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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-46


46.新しい二つ名

メイジにとってあだ名や二つ名といった物はとても重要である。
というのも、メイジにとってそれらは己を一言で表す物だからだ。
それだけに不名誉な行動から付いた名はもちろん、
語呂の悪い名を好む者もいない。
当然、それはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールにも言えた。

「ゼロ」の名を持つ彼女は『虚無』の系統の使い手である。
虚無とは他の四系統の上位に位置する魔法系統で、
それに目覚めたルイズは四系統のスクウェアクラスの呪文と、
スクウェアに対応する一部の呪文が使える様になった。
今までの爆発の原因は、自身の力が大きすぎてコントロールが出来ていなかったこと。
魔法が使えるようになったルイズはもはやゼロではない。
しかし彼女は、新しいあだ名をまだ決めかねていた。


学院に戻ってから最初の授業での実習で、
ルイズは真っ直ぐに背筋を伸ばして手をあげた。
キュルケとタバサを除き、みんなの顔が真っ青になったが、
いや、これでいいかと思い直す。

「あー……ミス・ヴァリエール。熱心なのは良いことですが」

愉快なヘビ君を用いての退屈な授業に、飽きているからだ。
発火の実習を行おうとしたコルベールは言いにくそうだったが、
ルイズは満面の笑みで、教壇に近づいていく。

「いやなに、君の実力を疑うわけではないが、
 魔法はいつも成功するというわけではない。
 ほら、言うではないか。ドラゴンも火事で死ぬ、と」

ルイズがコルベールの目を見る。
コルベールは、こんな目をした彼女を見たことが無かった。
自信に溢れていて、それでいて威勢だけではない、
何か策のある人間の目だった。

「大丈夫です。成功しましたから」
「おいおい、ゼロのお前が成功するわけないじゃないか」

マリコルヌの声が聞こえたが、ルイズは無視して足でふいごを踏んだ。
気化した油が、円筒の中に送り込まれる。それから目をつむり、大きく深呼吸する。
まだ魔法を使える様になってから日が浅いので、イメージをしっかり頭の中で作らないと、
いつものように爆発してしまうのだ。気持ちを落ち着かせて、おもむろに円筒に杖を差し込んだ。

「ミス・ヴァリエール……おお」

コルベールが祈るようにつぶやいた。

ルイズは朗々と、可愛らしい鈴の音のような声で、呪文を詠唱した。
教室中の全員がぴきーんと緊張する。期待通り、順当に、とはいかなかった。

金属の円筒は爆発せず、杖から出た業火によって溶け始める。
気化した油が炎に引火する事によって爆発が起こる。
それによって溶けかけの円筒が破裂し、かけらが辺りに飛散していく。
生徒の方へ飛び散る円筒のかけらは、キュルケとタバサが前もって準備していた、
レビテーション等の魔法によってその周辺に落ち、固体に戻った。
生徒たちはいつもと違い「あの」爆発が起きない事を不思議がった。

ルイズが発火の魔法を止めると、自身の目の前で燃えていた円筒は冷えて固体に戻る。
もはやそれは円筒と呼べる物ではない。置かれていた机や差し込まれた杖に炎は燃え移っていなかった。
固定化がかかっているからだ。

いつもの様な爆発こそ起きなかったし、発火の呪文は成功した。しかし失敗である。
ルイズは腕を組み、そして呟いた。なんてことはない。
自分のせいではなく、固定化がかかっていない装置が悪いのだ。

「ミスタ・コルベール。この装置、溶けやすいです」
「あ、ああ……そのよう、だね。改良の余地が、あり、そうだ」

誰が発火の呪文で金属が融解すると思うだろうか。
涙を流すコルベールは生徒達に自習を言い渡し、
愉快なヘビ君だった鉄くずと共に、教室を後にした。
もし彼が正気であったなら、ルイズの力について言及するだろう。
しかし今はそれよりも、苦労して作り上げたヘビ君の弔いが先であった。


「やるじゃないあなた。あんなのは壊して正解よ」

自習の名の下に勉学に励む生徒は少ない。ルイズはその少ない方に属しているが、食堂にいた。
真面目に勉強しようとしたところ、キュルケが引っ張ってきたのだ。

「壊したくて壊したんじゃない」

むすっとした顔でルイズはクックベリーパイを食べる。
隣のタバサはハシバミ草のスープをおかわりしていた。
無表情ながら、至福の一時を過ごしているようだ。

「そう?最近ノリが良くなったと思ったのだけれど」
「どういう意味よ」

キュルケはルイズを見ておかしそうに笑っている。
そんな事をされて、ルイズが怒らないはずがない。

「だ、か、ら、なんなのよ!」
「前ならわたしが呼んだって、絶対一緒に来なかったじゃない」

ああ、とルイズは納得した。たしかにそうだ。
以前なら何があっても絶対にキュルケの誘いなんて断っただろう。

「少しばかり余裕ができてきたのかしら?
 だからといって調子にのっていると、私の炎があなたを包み込むかもね」

学院に戻ったキュルケは男遊びをやめて、火の系統の修練に励んでいる。
元々トライアングルであり、優れた素質があるにもかかわらず遊んでいた彼女だったが、
本気を出した事によって、その実力はスクウェアクラスに匹敵するのではないか、
と教師達の間で話題になっている。

「ふんだ。私が勝つんだから」

バチバチと火花が散るテーブルで、タバサはただ黙々と彼女専用のハシバミ料理を堪能している。
母の薬が出来て、イザベラを治せるだろう薬も手に入った。
後はそれらを飲ませてどこかへ雲隠れしよう。
叔父のことなど、母の回復の前にはどうでもよくなっているタバサは、
無表情で幸せそうに料理をたいらげている。
結局、今日のタバサの注文によって学院に残っていたハシバミ草は全て消費された。


ヴェストリの広場は普段は人気の無い場所であり、使い魔のたまり場でもある。
なぜなら、ぽかぽかした晴れの日なら、ひなたぼっこをするのに最適な場所でもあるからだ。
マーティンは最近、考え事が煮詰まると自然とここに足が向く。
ぼーっと空を見上げると、案外ヒントが浮かんでくるものだ。
広場の一角に座り空を見上げる。白い雲が浮かぶ青い空は見慣れた物だが、
いつ見ても美しく感じるものだ。その空から、何か大きい物が近づいてくる。
最近親しくなった風竜だ。

「きゅい。どうしたのね?」
「ああ、シルフィードか」

シルフィードの影に隠れてしまったマーティンは、顔を寄せる龍の頭をなでる。
彼女はマーティンの事を気に入ったらしい。人のいない場所では彼に話しかけるようになった。

「悩み事でね」
「お悩み相談なら任せるのね!シルフィそういうの得意だから!」

自信満々な顔を見て、マーティンはなにか、もの凄い不安に捕らわれた。
そもそも、今の悩み事の内の一つはシルフィードから教わった魔法が使えない事である。
単に自身の魔法力が足りていないだけか、それとも使えない類の物か。
考えたらきりが無いが、専門職メイジというのはそういう事を考えてしまうのだ。

「ああ、えーと……」

話しても大丈夫そうな悩みもあった。

「ルイズのあだ名についてね」
「あの小生意気なののあだ名?なんで?」
「ああ、何でもこの地のメイジにとって、あだ名はとても重要な物らしいんだ」

ふうん、と興味無さげにシルフィードはあくびをした。

「で、彼女は今までゼロという不名誉なあだ名を付けられていたのだけれど、
 それを返上して新しい名前を付けると言い出してね。
 だけどどうにもしっくり来る物が浮かばないらしくて。
 それで、私にも考えて欲しいと言われたんだ」

「なるほど。なら、う~ん。『ピンクブロンド』なんてどうかしら?」

そのまますぎるよ。とマーティンは苦笑する。

「ならなら、『ちいさい』とかはどう?どう?」
「ありがとうシルフィード。気持ちだけ受け取るよ」

きゅい、とシルフィードは肩を落としてから寝そべった。
ふて寝である。

「ううむ、何が良いのだろうか」

マーティンは昔、伊達男だった。シロディールのメイジとしても優れた召喚師で、
若気の至りで快楽をつかさどる神様の信者にもなって、ブイブイいわせていた。
そんな経験から、派手な名を思いつきはするが、それらはルイズには似合わないと考えている。

「他の人の名を挙げると、微熱や雪風、疾風に炎蛇。確かギーシュ君は青銅だったか。
 よくルイズに突っかかるあの恰幅の良い男子は風上だったかな」

派手すぎず、かといって目立たないわけではなく、しっかりと主張する立派な名。
それでいてルイズに似合っている物。さて、どんな物が良いか。
マーティンがぼーっと考え込んでいると、爆音が響いた。

「うん?」

場所は食堂の方角からで、その音は聞き覚えのある物だった。
ルイズの爆発音である。

「……何が起こったのだろうか」

ルイズは魔法を使えるようになって、自分に自信を持てるようになった。
あんな事があったから調子にのってはいないと思ったのだが、
マーティンは心配になり、食堂に向かう事にする。


そろそろ昼食の時間。それは調理場が最も慌ただしくなる頃で、
マルトー達料理人は学生達の料理を作っていた。食堂から爆発音がとどろいたのは、
そんな時である。

「親方、今の音って何でしょうかね?」
「おおかた、貴族のぼっちゃま方がいたずらでもしてるんだろ」

気にせず作れ、とマルトーは怒鳴った。

食堂の方はというと、ひたいに青筋を立てたルイズが腕を組んで立っていた。
その目はまさしく母や長姉譲りの物で、見る者に本能的な恐怖を感じさせる、
恐ろしい気迫を放っている。相対するのはマリコルヌ。
青ざめた顔で平謝りを繰り返しているが、ルイズは怒ったままだ。

「ももも、もう一回、聞くわ。かぜっぴき、今、なんて?」

ルイズの声は震えている。本気で怒ると声が震えるのだ。
そして、そうなったらもう誰にも止められないのだ。

「いいい、いや、わるかった。悪かったルイズ!すまなかった!」

マリコルヌは必至に謝ったが、それはあまりにも遅い。
ルイズの怒りは更に燃え広がり、マリコルヌの近くの床を爆発させる。
マリコルヌはふっとばされ、埃まみれになった。

怒りの魔女はふふふと笑う。だが、それは本来の可愛らしさなどみじんもなく、
例えば獲物を見つけた肉食動物が、今にも獲物に飛びかからんとする時に、
もし感情があれば見せると思われる顔だった。つまり、ふざけんなこのブタ野郎、ということである。

「なにが、わるかったの?」

はいつくばって謝るマリコルヌを見下ろし、ルイズは冷たい視線を送る。
マリコルヌは不思議な高揚感を感じながら、ゆっくりと口を開いた。

「君の事を不快な名で呼んでしまった。謝るよ、たのむから許してくれ」

「そう、そうね。あなたわたしにとんでもないあだなをつけたわね。
つけやがったわね、こ、このブタ。ブタやろう」

ルイズは冷たい視線で男をなじった。マリコルヌは少しばかり顔が赤くなり、
生まれてごめん、ブタごめんと謝り始める。
その様は彼女を尚更腹立たしい気持ちにさせた。

「なんか、プレイの一環って感じよねぇ」

キュルケはそんな姿を椅子に座って眺めている。
マリコルヌが段々恐怖から愉悦の方に変わっていくのが分かる。
気持ち悪いが、そういうのが好きなのもいるらしい。
ルイズはそうした性質があるに違いない、と思った。

「そんなに嫌なのかしら、さっきの名前」

ゼロよりはマシかと思ったけれど、ルイズからしてみればなにかんがえてんのよこのブタ。
ブタやろう。ということらしい。タバサはそんなことにはかまいもせず、
ハシバミ草を食べ続けている。

「『爆魔』のルイズ。そこまで悪くはないと思うのだけれど」

魔法が成功するようになったのだから『ゼロ』の名がダメになった。
なら他にルイズの特徴を、というわけでルイズをいじって遊ぶ連中は、
爆発をよく起こすから爆発魔から語呂を良くして爆魔という名を思いつき、
早速マリコルヌはからかいに来た、というわけである。

「そ、そりゃあ、ゼロと呼ばれるのは本気で嫌だったけれど、
 実際その通りだから、仕方ないわよ。でも、でもね……」

バチバチッとルイズの周りから魔法の稲妻が飛び出ては消えていく。
大きいのが来る、周りにいた人々は確信して食堂の大きな机の下に隠れた。

「魔法が使えるようになったからって、それはあんまりでしょうがぁああああああああああああ!!」

ゼロと爆発は、ルイズの心にとても大きな傷を作った。
出来れば忘れたい過去である。それを名前にされたのだ。怒るのも無理はない。
涙目のルイズの心の叫びが食堂に響き渡ると共に、大きな閃光が杖先より現れる。
マーティンが来た頃には、ほとんど食堂全てが黒こげになっていた。

ふむ、と黒こげになったルイズを見つけて、マーティンは優しい口調でたずねる。

「で、ルイズ。何があったんだい?」
「わたし、悪くないもん。そこのブタが悪いんだもん」

駄々をこねる子供の様に、黒こげになりながらも恍惚とした表情で転がっているふとっちょを指差す。
おそらくちょっかいをかけられたんだろう。マーティンは優しい声で語りかけた。

「しかし、こんなことをする必要は無いよ」

ぷいっとルイズはそっぽを向いた。
ちゃんとした自信を持つと同時に、彼女に本来の性質が戻ったのかもしれない。
年頃の娘にしては少し怒りっぽいとか、そんな性質である。
背伸びをせず、普通に戻ったともいえるのだから悪いことではないが、
だからといってこんなことをして許されるはずもない。

子供を諭すのは大人の役目であり、見習いメイジが不始末をしでかしたのなら、
熟練メイジはちゃんと指導しないといけない。実際のところ、
シロディールのメイジがそんな面倒な事をするわけない。
しかしマーティンはルイズを諭し始めた。マーティンはメイジをやめて随分と経ち、
数年前までは九大神教団の司祭だった。職業柄、人を諭すのは得意な方である。

「ほら、周りを見て」

部屋の中は、雷が10回くらいは落ちたんじゃないかと思わせる惨状だった。
豪華な内装はほとんど跡形もなく破壊され、生徒用の大きな机にも生々しい傷跡が残っている。
中階のロフトには、幸い誰もいない。とはいえ、
結局ルイズは学院長から直々にお叱りを受けるのだが。

「君がしたんだ。大きな力は時に大きな危険をもたらす。
責任を持って、それを使わなくてはならないよ」

ルイズが呪文を唱えて杖を振ると、たちまち食堂は元に戻っていく。
錬金の高度な応用だったが、ルイズからすれば精神力を大量に消費する物の方が使いやすかった。

「でも、わたし、謝らないから」

少し涙目のルイズを見てマーティンはやれやれと頭を掻き、どうしたものかと思案する。

「とりあえず涙をふいて。ご飯はもう食べたのかい?」

ハンカチを渡すと、ルイズはちーんと鼻をかむ。
とりあえず彼女が落ち着くまで、マーティンは優しくなだめる事にした。

その後、ルイズの名は敵対する者全てを焦がすという意味で「黒こげのルイズ」と呼ばれたり、
怒ったら手が付けられないという意味で「怒髪天のルイズ」と呼ばれたりするようになる。
ルイズ本人はそれなりに不服だが、マーティンの説得の甲斐もあって、
そこまでひどいかんしゃくを起こしていない。


「大変なことが起こったみたいだね、マリコルヌ」

騒動が終わった後、包帯をグルグルに巻かれたマリコルヌは保健室にいた。
見舞いに来たのは彼とつるんだりつるまなかったりするギーシュである。

「おお、ギーシュじゃないか」
「そうとも、『青銅の』ギーシュ改め『人生バラ色の』ギーシュさ!」

くねくねしたきざったらしい仕草で、ギーシュは格好をつける。
最近良い事続きの彼は、素敵な笑顔でマリコルヌに笑いかけた。
マリコルヌはああとためいきをつき、ギーシュに顔を向ける。

「君が羨ましいよ。両手に花なんだから」

どうやったかは知らないが、モンモランシーとケティは彼の恋人であり、
今も関係が続いている。ギーシュの頭はどちらかといわなくてもゆるい方だが、
それを支えてあげなくちゃ、と彼女たちに思わせたらしい。
モンモランシーが主導権を握っているようだが、
ギーシュは双方を平等に愛しているそうだ。

「はっはっは。それは当然というものだよ。なんたってボクは」

ギーシュはその場できざったらしくポーズを取り、
口にくわえていたバラを手に持つ。二人の彼女が出来てからというもの、
彼の仕草は多少洗練された様に思える。それでもまだくねくねしている。
むしろこのくねくねが無くなったら、ギーシュでなくなるのかもしれない。

「グラモン家の三男、『人生バラ色の』ギーシュだからネ!」
「ああ、うん。分かった、分かったから」

少しうざったく感じながら、マリコルヌはギーシュを落ち着かせる。

「ところでギーシュ。そのバラは一体どこで買ったんだい?」

ギーシュの持っているバラは、彼がいつも持っているバラの形をした杖ではなく、
本物のバラで、真っ黒だった。ワインレッドとか濃い赤色の黒バラではなく、
純粋に真っ黒なバラである。

よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに、ギーシュはもったいぶりながら、
その固定化のかかった黒いバラについて話しはじめた。

「ああ、これかい?素敵だろう、ケティがくれたんだ。アルビオンローズと言ってね。
 ハイランドで咲くとても珍しい品種なのだそうだ」

ボクの魅力を引き立てると思わないかい?と自慢げに語ってからギーシュは部屋を出て行った。
結局こいつはバラを自慢しに来ただけか?マリコルヌはため息を吐く。

「でも、あのルイズに焦がされたとき、なんかこう、凄い何かが体をかけめぐったような……」


これ以降、マリコルヌはルイズを本気で怒らせる事はなくなったが、
からかってルイズを怒らせ、あえて魔法を受けるようになる。
ちゃんとした彼女が出来るまでこれは繰り返され、
ルイズも結構ノリノリでやったとかやらなかったとか。


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