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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-43


43. ラ・ヴァリエールの姉妹

ルイズは残り少ない自制心を全て費やして、
どうにかこの存在自体がシャレになっていない老人に来た理由を話した。
シェオゴラスは不服そうな顔でルイズを見ている。

「ハ!余は記憶か。誰がそんな魔法を作った?
 マグナス?イスミール?トール・パパ?それともチェザーレの馬鹿か?
ああ、ブリミルかもしれんな。あの野郎余の言うこと無視しやがって!!
知ってるか?あいつのヴィンダーなルーンを作ってやったのは余だぞ。
なのにあの野郎、余の信者にならなかった!酷い詐欺ってもんだ!!!」

「知らないわよ!それより、あんたなんなのよ。全然わかんないのよ!
ちいねえさまを変にしたりわたしに嵐を浴びせたり!!」

シェオゴラスは生暖かい笑みをルイズに向けながら、優しげな声で語る。
ああ、こいつ可哀想と言いたげな目をしていた。

「ん?お前は何を言っておるのかね。余が何なのか未だに分からないのか?
ああ、お前の髪はシラミ混じりのショッキングな髪であったな。
それでは余の言葉を理解できんのも無理はなかろう……」

シェオゴラスはキラキラした目で、ツッコミが来るのを待っている。
こんな奴に敬意を払いたいとは、泥まみれのルイズは全く思わなかった。
素なの?これが素なの?ルイズは深く、深くため息をついた。
残念ながら、相手が外見幼女なのでまだ軽い方であった。
ツッコミが来なかったので、シェオゴラスは話を続ける。

「で、その記憶の中の余に会いに来たお前は何なのだルドラよ。
 アレか。余りにも余に会いたくて会いたくて来たのだな?
 嬉しいな。信者に大切にされるのは嬉しい事だ。
 さぁクエストだ。このフォークで狩ってこい!!」

とルイズはフォークを渡される。
こいつ何も聞いてないわ。爆発で老人を吹っ飛ばしたいルイズだが、
どうにか己を落ち着かせて、もらったフォークを見る。
先が長く二本になっているフォークで、食事に使うには大きすぎる品だ。
そして、持っていると何故か疲れがどっと肩にのしかかっていくような、
そんな嫌な気分になった。

「なによこのフォーク。少し大きすぎるけど」

「フォークだ!岩の様に歌うフォーク。戦慄を歌う旋律のフォーク!
旋律を歌う戦慄のフォークだったか?どっちでもいい!それでネッチを狩ってこい。
ネッチだ。空を飛ぶグレイトな魚だ。モロウウインドにいる。
そうだ!モロウウインドにはすべてがある。一糸もまとうな!」

「いや、ここハルケギニアだから」

シェオゴラスはガクリと自分で言って地面に膝をついた。
そして地の底を這うような声で、ルイズに涙ながらに訴えた。

「ルドラよ…お前は余に会いに来たんじゃないのかね?
 そしてそれはクエストをする為に来たのだろう?
 ボーダーウォッチに燃える犬を降らす方が良かったかね?」

「何でそんな事すんのよ!そこの人に迷惑かかるじゃない」

ルイズはフォークを投げ捨てる。顔に青筋が浮かんでいるが、至極真っ当な意見だった。
シェオゴラスは不敵に笑って立ち上がり、高らかに言った。というより叫んだ。

『決まっているだろう…ぅおもしろいからだぁああああああああ!!!』

ちょっと欝に入って溜めた分、恐ろしいまでの大音響が響く。
空に多少残っていた雲が吹き飛ばされ、近くの木々がなぎ倒されていく。
その衝撃波とも言える声は当然ルイズにもぶつかる。
ルイズは、安いのりで貼り付けた堪忍袋の緒がまた切れるのを感じた。

「うるさぁああああああああああい!!!!」

あまりにも大声で叫ぶので、
ルイズはついうっかりシェオゴラスに杖を向けて、
その周辺を爆発させる。果たして爆風で舞い上がった土埃が晴れると、
シェオゴラスはそこにいなかった。

「五個目のあを言っている間に時を止めた…何故止められるか?神に不可能はあるぞ」
「…そこは無いっていうべきじゃないの?」

段々とルイズもこの男の扱い方に慣れてきたらしい。
それともただ疲れただけだろうか。
背後でささやく乱心の神に、機械的なツッコミを入れた。

「いいや、ある。トラブってんだ。頭が痛くなりすぎて痛みが無くなるほどにな」

長い間起こり続けるトラブルの解決方法を探しに、
シェオゴラスはこの地にも何度か足を運んでいるが、一向に解決策は浮かばない。

杖に片手を置き、もう片方の手を額に当ててシェオゴラスは物憂げなため息を吐く。

「なぁルドラよ。余は何なのだろうな。ジャガラクの夢を見る余が本当の余か、
 余の夢を見るジャガラクが本当の余か……余は他の者達に作られた。
 されど、あまりにも長い間存在し続けた。元がどっちだったか忘れたのだ。
 本当はジャガラクだけどな!!」

「……ねぇ、要点だけまとめて言ったりしてくれない?」

ツッコミに、というより話す事に疲れたらしい。ルイズはハァとため息をついた。

「そうだな、そうするか。今まで良いツッコミだった。暁のツッコミ女王だ。
 余が認定する。誇れ――で、だ。お前の姉に余が会ったらしいな。
お供に連れてきたビッグヘッドが今会っている。あいつは良い奴だ」

「え」

ルイズが表情を変える。シェオゴラスは微笑んでいた。

「お前と無駄話してたからな。だが、心配すんな。ここにゃあエルダースクロールはねぇが、
 アカトシュが過去への介入を不可能にしてる。だからこいつは本当の流れにゃ影響はねぇ」

なんかホっとしたけど、どうしようかしら。
現実に戻っても、そこにはどこか怖いちいねえさまがいるし、
かといってずっとここにいるのもダメだろうし。
ルイズはむーと、頭を抱えて考えている。

「何だ?お前の姉は余の信者になったのだろう。なら問題はなかろう。
 お前は一度でも姉に傷つけられた事があったか?
 デイゴンは推奨するな。あいつは壊すのが好きだからな。
ノクターナルも苦労してる。一度要塞が乗っ取られた。」

そうだ。白い髪の時も私と同じ髪色の時も、ずっとちいねえさまは優しかった。
例えそれが同情からだとしても。でも、どうしてだろう。ちょっとだけ嘘を付いたシェオゴラスは、
悩むルイズを見てタイミングを伺いながら、ゆっくりと話し始める。

「簡単な話だ。体が普通じゃない。誰だって出来る事が出来ない。
皆と違う事を言ったりする。そんな奴らは他の連中にどう見られるか知ってるか?」

「知ってるわ。馬鹿にされるのよ」

自分の経験に即して言ったが、シェオゴラスにハナで笑われた。

「その程度か?ルドラ、分かっていないな。イカレたと思われるのだよ。
お前の姉はお前以外にどう映っていたのだろうな」

「え――」

使用人達に影で言われた事もあったが、結局のところ彼女は大貴族の娘であり、
そして親は愛情を持って育ってきた。母親の意向でスパルタであり、
相当追いつめられていた事は否めないが、彼女を無視しようとは誰も思わなかった。
カトレアがフォンティーヌに名を変えたのは、公爵がその体でヴァリエールの名を持つ事に、
不憫を感じたからだ。ルイズはいずれその名に相応しくなるだろう。
と心の何処かで思っていたからこそ、末娘にヴァリエールの名を持たせていた。

その事はカトレアにどの様な思いを抱かせたのか。
ルイズは、言われてそれに気が付いた。

「じゃ、じゃあちいねえさまは、みんなから変だって思われて、だからあんたなんかに……」
「知るか。そもそも変とは何だね?」

ルイズはハァ?と今更ながらの言葉を口にする老人を見た。

「変って、あんたさっきから言ってるじゃない。イカレてるって事でしょ」

シェオゴラスはふんふん歌でも歌うように口ずさむ。
煙に巻くのもおもしろいが、ちょいと頭を良くしてやろう。
そんな事を考えているのかもしれない。

「何をもって正気とする?何をもって狂気とする?他と同じかどうかか?
全員がおかしけりゃそいつらは正気ってか?一人だけ正気の奴がそこに紛れりゃそいつが狂気か?
なぁルドラ。お前が正気である証拠は何だ?余が狂気である証拠は何処だ?」

「わ、わたしのはともかく、少なくてもあんたは――」
「余が狂気か?確かに余はそう言ったが。だが狂人の言を信じるのは狂人だけだろう?」

乱心の神シェオゴラス。しかし、その乱心とはもともとどの様な者に起こるのか?
その意味をある程度理解できたからこそ、シロディールの英雄はシェオゴラスになれた。
のかもしれない。

ルイズは言葉に詰まった。確かにそうだ。
狂った者の考えなど普通そうだと思わない。
ならこの老人は狂っていないのか。いや、狂っていると思いたい。
ルイズは自身の価値観の外にいる老人の話が、
頭の中でぐるぐる渦巻いている感じがした。

「お前は貴族らしいな。なら一つ聞くが――
伝統!誇り!名誉!そいつらは何の役にたつ?
 格好良く死ぬ役に立つか。馬鹿馬鹿しくて欠伸が出るな。
 定命の存在は生きる事が最も大切な使命、命題だ。
 最近はそれを理解できん馬鹿が多すぎて困る。
 お前もどこかでそれに乗っ取って格好良く死のうとか、
 考えていないだろうな?貴族だから国の為に死ぬ。愚の骨頂だ。
国は人がいなくちゃできん。だが、上に立つ者がいなければ国にはならん。
そこまで考えて、お前は上に立つ者をやっているのかね?」

国を支えるのは平民。支えられる代わりにそれらを守るのは貴族と王家。
そんな理想論しか知らないルイズにとって、今の言葉は意味が分からなかった。
呆然としたルイズにシェオゴラスは苦笑した。

「ルドラ。お前は脳みそこねろ。そのままじゃパイにした時固すぎて食えん。
それ以前にお前の頭には何か入っているのかね?」

ルイズの頭をコンコンとシェオゴラスは叩いた。

「ああ、一応詰まっている。なら、ちゃんと使え。余がお前に狂気を宿させる前にな」

さっきまでなら爆発で吹っ飛ばしたくなっていただろうが、
今は違った。雰囲気その物が変わったと言うべきだろうか。
シェオゴラスはその容貌に見合った知性のある顔に、いつの間にか変わっていた。

「ねぇ、さっきの言葉の意味。自覚しろってことだろうけど、
何をどう自覚しろってことよ?貴族としての自覚って意味なら、
国の為に死んで何が悪いの?」

国を守るとは、即ち戦の際に兵隊となって敵国から国を守るということだ。
誰がどう見ても、普通の考え方だろう。

シェオゴラスはとりあえず満足気な様子で頷いた。

「さて、な。もっとそういうのを知ってる奴に聞くことだ。
じゃあな前置詞と冠詞。なかなか面白かったぞ。
 本当の余がお前に会えていないのが残念でならん。
 土産に秘宝の一つでも渡したいが、あいにく持って帰れぬだろうしな。
ああ、もしまた来たくなったらいつでも来い。さもないと目玉をもぎ取るぞ」

世界が薄れていく。シェオゴラスにもそろそろ終わりだということが分かったようだ。
ルイズは薄れていく皮肉屋の老人に、ため息混じりの悪態をついた。

「ル・ブラン・ド・ラってわけね…変な事思いつくわね」
「狂喜に酔え!万人に狂気を!」

シェオゴラスの高らかな声が辺りに響いて追憶の世界は潰える。
ルイズは元の世界に帰っていった。


「お帰りルイズ。シェオゴラス様はどうだった?」
「キチガイね」

カトレアは、ずっとルイズに寄り添っていたらしい。
ルイズが目覚めたとき、ベッドの隣に座っていた。
半身を起こすルイズにいつもの様に話しかける。
ルイズは笑っている。カトレアもコロコロと笑った。

「そうね。けれど紳士なのよ。あのお方は」
「なんとなく、理解出来たわ」
「そ。じゃあ何か聞きたい事はあるかしら?」

ルイズはうーんと考え込んでから、ベッドに倒れた。
変わっているけれど、それがちいねえさまなんだ。
だったら別にいいや。と眠そうな目でカトレアを見る。
いつも通りのよく知る姉がそこにいた。
人を見る目を変えたのは自分自身だった。それに気づけただけでも、
あの変わり者で皮肉屋の老人に会えた事は良いことなのだろうと、
ルイズはふとんをかぶりながら思った。

「眠いから寝るわ。ちいねえさま。疲れたの。何だかひどく疲れたの」

「そう。そうよね。わたしも初めてビッグヘッドやシェオゴラス様に会った時は、
 そりゃあ疲れたものよ」

そうよね。普通疲れるわ。とルイズはカトレアのベッドでぐっすり休もうとした。
しかし、カトレアは笑顔でルイズの体を揺する。

「でもね、ルイズ。問題があるの」
「う~ん。眠らせてよう」
「今ね、昼なの。あなたずーっと寝ていたのよ」

そうなんだ。でも知らない。眠いの。眠らせてちいねえさま。
ルイズは声に出さず昔のカトレアがそうした様に、
布団の中に潜り込もうとした。

「それでね。今日はわたしの薬がアカデミーから来る日なんだけど…」
「カトレア、もういいわ。わたしが言うから」

その声が聞こえたとき、ルイズは布団から跳ね起きた。
慎ましやかな胸で、流れる様な金髪を持つヴァリエールの長女、
エレオノールがベッド脇に立っていた。

「エ、エエエ、エレ、エレオノールねえさ――」
「学院サボッてアルビオン行って。何したんだっけ。おちび?」

ルイズは戦々恐々と長女を見る。何も考えずに謝ろうとする前に、両の頬を思いっきりつねられた。

「いひゃい!いひゃいれすあでさま!!」
「痛くしてんのよこのおバカ!!そこで死んだらどうするつもりだったの!?」

カトレアがコロコロと笑う中、久しぶりにルイズはきつく頬をつねられた。

「むかしからこんなに心配させて…このバカ!」

次いで、ルイズはとても強くぎゅっと抱きしめられた。

「ふえ?」
「魔法、使えるようになったんですってね。カトレアから聞いたわ」

ルイズはエレオノールの顔を見る。一度も見たことのない笑顔だった。
そして、その目は泣きはらした様に真っ赤になっている。

「それに、カトレアの病気も治したのね」
「…はい」

エレオノールの目に、再び涙が溢れ始めた。
アカデミーに入ったのも、薬の研究を続けたのも、
全ては今日の日の為に。ただ、妹の為に続けたのだ。
ヴァリエールの生まれでありながら、
唯一「普通」のメイジに生まれた彼女は、
常に重圧の中で生きなければならなかった。しかし彼女はそれをはねのけた。
妹たちへの愛情だけで。

ヴァリエールの長女として生まれ、魔法勉学何でもそれなりにこなした。
カトレアの病について理解出来る年になってからは、
どうにかしてそれを治せないかと水の系統を中心に勉強を始めた。
公爵の反対を押し切って婿も取らずにアカデミーに入り、
カトレアの治療の為の薬を作り続けた。辛く、苦しい作業だった。
ずっと自分が正しいのか悩み続けた。それのせいで、
必要以上にルイズや見合い相手に辛く当たった事もあった。
だが、それも今日で終わりになる、と思われるかもしれないが、
実際はそう上手くいかない気がしないでもない。

「良くやってくれたわ。ルイズ。本当にありがとう。
 本当に…本当に…」

ルイズを抱きしめたまま、エレオノールはぽろぽろ涙をこぼした。

「エレオノール姉さま…」

ルイズは、目を閉じ声をあげて泣くエレオノールにつられて、
自身も涙を流した。止まらないそれはとても暖かく、
ずっと昔、叱られた時に出たそれとは全く違う物だった。


「グッドエンドかしらね?ラルカス」

カトレアが小声で、側にいた使い魔に話しかける。

「いや――君が病気を治さない理由って、これだったのかね?」

「まぁ、そうね。狂気の神様に治してもらいました。じゃ、締まらないじゃない。
 今の状態なら死にはしないって言われたし、それにこの本に載ってる内容で、
 わたしたちが出来る内容ならちょっとばかり血を見ないとダメだったもの。
エレオノール姉さまは多分するだろうけど、そんな治し方は嫌だもの」

シェオゴラスに病を治してやるからここに住めと言われたが、
結局彼女はそれを断ってトリステインに帰った。
その際にもらった指輪が、動物の本能を狂わせている。
友達は多い方が良いだろう。とシェオゴラスにもらったのだ。
何故帰ったのかというと、ふと家族の姿が浮かんでしまったから、らしい。
なんだかんだ言っても、皆の事を愛しているのだ。

その後も色々あってシェオゴラスと共にオブリビオンの様々な領域を旅した。
そのせいで、あるダークエルフから凄まじく妬まれているのだが、カトレアはそんな事知らない。

禁断の黒の書は、誰かがその内容を見ておかしくならないように、
普段は何かの図面が書かれた本にしか見えない。
だから、カトレアにしかその中身は分からないのだ。
ちなみに、彼女は姉の心情を理解していたので、
これ以上心労を掛けないようにシェオゴラスの一件については、
優しく歪めて話してあった。

「カトレア。君はなかなか――アレだね」
「あら?普通じゃない。わたしにとってはね」

カトレアはコロコロと笑いながら、涙を流して抱き合う姉と妹を見る。
幸せそうな顔で。

「ははは。そうだな。私にとってもだ」

ミノタウロスも、牛の頭で器用に笑った。


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