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魔法少女リリカルルイズ41


危険に対する感覚は人間よりも動物のほうがはるかに鋭敏なものを持つ。
それは他の動物よりも強靱な肉体を持つ竜でも例外ではない。むしろより優れているかも知れない。
騎手からの操縦が突如失われた風竜はすぐさまシルフィードの追跡をやめ、この危険を感じる空域から離れるべく進路を変えた。
そんな追跡者の事情など知る由もなかったが、飛び去っていく風竜の姿にキュルケはほっと胸をなで下ろした。
「やったわ!うわくいったわよ」
竜騎士は完全に自分達を見失ない、ふらふらと全く見当外れの方向に飛んでいる。
レコン・キスタに捕らえられる危機からは脱したのだ。
そう考えたキュルケはまだ前を見続けている親友を抱きしめた。
「ねえ、でしょ?タバサ」
こんな事をしても、この青い髪の下の表情を滅多に変えない親友が自分と同じように感情をあらわにするとは思っていない。
だからタバサが頭を胸にぽんと落としてきたのには驚いてしまった。
「ちょっと、タバサ」
思いがけない仕草に顔を赤らめながらも慌ててしまったが、様子がおかしい事に気付いた。
タバサの体は力を失っているる上に白い制服が透けるくらいに汗でぬれてしまっている。
「どうしたの?どうしたのよタバサ!」
頬を軽く叩いて体をさすってもタバサは答えない。
目をぎゅっとつぶり、荒く呼吸をしている様子は病にかかったかのようにも見える。
「タバサはどうしたんだい?このままでは!」
「静かにしなさい!」
ギーシュが騒ぐのもわかる。
タバサが倒れてしまったなら誰もシルフィードを操れない。
シルフィードの主人でもなく竜騎士でもないキュルケやギーシュにはそんなことできっこない。
「ねえ、お願い。シルフィード。私の言うことを聞いて」
もう、やれることをやるしかない。
ダメ元でキュルケはシルフィードに向かって悲鳴の混じりの声で叫んだ。
「きゅう」
シルフィードが頷いたように見えたのは気のせいだろうか。
使い魔となった動物は次第に知能が得て、言葉を理解するようになるが、主人以外の言葉を理解するには時間がかかる。
だが今のシルフィードはまるで次の言葉を待っているように見えた。
「お願いよ。ゆっくり降りて。ゆっくり」
2人が落ちないようにタバサとユーノを抱く手に力を入れて待った。
「きゅっ」
するとキュルケの言葉に従って、シルフィードがゆっくり地面に近づいていく。
シルフィードは言葉が理解できたのだ。
これなら無事に下に降りられるかも知れない。
「キュルケ、あそこだ。あそこを見てくれ」
シルフィードの背びれにしがみつきながら首を伸ばしているギーシュの視線をキュルケは追ってみた。
すぐにはわかった。
森を切り開いて作った空き地の中に数件の藁葺きの小屋が建っている。
「ねえ、シルフィード。わかる?あそこの小屋の前よ。あそこに降りて」
この少し複雑な指示をシルフィードは理解してくれるだろうか。
その不安にシルフィードは
「きゅい」
と小さく鳴いて翼をばさりと動かす。
風の音が大きくなると、雲が高く上っていく。
キュルケの腕に抱かれるタバサはいつにも増して小さく見えた。

小屋の前に降りたシルフィードは地面に足を着く寸前に羽いっぱいに空気を掴んで大きく羽ばたいた。
キュルケは砂埃を心配したが、森の湿り気を含んだ地面はそれを巻き起こすことなく空からの侵入者を迎え入れてくれた。
シルフィードの背中かから下りるキュルケには無数の視線が向けられる。
その一つ一つに笑顔で返しているうちに眉をぴくりと動かした。
怯えている者、好奇心が勝っている者、いろいろあるがその視線は全て子供の目から出ているのだ。
「ねえ、誰か大人の人はいないの?お父さんやお母さんは?」
その声に驚いたのか子供達は一斉に隠れて姿を隠してしまう。
もっとも、やっぱり好奇心の勝っている子供もいるらしく、建物の影や木の後ろからそっと出した顔が見えてはいた。
いつもならそれをからかって遊んでやりたくもなったのだが、今は続いて降りてきたギーシュが背負っているタバサのほうが心配だ。
荒い息に交じってうめき声まで聞こえてくる。
「ねえ、誰かいないの?ねえ」
それに応えるように開かれた扉はちょうど真正面にあった。
そこから出てきたのはキュルケ達を見ていた子供達よりはずっと年上ではあるものの、まだ大人にはなりきれていない少女だった。
ただの少女ではない。誰の目でも引いてしまうような少女だ。
輝いているような金色の長髪に、美しいという言葉が陳腐に感じるような顔立ち。
宮廷の婦人達もうらやむようなきめの細かい肌。
身につけている粗末な草色のワンピースと白いサンダルも彼女が身につければ美しさを引き立てるアクセサリーとなる。
耳まで隠せそうな大きな帽子はそれらより上等であったが、それもアンバランスではなくミスマッチとなっていた。
だが、実のところそんなものはどうでもいい。
いや、ほんとにどうでもいい。
ギーシュの目を釘付けにしているのも、キュルケを絶句させてしまっているのもそんなものではないからだ。
それは何か……胸だ。
その少女の胸だ。
いや、胸と言っていいのかどうか。
とにかく反則的に大きい胸をその少女は備えていたのだ。
キュルケも男を惹きつける要素の一つとして自分の胸には自信を持っていたが、さすがにこれほどではない。
「そこのあなた」
といっても、その驚きに浸っている場合ではない。
「は、はい」
恥ずかしがり屋なのか、その少女は一番人の目を引く胸ではなく、顔を帽子で隠して答えた。
「私の連れが倒れてしまったの。休ませてもらえないかしら?」
「あ、はい。どうぞ」
首を伸ばすようにキュルケの後ろを見た少女はギーシュに背負われてぐったりしているタバサに気づき、扉を大きく開けてキュルケ達を招く。
シルフィードも入ろうとしたが、扉をくぐれるはずもなく窓の外で悲しげにきゅいきゅいなくばかりだった。


たった一通の手紙。
それがこの危険な旅の始まりであり目的だった。
偶然に助けられ、その手紙はアルビオンのニューカッスル城にてウェールズ・テューダーより渡され、今ルイズの手の中にあった。
求めていたものを手に入れたのだ。
それなのにルイズは喜びを感じることができずにいた。
この手の中にある手紙にはアンリエッタの思いが込められている。
もし、それが重さを持つとしたらルイズの手には余るほどの重さになるに違いない。
なのに、それ程のものを持ってしてもアルビオン王家最後の王子として圧倒的な兵力を持つ叛徒レコン・キスタと戦い、それによる死を持ってしてトリステイン侵攻を遅らせようとするウェールズの気持ちを変えることができなかった。
しかしウェールズの命こそアンリエッタが本当に望んでいたもののはず。
「だったら、私がここに来た意味はあったの?」
──ユーノが命をかけたことに意味はあったの?
それに答える者はいない。
ルイズは溜息ととも立ち上がり、傍らに置いていたドレスを手に取った。
今夜、この城で行われるパーティにはこのドレスを着て出るつもりだ。
それは華やかなものになるだろう。
だが、そのこともルイズの心を晴らすようなものではなかった。

じわっと広がるスープの味を口の中で転がす。
高価な香草や肉を使っている学院で食べるスープとはまた違う素朴な美味しさをキュルケは味わっていた。。
さして自覚はしていなかったがお腹の中はもう空っぽだったようで、キュルケはスプーンをいつもより早く動かしている。
ギーシュに至ってはうまいうまいと皿に口をつけて直接かき込んでいるような有様だ。
皿を空にして一休みしていると、帽子をかぶったティファニアが部屋に入って来た。
「あの、おかわりはいかがですか?」
室内でも帽子を取らないティファニアにおかしさを感じはしたものの、もう少し物足りなかったキュルケはその言葉に甘えてもう一杯食べることにした。
「タバサのこと、ありがとうね」
「あ、いえ。そんな」
貴族にお礼を言われたせいかティファニアは大げさなほどにどぎまぎして帽子の鍔で耳を押さえた。
「で、タバサはどうだった?」
キュルケはトライアングルのメイジではあるが怪我や病気の治療に使える水の魔法を苦手としている。
ギーシュに至ってはドットで土以外には不案内。
借りたベッドに寝かせたものの突然倒れたタバサをどうしたらいいか分からないでいると、キュルケ達を出迎えたティファニアが看病をかってでてくれていた。
「何か酷く疲れているようです。お薬を飲んでいただきました。」
「薬?水の秘薬があるのかい?」
いち早くもらったおかわりを口の中に入れたまま驚くギーシュにティファニアは頭を振って答えた。
「いえ、そんなものじゃないんです。この辺りで採れる薬草です」
孤児院をしているというこの村の子供達が病気や怪我をした時のためにおいていた薬をわけてくれたのだろう。
「今は?」
「寝てしまわれました」
薬がよほどよく効いたのか、ここに来た時は息も荒くうなされていたタバサが、もう寝てしまうくらいに良くなったのだ。
安心したキュルケはおかわりのスープを落ち着いて口に運んだ。


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