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ゼロのしもべ第2部-22



 光の球が空を遊弋する艦隊を包んだ。
 膨れ上がる光球が空を飲み込み、そして消えた。
 光が消えた後に現れたのは、炎上しながら高度を下げていくレキシントンの姿であった。
 なにかのジョークのように、空に浮いた小島のような戦艦はがくりと艦首を落とし、地面めがけて墜落していく。
「大変です、ヨミさま!いっさいのエネルギーが消滅しています!」
「風石も消滅!電力系統全てダウン!一切の制御が不能です!」
「メイジたちの魔力もゼロになっています!脱出しようにも、フライもレビテーションも使えません!」
「ドラゴン、サンダーともに墜落していきます!このままでは本艦も!」
 呆然と、砂嵐もなく消えうせた画面を見ているヨミ。
 勝利を確信し、余裕に満ちた表情でモニターを見ていたヨミの姿はそこにはなかった。
「なんだ、なにが起こった!?」
「一切不明です!あの光球に包まれ、気づくとあらゆるエネルギーが消滅していました!」
「ぬうう。魔力さえも消えうせたというのか。」
 グッと拳を握り締め、自らの超能力も試すヨミ。
 いつもの力強さはどこへ行ったのか。スプーン一つ持ち上がらぬではないか。
「信じられぬ。わしの超能力まで消えている。それにこの疲労感……まるで全力で超能力を使い続けたような。」
 よろめき、倒れるヨミ。あわてて部下が駆け寄り、抱き起こす。
「よい。それよりも誰か、なにかマジックアイテムを持ってこい。」
「はっ!」
 あわてて机の上で踊っていた小さな人形を掴み、渡す部下。
「かせっ!」
 人形を受け取ったヨミの額がまばゆいばかりに光り始めた。
「ぬぅぅぅぅ……」
 ヨミの瞳が怪しく輝き始める。途端に、墜落するレキシントンが空中に静止するではないか。
「高度が回復していきます。」
 そう舵手が報告する。ワッと歓声が巻き起こる。
 恐るべきはヨミのサイコキネシス。この巨大戦艦を持ち上げているではないか。
「早くしろ。」
 ヨミが息も絶え絶えに叫ぶ。
「わしはそう長くもたぬ。その間に全員、脱出の準備をするのだ。」
「はっ!」
 ヨミの部下があわててパラシュートを背負う。警報が鳴り響き、レキシントンのクルー各員があわててパラシュートを背負い、空中に
飛び出していく。
「ヨミさま、全員無事脱出しました。」
「あとは我々だけです。」
 部下2人、ヨミが残る司令室に飛び込んできた。
 手から人形を落とし、地面に崩れ落ちるヨミ。
「ああ!」
「ヨミさま!」
 艦体を持ち上げていたレキシントンが、ぐらりと大きく傾く。
「うう……。」
「いかん。レキシントンを持ち上げるのに、超能力を使われすぎているのだ。」糸目の男が汗を流す。
「はやく安全な場所までお運びするのだ。」杖を握った老人がヨミの身体を担ぐ。
 司令部を出て、緊急用の脱出艇にヨミを運び入れた2人。だが、この脱出艇のエネルギーも一切残されてはいない。
「……ぅ、うう…元帥、幻妖斎。」
 蚊の鳴くような声で、ヨミが呟く。
「……皆に、皆に伝えよ………。降服しろ……と。無駄……死にを…するな、と……。」
 それを言い終えると、再び崩れ落ちるヨミ。
 あわてて糸目の男がかけより、脈を図る。
「安心しろ。気を失われただけだ。」
「だが急ぎ戻らねばなるまい。」
 老人が指で印を組み、不気味な呪文を詠唱する。脱出艇が重力に逆らい、持ち上げられていく。
「樊ッ!」
 すさまじい速度で、レキシントンから脱出艇が放たれた。

 1人の男が、足を引きずりながら森を逃げている。
 手にはメイジの証である杖を握り、軍服を着ている。しかも目も眩むような勲章があちこちからぶら下がっている。
「こ、ここまでくれば……」
 後ろを振り返り、一息つくメイジ。木の根元に腰を降ろし、やれやれと呟く。
 このメイジの名前はサー・ジョンストン。ヨミが直接陣頭指揮を執ったゆえの名目上とはいえ、アルビオン艦体の司令官だった男だ。
「まったく、しつこいやつらだ。裏切り者めが。」
 彼が逃げていたのは敵からではない。味方から……降下部隊にいた傭兵たちの生き残りから逃げていたのだ。
 昔から勝ち戦の後は兵が増えるというが、人間勝ち組につきたいのはいつの世も同じ。傭兵たちも例外ではない。だが、戦争は
勝った側と負けた側がはっきりしてしまうものである。そんなとき、負け側に所属していた傭兵たちはどうするか。
 答え。勝った側につくために、自分たちの上司を狙うのである。わー、かしこい。
 そのときの獲物は、身分が高ければ高いほど良い。
 というわけでサー・ジョンストンは、レキシントンから脱出した瞬間から、味方であった傭兵たちの格好のターゲットになっていたのだ。
 矢をかいくぐり、剣の下を抜け、槍を避けてサー・ジョンストンは逃げに逃げた。
「軍服を脱げばいいんじゃね?」
と思うかもしれないが、それはできない。なぜなら軍人は投降すれば身分が保障される。メイジも保障される。暗いが上の人間ほど、
降服後の扱いはよい。とりあえずトリステイン側に降服するまで、この軍服は脱げないのである。
 なんとか追跡を振り切ったサー・ジョンストンは、喉がカラカラであった。
「思えばあの戦いがけちのつきはじめだったなぁ。」
 ニュー・カッスルの大敗を思い出し、1人涙するジョンストン。あの一件以来、クロムウェルの信頼が揺らぎ、左遷はおろか粛清対象
にすらあがるほど落ちぶれていた。だが、必死の政治工作もあり、「今度こそ確実に勝利を取れる」戦いの司令官につくことができた
のだ。が、結果はご存知の通りである。
「俺って勝ち運ないのかなぁ…。」
 しくしくと泣き出すジョンストン。こんなことなら、欲張ってもうちょい上を目指そうだなどと思うのではなかった。あのまま素直にして
いれば、今頃自分は政治家としてバリバリ上で働いていたはずだ。つい欲張り癖が出てしまったのが年貢の納め時か。後悔先に
立たず、覆水水盆に返らずというがジョンストンはそれを実感していた。
「あのバビル2世ってのが現れなきゃ勝ってたのになあ。」
 ぶつぶつと負け戦を述懐し続けるジョンストン。見ていて物悲しい光景だ。なんというか、大人の威厳など欠片もない。
 そんなジョンストンに、
「見つけたぞ」
と冷たい声が浴びせられた。
「ひぃ!」
 飛び上がらんばかりに驚き、震えだすジョンストン。政治家としての才能はあったが、メイジとしての才能がほとんどない彼は、
実力的には未だにせいぜいドットクラス。よくてライン。傭兵集団に囲まれては、ひとたまりもない。
「お助けください、命までは!どうか、なにとぞ!死にたくありません!そうだ、一緒にトリステインに降服しません?そうすれば
あなたたちは捕まえた恩賞がもらえますよ。ね?そうしましょうよ!」
 手をすり、腰を折ってへこへこと見えない敵に機嫌をとるジョンストン。なんとなく出世した理由がわかる。
 だが、現れたのはただ一人の男であった。
 怪我でもしているのか、背中が血で汚れ真っ赤である。元々ピンク色の服が、赤く見えるほどの出血だ。
「なんだ……1人か。」
 ほっと息をつくジョンストン。いくらドットでも、1人が相手ならば楽勝だ。圧倒的に優位と言ってよい。先ほどのおびえっぷりはどこへ
やら、ジョンストンはにやにやしながら、杖をかざして立ち上がる。
「おいおい。まさかメイジに1人で勝てるとでも思っているのかね?実におばかな傭兵だ。せめてもう1人仲間を待てばいいものの。
おい、今日は特別にこのまま見逃してやってもいいぞ。ほら、あっちに行け。」
 シッシッと犬の子でも追い払うように手を振るジョンストン。だが、男はジョンストンを睨んだまま、どんどん近寄ってくる。
「おいこら。それ以上近寄るな。近寄ると殺すぞ。」
 そんな魔力はすでにないのでうったハッタリであるが、男の動きが止まる。
「ほう。やはり死ぬのは恐ろしいと見えるな。ほら、行け。わしはまだこれから逃げねばならんのだからな。」
「いや、貴様に用があるのだ。それを聞くまで、わしは立ち去るわけにいかんのでな。」
 男――樊瑞がにやっと嗤った。
「わしの父と兄の仇のメイジ・クロムウェルについてと、ついでに、あの少年について教えても教えてもらおうか。」
 『クロムウェルはメイジじゃねえよ!』とジョンストンが弁明する間もなく、樊瑞にひどいめにあわされたのだった。かわいそうに。

「ちょっと!大丈夫!?ねえ、起きて!」
 必死にバビル2世をゆするルイズ。バビル2世は今にも倒れそうなほど衰弱している。全力で超能力を使い続けたときのように。
 操縦かんを懸命に操作して、ガソリンの尽きたゼロ戦を軟着陸させようとするバビル2世。
 そう、バビル2世も、ルイズも、ゼロ戦も、あの光球に飲み込まれていたのだ。
 バビル2世は超能力と体力の全てを失い気絶寸前。ゼロ戦もすでにプロペラは止まり、ぐるぐると回りながら軟着陸のタイミングを
見計らっていた。
 バビル2世の紋章が輝き続けている。そのおかげでバビル2世はすこしずつ楽になっているのだ。もし紋章がなければゼロ戦はとう
の昔に地上で無残な姿をさらしているだろう。今はハングライダーのようにして、なんとか空を飛んでいるにすぎない。
『まるで、ぼくの力を補給しているようだ。』
 声を出す気力もないバビル2世は止めるすべもなくゆすられ続けるバビル2世。せっかくヨミを追い払えたというのに飛行機事故で

    ゼロのしもべ  完

 はないだろう。そう思い、体力を振り絞って機体を振り回し、着陸態勢に入る。
「だめだ……」
 目が霞み、機体が左右に大きくぶれた。
 次の瞬間。鉄の腕が、機体をがっちり掴んだ。機体を抱えて、頭の上に持ち上げる。
「がおおおおおん!」
 鉄人だ。
 鉄人が、ゼロ戦を抱えて草原に足から着地する。そしてそのまま草原を滑っていく。
 そして鉄人の足に絡み付いて、速度を減速させていくスライムのような物体。
 ロデムだ!
「ビッグ・ファイア様!」
「浩一くん!」
「ファイア様!ヴァリエール様!」
 色とりどりの声がバビル2世の耳に飛び込んできた。よりによってむさい男の声が先行するのはどうなんだろう。
 安心したのか、バビル2世は機体の上で眠るように気絶したのだった。

ゼロのしもべ 第2部 動く大陸編 完

              …エピローグ…

「ほう。バビル2世だけでなく、このようなものまで見えるとは……」
 ヒッピー男が満足げに微笑む。
「だが、唯一の心残りは樊瑞君と決着をつけられなかったこと。なにしろ……」
 男がくるりと後ろを振り向く。
「これだけの人数。さすがに、見殺しにはできなかったのでねえ。」
 視線の先には、いくつもの戦艦が転がっている。
 男はバビル2世が現れるや否やこの事態を予測していた。そして撃墜された戦艦がある場合、身を呈してでも人命を助けるべく駆け
出した。なんと落ち来る戦艦を受け止めては降ろし、受け止めては降ろしを繰り返したのだ。
「だが、一度に数多くの人命を奪わざるをえない以上……むやみに命を奪うのは嫌いでねぇ。」
 どこかの超能力少年に聞かせてやりたい台詞だ。
「性分というやつか。なぁ、呉先生。」
 ヒッピー男の後ろで頷く男。
「さて、ヨミさまは無事との連絡も入ったことだし。そろそろ帰ろうじゃないか。」
「ええ。GR計画も準備が完了しました。あとはジョゼフ王を待つのみですからね。」
 呉先生と呼ばれた優男が、扇をふわりと動かした。
 男のつけた黒メガネのフレームが赤く光っている。はっはっはっ、と高らかに笑うと風が巻き起こり、砂埃が視界を隠す。
 砂埃がおさまったとき、二人の姿は嘘のように消え去っていた。


異世界ハルケギニア 人類は魔法の力を用いて 秩序ある社会を築いていた。
だがその繁栄の陰に 暗躍する一つの影があった。
かつていくつもの組織を率い、世界を支配せんと目論んだ悪の指導者、ヨミ。
一方、3つのしもべを率いて、その野望に立ち向かいつづける一人の少年の姿があった。
名をバビル2世。超能力少年、バビル2世。



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