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ルイズと無重力巫女さん-16



昼頃から始まったアンリエッタ王女によるトリステイン魔法学院の視察は予定通りというか、順調に進んだ。
宝物庫や中庭、食堂や生徒達が暮らす寮塔等を見回っている内に、すっかり日も沈んでしまった。
今回アンリエッタ王女は一晩泊まってから翌日王宮に帰るので、今夜は魔法学院で夜を明かすことになったのである。
その為、警備もかなり強化されている。前に土くれのフーケに忍びは居られたので尚更だ。

今夜の衛士達の警備はいつにも増してかなり厳しいがそれは本塔や生徒達が暮らす寮塔――そして城壁部分だけである。
逆に給士やコックとして働いている平民達の宿舎の警備はほぼゼロである。

金で雇われている学院の衛士達はこんな事を言っていた。
「平民をさらう者が居るとすれば、それは単なる人さらいか、ただの変わり者さ。」


その為今日の仕事を全て終え、明日の仕込みも済ませた彼らは酒を飲み交わしたり外にあるサウナ風呂に行ったりと、割と自由にしていた。
そんな場所から少し離れた草むらの中に、「五右衛門風呂の様な物」が置かれていた。
以前霊夢がマルトーから貰った大釜を使ってこしらえた物である。

その辺りには誰もいなかったがふと上空から霊夢が数枚のタオルと水が入った小さな桶、それと火種と洗濯道具を持ってやってきた。
勿論これらの道具は全てルイズの部屋から拝借してきた物である。
いつもは何か文句を言ってくるのだが、何故か今日のルイズはベッドに座ってボッーとしていた。
まぁその分取るのが楽だったので良しとしよう。
霊夢は着地すると鍋の下に敷いてあるレンガで作ったかまどに最初から入っていた枯れ木に火を付けた。
枯れ木が丁度良い位に乾いていたのか、どんどんと火が勢いを増していく。
やがて火が大きくなるのを見て霊夢は辺りをキョロキョロと見回し、誰もいないのを確認した。

「さてと…。」

確認をし終えると霊夢は首に巻いている黄色いリボンを解き、ソレを足下に置いた。
次ぎに上着に手をかけると思いっきり上へ捲り、真っ白な下着が―――



― ― 少女脱衣中だぜ。覗き見なんかするなよ? ― ―

チャポ…

「ふぅ、気持ち良いわねぇ~♪」
服を全て脱ぎ終え、タオルを体に巻いた霊夢は丁度良い湯加減になった自作のお風呂に入っていた。
脱いだ衣類は一度洗濯した後、かまどの近くで乾かしている。

―洗濯している最中は素肌にタオル一枚といういけない姿であったが…まぁそれは置いておこう ―

「~♪、~♪。」
霊夢はお湯で体を清めながらも段々と気分が良くなっていき、鼻歌も口ずさみ始めた。
片手でお湯をすくうとそれを肩にかけ、そこを軽く擦る。
次に顔、次に背中、と体のあちこちにお湯掛けているとふと左手の甲が視界に入った。
その瞬間、霊夢の脳裏に何日か前に言っていたオスマンという老人の言葉を思い出す。
「ガンダールヴ、伝説の使い魔ねぇ…。」
そうポツリと呟くと目を細め、左手の甲をじっと見つめた。そこにあるのは白い素肌だけだ。
オスマンが言っていた様なルーンなど何処にもない、というよりあったら不愉快だ。
今は幻想郷に帰れる証拠を掴むまでルイズの部屋に居るがあれはあくまでも利害の一致のうえである。

使い魔のルーンがないものの、召喚の儀式で霊夢が現れた限り、余程のことがなければルイズは再召喚が出来ない。
だが霊夢が無事に幻想郷へ帰ればルイズは使い魔を再召喚ができる。
今の扱いも使い魔というより客人に近い扱いであろう。霊夢自身もそれに甘んじている。
満足な食事とちゃんとした寝床。だけど一緒のベッドで寝るというのは癪だが。
……だけど、もしもルーンなんかがあれば今頃は使い魔扱いにされていたに違いない。

霊夢はそれを考え、お湯につかっているというのに体に寒気が走った。
ルイズはこんな魔法の世界だけではなく幻想郷でもやっていける様な性格の持ち主である。
一体どんな環境で育ってきたのか気になるところだがそこはまぁ別に良いだろう。
素直じゃないうえにかなりのサディスト、しかし以前喧嘩をふっかけてきたギーシュや気軽な性格のキュルケよりかは清楚ではあるが同時にプライドも高い。
もしも使い魔扱いされていたら、今頃霊夢はぶち切れるどころかルイズを懲らしめていただろう。


そして何よりも恐ろしいのが…彼女の放つ魔法 ―つまりは何もない空間を爆発させるモノ― である。

霊夢は一度だけしか喰らっていないがあの爆発は自分が作り出した結界を打ち破ったのだ。
多少の自負はあり、即席ではあったがそれでも博麗の結界は他よりも強力である。
ルーミアやチルノといったクラスの相手の弾幕や攻撃なら十分に耐えうる性能を持っていた…それが一発の爆発で粉砕した。

一体あの力が何なのか良くわからないが…とりあえずは幻想郷へと帰る方法を探し出さなければいけない。
このハルケギニアとかいう世界は貴族やら平民やら色々とゴチャゴチャしたモノが多くて住みにくい。
 ―それが幻想郷からこの魔法の世界へ連れてこられた霊夢の第一感想である。

……最も、そんな事を考えている霊夢本人はお風呂にのんびりと浸かっているのだが。

「早いとこ幻想郷に戻りたいわね…。」
ふと霊夢は一人そう呟いた。
気づけばこのハルケギニアに来てから既に一ヶ月くらいは経過していた。
今頃魔理沙辺りが異変だとか何やら騒いで幻想郷中を飛び回っているに違いない。
そしてまず第一に疑われるのはあのスキマ妖怪―八雲 紫―だと思うがまあそれは仕方のないことだろう。
まぁでも、紫ならば今回のことを説明しつつも結界を維持しながら自分を探しに来てくれるかも知れない…
そんな楽観的な考えも持っていた霊夢ではあるが同時にその後も事も考えていた―

(だが紫の助けで幻想郷に戻ってきた後、きっと色々と持って行かれそうね。主に食料やお酒なんかを……って、ん?)

と、そんな事を考えていると鼻の辺りをむずむずとした感覚が襲ってきた。
何かと思い鼻の下を軽く指で擦ると、指にベットリと赤い血が付いている。

「あ…鼻血でてる…。」
霊夢はまるで他人事のように、ポツリと呟いた。



「はぁ…。」
さて、そんなルイズは自室のベッドに腰掛けため息をついていた。
先程霊夢が幾つかの道具を持って部屋を出て行ったがそれすら彼女は気にしていない。
今ルイズの心の中には羽帽子を被った男―ワルド子爵―の姿が映し出されていた。
すらりと伸びた体、顔には立派な髭、鷹のように鋭い目、マントにはグリフォンの刺繍が施されている。
かつてルイズが子供の頃に知り合い、それからしばらくは会う暇がなかったが今日は久しぶりに会えた。
あの時よりも大分年を取ったかのように見えたがそれでもワルド子爵は美しかった。

同時に、もう一つその子爵に関してのある記憶をルイズは思い出した。
「そうだ…昔私とワルド子爵の父親が…。」
昔、ルイズの父とワルドの父がもっと大きくなったら結婚させようと約束をしていたのだ。
当時のルイズには、結婚というモノは考える暇がなかった。
厳しい母親や長女に追いかけられる日々…それが何時解放されるのかいつも考えていた。
自分の家の筈なのにあの頃の自分は何故か体の良い牢獄のように見えた。
それを今にも時々夢に見てしまい、起きたときには体中が汗まみれだった事もあった。

――しかし、時には良い夢も見る。
忌まわしい牢獄から、自分を助け出してくれるナイトが現れるのだ。

その夢で自分を牢獄から救い出してくれるのは…当時、十六歳だったワルド子爵である。

ルイズはその時の夢を思い出すかのように、ゆっくりとベッドに倒れ込むと目を閉じた。

―――イズ!ルイズ!お説教はまだ終わっていませんよ!!」
屋内だというのに、声を荒げて自分の名を叫ぶのはルイズの母。だれよりも規律を重んじる人。
ルイズでも頭が上がらない長女ですらも縮こまってしまう程である。
そんな厳しい母親は廊下を歩きながらルイズの姿を捜していた。

「はぁっ…!はぁっ…!」
そして夢の中では六歳であるルイズは今にも泣きそうな表情でとある場所へと向かっていた。
其所は中庭にある池であった。ほとりには小さなボートがあり、それを使って池の真ん中の島にある東屋へ行くのだ。
昔は良く家族でその東屋へ行ったのだが、今となってはそこへ赴く者は居ない。
軍を退役した父は近隣との付き合いと狩猟に夢中で、母は娘達の教育に必死である。
自然とその池には誰も近づかなくなり、ほぼ風景と化していた。
だからこそ隠れるのには最適で、夢の中の彼女は何かから逃げたいときにはいつも此所へ来ていた、

ルイズはあらかじめ小舟の中にしまいこんでいた毛布を頭から被り、そんな風にしていると…


「泣いているのかい?ルイズ。」


毛布越しから誰かが声を掛けてきた。
ルイズは被っていた毛布をどけると、自分の目の前には十六歳ぐらいのワルドがいた。
今と比べるとこの頃はまだまだ未熟だったがそれでも幼いルイズにとってはナイトも同然であった。
そう、自分をいつかこの牢獄のような家から救い出してくれる騎士。
「子爵さま、いらしていたのですね。」
幼いルイズは慌てて顔を隠した。みっともない姿をあこがれの人に見せるわけにはいかない。
ワルドはそんな彼女を見て天使のような微笑みを顔を隠したままのルイズに向けた。
「ああ、今日はきみのお父上に呼ばれたのさ。君との婚約に関することでね…。」
ルイズはあこがれの人の口から「婚約」という言葉を聞いて顔を赤くした。
「い…いけない人ですわね、子爵さまは…。」
「ルイズ、ぼくの小さなルイズ。君は、僕の事が嫌いかい?」
ワルドが、おどけた調子でそう言った。ルイズはそれに対し首を振る。
「ち、ちがいますわ。ただ単に良くわからないだけです。」
ルイズは顔を上げ、ワルドに笑顔を見せてそう言った。
ワルドはにっこりと笑みを浮かべると、そっと手をルイズの目の前に差し伸べた。

「ミ・レディ。手を貸してあげるよ。ほら、つかまって。もうじき晩餐会だ。」
だがしかし…差し伸べられた手を、ルイズは掴むことを躊躇った。
その様子に気づき、ワルドはルイズに優しく呟く。
「また怒られたのかい?大丈夫、僕からお父上に取り直してあげよう。」
ワルドの言葉を聞き、ルイズはコクリと小さく頷き、その手を取ろうとした。
その時、突如強い風が吹き、ルイズは思わず目を瞑ってしまった。
やがて数秒して風は止み、ルイズは再び目を開け―――


「……ここ、何処?」
――驚愕した。



目を開けた先には子爵の姿は無く、それどころか自分の家ですらなかった。
白いタイルに白い壁、おざなり程度に観葉植物を隅っこに置いている何処かの部屋。
ルイズはそんな所にいつの間にかそんな所にいた、我が家にはこんな部屋はない。
天井を見上げると明かりを灯すような物はないのに天井から光が差し込んでいた。
そして気づいたら、ルイズの体も六歳から十六歳―つまりは現在の姿――になっていた。
「一体何処なの?ここは…」
ルイズは今までワルド子爵の夢は時折見たりすることはあった。
そして色々なパターンがあった――晩餐会でワルド子爵とダンスしたり等々―がこんなのは全くの初体験であった。
ルイズは全くの初めての展開に目を白黒させていると、ふと誰かに声を掛けられた。

「あら?ちゃんと此所へ来てくれたのね。」
声を掛けられたルイズはそちらの方へと目を向けた。
そこには ――不条理なことがいくらでも通る夢の中だからか―― 白いイスに腰掛け、こちらを見つめている金髪の女性がいた。
作り物の様な綺麗な顔には笑みが浮かんでいて、それは先程ワルドが見せたものよりも更に優しいものに見える。
頭には変な形の白い帽子を被っており、白い導師服を身に纏っていた。
とりあえず声を掛けられたからにはちゃんと応えなければと思い、ルイズは口を開いた。

「ねぇ、そこの貴方。少し聞きたいんだけどここが何処だか―――」

しかし、ルイズの言葉は目の前に出された女性の手に制止され、言い切ることが出来なかった。
何も言わなくなったことを確認した女性はスッと手を下ろすと口を開いた。

「その前に、いくつか聞きたいことがあるのだけれど…よろしくて?」
女性のその透き通るような声にルイズは思わず頷いた。
まぁ夢の中なので…という考えも働き、ルイズは無意識の内にしていたのだ。
「じゃあまず一つめ…貴方は自分が特別な存在だと思ってる?」
その質問に、ルイズは首を横に振り、口を開いた。
「特別どころか蔑まれているわ…だって私は魔法が使えないし…。」
ルイズの卑屈な言葉に女性は肩をすくめた。
「ふ~ん…じゃあ二つめ、貴方は『虚無』という伝説の系統を信じてる?」
ルイズはその質問に言葉を詰まらせ、悩んだ後、半信半疑な様子で応えた。
「…私自身よくわからないわ。」
「そう…。まぁいいわ、信じなくても信じていても事実は一つだけだから。じゃあ最後の質問ね?」
妙に意味ありげに聞こえる風に女性は言うとルイズの方に少しだけ近寄ると中腰になった。
そして、不意にルイズの肩を掴むと口を開いた。


「あなた…使い魔を召喚した際、人間の少女を呼び出したでしょう。」



その直後、女性の目が優しそうな物から一気に鋭い物へと変貌し、ルイズを睨んだ。
それに伴い先程まで体中から発せられていた雰囲気もあっという間に緊迫した空気へと早変わりする。
自分を射抜かんばかりの鋭い視線に思わずルイズはビクッと体を大きく震わせる。

肩を掴まれたルイズは内心自分の夢のあまりの不条理と理不尽さに憤っていた。
なんだって夢の中だというのに痛い思いをしなければならないのだ!
折角の子爵様との甘い甘い夢を見ていたのにこれじゃあ台無しじゃない…!
と、ルイズがそんな事を思っていると、もの凄い激痛が肩から脳髄へと伝わって来た。

どうやら段々と掴む力が強くなっていくのが肩から伝わる痛みでルイズはそれを知った。
このままだとその内腕をもぎ取られるのでは?というありもしない事を思い浮かべ、ルイズはゾッとした。
しかしそのとき、急に女性がルイズの肩を掴んでいた手を離すと立ち上がり、後ろを振り向いた。
「ちょっ…いきなりどうしたのよ?」
解放されたルイズは息を少しだけ荒くして立ち上がると女性の後ろにもう一人誰か居ることに気づいた。

その姿は光り輝いていて明確な正体がハッキリと掴めない。
ただ分かることは、ルイズと比べれば大分身長が高い。ただされだけである。
手には大きくて長い太刀を持っており、熟練の戦士特有の鋭い殺気を目と思われる二つの赤い光点から放っている。
ただ、その視線の先にいるのはルイズではなく、そのルイズの前に佇む女性であるが。
「あらあら、もう感づかれたみたい。残念、『夢の中』なら大丈夫だと思ってたのに。」

そんな視線で睨み付けられている女性はと言うとそれに対し小馬鹿にする様な態度で人影に話しかけた。
それが合図となったのか―――突如人影が太刀の切っ先を女性に向け、素早い突きを繰り出した。
女性はそれに対し、身構えもせっず突っ立ているとフッ…と半透明の壁が女性の前に現れた。
人影の突きはその壁によってあっさりと防がれたが、すぐに体勢を立て直し後ろへと下がる。

突然の戦闘にルイズは棒立ち状態になっていたがそれに気づいた女性が声を掛ける。
「あぁ、今回はもうこれくらいでお開きね。貴方はもう目を覚ましても構わなくてよ。」
その声にハッとした顔になったルイズは人影の方を指さし、声を荒げて叫んだ。
「何よあれ!?というかなんで闘う羽目になってるのよ!?というかこれ私の夢よね!」
「静かにしなさい――これは夢。そう思えば何も気にすることはないわ。」
先程肩を掴んでいた時とは打って変わって捲し立てるルイズを子供をあやすかのような感じで女性はそう言った。
ルイズはそんな態度に更にイラッと来てしまったがそれよりも先にふと給に眠気が襲ってきた。


「それじゃ、また会いましょうね?今度は二人だけでね…。」

 プ ツ ッ ! 

まるでピンと張った糸を切った時に出る様な音を立ててルイズが意識を手放す直前、それを見た。

人影がダーツの要領で投げた太刀が女性の胸部を刺し貫いた瞬間を…。

だがしかし――女性はその攻撃に対して、顔に笑みを浮かべていた。
見る者を凍り付かせるような笑みを。

――その直後、人影は頭上に現れた『裂け目』から出てきた『何か』に潰され、一瞬にして即席ミンチと化した。









―――… ア ァ ア ァ ア ッ ! ! ! 」 

夢から現実へと戻ってきたルイズはみっともない叫び声を上げると上半身を勢いよく起こした。
だが勢い余ってか、そのままベッドから吹っ飛ぶような体勢になってしまい、見事床とキスする羽目になった。
ルイズはスクッと立ち上がるとジンジンと痛む鼻を押さえ、涙目になりながらも先程の夢の中の出来事を思い出そうとした。
「イタタタ…何なのよあの女…は…おんなは…あれぇ~?」
なんとか思い出そうとするが――何故か肝心の部分―あの金髪の女性が刺された直後の事―だけは何故か思い出せなかった。
おかしいなぁ…と思いつつルイズは先程の事を思い返していたが、一向に夢の思い出すことが出来ない。

ただ、その女性と会ったことだけしかルイズは覚えていなかった。
された筈の質問や、最後に現れた太刀を持った謎の人影の事は一向に思い出せない。

(一体なんなのよこれ?でももしかすると…疲れてるのかしら、私?
 …きっと日頃の苦労や過労なんかが祟ってあんな夢を見たのね。)

だからといって…あんな衝撃的な最後 ― 人影がミンチになる瞬間 ―― すら忘れてしまうのはどうかと思うが。
まぁそれを忘れていれば、当分肉料理が食えなくなるという事にはならないだろう。
(レイムの奴が帰ってきたら、とりあえずこの事を愚痴として話してやるわ。うん、そうしよう…!)
最も、そんな時霊夢は聞いている振りをしている事を幸か不幸かルイズは知らなかった。
ノックの音に気が付いたルイズはドアの方へと目を向ける。
(レイム…?いや、アイツならそのまま入ってくるだろうし…。)
こんな時間帯に誰かと思い、怪訝な表情をしているとそのノックが規則正しいことに気づく。
初めに長く『二回』、今度は短く『三回』とリズムを奏でるかのように聞こえてくる。
ルイズは規則正しいそのノックに、何か思い出したような…ハッとした表情になる。
「……あれ?これって確か…。」
数十秒置いてから再び初めに長く二回、次に短く三回とノックの音が聞こえた。

ルイズはそれで何かを思い出したのか、目に堪っていた涙を拭き取ると急いでドアを開けた。
そこに立っていたのは、真っ黒な頭巾をスッポリと被った、少女であった。
辺りをうかがうように首を回すと、そさくさと部屋に入り、勝手に扉を閉めた。
「あ、あなたは…?」
突然の訪問者にルイズは少し驚いたが、少女はシッと言わんばかりに口元に指を立てた。
それから。漆黒のマントの隙間から水晶の飾りが付いた杖を取り出すと軽くルーンを唱えて杖を振った。
光の粉が部屋を舞うのを見て、ルイズは一人呟いた。
「ディティクトマジック…。」
ポツリと呪文の名を呟いたルイズを見て、頭巾の少女は口を開いた。
「何処に目や耳があるかわからないものですからね。」
光の粉は静かに消え、部屋を覗く者がいないのを確認した後、少女は頭巾を取った。
そこから現れたのは、ルイズが良く知る相手で、幼い頃には遊び相手として付き合った存在。
いまではこの国のトップに近い少女として、民衆から支持されている。

ルイズは昔より美しくなったその顔を見て、急いで膝をつく。

「あ…アンリエッタ姫殿下…!?姫殿下じゃありませんか!」

無二の親友に名前を呼ばれ、若き麗しい王女は優しく微笑んだ。

「……お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ。」
ルイズの目の前に突如として現れたのは―――アンリエッタ王女であった。



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