あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔は地獄のコックさん

 ――これが最後の(逆)オークションです。
 ――ここに金貨200枚あります。
 ――貴方はこの金額で人を殺せますか?
『YES・殺ス』
 ――人様に迷惑をかける悪い子は……。

「はい、これでよし」
 ルイズが召喚した平民の女性・詩織は、シエスタの服の背中側にあるリボンを結び終えた。
「それじゃシエスタちゃん、気をつけて行ってくるのよ」
「はい、ミス・シオリ」
「今日はいっぱい楽しい事ばかりだけど、人様に迷惑や悪い事したら私はもう許さないんだから」
「はい、ミス・シオリ。私絶対にしませんよ!」
「いい子……、シエスタちゃんは本当に『いい子』ねえ……」
「それではミス・シオリ、いってきます」
「はい、行ってらっしゃい」
 シエスタを見送って室内に戻った詩織にルイズが声をかける。
「シエスタも今日は休みでしょ?」
「ええ、故郷のタルブ村に里帰りするんですって」
「そうなの……、シエスタはいい子ね……。元気で優しくてまっすぐで……。昨日コックのマルトーも言ってたわよ……。シエスタの事……、本当にいい子だって……」
「そう……、私も嬉しいわ。こんな物騒な世の中でもシエスタちゃんだけは……」
(――……だから、放っておけない)
「みんなシオリのおかげよ」
「もう……、何言ってるの、ルイズちゃん……」
(――悪い子は……)

「来んな……」
 モット伯はパイプの煙を吐き出しつつそう呟いた。
「ノーザとセントラ……、あれから3日経つがまったく連絡が取れん……。いったいどうなっておるのだ?」
「え……、本当ですか?」
「1度連絡はあったのだがな……。『美女に誘惑されました 連絡を待ってください』……。それっきり何ら音沙汰無しだ」
「え、本当ですか!? 2人ともずるいですよ! 今頃お楽しみですよ!」
「とにかく……む?」
 その時、モット伯達は黒眼鏡をかけた赤髪の少女が物陰から自分達を手招きしている事に気付いた。
「ま、待たんか!」
「伯爵様、あの女きっとノーザとセントラを誘惑した女ですよ。きっと迎えに来たんです」
「馬鹿が! それよりもあの娘を逃がすな!」
「はいい!」
 しばらく走ってモット伯と部下は少女を袋小路に追い詰めた。
「やっと追い詰めたぞ! 手間を掛けさせてくれる。ノーザとセントラはどうした? 黙っていないで答えんか!」
 しかし少女は答えない。
「貴様……、酷い目に遭いたいようだな……」
「酷い目に遭うだって? このあたしが……? 馬鹿言ってんじゃないわよ、そんな事ばっかピーピーほざく『悪い子は』――」
 少女は黒眼鏡を外し、ぞっとするような視線と共に手にした鎌をちらつかせて宣言する。
「――地獄に堕ちなさい」
「うっ……っああああ!」
 ――蜘蛛だ……。その時私は桃髪の蜘蛛を見た……。
 ――それから何がいったいどうなったのか……。訳がわからん……。ただ覚えているのはあの娘の言葉……。
『悪い子は地獄に堕ちなさい』

「む……?」
 目を覚ましたモット伯の視界には、薄暗い厨房と料理をしている女性の後ろ姿が映っていた。
「尻だ……」
「あら……、目が覚めたみたいね。はい」
「あ……、え?」
「シチューよ。待ってて、少し冷ましますから。……はい、あーん」
 女性・詩織はそう言ってシチューをすくったスプーンをモット伯の口に運ぶ。
「あーん……ではないぞ、おい!」
「あら、シチューはお嫌い?」
「いや、そうではない……。む……、ちょっと待て。何から話したものか……」
 その時両足に鈍い痛みが走り、モット伯は思わず呻き声を上げた。
「あら? どうしたの? どこか痛むの? まあ……」
「いや、その……、何か急に……!」
 そこでふと自分が女性に尋ねるべき事を思い出し、
「ここは……、どこだ? 私は家臣と2人で紅い娘を追いかけていたのだ。ノーザと……セントラを誘惑した娘だ。追い詰めたのはいいのだが、突然黒い影が落ちてきて目を開けたらこんな場所だ。何だここは?」
 そこまで一気にまくし立てたかと思うと今度は突然、
「……っき、貴様何者だあ!? なぜ私がこんなくらい場所でシチューを食べねばならんのだあ!」
 自分が座っている椅子を激しく揺らして暴れまわる。
「こらあ、明かりを点けんかあ!」
「ああ、駄目、動いちゃ」
「ぐわあ!」
 その勢いで椅子がひっくり返り、モット伯は体で扉を押し開けて眩い光溢れる隣室に転がり込んだ。
「っく、いたたた……。なぜ私がこのような目に……」
 ようやく光に慣れてきたモット伯の視界に入ってきたのは、巨大な寸胴や何本も並べられた包丁といった厨房の風景だった。
「え? 何だ、ここは?」
「地獄よ。あんたは地獄に堕ちたのよ……」
 その言葉と共に、モット伯の背後の暗がりからキュルケが姿を現す。
「は? ……あ! 赤い娘!」
「じ……、地獄だと? 何を言っておる? 厨房だろう?」
「ふん、厨房ね……。言われてみればやっぱりそうかもね」
「ふう……、やれやれ。なかなか大変なものなのね……、こういうのって……」
 続いて現れたのは、顔に蜘蛛の刺青が浮かび上がったルイズ。
(もっ、もっ、桃髪の蜘蛛……!)
「いつもはただ殺しちゃうだけなのに、後始末なんて」
「仕方ないでしょ、逆オークションで落札した人が応援を求めた時、『それ』に『参加した人』はヘルプしくちゃいけないんだから……。ルールは守らないとね、職業・殺し屋。は」
「しょ……、コロ……」
「そう、殺し屋なの。職業・殺し屋。それが私達のお仕事なの。人を殺す事が……」
 回転ノコギリを手にモット伯を見つめる詩織。
「……っな……」
「だからね……、頼まれたのよ。『あんた達を殺せ』ってね……。あんた達が権力に物を言わせてさらった女達の家族からよ……。その中には婚約してた女もいたって話よ」
「自殺したそうよ……。慰みものにされたショックで……。崖からポオオン……」
「あなた……、悪い子ね」
 詩織は身を屈めかすかに笑みすら浮かべてモット伯の顔を覗き込んだ。
「っひ!?」
「人様に迷惑ばかりかけて。あなたって本当に悪い子……。そう……、私のお姉さんみたい」
 詩織は淡々と語り始める。
「……私にはね、双子のお姉さんがいたの……。私もお姉さんも双子だから、姿……形……みんなそっくりなの……。でもね……、私とお姉さん、1つだけ大きな違いがあったの。それは、お姉さんは『悪い子』だったの。お姉さんは悪い子だから、悪い事をしたらみんな私のせいにするの……。だから私……、いつもお父さんとお母さんに叱られて泣いていたの。私はいい子なのに……、いい子なのに……。……だから落としちゃったの、村外れの用水路に……。お姉さんが……、私にそっくりな悪いお姉さんがどんどん沈んでいくの……。……死んじゃえ、悪い子なんか。悪い子はみんな死んじゃえ……」
「依頼人はこう注文しててね。殺る時は『とっても厳しいやり方』で……ってね」
 中身の煮立った寸胴から目を離したくても離せない。
 尋ねてはいけない、尋ねてはいけないと思いつつもモット伯は詩織に尋ねてしまった。
「……ノ、ノーザ達……は……」
「煮ちゃった……」
「ひいいいいっ!」
 そこから一目散に逃亡しようとしたモット伯だったが、それは不可能だった。
 ……なぜなら彼の足は足首から先が切り取られていたからだ……。
「え、きひ、ひいいやああああああいいいいい」
 半狂乱になって首ももげよとばかりに激しく振り乱して絶叫するモット伯の声が、室内に響き渡る。
「あしいいひいひ、あし、はあはあ、ひ、あっ、ひいはあひ、あひい、あしいい、ああはああ、なひい、はあー、あひいあしあし、はあひいい」
「駄目よ、男の子がそんなに痛がっちゃ……。本当に仕方がないんだから」
 最早意味をなさない音の羅列を口から放っているだけのモット伯を冷たく見据える3人の殺し屋。
「ふんいいいいい、ふんいいいいいいっ、あし、ひ、はああ、はあ、はあ……」
「あなた達が悪さをしなければ、連れ去られた女性も幸せな人生を遅れたでしょうに」
「タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ……」
「ほんとに悪い子」
 回転ノコギリのスイッチが入る。
「さあ、次はあなたの番よ……ね」
 微笑みを浮かべてモット伯を見つめそう言ったのだった。

 ――そうだ……。
 ――私は聞いた……。
 ――暗闇の中で……。
「ねえ、これどうするのよ? こんなに煮込んじゃって。ミス・シオリが始末するの?」
「フフ、まさか。キュルケちゃん、いかがですか?」
「要らないわよ、馬鹿!」
「ルイズちゃんは……?」
「川に流せば……?」
「うフフ、そうね」
 ――川か……。やはり悪い子は地獄に堕ちるのだな……、
「まったく怖いわね、『死織』は」
 ――ミス・死織……。

「それじゃ行ってくるわね」
「はい、ルイズちゃん」
「ミス・シオリ、行ってきます」
「はい、シエスタちゃんも行ってらっしゃい。今日もいい子で頑張るのよ。人様に迷惑や悪い事をしたら私はもう許さないんだから」
「はい、ミス・シオリ。私絶対にしませんよ!」
「本当にシエスタちゃんはいい子ね」
「私いい子ですよ!」
「私もいい子は大好きよ。……でも、悪い子は大嫌い。だからシエスタちゃん、いい子でいるのよ」
「はい!」
「うふふ……、うふふふふふ……」



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