あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの伝説-03


  食堂に着くと、他の生徒がこちらを見た途端、足早に逃げるように遠ざかる。不審に思ったが、気にしないでと席に着いたルイズに言われた。
 卓上の豪華な食事を見つめながら何処に着けばいいかと尋ねれば、彼女は床を指差した。
しかし床かと思ったら、固そうなパンと冷めていそうなスープ少量がこじんまりとしたテーブルの上にあった。
「耳を貸しなさい」
 この待遇に俺が抗議する前にルイズは俺に耳打ちをする。
 彼女によると、人間に嫌われているエルフ達はこのような待遇を強いられてもおかしくなく、寧ろ当然だということなのらしい。
 よくあることだ。対立民族に対して奴隷のような扱いをするなんてことは。
 一応、俺はエルフということだから、そうしないと色々とまずいらしい。
 もし俺が(このハルケギニアにおいての)人間と同等の扱いをルイズから施されれば、それ即ち彼女はエルフの間者だという疑いをもたれることになるだろう。
そうなればルイズはトリステインの権力者の一存により捕らわれ、俺は主人を失うことになる。
 今現在、俺は自分自身をエルフではないと証明する術を知らないし、自分独りでハルケギニアで生きる術も知らないので、
今回以降もそれに則って生活しなければならない。
 しばらくして始まった唱和をBGMに、俺はボソボソとパンとスープを口に含んだ。

「授業?」
 食後、ルイズに同行を求められ、何処へ行くのかと尋ねれば、授業に出る為に教室へ行くとのことだった。
「そ、あんたも一緒に来なさい」
 そう言えば、ここは学校だったな。
「しかしだな、俺は魔法なんてわからなムグッ!」
 口に握り拳を差し込まれた。
「ここでそう言うことは言っちゃダメよ。周りの奴らはあんたがエルフで魔法を使えるって思い込んでるんだから。分かった?」
「……ひょうはい(了解)」
 む?
 握り拳が外されると、俺は慌てて後ろを振り向いた。突然の行動に、ルイズがどうしたのかと訊いてきた。
「視線を感じた」
 気配は既に無いようだが……気のせいだったか?

「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですね」
 教室に着き、後ろの壁にでも寄りかかってろと言われ、寄りかかりながら他の使い魔を見物していると、
紫のローブを身に着けた一人の中年女性が教室に入ってきて教壇に立ってこう言った。恐らく、教師だろう。
「このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔を見るのが楽しみなのですよ」
 言いながら、彼女は教室の中の使い魔達を眺めた。
「……ミス・ヴァリエールは随分と珍し……い、いえ、風変わりな使い魔を召喚したようですね?」
 途端に教室が重い沈黙に閉ざされた。
 ルイズを含む生徒達の、こちらの表情を窺うような視線をチラチラと感じる。こっち見んな。

 文字が解らないので授業を傍聴していたが、内容はどうやら一年生の授業の復習のようだった。
 この世界の魔法には、主流の火・水・土・風、そして失われたと言われている虚無の五つの系統があり、
中でも土系統の魔法はハルケギニアでの生活に密接に関わっているのだとか。
 練金という魔法で土を真鍮にあっさりと変えたのを見て、なるほどと思う。建築には欠かせなさそうだ。
「では、誰かに練金をやってもらうことにしましょう。ミス・ヴァリエール、やってみなさい」
「はい!」
 迷いの無い指名だった。最初から決めていたとも言える。ルイズは元気良く返事をし、立ち上がる。
 しかし、シュヴルーズ教諭の指名に室内がざわつき始め、生徒の一人がこう言った。
「先生、危険です。ゼロのルイズにやらせるなんて!」
 ゼロ?
「何故ですか? エルフを召喚した彼女になら出来る筈ですよ」
「で、でも……」
 シュヴルーズと生徒とが問答している間にルイズは教卓の前に到着した。他の生徒達が慌てて机の下に潜り込んだ。
 このままでは自分の身も危ないような気がして、彼らに倣って近くの空いている机に潜り込もうとした時だった。
 大爆発が起きた。
 室外に飛ばされ廊下の壁に腰を打った。 室内からは阿鼻叫喚の騒ぎが聞こえた。 他の使い魔が暴れ出したようだった。
 腰をさすりながら教室に戻ると、窓ガラスは割れ、教卓は粉々。他の生徒達の砦であった机も根元から折れて倒れていた。
 間近に居たシュヴルーズ教諭は、黒板に叩き付けられて失神していた。
 顔を煤だらけにしたルイズが、優雅にハンカチを取り出して顔を拭きながら呟いた。
「ちょっと失敗したわね」
「ちょっとじゃないだろ!」
 間髪入れずに、他の生徒達が文句を口々に叫んだ。
「魔法の成功率ゼロのルイズ!」
 そういう訳か。

 教室の清掃を命じられたルイズに付き添い、瓦礫を運び出しては箒で掃き出す作業をしている。
「幻滅したでしょ」
 ルイズが箒で床を掃きながら、呟くように俺に聞かせた。彼女は背を向けていた。
「魔法が使えて当たり前なのに、魔法が全く使えない貴族だなんて」
 自嘲気味に話していた。声がどことなく震えている。
 泣いているのかも知れない彼女に、俺は黙りこくっていることしか出来なかった。

 昼食である。
 と言っても、食堂に着いたときには、俺とルイズ以外はほとんど食べ終わりかけていた。
「時間を掛け過ぎたか」
 しかし、食事が早かろうと俺の食事は『固いパンに少ないスープ』だろう。
 遅ければ『更に固くなったパンと冷め切ったスープ』になる。最悪だ。最早スープではない。
 ルイズが悠々と席に座って食べ始める中で、何処かで見た人物がこちらを手招きしている姿が視界に入った。
 誰だったか。ああ、そうだ。今朝のメイドだ。シエスタと言ったか。
 パンを詰め込みスープで押し流すと、ルイズには用を足して来ると言って、退席した。

「生き返る心地だ」
 厨房で、俺はまかない食をご馳走になっていた。料理長のマルトーという男が、今朝のシエスタから話を聞いて俺のことを気に入ったらしい。
「へへっ、ありがとよ」
 柔らかいパンに熱々のスープ、そしてサラダまである。スープの匂いは食欲を更にそそった。
「しかし、エルフのあんたに口に合って良かったぜ。食う物は人間と同じなのかい?」
「……俺は、人間の食う物も好きだ。他の同朋はよく知らない」
 勿論、エルフが何を口にしているかは知らないが、俺個人の話にすれば誤魔化せる。この食事の恩人である彼には悪いが。
「そうか、それは何よりだ」
 彼は機嫌良く笑った。
「礼がしたい。俺に出来ることなら何でも手伝おう」
「義理堅いねぇ。それじゃ、これからデザートを運ぶからそれを手伝ってくれよ」
「分かった」
 デザートを運んで回る。
 ただの配膳だが、何となく緊張する。速く移動すると零してしまうし、遅いと客が待ちくたびれてしまう。

 テーブルに近付く度に怯えの視線を強く感じる配膳をしていると、金髪のカールで、薔薇の花を持った貴族が目に入った。気障と言うか、そのような雰囲気が彼にはあった。
「おい、ギーシュ。今は誰と付き合ってるんだよ」
 友人であろう一人が彼にそう尋ねた。貴族でも平民でも、似たような話題であることに親近感を覚える。
「付き合うだって? 僕にそのような特定の女性はいないよ。薔薇は多くの人を楽しませる為に咲くのだからね」
 ギーシュと呼ばれた青年貴族はそう返答した。野郎なんか見ても楽しくはないぞ。
 心の中で唾を吐いていると、彼のポケットから何かがずり落ちた。小瓶のような物だ。お人好しな性分の為に、俺はついついそれを拾って彼に渡そうとした。
「落ちたぞ」
 しかし、こちらを振り向こうとしない。聞こえてないのかと思ったが、こちらを見たり前を見たりで目が泳いでいた。彼にとっては何かマズイものらしい。
「お、それはミス・モンモランシーの香水じゃないか! と言うことは、モンモランシーと付き合ってるのかよ、ギーシュ?」
 彼の友人らしき生徒がこちらの持つ小瓶を見て、ギーシュと呼ばれた青年に尋ねた。
「知らないな。それは僕のでは……」
 ギーシュが弁解しようとすると、ギーシュやルイズとは色の違うマントを羽織った女生徒が近付き、彼の頬に平手打ちを喰らわせた。
「私のことは遊びだったんですね」
「ケ、ケティ、君は誤解をしているんだ」
「さようなら」
 もう一発平手打ちを逆頬に喰らわせ、彼女は走り去ってしまった。
 それから間もなく、まるでドリルのような巻き髪ツインテールの女生徒が彼に近付き、既に赤く腫れ上がった彼の頬に平手打ち。
「あなたの愛はよく解りました」
「待ってくれ、モンモランシー。彼女とは湖を散歩しただけで……」
「さよなら」
 ケティと呼ばれた女生徒と同じく逆頬にやはり平手を喰らわせ、モンモランシーと呼ばれた女生徒は歩き去った。

「待ちたまえ」
 一部始終を見て配膳の作業に戻ろうとした時、頬を赤く腫れ上がらせたギーシュがこちらを呼び止めた。
「君のせいで女性二人の名誉が傷付いた。どうしてくれるんだね」
「お、おい、ギーシュ! 止せって!」
 慌てて周りの生徒がギーシュに止める。だが、ギーシュは問題なさそうにこう言った。
「構いやしないよ。それに、僕は聞いたんだ。このエルフは魔法なんか使えない、偽物だとね。それならば、彼はただの耳の長い『平民』だ」
 こいつ……わざと大声で……。先程の視線はこいつの物だったか。
 同時に、後方から吹き出す音が聞こえた。咳き込む声からすると、ルイズのようだ。
 ギーシュの言葉に、俺とルイズに視線が集まった。先程の発言は正しいのかという疑惑と、魔法が使えないのなら何も怖くないという優越が入り混じった眼差しだった。
「……俺がエルフだろうと何だろうと、二股と言う女性への冒涜を、お前みたいにすることは無いがな」
 言い返してやると、彼はわなわなと肩を震わせ、指を俺に突き付けてこう言った。
「……君には貴族と平民との違いを思い知らせてやった方が良さそうだな。決闘だ! ヴェストリの広場で待つ!」
 そう言うと、彼は立ち去った。
 周りで見ていた生徒達は騒ぎ立て、ヴェストリの広場とやらへ向かったようだ。
 その様を呆然と見ていると、服を引っ張られた。ルイズだった。顔を青ざめさせたシエスタの姿も目に入った。
「あ、あんた、何やってるのよ!」
「デザートの配膳」
「そういうことじゃないわ! 今すぐギーシュに謝って来なさい」
「安心しろ。魔法を使う相手との戦闘には慣れてる」
 三回ぐらいしか経験してないが……いや、二……回……?
「あんたの世界の魔法がどんなのかは知らないけど、一方的に魔法を使える貴族に平民は勝てないわ」
「勝てば良いんだろ?」
 勝利主義的な俺の言葉に、ルイズは「えっ?」という顔をした。
「何にでも攻略法はある。弱点の無いものはない。神とかなら話は別だが」
 俺はルイズを説得させるべくそう言い、野次馬と化す為にヴェストリの広場へ向かうのであろう生徒達の群れを追いかけた。

「諸君、決闘だ!」
 ギーシュの言葉に、ヴェストリの広場に集まった野次馬が歓声を上げた。
「ギーシュが決闘するらしいぞ! 相手はルイズの使い魔だ!」
「ルイズの使い魔ってエルフだろ!? ヤバいんじゃないのか!?」
「魔法が使えないエルフらしいぞ」
 野次馬が口々に騒ぎ立てる。
 だが、気にしてもいられないので、広場の中央へと立ち、先に来ていたギーシュと睨み合う。
「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。異論は?」
「無い」
 俺が了承すると、ギーシュは数歩下がって距離を取った。
「僕の二つ名は『青銅のギーシュ』だ」
「俺は、」
「平民の名前など聞く気はない!」
 ちょ、名乗らせろ!
「従って、青銅のゴーレムで相手をしてやろう」
 しかし彼は無視してそう言うと、彼は薔薇の造花を振った。どうやら、あれが杖のようだ。花びらが一枚舞い落ちる。
「行け、ワルキューレ!」
 地に着いた瞬間、花びらは女騎士を模したゴーレムに姿を変えた。ワルキューレはこちらに剣を向けながら突進してきた。
「よっ」
 軽く横跳びで回避する。スピードは普通だな。
 粗方の攻撃を避け尽くす頃には、ギーシュは第二、第三のワルキューレを生み出していた。
「そろそろ攻撃させてもらおうか」
「ふっ、僕のワルキューレの連携をかいくぐるなど……」
 その時、轟音と共にワルキューレの胴体が粉々に吹き飛んだ。吹き飛んだ後には、単なる瓦礫と化したワルキューレと鎖付きの鉄球だけが残っていた。
「青銅は、鉄には勝てないみたいだな」
「な、な、な、な……」
 妙だな。観衆のどよめきが半端じゃない。チェーンハンマーで青銅騎士を粉砕しただけなのだが、そこまで騒ぐことだろうか。
「き、君……どこからその鉄球を取り出したのだね?」
 ギーシュが尋ねてきた。
 ……ん?
「ああ……いや、それは……この巾着袋に」
「そんな物に入るかァァァ!」
 怒号と共に二体のワルキューレが飛び掛かってくる。頭上でハンマーを振り回し、それらも一体目と同じように破壊した。



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