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狂蛇の使い魔-19


第十九話



「……それにしても、君があれほどまでとは思わなかったよ」

黒いマントを纏った長髪の男、ワルドが、目の前を走る男の背中に向かって声を投げかけた。
ボサボサの金髪に蛇柄の服、そして古びた大剣を背負った男、浅倉は、その驚きと呆れの入り混じった一言に少しも反応することなく、ただひたすらに夜道を走り続けていた。

「次からはもう少し周囲の反応を気にしてくれると嬉しいんだが……」
「知るか」

ワルドの忠言を、浅倉は振り返ることなく一言で斬り捨てた。
適当にあしらわれたワルドは、その顔に思わずむっとした表情を浮かべ、なおも詰め寄ろうとする。
しかし、それは桃色の髪をした少女、ルイズによって遮られた。

「ごめんなさい、ワルド様。彼はああいう性格だから……」
「だが、ルイズ……」

ワルドが問いかけようとするも、ルイズは黙って首を横に振るのみであった。
見れば、隣を走るキュルケやギーシュも呆れたような表情をしている。
タバサは相変わらずの無表情だ。



(彼の奔放さにはうんざり、か……)

彼女らが姫様から受けた任務の最大の障壁は、もしかしたら彼なのではないだろうか、と思うワルドであった。

ラ・ロシェールのとある宿で突然起こった傭兵の襲撃事件は、何処からともなく現れた謎の人物によって、これまた突然の解決をみた。
奇妙な鎧らしき衣装を纏ったその人物は、何十人といる傭兵たちを驚くべき力で一掃すると、
宿に泊まっていた数人の客とともにいずこへと消え去ったのである。

このことは人々の間で噂になり、しばらくの間町の至るところで囁かれ続けたという。



一方、当のルイズたち一行は、もはやこの町にはいられないというワルドの判断により、予定よりも早く船のある桟橋へと向かうことになった。
これ以上目立つのを避けるため、ルイズたちは馬はおろかタバサのシルフィードにも頼ることができず、
自身の足で目的地へ向かうことになってしまったのだった。

夜道という不意打ちにはもってこいの状況の中で、ルイズたちは再度襲撃されるかもしれないと辺りをしきりに警戒していたが、
結局何者にも遭遇することなく、無事に桟橋へとたどり着いたのであった。



巨大な樹をくり貫いてできたと言われるその桟橋は、あちこちから生える枝の先にそれぞれ船が停泊しており、
まるで巨大な樹が果実を生やしているかような外観を形作っていた。

不可思議な光景であったが、浅倉は少しも物怖じすることなく、ルイズたちとともに樹の中にある階段を駆け上がっていった。

階段を昇り終えた一行は、目の前に続く大木の枝を駆け抜けると、泊まっていた一艘の船に乗り込んだ。
甲板にいた船員たちが、飛び込んできたルイズたちに仰天し、一斉に顔を向ける。

「だ、誰なんだあんたら一体……?」

一人の船員が、呟くようにして訪ねた。心なしか滑舌が悪い。
ワルドはそれに答えることなく、逆に訪ね返した。

「船長はいるか? 話がしたいのだが……」
「船長はこの私だ」

そう言って船長室と思わしき部屋から出てきたのは、黒髪の中年の男であった。
ワルドは声のした方を向くと、船長を名乗る男に向かって話を続けた。

「訳あって早急にアルビオンへ向かわなくてはならないのだが、今すぐ船を出してもらえないかな?」

ワルドの要求に、船長は首を横に振って答えた。

「……残念だが、今は船を出すことができない。風石の量が足りないんだ。
だが、私は謝らない。出港は明日だから、その時に来てくれれば乗せてあげられるだろう」
「こんな肝心な時に……風石ぐらい余分に置いときなさいよ!」

何の悪びれもなく話す船長に、キュルケが悪態をつく。

「こんなところで、もたもたしている暇はない。足りない風石の分は私が補おう。私は風のスクウェアだ」
「き、貴族だったんですか!?」

先ほどと同じ船員が、再びワルドに問いかける。

「そうだ。私は魔法騎士隊隊長、ワルド子爵。
もう一度言う。今すぐに船を出してもらおう。代金ならいくらでも出す。嫌とは言わせん」

ワルドの強引な説得に、船長は渋々応じると、船員たちと共に出港の準備を始めた。



こうして、ルイズたちは無事にアルビオン行きの航路を確保したのであった。

船が夜の闇へと飛び立ってから、数時間ののち。
疲れからかぐっすりと眠っているルイズたちのすぐ隣で、浅倉は船のへりに寄りかかり、ぼんやりと夜風に当たっていた。

「それにしても、楽しみだな」

浅倉がふと、へりに立て掛けているデルフリンガーに向かって話しかけた。

「何がだよ?」
「このガンダールヴとかいう面白い力を使って、何千人といる奴らと戦えるんだ……。考えるだけで心が騒ぐ」

にやり、と浅倉は不敵な笑みを浮かべる。
その表情は、夜の闇と相まって一層不気味であった。

「……そんなに戦いたいのかね?」
「当たり前だ。堂々と人を殺していいなんて事は、生まれて初めてだ。
最高だな? 戦争ってのは」

デルフリンガーの問いに、嬉々として答える浅倉。
恐ろしいことをさらっと言ってのける彼の性格に、デルフリンガーは改めて呆れさせられていた。

「今まで色んな人間を見てきたが、初めてだよ。純粋に人を殺したいって奴は。
……ま、やりたいなら思いきりやればいいと思うがね」
「思いきりやらせてもらうさ。言われなくてもな」

そう言って、浅倉はその場に座りこむと、へりに体を寄りかからせ、ゆっくりと瞼を閉じた。

喧騒とともに目を覚ました浅倉は、船に見慣れない男たちがたむろしているのに気がついた。
その数2、30人といったところである。それぞれが武装しており、中には杖を持った者も混じっていた。

浅倉はへりに寄りかかっていた体を立ち上がらせると、近くにいたルイズたちの元へと歩きだした。

「一体何がどうなってる」
「見てわからない? 空賊よ空賊」

今頃起き出して、とキュルケが呆れたように浅倉の問いかけに答える。
賊と聞いて、浅倉は立て掛けておいた剣を取ろうと、寝ていた場所を振り向いた。
が、剣がない。

「あんたの剣なら、私たちの杖と一緒に取り上げられちゃったわよ」

浅倉が口を開くよりも早く、キュルケが再び彼の疑問に答えた。
軽い舌打ちとともに、浅倉がイラついた表情を見せていると、数人の空賊がこちらに近づいてきた。

「何をくっちゃべってやがる。いいか、お前たちは捕らわれの身なんだ。下手な抵抗はするなよ?
わかったならついてこい」

空賊の一人がそう言うと、彼らの乗る船へとルイズたちを先導していく。
後方に控えていた空賊が一列になるよう促すと、ルイズたちの後をついていった。



(誰かに捕まるのも久しぶりだな……)

かつて幾度となくやりあった警察と、一人の弁護士のことを思い出しながら、浅倉は空賊の船へと乗り込んだのであった。

空賊たちの乗る船へと連行されたルイズたちは、船の荷物が置かれている船倉へと閉じ込められた。
部屋の唯一の出入口である、丸いガラスの窓がついた扉には鍵がかけられていて、生身のルイズたちでは開けることができない。
更に、扉の前には見張りが一人立っているのが見える。
一見、脱出は不可能そうに見えるのだが。

「まあ、アサクラの力があればどうってことはないでしょう。なんせ、百人の傭兵を軽く蹴散らしたくらいなんだから」

もう少し寝させろ、と言って再び眠り始めた浅倉を見ながら、ルイズが余裕の表情で言った。ギーシュもうんうんと頷く。
しかし、キュルケとワルドの表情は曇ったままであった。

「残念だが、そう簡単にはいかないだろう。空賊の中にはメイジが複数いる。彼の粗暴な戦い方では、一撃が強力な魔法を受ける前に全員を倒すことは無理だろう。
メイジのいなかった傭兵たちと戦うのとは、わけが違う」

確かに、とルイズが呟く。

「それに、空賊たちを死なせてしまえばこの船が墜落してしまう。ある程度の手加減が必要になるが、かといって相手に余力を残してしまうと、今度は戦う者の身が危ない。
第一、彼にそんな器用なことができるとも思えん」

言われてみれば、と納得したルイズとギーシュは、同時に脱出する術がないことを悟り、ため息をついたのだった。

彼が戦い始めたが最後、立ちはだかる者は皆、容赦なくねじ伏せられてしまうだろう。例え、それが船の運航に必要な人物でも。
空賊の船が落ちれば、当然の如く同行している船も落ちるだろう。そうなれば逃げる方法はない。ゲームオーバーである。

(タバサのシルフィードでも、船員さんたちは助けられないし……)

そう考えた瞬間、ルイズはあることに気づいた。



「そういえば、タバサはどこ?」




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