あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

超力ガーヂアン-02a


 モー・ショボーを召喚して、早1週間が過ぎた。
 初めは、ただ可愛いだけで役に立たない使い魔かと思っていたが、ギーシュとの決闘騒ぎその認識は改められることになる。
 なんと彼女は、凶悪な先住魔法の使い手であったのだ。その威力は凄まじく、ドットメイジなど比較にならぬものである。
 不意打ちの様なものであったが、ギーシュとそのゴーレム(+α)を纏めて吹き飛ばし、それだけでは飽き足らず、ヴェストリの広場に破壊を撒き散らしたのであった。
 その破壊跡は既に修復され、そんな事があったとは微塵も感じさせないが、関係者の記憶には深く刻み込まれている。
 その所為か、私の周りは平穏なモノで、緩やかに時間が流れていく。
 私のことを『ゼロ』と呼ぶ声もだいぶ減った。陰では言っているのかもしれないが、私の耳には入ってこない。
 モー・ショボーは相変わらず無邪気に遊んでいる。使い魔たちの中でも、一目置かれる存在のようだ。
 特に、幼風竜と仲が良いようで、よく一緒に遊んでいる姿を見かける。
 そんなモー・ショボーに、私は何かご褒美をあげようと思い立った。
 情けない話だが、あの忌々しいゲルマニア女に言われて気がついたのだ。決闘騒ぎで確かな力を示したモー・ショボーに、褒めたり何かしたのか?と。
 そんな訳で、今更だがモー・ショボーに、ご褒美をあげようと思う。
 と、言っても、何をあげれば喜ぶのか分からないので、直接聞いてみる事にした。

「えっとね、じゃあ…… 宝石ちょうだい!」

 宝石か…… 私の持っている物をあげてもいいが、幸い明日は虚無の曜日だ。城下町まで足を伸ばして、そこで見繕ってやろうと思う。
 うん、それがいい。城下町までは馬で行くことになるが、風を切って走るあの爽快感を思えば苦など感じない。

「いますぐくれないの?」

 少しくらい我慢しなさい。
 楽しみは、後に取っておいた方がいいでしょ?

「はーい。たのしみだな~」

 モー・ショボーは、空中で軽やかにとんぼ返りを打つと、能天気に笑った。




超力ガーヂアン 2

~デビルサマナー(仮) ルイズ・(中略)・ヴァリエール 対 土塊怪盗~




 3時間ほど馬に揺られて城下街に到着した。
 本当ならばもっと早くに到着していたはずなのだが、モー・ショボーがあっちにうろうろ、こっちにうろうろしていた所為で、やたら時間がかかってしまった。
 街中に入っても、街並みが物珍しいのか、周りをキョロキョロと忙しなく、気を抜くと糸の切れた凧のように何処かに飛んで行ってしまいそうだ。
 落ち着きのないモー・ショボーの首根っこを掴んで引き寄せる。

「ほら、寄り道しない。唯でさえ人が多いんだから、迷子になっちゃうでしょ。
 大丈夫だと思うけど、渡した財布は大丈夫でしょうね?」

 下僕がいるのなら、貴族が財布など持つ道理などない。
 この子に財布を渡すのは多少の不安も感じないでもなかったが、使い魔の仕事を覚えさせるためだ。甘やかしたりは出来ない。
 それに、使い魔を信じる事も主人の務めだと、自分に無理矢理に言い聞かせる。

「おサイフならちゃんともってるよ。こどもあつかいしないでよねっ」
「はいはい、ここら辺はスリが多いから気をつけてね」

 口をとがらせるモー・ショボーを適当に窘めつつ、この通りにスリが多い事を伝える。
 今日は、残っていたお小遣いの大半を持ってきたのだ。スられてしまっては元も子もない。

「ダイジョウブだよ。みつけたら、やっつけてあげるから! キャハッ!」
「なるべく穏便にね。『真空刃』とかいうのは、使っちゃダメよ」
「『ショックウェーブ』ならい~い?」
「……広範囲に破壊を撒き散らさない奴だったらね」
「……ちぇっ。だったら、どうすればい~の?」

 ……止めて正解だった。ショックウェーブがどんなのもか知らないけど、真空刃と同じようなモノらしい。
 あんな魔法を街中でぶっぱなされたら、即お縄だ。いくら私が公爵家の令嬢だとしても、許される事と許されない事がある。
 しっかり手綱を引いておかないと、どうなるか分からない。
 モー・ショボーは丸っきりの子供だ。使うと決めたら、躊躇なしに力を振るうだろう。それだけは避けねばならない。
 主人の私がしっかりと、倫理観を教えてやらねば……

「いい、モー・ショボー? そんなにホイホイ魔法を使っちゃダメよ」
「ど~して?」
「どうしてもこうしてもないわ! こんな所であんなの使っちゃ、関係ない人まで巻き込んじゃうでしょ!」
「う~ん…… そっかぁ」
「わかった? だから、スリを捕まえるのに魔法は使っちゃダメよ」
「人間がそういうんなら…… うん、わかったよ!」

 よかった。駄々をこねられたらどうしようかと思ったけど、素直に言う事を聞いてくれて助かったわ。
 それじゃ、お目当ての宝石店に行きましょうか。露店で探すのもいいけれど、偽物とかが多いから余り期待は出来ない。
 今日は堅実に正規のお店で買いますか。
 ……路地裏? 武器屋? 何でそんな所に行く必要があるのよ?



 ◆◇◆



 城下街で宝石を買い求め、学院へと帰った時には既に、陽は西の山の陰に隠れようとしていた。
 白い筈の学院の壁を緋色に染め、影法師は身長の数倍の長さに伸びている。
 遠くの空ではカラスが鳴き、夜がゆっくりと忍び寄ってきている事を告げている。
 赤く染まった部屋で今日の出来事を思い返し、気だるい仕草で窓の外を眺めながら溜息をついた。
 憂鬱だ。苛立ちさえも感じる。
 出来る事なら目も耳もふさいでベッドの中で蹲りたい。
 けれど、そんな事は出来る筈もない。
 私の天敵ともいえるこの女を前にして、逃げるような真似など出来よう筈もない。
 またひとつ、溜息をついてから胡乱気な表情で、さも当たり前のように私の部屋にいる女を睨む。

「どうしたの、ヴァリエール? 溜息ばっかり吐いちゃって、幸せが逃げるわよ?」

 何でこの女は私の部屋でお茶など飲んでいるのだ。
 確かに、この女が持参してきたお茶とクックベリーパイは美味しい。食べ物に罪はないので遠慮なくいただく。
 しかし、だ。
 私とこの女は、楽しく優雅にお茶会をするような間柄ではないはずだ。
 なのに、どうしてこの女は、嬉々と私の部屋を訪ねてきたのだろうか? 余計なオマケ付きで。
 オマケというのは、蒼髪の少女のことだ。断りもなしにベッドに腰掛け、本に目を落としている。
 確か同級生だったはずだが、名前は何と言っただろうか? キュルケと一緒に居るのを見かけた事はあるが、名前までは知らない。
 冷たく他人に関心を払わない瞳、短い髪と小柄な体格は、キュルケとは何もかもが正反対である。
 どうしてこの2人が友人をやっているのか不思議だ。なにか裏でもあるのかと、勘繰ってしまう。

「で、何の用なのよ? まさか、本当にお茶をしに来たわけじゃないでしょ?」
「あら、お茶だけじゃ不満?」
「惚けないで!」

 小さなテーブルの向い側に座り、ティーカップを優雅に持ち上げて肩を竦めるキュルケを睨む。
 けれど、涼しげな表情をピクリとも動かさない事に苛立ち、乱暴に拳をテーブルに叩きつけて怒鳴る。
 カップからお茶が零れ、テーブルを伝って小さな川を作るが、それは無視する。

「一体、何を企んでる訳? とっとと用件を言いなさいよ」
「せっかちね。もっと心に余裕を持った方がいいんじゃない?」
「余計なお世話よ。
 ……で、何の用なのよ?」

 キュルケは軽く溜息を吐くようにして鼻で笑った。
 一々癇に障る女だ、全く。
 忌々しい…… そんなに私を怒らせて楽しいのか?
 ギリギリと、奥歯を力の限り噛み締める。

「はいはい、落ち着きなさい。
 別に、貴女に用があってきたんじゃないわよ?」
「じゃあ何しにきたのよ!」

 人をからかうのも大概にして欲しい。
 このままだと、抑えが利かなくなるかもしれないわよ?
 分かってんの? 怒っちゃうわよ?
 温厚な私でも、怒る時は怒るのよ? そうなったら、どうなっても知らないわよ?

「あの子に用があってきたのよ」
「モー・ショボーに?」

 キュルケは、部屋の脇に流し眼を送る。
 その視線を追うと、ベッドの上で寝そべっているモー・ショボーがいた。買ってあげたオパールのブローチを眺めている。
 オパールは光の加減により、虹のように多彩な彩色を示す。
 その色の揺らぎが面白いらしく、モー・ショボーは部屋に帰って来てから、飽きもせずにずっとブローチを眺めているのだ。
 買ってあげて正解だった。思わず頬が緩む。
 少し大きな出費だったが、あれだけ気に入ってくれたのなら、プレゼントして良かったと思える。

「貴女からのプレゼント、気に入ってるみたいじゃない?」
「当然でしょ、私の使い魔だもの。好みくらい、ちゃんと分かってるわ!」

 本当は、モー・ショボーが選んだ物を買って上げただけだけど、そういう事にしておく。
 使い魔に任せるのも、主人の裁量の内よね。
 すると、何が可笑しいのか、キュルケは口元を押さえて小さく笑う。

「それは良かったわね。
 そうそう、私がここに来たのはね。あの子にプレゼントを持ってきたのよ」
「プレゼントぉ~?」
「そうよ。
 お近づきの印に、ね?」

 キュルケは事も無げに、ウィンクをしながらそう言った。
 一体何のつもりなのだろうか?
 気まぐれにしては、いやな予感がする。
 まさか、モー・ショボーを横から掻っ攫うつもりなんじゃないでしょうね?
 私の実家、ヴァリエール家と、この女の実家、ツェルプストー家は先祖代々の宿敵なのだ。
 何代前から続いているのか分からないが、気づいた時には既に宿敵だったに違いない。
 ヴァリエール家とツェルプストー家の領地は、トリステインとゲルマニアの国境を挟んで隣同志である。
 戦争の度に両家は殺し合い、屍の山を築き上げてきた間柄だ。
 ……それだけならまだよかった。
 ツェルプストー家がヴァリエール家の宿敵だという認識は、比較的平和な時代である今でも、些かも揺るいではいない。揺るぐはずもない。
 なぜならば、あの女の一族は、私のご先祖様の婚約者や恋人を禿鷹の如く奪い去っているからだ。
 数えるだけでも馬鹿らしく、腹立たしい。
 あの女には、ヴァリエール領の砂粒一つさえくれてやるものか!
 そうでないと、ご先祖様に顔向けできないわ。

「余計なお世話よ。
 私のモー・ショボーに変な物をあげないでくれる?」
「変な物なんかじゃないわ。
 それに、受け取る受け取らないは、あの子が決める事じゃなくて?」
「アンタからのプレゼントなんて、受け取る筈ないわ!」
「じゃあ聞いてみましょ。
 ねえモー・ショボー、こっちへ来なさいな。良い物をあげるわよ」
「なになに? なにくれるの?」

 キュルケはモー・ショボーを手招きする。猫なで声が鼻につく。
 モー・ショボーは何も疑わず、あっさりと物に釣られてしまった。何やってんのよ!

「コレよ」

 そう言って、キュルケは、む、胸元からペンダントを取り出した。
 ど、ドコに入れてんのよ! 胸がおっきいっていう自慢なの?! それとも、私に対する当てつけ!?
 ……オホン。
 取り乱してしまったようね、失礼。
 赤い石は鮮血をそのまま固めた様な深紅色をしている。ガーネットだろうか?
 確かに美しいが、私がプレゼントしたオパールには及ばないわね。
 ……負け惜しみとか貶しているのではなく、純然たる事実だ。客観的な意見だ。

「キャハッ! きれい~。ホントにくれるの?」
「遠慮することなんてないわよ」
「わーい、血染めのレアものもらっちゃった~」

 モー・ショボーの表現は、一々猟奇的だ。無邪気に言う分、なお性質が悪い。意味もなく寒気を感じてしまう。
 これには、キュルケもいささか顔が引きつっている。ざまぁみろだ。
 私は既に慣れてしまっているので、こんな事では驚かない。
 こんなもの、目の前で嵐を圧縮したような暴風が吹き荒れる事に比べたら、可愛いものだ。
 っと、そうじゃない、そうじゃない。

「待ちなさい、モー・ショボー。どうして受け取るの?
 知らない人に物をもらっちゃ、メッでしょ!」
「どうして? くれるなら、もらってもいいじゃん」
「駄目なの! コイツに借りを作ることなんて、絶対に有っちゃいけないの。
 アンタは私の使い魔なんだから、主人に恥をかかせちゃいけないでしょ!」

 貰える物は貰うとか、くれるから貰っていいなんていう考えは、貧乏人の考え方よ。
 私には、いえ貴族にはプライドがある。誇りがある。ソレを汚すような真似なんて出来はしない。
 この女は先祖代々、不倶戴天の敵なのだ。そう易々と、気を許すわけにはいかない。

「人間、うつわがちいさいよ」
「そうそう。この程度で怒ってると、底が知れるわよ、ヴァリエール?
 あたしは別に、貸しだなんて思ってないから」
「私が気にするの! 何で宿敵からの贈り物なんて受け取らなきゃいけないのよ!
 モー・ショボーは渡さないわよ!」
「ああ、そう言う事ね。フフッ……」

 何を得心したのか、心底可笑しそうに笑う。
 私が怒っているのに、それを無視するなんて失礼な女だ。

「なによ? 気持ち悪い」
「フフッ……
 いえね、そんな風に考えてるなんて、思ってもみなかったからつい、ね?
 そんな心配しなくても、人の一番大事な物を取ったりしないわよ?」
「ふんっ、どうだか……」

 コイツに恋人を取られたなんていう話はそこら中に転がっている。
 他人の恋人を取るなんて、手癖の悪い女だ。
 わざわざゲルマニアから留学してきたのも、そこら辺が関係しているのだと思う、恐らく。

「人間、なんでそんなにおこってんの?」
「アンタのためでしょうが!」

 気楽に言ってくれるわ。
 何としてもこの色ボケ女の魔の手から、モー・ショボーを守らないといけないというのに、当の本人はお菓子を片手にのほほんとしている。
 私がおかしいのか? 私がずれてるのか?
 そんな筈はない、これは宿敵との聖戦なのだ。

「人間、お菓子わけたげるから、きげんなおしなよ?」
「あのねえ!
 子供じゃないんだから、そんなもんで誤魔化されるわけないでしょ!」

 差し出されたクッキーを乱暴に払いのける。
 手を払いのけられて、モー・ショボーは不満そうだ。けれど、ここで甘い顔をしてはいけない。
 ……ん、クッキー?
 何かがおかしい。違和感を感じる。 
 キュルケが持ってきたのは、クックべリーパイだ。
 クッキーなど、この部屋にありはしない。ならば、どこから出てきたのだろうか?
 モー・ショボーに向き直る。

「ねえ、そのクッキーは、何処から持ってきたの?」
「あの人間にもらったの。おいしいよ?」

 モー・ショボーが指差す方向を見ると、蒼髪の少女と目が合った。
 何となく気まずいモノを感じて視線を逸らす。すると、クッキーの入った紙包みを発見した。
 ちょっと、ベッドの上に置かないでよ。食べカスで汚れちゃうじゃない。
 睨みつけるようにして、蒼髪の少女に問いかける

「それ、貴女が持ってきたの?」
「欲しいの?」
「要らないわよ! 私の使い魔に餌づけしないでくれる?!」

 何を勘違いしたのか、紙包みをよこしてくる。
 もう我慢の限界だ。堪忍袋の緒どころか、袋自体が破裂した。
 この部屋に私の味方はおらず、敵だらけだという事が良く分かった。
 マグマが湧き上がるかの如く、激しい怒りが心の奥から噴き出してくる。それを止める術を私は知らない。
 例え知っていたとしても、止める気などサラサラない。怒りのままに指を突き付け叫ぶ。

「け、け、け…… 決闘よーっ!」



 -後編へ続く-


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