛けんじゃねえ!」
「お前、デル公というのか?」
「ちっげーよ! 俺っちの名前はデルフリンガー様だ! よく覚えときな相棒!」
「ちょっと! アンタを買うなんて一言も言ってないわよ!」
「良いじゃないか。親父、これを貰おう。」
「はっ? 宜しいので?」

 店主はキョトンとした顔で尋ねてくる。
 少女はギャーギャー言っているが、男は友人に良い土産が出来たと満足気に頷く。

「ヨロシクな相棒」

 再び伝説は動き出す。


 FIN



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