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超神ネイガーVS青銅のギーシュ 「二股を掛ける男は豪石!」

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 トリステイン魔法学院の中心にある本塔。その西側にヴェストリの広場はあった。 
その広場は、普段は日中でも日の辺りが悪いことから人の行き来も少ない静かな場所である。
ところが、今そこは常の静けさとはうって変わった賑わいを見せていた。

「決闘だ! ゼロのルイズの使い魔とギーシュが決闘だ!」

 無責任に囃し立てる学院の生徒達に囲まれて向き合うのは、この喧噪の原因たる一人の青年と一人の少年。
ゼロのルイズの使い魔と、彼女の同級生である青銅のギーシュだ。
 今の世において貴族同士の決闘は御法度。しかし、貴族と平民の決闘は禁じられていない。
そんな理屈を振りかざし、青年を決闘の場に引き摺り出したのはギーシュだった。
 かつて王が力を持ち、貴族が貴族らしくあった古き良き時代には名誉と誇りを掛けた決闘が各地で行われていたらしい。
だが、実際には傍から見ると下らない理由で魔法を唱え合っていたそうだ。例えば一人の女性を二人の男性が取り合って、などである。
この決闘の理由も、傍から見ると下らないものであった。
ギーシュが恋人から貰った香水の瓶をうっかり落としてしまい、それを学院のメイドが拾ったことがきっかけで彼の浮気がばれた。
ギーシュがそのメイドに八つ当たりしているところを、ルイズの使い魔の青年に「自業自得だ」と説教された。
それに腹を立てたギーシュが青年に決闘を申し込み、そしてこの状況に至る、というわけだ。
経緯を説明すると実に下らない。だが、少なくとも当事者達にとってやる意味のある戦いではあった。

「よく逃げなかったね。その蛮勇だけは称賛に値するよ」

 髪をかき上げ、芝居がかった口調で青年に言い放つギーシュ。余裕綽綽といった様子である。
思い上がった平民に対し、少々キツい灸を据えてやる。それが少年の戦う意味だった。
 少年の言葉を聴いているのかいないのか、青年は目を閉じ、腕を組んで黙っていた。
青年の心に浮かぶのは絶対的強者から理不尽な怒りを向けられたメイド、シエスタの泣きそうな顔だった。
シエスタは気立てのいい娘だ。突然この世界に召喚され、右も左もわからない自分に親切にしてくれた。
そんな彼女の泣き顔など見たくはない。それが青年の戦う意味だった。

「その蛮勇に敬意を表して最後のチャンスをあげよう。土下座して僕に詫びるんだ。そうすれば許してやらないこともないよ?」
「お断りだ。オラが謝る理由はねえ。おめの方こそシエスタとあの娘っ子達に詫びることがあるんでねえか?」

 ギーシュの顔が怒りに歪んだ。彼の杖たる薔薇の造花を振るい、叫ぶ。

「そうか……なら、後悔するといい! 貴族に逆らったことを!」

 造花から地面に落ちた一枚の花弁が、たちまちの内に鎧を纏った女性の像となった。
魔法の力で生み出された青銅のゴーレムである。
ギーシュは己の傍に立つ等身大のゴーレムを見て獲物をいたぶる猫のような笑みを浮かべた。

「僕の二つ名は『青銅』。土のメイジだ。よってこの青銅のゴーレム"ワルキューレ"を以てお相手しよう。よもや卑怯だとは言うまいね?」
「構わん。魔法でも何でも好きに使っだらええ」

 動揺の欠片も見せない生意気な平民の態度に、ギーシュの苛立ちは高まるばかりだった。
この平民は恐れるべきなのだ。顔を蒼くして後悔の表情を浮かべるべきなのだ。
だというのに、この余裕は何だ? 気に喰わない。実に気に喰わない。
その苛立ちが思わず口を吐いて出そうになったが、それは彼のプライドが許さなかった。
どうせ自分の勝ちは揺るがないのだ。これ以上平民の戯言に付き合って無駄に神経を疲れさせる必要は無い。

「行け! ワルキューレ!」

 ギーシュが造花を振ると同時、青銅のゴーレムが青年に向って躍り掛かった。
周囲の歓声と悲鳴。誰もが次の瞬間青年が無残な姿を衆目に晒すことを疑わなかった。だが。

「豪石!」

 右腕を真っ直ぐに突き出し、青年――アキタ・ケンは叫んでいた。その身体が強く光る。
掌にある神の石「豪石玉」から、ケンの身体に力が流れ込んだ。閉じた目の裏に浮かぶのは舞い散る火の粉のイメージだ。
広場全てを照らし出すようなその光が止んだ時、そこにいるものの姿を見てその場の誰もが仰天した。
角と牙をあしらった赤い仮面。出刃包丁型の肩当て。怪物の顔のようにも見える胸当て。腰に巻かれたベルト。全身を包む真っ黒なボディースーツ。
秋田の英雄、超神ネイガーがハルケギニアの地に降り立った。

「はっ!」

 裂帛の気合を込め、ネイガーが左拳をワルキューレの胸元に叩き込んだ。轟音と共に拳がめり込む。
すかさず拳を引き抜き、左、右、左。怒りの鉄拳が唸りを上げてワルキューレの身体を乱打した。
一息のうちにワルキューレは人形の体を為さなくなった。
前衛的なオブジェと化したゴーレム目掛け、ネイガーの回し蹴りが止めとばかりに放たれた。
青銅製のゴーレムはその重量と硬さを持って蹴りを受け止めようとするものの、破壊的な威力の前に抵抗虚しく吹っ飛ばされ、どうと地面に倒れ伏した。

「ギーシュ! 二股を掛けた挙句、それがバレたからど言ってシエスタに八つ当たりするとは許せん! おなご泣かすおどこは最低だっておがさんに
習わながったのが、このほじなしめ!」

 ネイガーが見得を切って見せた。それは人の声であり、神の声であり、鬼の声であった。
ネイガーに力を貸すは、来訪神ナモミハギ。ナモミ=長時間火にあたり続けることによって生じる皮膚の変質、つまりは怠け者の印を刈り取る者である
ナモミハギは、転じて刃物を持ち悪や厄を剥ぎ落とす神となった。
秋田には人が人を超えて鬼神となる儀式が存在する。角と牙を持つその姿を人と呼ぶには恐れ多い。
人を惑わす悪神・悪鬼を諌め懲らしめるその存在は、まさに神をも超えたもの。ネイガーとは、正しく超神を名乗るものなのだ。

「ほ、ほじ……!?」

 ただの平民だと思っていた相手が亜人に変身し、あっという間にワルキューレを破壊した。
理解を越えた事態にギーシュはただ呆然とするばかりだった。ただ一つはっきりしていることは、目の前の亜人が圧倒的に強いということ。

「ワ、ワルキューレ! やっつけて誤魔化せ!」

 慌てる余りギーシュは自分でも訳のわからないことを言ってしまった。それでも何とかゴーレムを練成するための呪文を唱え、一気に六体を召喚した。
ゴーレムはこれで打ち止めだ。正に背水の陣である。

「キリタン・ソード!」

 その声と共に、ネイガーの両手に一対の白刃の剣が現れた。左手のルーンが眩く輝いた。
キリタン・ソード。ケンの祖母手作りのきりたんぽが豪石玉の力で変化したきりたんぼ型の剣である。

「悪い子はいねがあぁぁぁぁぁぁ!」

 右の剣に家族愛。左の剣に郷土愛。二つの大きな愛が込められた刃を携え、ネイガーが咆哮を挙げて突進した。
 超神ネイガーは戦う。理不尽に脅かされて泣く子のために。地位と権力を振りかざす悪い子をごじゃぐために。
かつて秋田がだじゃく組合の手によるカメムシの大発生という恐るべき事態に直面した時、ただ一人田を守るために戦ったアキタ・ケンの熱い心は遠く
故郷を離れた今でも一転の曇りも無かった。
 暴嵐の如き勢いでネイガーがキリタン・ソードを振るう。悪者を睨みつける鋭いまなぐ。出刃包丁の切っ先のように鋭い斬撃。烈火の如く燃え上がる
闘志はそれ自体が分厚い壁となって敵を寄せ付けない。その姿はまさに鬼神だった。

「天然記念物並みの必殺技――比内鶏クラッシュ!」

 炎の羽が舞い踊った。立て続けに放たれた飛ぶ斬撃がワルキューレ最後の一体をバラバラに切り裂く。そして、爆発。
響き渡る鶏の声が、決着を高らかに歌い上げていた。

超神ネイガーからのメッセージ

「皆! 二股は人の心を傷付けるとても酷い行為なんだ! 軽い気持ちでやったりしたら絶対に駄目だぞ!
もしそんなほじなしがいたら、このオラがごうじゃくしてける! オラは皆の笑顔が大好きだぞ! へばな!」



分かりにくいと思われる方言の解説

  • おがさん→母親。
  • ほじなし→間抜け。分別の無い者。
  • だじゃく→乱暴。横暴。
  • まなぐ→瞳。
  • ごうじゃぐ→叱る。
  • へばな→じゃあな。

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