あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

魔導書が使い魔-06b


昇り始めた月が庭全体を照らす。
淡い光に照らされたそこは、色とりどりの花の鮮やかさと暗い影とが織り成す
昼とは違う顔を見せる。
夕食も終えたルイズとアルは学院の中庭へと出ていた。
「なんでいなんでい。なにをするんでい」
アルの手の中でデルフが騒ぐ。
「アル、大丈夫?」
それをさらりとスルーしてルイズがアルへと話しかける。
「うむ」
アルは大きく頷く。
本当なら部屋でそれをしてもよかったが、できたらすぐにその剣を試したいと
いうルイズの希望の元。剣を振り回せる場所ということで中庭となった。
強い風が吹きつける中、アルが宣言する。
「それでは始めるとするか」
デルフを持ったアルが空いた手で第2指と第5指を立てる印を組む。
「お、おい! なんか嫌な予感バリバリなんだがっ!」
ぎゃーぎゃーと騒ぐ声すら次の言霊にかき消される。
「ヴーアの無敵の印において」
その手に火が灯り。
「って、おいおいおいおいっ!」
「力を与えよ、力を与えよ」
火の付いた手が柄から剣先まで滑り、剣全体が炎に包まれ。
「力を与えよ――」
「ぎゃー! あちぃぃぃいいっ!!」
デルフの悲鳴は飲み込まれ、吹き散らされた炎から出てきたのは。
黒光りする幅広の偃月刀。
「ほれ」
あの時のようにアルが偃月刀を放る。
「ん」
今度はしっかりと掴み取る。
ぼんやりとルーンが光った。
あの切羽詰った状況とは違い、この剣の使い方が鮮明に脳裏に浮かぶ。
甦る熱。
ルイズは両手で偃月刀を構え。
「い、いきなりなにしやがんでいっ!!」
「へ?」
「なぬ!?」
慌てて落としそうになった。
「偃月刀が、喋った?」
呆然と呟くアル。予想外の出来事に硬直するルイズに、偃月刀は更に喋り続け
る。
「突然燃やしたと思ったら、こんな変な姿にしやがって!」
そう言うと突如、偃月刀が光に包まれる。
「な、なにー!?」
驚きを顕にするアルを置いて、光が収まった時ルイズの手にあるのは、買った
時と寸分変わらぬボロボロの大剣であった。
「あ、アル! どうなってるのこれ!?」
まさか失敗かとアルへと目を向ける。
「こ、こやつ妾の魔術を無効化(ディスペル)……いや吸収(ドレイン)しお
った」
「な、なんですって?!」
驚愕するルイズにデルフが罵倒を吐く。
「よくも手前ら俺にあんなことしやがったな! 剣には優しくしろと親の教わ
らなかったのかよ!」
「親にそんなこと教わらないわよ!」
「よしそこに直れ! この6000年生きたデルフリンガー様が直々に……って」
そのまま罵倒を続けようとしたデルフの口が止まる。
「貴族の娘っ子お前……もしかして『使い手』か?」
「なによ……その使い手って。ていうかなんなのよあんたは!」
「忘れた」
「忘れたって何よ!」
「忘れたもんは忘れたんでい!」
「なんと面妖な……」
言い争うルイズとデルフ。デルフを見て腕を組むアル。
そんな3人を、黒い影が覆う。
「そういえばさっき、さらりと6000年生きたとかっ」
更に追求しようとするルイズに。
「汝、なにやら変だぞ」
「なに―――よ?」
ふと振り返った先に――30メイルもある巨大なゴーレムがいた。



吹き付ける風は冷たくは無いがローブをはためかし。
眩い月光はその姿を鮮明に浮き立たされる。
女は舌打ちをし、眼下にいる桃色の髪と銀の髪を睨む。
計画では、今日は虚無の休日ということで多くの教師達は遠く街へ出かけてい
る。夜の警備当番であるコルベールは時間まで騒音の酷い自身の研究室から出
てこないだろう。
メイジが多く通う魔法学院とはいえども、そのほとんどが実戦を経験したこと
の無いひよっこども。
時と地の利はあったはずなのに、計画の初めにいきなり生徒に見つかってしま
った。
だが、見つかってしまったものはしょうがない。
そう障害にもならないだろうと判断した。
「お行き」
2人の存在を無視し、自らを乗せるゴーレムへ指示を出す。
そのゴーレムは2人の少女を跨いで歩くと塔の前で止まる。
女は手に持つ杖を振るう。
それに合わせてゴーレムが腕を大きく振り上げた。
「まずは、小手調べっ!」
勢いづいた土の拳は風を押し退ける音と共に、塔へと迫り――
その壁を紙細工のように粉砕。
「はあ?」
あまりに呆気なく破壊された壁を見て女は拍子抜けした。
調べた時には多重の『固定化』がかかり、その壁自体も分厚く相当苦労するだ
ろうと思っていたのだが。
まるで打ち果てた城壁を、打ち崩すような脆い手応え。
女は困惑するが。
「まあ、結果が全てだね」
考えてわからないことは放棄し、結果だけを優先する。
ゴーレムの腕を伝い、女は崩れた壁の中へと入っていった。



「ええっ!?」
塔の壁が破壊されるのを見てルイズは驚嘆の声を上げた。
30メイルのゴーレムがいきなり現れたこともそうだが、突如塔へと攻撃しそれ
を破壊したのだ。
塔自体には宝物庫があることから強固な守りを有するのは周知の事実。
その塔の壁が破壊されたのだ。
どれだけ強力なゴーレムか、想像の域を超えている。
「ふむ、随分と派手な遊戯だな」
「んなわけないでしょう!」
冷静にボケるアルにルイズが突っ込んだ。
「おい、貴族の娘っ子。あのでかいのの肩から塔の中へ誰か入っていったぞ」
「なんですって」
わざわざ強固な塔の壁を破壊して中へと侵入する。そうなると狙いは。
「宝物庫!」
「なんだそれは?」
首を傾げるアルを置いてルイズは走り出す。
「おいおい、貴族の娘っ子なにしようってんだ」
デルフの声に。
「当然止めるのよ!」
ルイズは自信満々に答える。
「どうやってだ?」
追いついてきたアルが問う。
「それはもちろん――」
そこではたと気が付く――杖がないことに。
「え、えっと……」
一応“杖候補”となる剣なら手に持っているが。杖としての契約をしてないこ
の剣は、剣以上でも剣以下でもない。
そうしてゴーレムの前で止まる。
改めてその大きさに愕然とし。
「と、ともかく止めるのよっ!」
デルフを振り回した。
「白い娘っ子……」
「なんだボロ剣」
「この貴族の娘っ子はいつもこうなのか?」
「言わずともわかるだろう」
人外2人は揃って諦めた風にため息を吐く。



目当ての物の1つはすぐに見つかった。
それはご丁寧にもオールド・オスマン直筆で『破壊の杖、持ち出し厳禁』と紙
を張られていたからである。
でもまあ、と女は考え、その杖を見てみる。
確かにコルベールの言うとおり言葉では現せられない奇妙な形であった。
そもそも杖であるのかも疑問である。
とりあえず見つけた杖は後で回収するとして、もう1つの宝を探そうとしたと
き。
“……ぃ…………ぇ……”
「誰だいっ!」
咄嗟に杖を構えて周囲を見渡す。
ゴーレムを維持しているから魔法は使えないとはいえ、身の危険が最重要。
その時はゴーレムを解除することもためらわない。
だが、見回せど特に異状は無く。
広がるのは乱雑に物が置かれた空間。
「…………」
幻聴かと思い始めたとき。
“…………る……ぃ……”
「――っ!」
音の先へと振り返る。
そこには詰まれたガラクタとしか思えない品々ばかりだったはずだが。
果たしてそこには。
「これ、は……」
女が目的とする“物”があった。
ただ置かれている書物。埃を被り、古ぼけた本。
だが、その書から流れてくるのは生暖かい空気。頭の片隅で警報が鳴る。あれ
は触れてはならない物であると。
「馬鹿馬鹿しい……」
自分が使うわけではないと。そっと手を伸ばす。
書を掴んだ瞬間、ぞくりと悪寒が体を駆け抜けた。
「……っ!」
その悪寒を振り払うように女は書を懐へと仕舞いこむ。
気分を変えようと女が辺りを見ると、書のあった場所になにかが落ちているこ
とに気が付く。
よく目を凝らしてみると、それは結界などに使うルーンが刻まれた木片である
ように見えた。
木片は砕かれ、ある場所を中心として広範囲に落ちている。
まるでなにかに耐え切れず、砕け散ったように。
「……薄気味悪い」
女は胸元から予め文字を書いた紙を取り出し近くの壁へ貼り付けると、『破壊
の杖』を回収し、砕かれた壁からゴーレムへと戻る。
ゴーレムの肩へと登る途中、なにか眼下が騒がしかった。



「どうするのだ? 汝は」
呆れた風のアルにルイズは言葉が詰まる。
「どうするって……つ、捕まえる……」
「汝の魔法は今、失敗すら使えんのにどうやって」
更なる追及にルイズが押される。
「ど、どうやってでもよ!」
「貴族の娘っ子……現実を見ようぜ」
「まったくだな。もっと現実的に考えろ」
非現実(ファンタジー)の存在から現実を追及されるルイズ。ある意味稀有な
体験をしているともいえる。
そんな2人にとうとうルイズの堪忍袋が切れた。
「あー! もう! 捕まえるったら捕まえるのよ!」
吹っ切るようにデルフを強く握り締める。
ルーンが輝きを発した。
「おわ! なにをするんだ貴族の娘っ子!」
大きくデルフを振り被る。視界にあるのは巨大なゴーレム……の足。
「こうするの……よっ!!」
弾ける様に飛び出したルイズは、思いっきりデルフを叩きつけた。



女はゴーレムの足元で騒ぐ2人の少女に目を向ける。
どうやらあの少女達は他の人を呼ばなかったようだ。手柄を独り占めしたいほ
ど強欲なのか、責任感が強いのだろう。
どちらにしろ自分にとって好都合なのだが。
(これ以上騒がれるのは面倒だね)
そう女は考えると杖を構えた。
「せいぜい運がなかったとお思い」
少女たちを踏み潰す指示を出そうとして。
ズズン――
「――っ!?」
衝撃が襲った。



ルイズが振ったデルフは、その刀身を大きくゴーレムへと沈む。
偃月刀のような滑らかな手応えはないが、ズブズブと刀身が進み、勢いよく反
対側へと抜ける。
「どうよ!」
渾身の一撃。
「さすが『使い手』だな……」
デルフが呟いた。
そこにあるのは3分の1まで切り裂かれたゴーレムの足であった。
「これを後2、3回繰り返せば」
そう言い再び構えるルイズにアルが言う。
「おい汝」
「なによ、今忙しいの」
ルイズは再び大きくデルフを振り被り。
「なにやら、雲行きが怪しいぞ」
「雲行きって」
ふと視線を感じルイズが視線を上げると。
「…………」
「…………」
こちらを見下ろすフードを被った人影がゴーレムの肩にいた。
その人影が杖らしき物を振る。
それに合わせてゴーレムがこちらへ大きく足を振り上げ――
「貴族の娘っ子危ねえぞ!」
「え、ええっ!?」
「っち。なにをぼやぼやしておる!」
戸惑っているルイズの前に、アルが庇うように飛び出し手を差し出し。
「間に合わんか――」
土の足底が視界を覆い、ルイズは目を瞑る。
「――っ!」
潰れる瞬間を待ち構え――

「――もう、なにやってるのよあなたは」
なぜか突然ほほに風を感じた。
ゆっくりと目を開けると。
「きゅる、け?」
「はあい。ようやく会えたわね」
にこやかに笑うキュルケがいた。
ここはどこかと周りを見ると、周囲にはなにもなく吹き付ける風が強い。
今自分のいる場所に違和感を覚えて下を見ると、そこには青い鱗。
「……間一髪」
その声の先に目を向けたルイズは、自分のいる場所を認識した。
「まったくよ、タバサの風竜じゃなきゃ助けられなかったわ」
「きゅいきゅい」
まるでそのことを誇るように、ルイズたちを乗せた風竜が鳴き声を上げた。
予想外のことに呆気に取られるルイズに黒い服を着た金髪の可愛らしい少女が
近寄ってくる。
「危なかったねぇ」
「え、ええ……」
こんな子いたかしらと首を傾げるルイズに、横合いから声がかかる。
「本当に無茶をするものだ」
そこには腕を組むアルがいた。
「あんたも無事だったのね」
「当たり前だ」
踏ん反り返るアル。そこで空気が緩みかける。
「で、どうすんだい。いったい」
デルフの声にキュルケが反応した。
「あら、ルイズ。そのボロ剣ってインテリジェンスソード?」
「誰がボロ剣だ! 6000年を生きるデルフリンガー様だ!」
「とまあ、本人は言ってるけど。まあ、今はいいでしょ」
「そうね」
皆の視線が眼下のゴーレムへと向く。
ゴーレムではさすがに空を舞う風竜には手が出せないのか。肩の人影はこちら
を見上げるばかり。
「あれは?」
キュルケが崩された塔の壁を指す。
「たぶん宝物庫。あのゴーレムを操っているのは賊よ」
「ふうん」
気のない返事でキュルケは返すと、思い出したかのように語りだす。
「まるで、フーケみたいね」
ルイズが聞き返す。
「フーケ?」
「ええ、巷で噂されている貴族を専門とした盗賊よ。警備の度肝を抜く大胆な
盗みをするってことで有名で。よく巨大なゴーレムを使うらしいのだけど」
キュルケがゴーレムを見る。
「あの大きさ、少なくともトライアングル級ね。もしかしたらスクエアかも」
そうキュルケが言った時、ゴーレムが歩き出した
「ゴーレムが!」
向かう先は学院を囲う高い塀。
「ちょっと、あいつ逃げる気よ! 捕まえなきゃ!」
人にとっては絶壁であっても、巨大なゴーレムは難なく超えるであろう。
「といっても、ねえ?」
ルイズが叫ぶが、キュルケがタバサへと振る。
「無理、重量過多。下手に近づくと避けきれない」
「きゅい~」
弱弱しく風竜が声を上げる。
自分より大きな獲物を掴んで飛べる風竜だが、それは足で掴んだ状態であり。
背に大勢乗せた状態ではない。
軽いとはいえ、すでにその背には5人も乗っている。
それに相手は倒れた獲物ではなく、30メイルはあるゴーレムだ。鈍った動きで
は落とされかねない。
「うぅ~~」
唸るルイズは、眼下で歩いてゆくゴーレムを見て、ふとあることを思い出す。
「アル! あのでっかいゴーレムは使えないの! あんたのでしょ?」
思い出されるのは自身が召喚した白きゴーレム。
もしあのゴーレムさえ使えれば、眼下のゴーレムなど圧倒できるだろう。
そう思いアルへと問いかける。
「無理だ」
「なんッ……で」
迷いの無い返事に思わず声を張り上げようとしたルイズは言葉を途中で飲み込
んだ。
そこにはいつもの自信が満ち溢れた顔は無く。
「……あやつはもう戦えない……いや“戦うことはない”のだ」
置いていかれた子供のような寂しげな顔があった。
「…………」
ルイズその表情の前に何も言えず。
塀を軽く跨いだゴーレムは、遠く森の手前で崩れ去った。


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