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ゼロの花嫁-17 B




メンヌヴィルの感覚が教えてくれた。
最初の一体、この動きが鈍った事を。
瞬時に炎が踏み込み、紅蓮の腕がワルドを包み込む。

それは隙と呼ぶには余りに短すぎる、刹那の間。

残る三体のワルドが、同時に詠唱を終える。
メンヌヴィルへの攻撃ではない。
しかし魔法は効果を発揮しているはず。
奴は何をしている?
メンヌヴィルの目に寄らぬ知覚範囲にソレが飛び込んで来た時、メンヌヴィルはワルドへの評価を大幅に修正した。

『おおおおっ! そう来るか貴様!』

勇者に敬意を。
残る三体は、まだ見ぬ一体、これは温度を持つワルド本体だ、にありったけの風の魔法をかけていたのだ。
遙か後方から魔法と足とであらん限りの勢いを付け、一直線にメンヌヴィルへと踏み込んで来る暴風の渦。
メンヌヴィルの炎と真正面から対峙せんとする者、この男が初めてだ。
『いいぞ若造! その意気や良し!』
返礼とばかりに、飛び来るワルドの正面に炎を集中させる。
ワルドを知覚して、この判断を下すまでに要した時間。そのほんの僅かな間で、疾風は炎の壁へと辿り着く。
壁からメンヌヴィルまでの間に、炎を全て集めきれるか、この男を燃やしつくせるか、それが勝負の鍵だ。
燃やすなど飽き足らぬ、触れるもの全てを融解せんばかりの勢いで火勢を上げる。
間に合うか、ワルドの速さは最早人に制御しうる速度を遙かに超えている。

間に合わぬ!

身をよじるメンヌヴィル。
脇の下をくぐるように、風の拳がすり抜けていく。
やはりあれ程の速度、制御する事など出来なかったか。
それでもワルドの纏った風は、触れてすらいないメンヌヴィルの脇腹を大きく削り取り、右の腕をズタズタに切り裂いていく。
一度速度の付いた物体が止まるには、出している速度に比例した距離が必要になる。
そんな物理法則に従うように、ワルドは失速しながら大地に何度も叩き付けられ、都度全身が右に左に回り転がる。
メンヌヴィルの炎で薙ぎ払われた黒い大地を削り、その下のまっさらな薄茶色を抉り散らしながら、ワルドはようやくその場に止まった。
風の魔法が効果を発揮していたせいだろう、常人ならば三回は死ねる程の派手な転倒にも、ワルドの全身は何処も欠ける事なく五体を残している。
しかし全身を覆う衣服は醜く焼け焦げ、その下の地肌が赤黒く見え隠れしている。
左腕と右足はあらぬ方向に折れ曲がり、まるで焼却炉の奥で燃え残った人形のようだ。

それでも、そんな様でも、ワルドは身を起こす。

命の火は消えぬ、私はまだまだ戦える。そう主張するかのごとく上半身を無理矢理引きずり起こす。
動く右腕を上げようとするが、力を失ったかのようにぶるぶると震えるのみ。
ワルドを炎から守る為にその力を用いていた三体の遍在は、ワルドがメンヌヴィルをすり抜けた直後、メンヌヴィルの炎によって燃やし尽くされている。
勝利の道筋など何一つ見えぬはずのワルドは、しかし、不敵に笑いメンヌヴィルを指差す。

「私の、勝ちだ」

ワルドへと振り向いたメンヌヴィルの胴には、深々と剣が突き立てられていた。
すり抜ける瞬間、途方も無いあの速度の中、炎に視界を遮られながら、ワルドは正確にメンヌヴィルの急所を貫いていたのだ。
勝利を確信したワルドは、直後メンヌヴィルが正真正銘の化物であると知る事になる。
胴に剣を突き刺したまま、メンヌヴィルは身を翻し走り去って行ったのだ。
口元から滴る血は、確かに内臓を傷つけている証。
にも関わらず、森の中へと駆けていくメンヌヴィルを、ワルドはただ見守る以外術が無かった。

再び大地に仰向けに倒れる。
体中から悲鳴が聞こえてくるというのに、満天の星空が妙に清々しく感じる。
右手の杖を力無く握り、普段ならば一呼吸の間に終えられる詠唱を、途切れ途切れに口にする。
「……私だ」
魔法の風が声を届けた先は彼方の空を飛ぶグリフォン。
『隊長! 敵大将はどうしましたか!?』
大声を聞くだけで全身に激痛が走る。口を開く時の方がよっぽど痛いが。
「敵大将は白炎のメンヌヴィル。致命傷を負ったまま逃走中だ。発見しても下手に手を出さず、命が尽きるのを待て」
『おおおっ! それは隊長が!?』
「そうだ。以後の指揮は副官である君に委ねる。よろしく頼む」
『了解しました! ……と、隊長はどうされるので?』
はーっと息を吐く。とりあえずやるべき事はこれで終わった。
「私はちと疲れた。全てが終わってからでいいから、森に不自然に広がる広場に水のメイジを手配しておいてくれ……」
『隊長? それはどういう……まさか隊長負傷されて』
精神力の限界か、魔法がぶつんと切れる。
薄れ行く意識の中、ワルドは懐かしい母の声を聞いた気がした。
「……何とか、勝てたよ……母さん……」



人の想いが天に通じたとして、それは神の祝福なのであろうか。
一心不乱に祈りさえすれば、祈りの量が一定値を越えたのなら、そういった条件付けで確実に発動するものならば、それは祝福ではなくただの自然現象であろう。
同量の祈りであっても、同質の祈願であっても、届く時とそうでない場合がある。
だから祈りの存在は都合の良い期待をも煽りうる。決まったルールが無いのなら、博打と一緒であるから。
全知全能が神の絶対条件だとするならば、そんな乱数は不要であり、やはり自然がそうであるように、理不尽ながらもその中に理を内包しているはずだ。
もし、祈りに理があるのなら、そぐわぬ祈りは意味を成さぬであろう。
それでも、理屈とは別の所で人は神に祈る。
何故なら人は無意識の内に理解しているからだ。
強い想いは、純粋な心は、例え神の理を介さずとも、同じ人へと伝わっていくのだから。

メンヌヴィルは、これが最後と膝を折る。
水のメイジとてこれは治癒し得ぬ。
戦場で数多の死を垣間見てきたメンヌヴィルには、それが痛い程良く解っていた。
しかし、そんな絶対の死にすら抗うが傭兵の生き様。
ワルドが身動き取れぬとわかった時、トドメを刺し相打ちを狙うのではなく逃亡を選んだのもその為だ。
最後の瞬間まで自分の命を見捨てない。
全ての根幹となる命を、守ってくれるのは自分しかいないのだから。
それでも命が失われるとなったなら、後は静かに受け入れるだけだ。
木の陰に座り、じっと死を待ち続ける。
信じてもいない、死以外の何かが起こる可能性を待っているのではない。
体を休め、呼吸を整え、最後の魔法を放つ余力が溜まるのを待っているのだ。
「……最後の……炎を……」
長年見慣れて来た自分の熱が、徐々に、徐々に失われていく。
思うがままに生きてきた半生、そこに一片の悔いもありはしないが、自らの信仰に気付く前、その頃の自分には後悔がある。
何故もっと早く気付けなかったのか。
後ほんの一日でいい、早く気付いてくれていれば、後の人生はもう少し変わったものになったかもしれないのに。
恋焦がれ、その身をも焼き尽くすと思われた炎は、しかし、ただ泥水を垂れ流す肉の塊を最後までメンヌヴィルに残した。
一目で良い。
そう願い続けた半生も、どうやらこれまでのようだ。
結局、メンヌヴィルはこれまでもそうであったように、一人ぼっちだったのだ。

「誰か居るのか?」

それは奇跡の足音。

「おいっ! 君その怪我は……待っていたまえ! すぐ学院に運んでやる!」

何十年もかけて、ようやく辿り着いた。

「おおっ……これは夢か幻か? 隊長が、俺の隊長が来てくれた……ふ、ふはははは! 隊長が俺に会いに来てくれたぞ!」



そう思ったのは何故だろう。
ふと外が気になり、読んでいた本を閉じると学院の外に出た。
そこで風に乗って香る僅かな臭いを嗅ぎ付ける。
正門の番をしている者に注意するよう伝えた後、私は森の中へと駆け出して行った。
周囲に木々が生い茂っているせいだろうか。
瑞々しい草木の香りしかしなくなり、先のは気のせいだったのかと引き返しかけたそこで、彼を見つけた。
「隊長! 俺だ! 覚えているだろう!」
「……すまない、何処かで会ったか?」
余りの必死な様子に申し訳無さを感じてしまう。
しかし彼はショックを受けた様子も無く、私にすがりついてくる。
「タングルテールで一緒だったメンヌヴィルだ! アンタの副長をやっていた男だ!」
頭頂から冷水を浴びせられた気分だ。
そうだ、この顔に残る傷跡、あの時の私の魔法だというのなら、確かに辻褄は合う。
「……そ、そうか……生きて……いたのか」
動揺を隠せない。
何故彼が何十年も経った私を一目で見分けられる。
そしてこの傷は何だ? この深さと位置では……とてもではないが学院のメイジでも助けられん。
傷の痛みなどまるで感じぬと言わんばかりに、彼は私にすり寄ってくる。
「お、俺はアンタに会いたかった! アンタに礼が言いたかった! 俺がその後の人生を充実したものと出来たのも、全てアンタのおかげなんだ!」
そして語る。
彼の特異な嗜好を。
光を失った瞳の代わりに、異常発達した嗅覚が全てとなり、それは味覚以上の娯楽をもたらしたと。
生まれ持った炎の力で生けとし生けるもの全てを燃やし尽くし、漂う香しき芳香に身を委ねる。
余りに罪深い告白を、新兵が手柄を立てたかのように浮かれながら話す。
そしてその嗜好に、自分がいかに忠実であったかを滔々と語る。
炎への理解を深め、焼くべき肉の構造を学ぶ。
又、これが戦場のみで許される行為と知り、如何に生き残り、肉を焼くかと工夫し続けた努力を誇る。
人倫を思考の果てに追いやれれば、彼の努力と献身は、敬意に値すると思える。
他の何を裏切っても、彼は、炎だけは裏切らなかった。
「アンタが教えてくれたんだ! アンタが焼き尽くしたタングルテールの住民が! そして俺自身を焼いてまで教えてくれた! まだ若かったあの時の隊長は、本当に美しかった……」
彼は、失われた瞳から涙を流していた。
「……俺は、神に感謝する。してやるさ! 最後の最後に、隊長に巡り会わせてくれたんだからな! ……おおっ、これで、何一つ思い残す事は無い……」
両手を広げたまま、何処にそんな力が残っていたのか彼は立ち上がった。
「さあ、最後の時だ。頼む隊長。俺が恋焦がれ、求め続けたアンタの最高の炎で葬ってくれ……」

何もかもが間違っていたのだ。
だから、こんなにも慕ってくれる彼は、歪み捩れ、それでいて、何処までもまっすぐ純粋に、生きてきたのだ。
かつてたくさんの死を目にしてきた私だが、最後の瞬間を嬉々として迎え入れられるような生き様の人間を見たのは数える程だ。
責任だの、使命だの、そんな下らぬ理由ではない。
彼の末期を穢したくない。その一心で、私は魔法を唱えた。

「は、はははははは! そうだ! この炎だ! 俺の皮が! 肉が! 骨が焼け焦げるこの香りだ! あの時と寸分変わらぬ隊長の炎だ!」

全身を炎に包みながら笑う彼は、しかし表情を曇らせる。

「……すま、ない隊長……随分、長い事、一人に、させちまった……こんな想いを共に出来る奴なんて、アンタも俺、しか、居なかっただろうに……済まなかった。ゆる、し、て、く……れ……」

私は、偽り無い本心を口にした。

「君は、最後の時に、私に会いに来てくれた。それが一番重要な事だ」

既に表情も定かではない彼は、失われかけた舌を必死に動かす。

「……ははっ、最後の教え……確かに、うけと……っ……た。……あ、……り……がと…………う」

燃え尽き、黒い煤のみとなった彼を見下ろし、私は泣いた。
ジャン・コルベールが犯した罪は、生涯、こうして私を苛み続けるだろう。
それでいい。
私は罪人で、心の拠り所であった誓いすら守る事を赦されない程に、罰を受け続けなければならないのだから。



意識を取り戻したのは、陣幕で治療を受けている最中だった。
隊員達が飛びあがって喜んでいる。泣き出してる奴まで居る。
何だ? 何が起きた?
こら、軽々しく人の名を呼ぶなお前達。返事してやる程こちらに力は残っていないんだ。
ふと見るとオールドオスマンもそこに居た。
苦しげな表情でこちらを見ている。
ふう、相手がオールドオスマンでは仕方あるまい。
「……副長、報告を」
すぐに二度寝したかったのだが、アドバイスを頂いたオールドオスマンに結果を報告せねばなるまい。
副長は……ヒドイ顔だ。泥まみれの上、涙でエライ事になってるぞ貴様。
「は、はい! 傭兵達三十名の内、死亡二十七名、三名程捕縛に成功しましたが、いずれも虫の息で事情を聞くのは難しいかと」
「そもそも簡単に口を割るような連中でも無かろう。敵の隊長は?」
「黒こげになっている所を発見しました! おそらく自害したと思われます! 付近に落ちていた杖が特異な形状であった事もあり、ほぼ当人と見て間違いありません!」
「わかった」
体の向きをオールドオスマンに向けるだけで、そこら中が痺れるように痛む。
「以上です。襲撃者は完全に撃破しました。学院の警戒態勢を解くようお伝え下さい」
オールドオスマンは、遠くを見るようにこちらから視線を逸らす。
「……ご苦労じゃったな。君は、見事に守り抜いてくれた。今後、何かあったらワシに言ってくれ。出来うる限り、君への助力を為すと約束しよう」
何故か異常に恐縮しているオールドオスマンに、こちらからも礼を言う。
不審な態度だと思うが、今はそれを考えるのも億劫だ。
というか貴様等、用が済んだのならいつまでもぴーぴー泣いてないで陣幕から出ていってくれ。
私はさっさともう一寝入りしたいんだ。



母を助け出して以来、こうして夜を共にするのは始めてだ。
浮かれてしまう自分を子供のようだと評した所、母は笑って「貴女は子供よ、私の大切な娘じゃない」と言ってくれた。
子供扱いをされなくなって随分と経つ。
同級生達は皆、子供扱いされる事を嫌うが、これとてもいいものだと、心から思うのだ。
「うん」
素直に認めると、母は優しく私の髪を梳いてくれる。
こんな幸福が続いてくれるのなら、私は生涯子供でいい。

周囲の環境により無理矢理大人にさせられた少女は、母の腕に抱かれたまま静かに目を閉じた。
今、世界中で一番幸せなのは自分だと、確かに実感させるぬくもりと共に。



光栄だなどと思う程、純真無垢な存在ではない自覚はあるが、それでも畏れ多いと感じる所は僅かにだがあった。
「お話は伺いました。お役目ご苦労様でしたわ」
というか、何故一介の子爵ごときの病室に、一国の女王が見舞いに来るなどという事になっているのだ?
私ことジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは先の騒動で負った怪我により、しばらくの入院を強いられていた。
我ながら無茶をしたと思う。
あの熱量ならば鉄すら容易く溶かすであろうに、そんな炎の中に風の防御があったとはいえ飛び込んで行くとは。
熱した溶鉱炉の中に顔を突っ込むようなものだ。
おかげでそこらが焼け焦げ、ヒドイ有様になってしまっている。
「心無い者達は、子爵の怪我を貴族にあるまじき失態だなどと言いますが、私はそうは思いません。ご立派ですよ」
この浅慮が服着て歩いているような女王が本心からそう言ってるのはわかるが、何の慰めにもならん。
たかが三十人程度の貴族崩れごときに重傷を負わされたと、宮廷では失笑の的である。
ふん、クズ共が。だったらお前等が奴を倒して見せろ。
何て子供っぽい愚痴を溢しても意味が無いので、私は次なる手を考えていた。
寝たきりだとて出来る事は山ほどある。
書類を手に、さあやるかと意気込んだ所で、女王の突然の訪問により肩透かしを喰らってしまった。
一体この女は何がしたいのだろう。
励ましに来たとでもいうのか。そんな暇があるんなら、宮廷の連中を黙らせてくれた方がよっぽどありがたい。
突然、部屋をノックする音と共に扉が開かれる。
……というか、ノックと同時に開けたら意味無いだろ。
「隊長! 書類ですが後は判をいただくだけにしておきました!」
「大将! どうですかい具合は!」
私と同世代の二人の若者が顔を出す。
片方はグリフォン隊の副長、片方は王軍の部隊長だ。
部屋に同時に入るなり、二人は親の敵でも見るかのように睨みあう。
「貴様! 平民風情が子爵に面会なぞと百年早いわ!」
「寝ぼけんなガキ! エリート部隊風情が王軍の部隊長様に逆らっていいとでも思ってんのか!?」
「き、ききききさまあああ!! 隊長! こんな下賎な男に惑わされてはなりませぬぞ!」
「はん! ワルド子爵様はな! てめえらみたいなおぼっちゃま部隊にゃもったいねえ男の中の男よ! 大将! 今度は是非ウチの連中纏めて率いてくだせえ!」
「何だとおおおお!! 平民混在の王軍なぞより格式も練度も高いグリフォン隊の方が指揮し甲斐があるに決まっておろうが!」
「けっ! ほざきゃあがれ! 大将! 具合が落ち着いたんなら軍宿舎に顔出してくだせえ! 極上の酒用意して待ってますんで!」
「ふふふふざけるな! ワルド様はお怪我を負われているのだぞ! ワルド様! そんなものよりグリフォン隊主催の晩餐会に是非ご出席下さい!」
口を開くのも面倒なので、彼らから視線を外し、部屋の椅子に腰掛けた女王陛下へ向ける。
笑えるぐらいの超反応だ。
『じょ! じょじょじょじょううううううおおおおおおおへいかああああああ!!』
最敬礼を瞬時に行うのは当然として、ダブル絶叫はいただけない。
どちらも戒告ものだ。
しかし女王陛下はにこやかに笑って、彼らを赦した。
「構いませんよ。それより、お二人にお聞きしたい事があるのですが……」
二人共が真っ青な顔で大声上げて了承すると、女王陛下はまたアホな事を言い出した。
「実は、ワルド子爵がどのような活躍をされたか、現場の方にお聞きしたかったのです。子爵は謙遜するばかりで話して下さいませんし、よろしいでしょうか?」
思いっきり断る、と言ってやりたいのだが、部下が居て、女王陛下が居るこの微妙な力関係上、こちらは頷くしかない。
せめて私の意を汲んでくれとばかりに視線を送ると、二人は、何を勘違いしたのか一から十まで嬉々として語り始める。

興奮しながら話を聞く女王陛下と、それ以上にヒートアップして騒ぐ二人から視線を逸らし、窓の外を見やる。
貴族同士が社交辞令としてかわす言葉ではない。
自分を本気全力でべた褒めする話を至近距離で聞かされ続けるとか、どんな拷問だこれは。
これで結構洒落にならない怪我人何だから、もう少し労われ貴様等。
頼む、思いっきり恩に着てやるから、誰か私を助けてくれ。

結局誰も来てくれないので自力で逃げ出そうとした所、怪我人が動くなと言われた。

「正直あの悪魔みてえな炎にゃ俺っちもびびりまくってたんですがね、そこはワルド様よ! 恐れる気も無く真っ先に飛び込んで行ったんでさ!」
「自身は重傷を負っておられるのに、部隊への引継ぎを確実にこなし、我等への指示をなしてからお倒れになるなど……正にワルド様は軍人の鑑です!」

……だったら怪我人の側で騒ぐなと……ああ、もういい……好きにしてくれ……




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