あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔のカービィ 12


「こちらです」

そう言ってロングビルがルイズを連れて来たのは、小屋の近くにある少し拓けた場所だった。
切り株がいくつかあるところから、小屋の持ち主が薪の調達などに使っていた場所なのだろう。
推察もそこそこに、ルイズは頻りに辺りを見回し始めた。

しかし、そこにはルイズが求めているような物は無い。
あるのは古びた切り株とロングビルの後姿。
それとルイズの腕から飛び出し、切り株の上で遊んでいるカービィだけ。

「あの、ミス・ロングビル。さっき言っていたものは一体どこに?」
「ああ、それならここですよ」

振り向いたロングビルが持っていたのは、彼女の報告にあった黒いローブその物だった。
その色が、ルイズの脳裏に昨夜の映像をフラッシュバックさせる。
確信を持つためにルイズはもっと近くでよく確認しようと、ロングビルに駆け寄った。

「おっと、それ以上動くんじゃないよ!」

だが何の前触れもなく、ルイズの眼前にロングビルの杖突き立てられた。
謂れ無く突き付けられた杖にルイズは硬直。
切り株で遊んでいたカービィも、目を丸くしてロングビルとルイズを交互に見ている。
対するロングビルの口元は、普段の冷静な雰囲気からは想像も出来ないほど嫌らしく歪んでいた。

「ったく。ガキの癖に盗賊を強請ろうなんて、随分図太い神経してるねぇ」
「盗賊? 強請る?」
「ここまで来ると感心するよ。あんたは『イイ貴族サマ』になるだろうよ」

皮肉たっぷりに言い放つロングビルだったが、ルイズにはその真意を半分も汲み取ることが出来ない。
分かるのは、彼女と自分の間に何か大きな誤解がという名の溝が生まれていることだけだった。

「ミ、ミス・ロングビル。さっきから話が見えないのだけれど……」
「まだしらばっくれる気かい!?」
「ひっ!」
「ぽよっ!?」

怒号と共にロングビルの杖を握る力が一層強まる。
覇気を含んだ怒号に、ルイズは思わず目を瞑った。
その声にカービィもやっと状況を把握し、ルイズの足元へ飛び付く。

「あんたにあたしの正体がバレてるのは分かってるんだよ」

―――――えっ?

一瞬だけ、ルイズはロングビルの言葉を理解することが出来なかった。
その間にもロングビルは言葉を続ける。

「使い魔と主人の感覚は繋がっている。メイジの常識だろう?」

今度はちゃんとルイズの頭に言葉が情報として入ってきた。
そしてロングビルの言葉を理解したルイズは、先程感じた大きな溝の正体に気がついた。

「昨日の晩、あんたの使い魔はあたしの顔をバッチリ見てるんだよ」

簡単な話である。要は、カービィという存在が非常識だったのだ。
『使い魔は主人の目となり耳となる』というメイジの一般常識から外れていた。ただそれだけの事。
その為に、目の前の人物は盛大に勘違いし、ルイズを頭の中で悪女に仕立て上げ、勝手に自分の正体まで明かしてしまったのだ。

「だからあんたがあたしの、『怪盗フーケ』の顔を知らないわけがないだろう?」

言いたい事を言い放ったロングビル。いや、怪盗フーケの顔には、まだあの嫌らしい笑みが浮かんでいた。
だが、その表情は真実を理解したルイズにはこの上なく滑稽に映る。
貴族たちを恐怖に陥れている怪盗フーケの痴態を目の前にしているのだ。無理もないだろう。

「ぷふぅ」
「は?」
「ぽよぉ?」

ルイズは必死に笑いを堪えようと雑草だらけの地面を凝視したが、笑いは既に口から漏れ出していた。
気の抜けるような音を出したルイズの噴き出しに、間抜けな声で答えるカービィとフーケ。
これが引き金となったのか、ルイズの我慢は機能する前に限界を迎えた。

「あはっ、あははははは! お、おっかし、あははははははは!」
「な、何笑ってるんだい!?」

今度はフーケが困惑する番だった。
急に笑い出したルイズを前に、先程の笑みが引き攣りに変わる。
しかしルイズもルイズで、笑ってしまった以上もう止まれない。
込み上げてくる笑いを鎮めながら顔を上げる。

「く、くくく……あ、あんたね、勘違いしてるのよ!」
「勘違い、だぁ?」

怪訝そうな顔を浮かべ、フーケは構えていた杖を握る手に力を込める。
そんな事はお構い無しに、ルイズは勝気な姿勢を崩さない。

「そう、勘違い。カービィはね、他の使い魔とは違うのよ」
「何言ってんだい。使い魔に種族以外の違いも何もあるもんか」
「でも違うのよ。カービィと私は感覚を共有してないの。つまり、カービィの見聞きしているものは、私にはこれっぽっちも伝わって来ていないってことよ!!」

キュルケがこの場にいたら確実に笑い飛ばしていたであろう事を堂々と言い放つルイズ。
昂っている感情によって、本人がそれを自虐だと気付いていないのが救いであろう。
フーケはそれを聞いて、漸くルイズが笑いだした理由に気が付いたようだ。

「それじゃあ、あたしは」
「そ、勝手に勘違いして勝手に正体を明かしてくれたって訳!」

推理小説に登場する名探偵宜しく、ルイズはフーケに杖を突き付ける。
勝ちを確信したルイズは、高らかに叫んだ。それはもう清々しいほどに。

「さぁ、お喋りはここまでよ! 潔く捕まって『煌きの星』を」
「で、そんな事バラしてどうするんだい?」
「えっ?」

ルイズの決め台詞は、フーケのたった一言に遮られた。
同時に昂っていた感情は消沈し、冷静な思考が戻ってくる。
確かに、フーケの汚点を白昼の元に晒したところでルイズには何もメリットはない。
推理小説のように、犯人を追いつめ罪を認めさせればハッピーエンド。とは行かないのだ。
寧ろ実力差が大きく開いている相手の神経を逆撫でして、自分自身の身に危険が――

そこまで考えて、ルイズは鋭い殺気が自分の周りを包んでいるのに気が付いた。
いや、冷静に考えていれば、フーケを問い質せばこうなる事は簡単に予測できたのだ。

「さぁて、元からあんた達を生かしておく気はなかったけど……こりゃ本格的にヤらないとダメみたいだねぇ」

地響きとともに、フーケの視線がルイズの遥か上へ上へと昇って行く。
もちろん、フーケが巨大化したわけではない。
フーケの足元の地面が盛り上がり、巨大なゴーレムとなったのだ。
しかし、ルイズにはこの激しい地響きがフーケの怒りその物に思えてならなかった。

「と、とにかく退散よ!」
「ぽよおぉ!?」

ルイズは足下で右往左往しているカービィを引っ掴むと、一目散に小屋へと走った。

この時、ルイズはシエスタを連れて来なかった自分に心の底から感謝した。
彼女がいたら、間違いなく自分と共に危ない目に逢っていただろう。
そんな事を考えているうちに、ルイズの視界に小屋とキュルケ達の姿が入ってきた。
ルイズが駆け寄って来るのに気が付いたのか、キュルケ達もルイズ達へ駆け寄る。

「ヴァリエール、どこ行ってたのよ! あんたとカービィの姿は見えないわ、突然ゴーレムが出てくるわ、おまけにミス・ロングビルまで居なくなって!」
「そのミス・ロングビルがフーケだったのよ!」
「なんだって! それは本当かい!?」
「細かい話は後! 今はとにかくあのゴーレムから逃げないと、私たちみんなあのゴーレムに潰されちゃうわ!」

状況が全く把握できていない三人にも、ルイズから焦燥感が伝わる。
その間にも、ゴーレムは刻一刻と小屋へと近付いて来ていた。
時間がないことを悟ったキュルケがタバサへ視線を送る。

「タバサ、あなたの使い魔で何とか逃げられない!?」
「足止め出来れば、可能」
「だ、そうよ?」

キュルケが視線をルイズへ戻すと、その手には杖が握られている。
ギーシュ、タバサ、そしてキュルケも同じく杖を手にしており、臨戦態勢は既に整っていた。

「ファイア・ボール!」

最初に動いたのはキュルケとタバサだった。
灼熱の火球と槍状の氷塊がゴーレムへ襲いかかり、直撃する。
しかし、火球は軽い焦げ跡、氷塊はそのまま突き刺さり、大したダメージを与えることは出来ない。
続いてギーシュが二体のワルキューレを出現させたが、闇雲に向かわせたためにあっという間にゴーレムに踏み潰されてしまった。

「僕のワルキューレが、あんな簡単に……」
「弱音吐いてる暇があったら攻撃しなさい! ファイア・ボール!」

追撃とばかりにルイズはキュルケと同じルーンを唱えるが、発生したのはまたも爆発だった。
やはり駄目かと奥歯を噛みしめるルイズ。
しかし爆煙が晴れた先には、爆発によって抉られたゴーレムの胸があった。

(やった!)

誰もがそう思った次の瞬間、爆発によって抉られた穴は辺りの土によって瞬く間に修復されていった。

「くっ、なんて奴なの!」
「今は時間を稼げばいい。無駄でも攻撃して」

毒付くルイズの横で、タバサは淡々と攻撃を続ける。
その様子に勇気づけられたのか、ルイズ、キュルケ、ギーシュは再びゴーレムに向かって総攻撃を始めた。

一方、ゴーレムに乗っているフーケはこの状況がむず痒くなってきていた。
最初こそたっぷり遊んでやろうと思っていたのだが、ルイズの失敗魔法を受けてからはそうも言っていられなくなったのだ。
確かにゴーレムはいくら攻撃を受けても修復するが、爆発の際の衝撃を緩和させることは出来ない。
次の一発が来る前に、早々に片付けてしまおうとゴーレムの歩みを急がせた。
しかし、ゴーレムが片足を上げたまさにその時。フーケの恐れていた一発が上げられた片足を直撃した。

「うあぁ!?」

大きな衝撃に大勢を崩すフーケとゴーレム。
なんとか横転という最悪の事態は免れたが、フーケの懐から仄かに光る何かが滑り落ちた。

「ちょっ! 冗談じゃないよ!?」

フーケは必死に手を伸ばすが、何かは彼女の指の間を虚しくもすり抜けていった。
そして地上で失敗魔法を成功させたルイズは、フーケの手から落ちて行った物を見逃さなかった。
そう、間違いない。あれは――

「『煌きの星』っ!」

意識した瞬間、ルイズは落下点へ向け一目散に走っていた。
背後で仲間が彼女を引きとめる声も聞かずに。
『煌きの星』はその名の如く、流れ星のように地面へと落下していく。
落下まで約15メイル、10メイル、5メイル、3メイル――――

(間に合う!!)

ルイズは落下点へ滑り込み、地上スレスレのところで『煌きの星』をキャッチした。

「やった!!」

手中で輝く『煌きの星』を見つめながら、ルイズは直ぐ様立ち上がった。
これで後はこの場から逃げるだけ――
仲間の下へ駆けだそうとしたのと、ルイズの視界が暗くなったのはほぼ同時だった。

「返しな! それはあたしの獲物だよ!」

天からの怒声にルイズが頭上を見上げると、そこにはゴーレムの巨大な掌が迫っていた。

「ヴァリエール! 逃げなさい!」

キュルケの悲鳴にも似た叫びに従い逃げようとするが、足が動かない。
ここに来て恐怖が一気にルイズに襲いかかって来たのだ。
掌はもうそこまで来ている。
ルイズはどうしようもなくなり、ただ強く目を瞑った。

「ぽよおぉぉ!!」

聞きなれた使い魔の声と共に、ルイズの腰に柔らかいものがぶつかった。
棒のようになっていた足ではその衝撃に耐えることが出来ず、ルイズはそのまま突き飛ばされた。

「痛っ!」

突き飛ばされた衝撃で膝を擦り剥いたが、ルイズにとってはそんな事はどうでも良かった。
さっきの声、腰にぶつかった柔らかいもの。そして、軽い怪我程度で済んでいる今の自分。
間違いであって欲しかった。
ついさっきまでゴーレムの掌があった場所を見ると、今にも握りつぶされそうなカービィがそこにいた。

「ぐ、ぴぃ……」
「カービィ!!」

擦り剥いた膝の痛みも忘れてルイズは立ち上がった。
杖を構え、離れていくゴーレムの手を追いかける。
ゴーレムに捕まり苦しがっているカービィを助ける為に。
しかし、目の前を横切った白い影が、カービィの下へ向かっていたルイズを浚った。

「ヴァリエール、大丈夫!?」
「えっ、ツェルプストー? ……こ、ここは?」
「ミス・タバサの風竜の上だよ。よかった、大した怪我は無さそうだ」

キュルケとギーシュが安堵の表情でルイズを覗き込んでいる。
ルイズが二人から視線を外すと、確かにそこは風竜の背の上だった。
先頭にはタバサが座っており、横手にはあの巨大なゴーレムが――

「そ、そうだわ! カービィを助けなきゃ! タバサ、風竜をゴーレムに近付けて!」
「……それは出来ない」
「ど、どうして!?」

ルイズはタバサに詰め寄ろうとしたが、キュルケがそれを許さなかった。
キュルケはルイズの肩を掴みむと、自分の方へ引き寄せる。

「あんただって分かってるでしょ? 今逃げないと、下手したら私達全員」
「だからってカービィを見捨てろって言うの!?」

四人の間に沈黙が走る。
誰しもカービィを見捨てたくない気持ちは同じだった。
しかし、相手は何度も再生する巨大なゴーレム。
切り札とも言えるカービィの剣士の姿も、あのゴーレムの前では歯が立たなかった。
選択肢は、一つしかない。

しかし、ルイズはその選択肢を蹴った。

「私だけでも下ろして!」
「なっ!? ルイズ、君は!」
「分かってるわよ! 私の力じゃ敵うわけないってことくらい!!」

ギーシュの止めの言葉もまともに聞かず、ルイズは叫ぶ。

「でも、カービィは私を助けてくれたの! そして、カービィは今助けが必要なの!!」

手にしていた『煌きの星』を握りしめ、ルイズは再び立ち上がった。
今度こそカービィを助けに行くために。


「私は貴族よ! 魔法が使えるだけがそうじゃない! 助けを求めている相手に背を向けないのが貴族なのよ!!」


刹那、ルイズの掌から眩い光が溢れ出した。
ルイズが掌を見ると、先程まで仄かに光っていただけの『煌きの星』が激しく輝いている。

「な、なに、これ……?」

不思議なことに、ルイズは掌の上で力強く輝く物体に微塵も恐怖を感じなかった。
それどころか、この光に優しさすら感じるのだ。
他の三人も同じようで、光を見つめる三人の目に恐怖の色は無かった。

そしてゴーレムの手の中で今にも潰されそうになっているカービィも、この力強い光を感じ取っていた。
同時に、みるみる体に力が湧いて行く。
自分は、これを知っている。
ププビレッジに初めて墜落した日に、ある少女の祈りによって覚醒した力の源。
星の戦士である証。

(ワープ……スター……)

「きゃ!?」

『煌きの星』――ワープスターはルイズの手を離れると、ゴーレムの手目掛けて飛んで行った。
大きさは元の形状の数十倍になり、飛行のスピードも速い。
タバサの風竜に匹敵するのではないかという速度で激突されたのだから、いかにゴーレムの頑丈な拳でもたまったものではなかった。
激突した個所から罅が入り、完全に砕け散ると同時にカービィが姿を現す。

「ぽよ!」
「カービィ!!」

慣れた様子でワープスターに飛び乗り、ルイズに手を振るカービィ。
だが、そんな悠長な時間を与えてくれる程フーケはお優しくはなかった。

「この! あたしのお宝横取りしやがって!」

フーケはゴーレムの腕をブンブンと振り回しカービィを落とそうとするが、小さく小回りも利く空中の相手を捕える事は出来ない。
カービィはゴーレムの周りを飛び回りながら、フーケを撹乱し続けた。

「これなら、イケるわ!」

これを好機と読んだルイズは背中のデルフを引き抜いく。

「さぁ! 出番よ!」
「お、おい、娘っ子……ま、まさか今回もアレをやるなんて言わないよな……」

引き抜かれて早々、デルフの鍔はカタカタと震えていた。
前回吸い込まれたときによほど怖い思いをしたのだろうか。
長い年月を過ごしてきたデルフがこれほど怖がるとは、一体何が……
しかし、ルイズはその震えをきっと武者震いの類だろうと解釈した。

「私に買われたのが運の尽きよ、諦めなさい」
「そ、そりゃないぜぇ!」
「カービィ! 吸い込みよ!!」

ゴーレムの横腹辺りを飛行していたカービィは、ルイズの合図と共に大きな口を開けて吸い込みを始めた。
空気が風となり、風が渦となってカービィの口に吸い込まれていく。

「や、やめろ! やめろぉ!!」
「そぉれ!!」
「ぎいぃゃぁあああああああああああああああああああ!!!」

絶叫と共に問答無用で投げられたデルフは、抵抗空しくカービィの下へと飛んで行った。
しかし、デルフの前にカービィの口の中へ吸い込まれたものがあった。
それは、タバサの放った水魔法・シャベリンの氷塊。
溶けずにゴーレムに突き刺さっていたそれがカービィの吸い込みの勢いで抜け、そのまま口の中へ吸い込まれたのだ。
デルフが口内に収まる前に、カービィは天高く飛翔した。

眩い光がカービィを包み、その姿を変えてゆく。
しかし、今回はいつもと様子が違った。
剣を吸い込んだ時とは違い、カービィの周りに冷気が生まれたのだ。
光が収まると、そこにはルイズが予想していた『ソードカービィ』とは全く違う姿のカービィがいた。
帽子にはクリスタルにも引けを取らないほど美しく輝く氷塊があしらわれ、ピンク色の体は真っ青になっている。
この姿こそ冷気を自在に操る戦士、『アイスカービィ』

「か、変わった……!?」

新しいカービィの姿に、ルイズはただ呆気に取られると同時に頭痛を引き起こしていた。
『煌きの星』がカービィの乗り物となり、そのカービィが新しい姿へと変身。
余りにもルイズの想定外のことが起き過ぎているのだ、頭痛になるのも仕方のないことだろう。
だが、ルイズは嬉しくもあった。
『煌きの星』の発した輝きが、彼女の意思に答えてくれたものだと直感的に理解していたからだ。

変身を終えワープスターに再び飛び乗ったカービィは、再びゴーレムの下へ向かっていく。
途中死にそうな叫び声を上げて飛んで来たデルフを空中で回収し、高速で接近していく。
未知の姿への変身にフーケは驚きを隠せなかったが、向かって来たカービィを認め考えるのを止めた。

「調子に乗るんじゃないよ! このボール!」

更に激しくゴーレムの腕を振り回すが、その鈍重な動きではカービィを捕えることすらままならなかった。
そうこうしているうちに、カービィが冷気を吐きながらゴーレムの周りを何度も何度も周り始める。
最初は何をしているのか見当も付かなかったフーケだが、すぐにその真意を知ることになった。

「こ、こいつ! ゴーレムを丸ごと凍らせてる!?」

水のスクウェアメイジですら、このサイズのゴーレムを凍らせるのは難しいだろう。
それなのに、カービィはすでにゴーレムの下半身を完全に凍らせているのだ。
足の関節部が完全に凍らされてしまったためか、ゴーレムはもう歩くことが出来ない。

「嘘だろ、あ、あたしがこんなところで……」

カービィは既に上半身の半分を凍らせていた。
ここまで来たら、土くれのフーケと言えども何も出来ない。
ゴーレムの肩で、彼女はガックリと膝をついた。
そして、無意識に、呟いた。

「あ、悪魔……」

フーケが顔を上げると、そこには剣を振り上げゴーレムを真っ二つに切り裂いていくカービィの姿があった。
――やっぱり、悪魔だ。
凍結したゴーレムが崩れていく中、フーケは破片と共に落下しながらそんな事を考えていた。




「ん、ん……」
「フーケが目覚めた」
「本当!?」

フーケが目を覚ますと、そこは行きに使った馬車の中だった。
どうやら縛られているようで、身動きが一切取れない。
うっすらとぼやけているフーケの視界には、ルイズ、キュルケ、タバサが自分を覗き込んでいる姿があった。

「やれやれ、あの麗しいミス・ロングビルがフーケだったなんてね……綺麗なバラには棘があるってことかな?」
「いいからあんたは手綱を握ってなさい」

ルイズにはいはいと軽く返事をし、ギーシュは再び馬車の運転に専念した。
張本人ながら先程まで殺されかけていた学生の集まりとは、フーケにはとても思えなかった。
そこでふと、フーケは先程のことを思い出す。
自分はゴーレムから落下したあとどうなっただろうか?

「あの後、あたしは一体……」
「ゴーレムから落っこちていくところをカービィが助けたのよ」
「なんだって?」

フーケは頭だけを必死で動かすと、足元でカービィがぐっすりと眠っているのを見つけた。
先程までの雄姿がまるで嘘のような寝顔だ。
その寝顔に毒気を抜かれたのか、フーケはルイズにあることを尋ねてみることにした。

「……なんで」
「ん?」
「なんでこいつはあたしを助けたんだい? あたしはあんたらを殺そうとしてたんだよ?」
「ああ、そんなこと」

ルイズは眠っているカービィを自らの膝の上へ乗せた。
余ほど疲れたのだろうか、全く目覚める様子がない。

「カービィは優しいからよ」

当り前のように言い放ったルイズの言葉に、フーケは思わず噴き出しそうになった。
あれだけの力があって、あれだけの強さがあって、優しい?
そんなのは嘘に決まっている。いつだって強い奴は弱者を虐げるものだ。
強くて優しい奴なんて、所詮はおとぎ話の世界の住人。
でももし、本当にそんな奴がいるのなら。

それは悪魔じゃなくて、勇者と言うんじゃなかろうか―――

「は、はは……本当になんなんだい、こいつは?」
「決まってるでしょ」

カービィの頭を一撫ですると、ルイズは得意気に呟いた。

「私の使い魔よ」


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