あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゴーストステップ・ゼロ-13


アンリエッタを宿泊所へ送り届けたルイズが部屋に帰ると、ヒューが旅装を整えていた。

「ただいま、ヒュー。準備できた?」
「ああ、俺の方はな。今はルイズお嬢さんの分をやっている。」
「ねぇ、ヒュー。そんなに小さいバッグだとドレスが」
「いらないだろう。」
「そんなわけにはいかないわよ、一国の皇太子に会うのよ?」
「制服で大丈夫さ、今日も姫さんの前ではそれだったしな。
 第一、こんな任務を受けるのなら、荷物は極力減らすべきだよ。ほら、終わりだ。
 一応、3日分の下着と靴下、ブラウスと制服のスカート。保存食代わりのビスケット、それから水筒を入れてある。
 ビスケットは非常用だからな、ティータイムだからって食うんじゃないぞ。」
「わ、判ってるわよ。」

小ぶりなリュックを机の上に置いて、中身の説明をするヒューに着替えながら返事をする。



ゴーストステップ・ゼロ シーン13 “Departure in morning haze / 朝靄の中の門出”

    シーンカード:カブキ(門出/完全なる偶然による状況の進展。善かれ悪しかれ。)


さて、もう寝ようかとルイズがベッドに目を向けると、サイドテーブルに2つの見慣れない物が置いてあった。
一つは、黒板消しからスポンジを外した感じの黒い小箱、片方に金属部品が付いている。しかし、箱に見えるのに開く所はない。
もう一つは、L字型をした何か。短い方を持つ様になっているのか、滑り止めらしいものがついている。長い方の先端には穴が開いており、L字の内角には引き金らしきものがある。…これはもしかして、銃…だろうか。

「ねぇ、これ貴方のじゃない?」
「ん?ああ、それはルイズお嬢さん用に用意したヤツだ。」
「私用?」
「護身用の武器だよ。」
「何言ってるの、私はメイジよ?平民が使うような…」
「死ぬつもりは無いんだろう?だったら使えるものは何でも使うんだ。」
「ぶぅ…」

ヒューが告げた言葉に、思わず反発するルイズだったが、返ってきた言葉に口を噤まざるをえなくなった。

「こっちの黒い箱は<雷神>っていうスタンガン。要するに小さい雷を起こして相手を失神させたり痺れさせる事ができる。
 もう一つのこれは、ハルケギニアの物とはかなり違うが、<タクシードライバー>っていう銃だ。装弾数は10発、威力は低いからなるべく近い状態。そうだな、できれば密着状態で不意打ちっぽくやれば、かなりの効果が期待できると思う。」
「どうやって使うの?」

ルイズは余計な質問は止めて、使用方法だけを聞いてくる。
そんな質問にヒューは一つずつ丁寧に教えていく。特に銃の使い方はしっかりと教え込んだ。

「判っているとは思うけど。」
「人に見せるな、人前では使うな、使う時は落ち着いて。でしょう?判っているわよ。」
「そう、知らなければ対応は遅れる、その分攻撃の命中率は上がるはずだ。」
「うん、十分気をつけるわ。じゃあもう寝ましょうか、明日も早いんだし。」

ヒューは、部屋の灯りを落とそうとするルイズの左手に、見覚えのない指輪を見つけて、奇妙に思い問いただした。
確か、部屋を出る前には指輪はしていなかったはずである。

「ところでルイズお嬢さん、その指輪は?」
「ああ、これ?
 姫様から旅のお守りにって預かったの、トリステインの王家に代々伝わる“水のルビー”よ。
 言っておくけど、置いていけなんて…」
「いや、できれば持って行ってくれ。」

てっきり反対されると思っていたルイズは、意外な言葉に吃驚した。

「ええっ、反対しないの?」
「しても無駄だろう。出来る事なら紛失防止と隠匿の為にも、鎖を通して首から下げていて欲しいんだが?」
「…そうね、万が一にも無くしてしまったら、姫様に申し開きができないわ。」

ヒューの意見に頷いたルイズは、サイドテーブルの中に保管してあるネックレスから、細いが丈夫そうな鎖を見繕って、それに指輪を通して、首から下げた。

「どうかしら?」
「いいんじゃないか、あまり目立たないしな。」
「そう、じゃあヒュー今度こそお休みなさい。」

そういうと、ルイズは部屋の灯りを落として、今度こそ眠りについた。


ルイズが眠りに落ちた頃、ヒューとデルフは小声で話をしていた。

「さて、図らずも指輪が手に入ったな。」
【ああ、いやなんていうか、偶然ってのは恐ろしいね。】
「そうだな、上手い事やってアルビオン王家の分も何とか回収しときたいところだ。
 そういえばデルフ。」
【なんだい、相棒。】
「実際『虚無』っていうのは、どの程度の事が可能なんだ?」
【基本的には溜まっている精神力によるだろうな。『虚無』っていうのは、使う魔法で色々とやれる事が変わるからな、精神力さえあれば、一番初期の魔法でもかなりの事ができるんだ。】
「となると、最初にお嬢さんが覚える魔法如何で、何とかなるかもしれないということか。」
【そりゃあ、どういう意味だい相棒。】
「ルイズお嬢さんは、生まれてから今まで、俺の召喚と契約以外の魔法行使に悉く失敗しているという話だ。
 だったら、お嬢さんには年単位で蓄積されている精神力が丸々残っているという事だろう?どれ位、溜めておけるのかは知らないが、かなりある事は間違い無いはずだ。」
【なるほどな、確かにその通りだ。ちっとは希望が見えてきたんじゃないのかい?】
「ほんの少しだけどな、流石に行き先の詳細な情報が無いのは辛い。」
【お嬢ちゃんは土地勘があるとか言ってなかったか?】

ヒューは、デルフの意見に首を振りながらダメ出しをする。

「信用できないな。病気がちな人間を含めた貴族の家族旅行だ。恐らく馬車か何かで移動しているはずだから、裏道や抜け道なんか知っているはずがないだろう。
 しかも、行ったのは良くて数年前だろうし…。力を借りるか…」
【誰か心当たりでもいるのかい?】
「あんまり、気が乗らないけどな。」

そうデルフに告げると、ヒューはルイズの部屋から音も無く姿を消した。


学院秘書ミス・ロングビルことマチルダ・オブ・サウスゴータの就寝は遅い。
元々、秘書という業務自体、雇い主の怠け癖のせいで多忙な上。今日に至っては、この国の姫殿下が逗留する事になった為、余計な雑務が増えたのだ。
結局、仕事を終え一息つけたのは午後11時を回っていた。

「あーもう、いい加減にして欲しいよね。何だってあんなに仕事を溜め込むんだい。」

オスマンに対する愚痴を吐きながら、寝間着に着替えていると、サイドテーブルに置いてある<K-TAI>に着信が入る。
表示画面を見ると、相手はヒューだった。
一つ溜め息をついて<K-TAI>を取り上げる。

「こんな夜中に何の用だい、こっちは明日も早いんだけどね。」
【済まないな、悪いとは思ったんだけど、こっちも時間が無いんだ。】
「いいさ。それで?」
【実はとある事情でアルビオンに行く事になってな】
「ちょっと、本気かい?あそこは今、内戦中だよ?」
【知ってる、俺だってあまり気乗りはしないんだ。】
「なるほど、で?」
【信用できる土地の人間を紹介して欲しいんだが…】

らしくもなく口ごもるヒューに、疑念を抱いたマチルダは確信をもって、目的地を聞いた。

「ところでアルビオンの何処に行くつもりなのさ。」
【……ニューカッスルだ】

2人の間に沈黙が漂う。
やがて、マチルダの方から言葉が出てくる。

「本気かい?それをこのアタシに本気で言っているのかい。」
【…ああ、死にたいとも、死なせたいとも思ってないからな。なんなら貸しにしてもらってもいい。】
「へぇ…太っ腹じゃないか。」
【払えるものが無い以上しょうがないだろう。】

マチルダは何か考えているのか、暫く会話が途切れた。
そうして1分が経った頃だろうか、マチルダから答えが返ってくる。



翌朝、朝靄が未だ学院を覆っている時刻。
厩舎の前で出立の準備をする、人影があった。

「やあ、ルイズ。」
「おはよう、ギーシュ。」
「おや?ヒューはどうしたんだい?」
「ヒューは用事があるって、すぐに来るとか言ってたけど…、何ジロジロ見てるのよ。」
「いや、中々珍しい出で立ちだと思ってね。」
「ヒューからこっちの方が良いって言われたのよ。」

そう言ったルイズの服装は、魔法学院の制服の上にロングコートを羽織ったものだった。ただし、スカートは乗馬用のズボンに替えられており、ややもすると中性的な美少年にも見える。
ギーシュは今が早朝だという事を始祖に感謝した、ルイズのこの出で立ちは危険だ。元が凄い美少女なので、こういった格好もサマになるのである。もしこの姿をモンモランシーが見ていたらと思うと戦慄を禁じえなかった。

「へ、へぇ…そうなのか。しかし、女性にそういった野暮ったい服装をさせるというのはどうだろうね。
 そういえば、マントはどうしたんだい?」
「あら、結構暖かいから、これはこれでいいと思うわよ?動きやすいしね。
 マントはリュックの中、コートの上からっていうのも変だからしまってあるの。まぁ、考えてみれば平民に扮する事で、ある程度のトラブルは避けられるだろうし。」
「むむぅ、確かに…いや、そうすると貴族としての誇りが…」
「ギーシュ。私達は姫様の、いえトリステインの為にも、生きて帰らなければならないの。そんな時にプライド一つ捨てられなくてどうするの。貴方にとって、それがどうしても譲れないというのなら止めはしないけどね。
 とりあえず、今からだと着替えに帰る時間は無いから、どうにかするのならラ・ロシエールに着いてからにしなさい。」
「ああ、道中よく考えて決めておくよ。」


その頃、ヒューは校舎裏でマチルダと会っていた。
当然、というかマチルダは不機嫌な顔を隠そうともしていない。

「悪いな、こんな事をいきなり頼んで。」
「いいさ、どうせあのお嬢ちゃんが絡んでいるんだろう?」

マチルダの言葉にヒューは苦笑で応じる。
その顔を見たマチルダは、溜め息を一つ吐くと懐から二枚の封書を出した。

「こいつを持って、ラ・ロシエールのキンバリーって商店に行きな、そうすれば大体の事には応じてくれるさ。
 片方は仕送りの手形だからね、ちゃんと届けるんだよ?」
「分かった。伝言とか、あるか?」
「何て顔してんのさ、アンタらしくもない。特にないよ、あの連中との事はもう終わった事だしね。せいぜい頑張って誇りとやらの為に死んで来い、とでも伝えておくれ。
 …ああ、そういえば言うのを忘れてたんで、ここで教えとくよ。レコン・キスタとやらの首魁はクロムウェルって司教なんだけどね、噂だと『虚無』を使うって話だよ。」
「『虚無』だって?」

与太話を気軽に言ったマチルダの言葉に、ヒューは聞き逃せない単語を聞いた。

「はっ、なんとも胡散臭い話さ。」
「そのクロムウェルっていう男は、どっかの王家の血を引いてるとか?」
「ん?ああ、ないない。ロマリア出身だって話だからね。」
「そうか…ありがとう、参考になったよ。」
「せいぜい、死なないように気をつけるんだね。帰ってきたら一杯奢ってもらうんだからさ。」

マチルダの言葉に後ろ手で手を振りながら、ヒューは朝靄の中へ消えていった。

「さて、もう一眠りするとしようかね。」

そう1人呟くと、マチルダも踵を返していく。


厩舎の前にヒューが到着すると、何やらルイズの怒号が聞こえてきた。
何事かと視線を向けると、人間大の生物に圧し掛かられているルイズがいた。横にはギーシュもいるのだが止める気配が無いことから、そこまで危険ではないのだろう。
朝早くから元気な事だと、感心しながら歩いていると。突風が吹き、ルイズに圧し掛かっていた生物が吹き飛ばされた。
吹き飛ばされた生物は目を回したのか、仰向けにひっくり返っている。

「ヴェルダンデっ!誰だっ!? 僕の使い魔にこの様な!」
「失礼、婚約者がジャイアントモールに襲われているのを、見て見ぬ振りは出来なくてね。」

ギーシュの怒りの声に答えるように、朝もやの中から羽帽子をかぶった伊達男が現れた。
しかし、その男が言った言葉で、ギーシュも怒りを鎮めざるをえなくなる。

「愛しい人を助けたいと思う気持、君も男なら分かると思うんだが。」
「う、確かに、使い魔の狼藉を止められなかったのは、僕の落ち度だ。」
「いや、使い魔を得たばかりの頃の気持は僕にも分かるからね、次から気をつけてくれるとありがたい。」

ギーシュの謝罪を笑顔で受け流した男は、被っていた帽子を取り、丁寧な礼を一行にする。

「魔法衛士隊・グリフォン隊隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵だ。
 姫殿下より、君達に同行し護衛することを命じられた。君達だけでは、やはり心もとないらしい。しかし、隠密任務であるゆえ、一部隊をつけるわけにもいかぬ。そこでルイズの婚約者でもある僕が指名されたのだよ。」

ワルド子爵の自己紹介を聞いたヒューは「派手な男だ」と思いながら、自分の準備を整えていた。

「ワルド様…!」

倒されていたルイズが起き上がり、驚いた様子でワルド子爵を見る。

「久し振りだね! ルイズ! 僕のルイズ!!」
「はい、お久し振りでございます…」

頬を赤らめながら、ワルドに抱きかかえられるルイズ。

「ははっ、君は相変わらず羽の様に軽いな。」
「ワルド様、人がいます、恥ずかしいですわ…。」
「ああ、すまない。なにしろ久しぶりの再会だからね、思わずはしゃいでしまったよ。」

そう言いつつ、ルイズを下ろしたワルドは、ヒューの方を見ながら、ルイズに話しかける。

「ところで、ルイズ。彼等を紹介してくれないのかい?」
「級友のギーシュ・ド・グラモンと使い魔のヒュー・スペンサーです。」

ルイズが紹介を終えると、笑みを浮かべたワルドがヒューの元へ近付いてくる。

「君がルイズの使い魔かい? 噂は聞いてるよ、何でもあの“土くれ”から盗まれた品を取り戻したそうじゃないか。」
「どうだろうな。俺達が隠れ家に行った時にはフーケはいなかった。もしかしたら見逃してもらっただけかもしれない。」
「ふむ、確かにその可能性もあるか。しかし、謙虚というのは美徳だが、過ぎればただのイヤミになると思うんだが?」
「忠告どうも、せいぜい気をつけるさ。
 ところでミスタ・ワルド、貴方の乗騎はどうするんだ?学院の馬を使うのかい。」

ヒューの質問に、不敵な笑みを返したワルドは口笛を吹いて、自らの乗騎…グリフォンを呼んだ。
空から降り立ったグリフォンに颯爽と跨った、ワルドはルイズに手を伸ばす。

「さ、どうぞ。レディ。」
「は、はい…」

数瞬躊躇したルイズだったが、ヒューから特に何も言ってこなかった為、ワルドの手を取りグリフォンに跨る。

「さあ、諸君!出発しようではないか!」

そう、号令を上げるとワルドとルイズを乗せたグリフォンは、飛び立って行った。

「やれやれ、派手で元気な子爵様だ。」
「何をしてるんだね、ヒュー早く追いかけないと!」
「別に急ぐ必要は無いだろう?」
「な、何を言っているんだ!早く行かないと子爵やルイズに置いて行かれるじゃないか!」

ルイズとワルドに置いて行かれると、焦るギーシュを横目にヒューは馬具をしっかりと固定する。

「急いだ所で、どうせラ・ロシエールで足止めを食らうんだ、俺たちは明日までに到着するように行けばいいのさ。」
「だから、どうしてそう!」
【落ち着きな坊ちゃん、今日中に着いたってどうせスヴェルの夜じゃ無い以上、フネは出ねえんだ。】
「あ。」
「そういうことだ、子爵殿が何を焦っているのか分からんが。俺達はなるべく体力を消耗せず、時間に遅れないようにラ・ロシエールに着けばいいんだよ。
 まぁ一番の理由は、俺がまだ乗馬に慣れていないっていう事なんだけどな。」
「そういえば確か、馬に乗り始めてまだ1週間経ってなかったんだっけ。」
「そういうこと。じゃあ、行こうかギーシュ。」

男2人と魔剣1本という、色気も何も無い一行は、颯爽と飛び去った2人を追って学院を発った。


アンリエッタは出発する一行を学院長室の窓から見送り、祈っていた。

「彼女たちに加護をお与えください。始祖ブリミルよ…。」

隣ではオスマンが鼻毛を抜いている。

「見送らなくて宜しいのですか? オールド・オスマン。」
「ぬ、痛…、姫、見ての通り、この老いぼれは鼻毛を抜いておりますでな。おほう…。」

鼻毛を抜きすぎたのか、涙目になったオスマンの仕草に、アンリエッタは溜め息を吐きながら、首を横に振った。

「トリステイン、いいえ、ハルケギニアの未来がかかっているのですよ? 何故そのような態度を…」
「すでに杖は振られたのです、我々にできることは待つことだけ。違いますかな?」
「それは、そうなのですが…」
「なあに。彼ならばやってくれましょう。姫さまも、かの使い魔には会われたでしょう?」
「…ええ。」

ルイズの使い魔、ヒュー・スペンサー。自分達の常識から逸脱した知識を持つ男。
親友であるルイズの言葉によれば、ここハルケギニアよりも進んだ文明を持つ地から来たらしい。

「あの者の力はワシでも計りかねるほど。やれやれ、老骨には堪えますわい。」
「まあ、そのような弱気、オールド・オスマンらしくありませんわ。」

珍しくオスマンの口から零れた弱音に、心の余裕を取り戻したアンリエッタはマザリーニに相談する事柄について考えを巡らせていた。

(ルイズ、私も頑張ります。だから、きっと生きてまた会いましょう。)

魔法学院を包む朝靄は未だ晴れる気配を見せなかった。それはあたかも、今のハルケギニアの未来を暗示している様だと、麗しい王女は思うのだった。



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