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虚無と賢女-00


その日、物質世界と精神世界を融合させ『新しき世界』を創造しようとした神―――ベアルファレスは倒れ、
その身体の中から眩い『光』が異形の表皮を突き破って溢れ、あっという間に始原の地の最深部たる神界を覆いはじめる。
最強の切れ味を秘めた無銘の長剣で斬りかかった青年と、その傍らで強大な炎の魔法を放ち続けた少女を飲み込んで。

「ウェルドー!! ノエルー!!」

ただ一人、辛うじて『光』から逃れることの出来た女性は、死闘で乱れた長く美しい黒髪を整えもせず、
必死になって脈動しつつ膨張する光の塊―――光球に向かって叫び続けた。

「返事を!! 返事をしてくだ―――ッ!?」

何度目かの呼びかけの最中、光球は突如として脈動を止める。膨れようとする箇所、収縮しようとする箇所、
ねじれた円錐状の突起を生み出す箇所、いびつな箇所、ゆがんだ箇所、ひずんだ箇所、異形の箇所箇所箇所―――。

突然の事態の推移に女性は戸惑う。そして理性が回答を導き出す前に、本能が回答を示した。危険だ…と。
反射的に身を翻し、可能な限り距離を取ろうと駆け出―――すことは出来なかった。
いつの間にか、女性すぐ背後に『鏡』が現れていた。

「これは…?」

女性がその楕円形の『鏡』に気を取られたのは一瞬のことであった。だが…その一瞬が、
迫りくる危険から逃れる時間を奪い去った。

光球…、既に球体からは大きく外れた名状しがたい形状の光の塊がついに破裂した。
視界を全て白に塗りつぶす閃光が辺りを満たし、同時に膨れ上がった爆圧が周囲を蹂躙する。
女性は声にならない悲鳴を上げ、その爆圧に押されて前方に吹き飛ばされた。そのまま『鏡』に押し付けられ、
その衝撃に耐えようと硬く目を閉じ―――女性はそのまま意識を失った。





「―――!」
「―――!」

(う……? 子供?)

周囲から聞こえる声に女性はうっすらと目を開ける。仰向けになった女性の目に最初に映ったのは抜けるような青空。

「―――が平民を召喚したぞ!」
「―――間違っただけよ!」

混濁とした意識のまま女性は、ただ子供たちの言い争いを聞き入る。

「―――させてください!」
「―――ダメだ。ミス・ヴァリエール」

言い争う声に大人の男性の声が混じる。
子供たちの声と男性の声、共に聞き覚えの無い声と女性は夢うつつのまま考え―――そして、
ハっと目を見開く。死闘で負った打ち身の痛みと疲労感を感じつつも身を起こした女性は、
周囲に広がる豊かな草原、黒いマントを身に着けた年端のいかない少年少女たちと、
雑多な種類の動物たちを驚愕の眼差しで見回す。

「おい、ルイズ! 平民が目を覚ましたぞ!」
「ゼロのルイズ! さっさと使い魔にしないと平民に逃げられるぞ!!」
「うるさい! うるさ~い!」

次々と囃したてる少年少女たち。その様子に一番近くに立っていた桃色がかったブロンドの少女―――ルイズが、
顔を真っ赤にして怒鳴り返すが笑い声でかき消される。体型や言動から十二~三歳くらいと女性は思った。
見るに見かねたのか少女の傍らにいたローブの男性が制止し、ようやく笑い声は収まる。

「さて、では儀式を続けなさい。春の使い魔召喚の儀式はあらゆるルールに優先される神聖な儀式だ。
望む望まないに関わらず君の使い魔は、召喚された彼女ということになる」
「でも、平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
(使い魔? 平民?)

事態は全く飲み込めない女性は、近くで言い争うルイズと男性を―――よくよく見ると髪が禿げ上がってるので
自身の倍以上の年代、恐らくはこの場の責任者なのだろうと思い―――交互に見つめる。

(確か赤獅子騎士団は遺跡の外から召喚された…。私は何らかの形で遺跡の外へと弾き出されたのでしょうか?)

ルイズと男性の言い争いはすぐには収まりそうになかった。





数分に及ぶ言い争いが終わり、がっくりと肩を落としたルイズがトボトボと女性に歩み寄る。
その表情には困惑と失望が浮かんでいた。

「あの…ここはどこなのですか? カルス・バスティードでもありませんし、アスロイト王国の何処かでしょうか?」
「かるす・ばすちーど? あすろいと王国? ここはトリステイン魔法学院よ。
それよりも貴女、感謝しなさいよね。 貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」

女性の問いかけに眉をひそめつつもルイズは手に持った小さな杖を軽く振る。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。
この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

身を起こしたままの女性の額に杖を置き、そして開いた手を女性の頬に添えゆっくりと唇を近づけてくる。

「え? 何を?」

女性の戸惑うような問いかけを無視して、ルイズの唇が重ねられる。同時に女性の左手の甲を中心に
激痛と熱が身体を駆け巡りだした。

「うぅ! な、何ですかこれはッ!?」
「使い魔のルーンが刻まれてるだけよ、すぐに終わるから待ってなさい」

右手で左手の甲を抑える女性にルイズはあっさりと言いわたす。その言葉どおり、痛みと熱はすぐに収まったのか
女性はゆっくりと右手を離す。

「ミスタ・コルベール、終わりました」
「『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできたね。ふむ……珍しいルーンだな」

確認のために近寄ってきたローブの男性―――コルベールは女性の手に浮かんだルーンをスケッチすると、
杖を振って宙に浮かんだ。

「さてと、全員の儀式も完了したし皆戻るぞ。今日は各自思い思いに使い魔と交流したまえ」

その言葉に他の少年少女たちも同じように杖を振って、傍らにいた動物たち共に次々と宙に浮かぶ。

「じゃあな、お前は歩いて行けよ!」
「平民と一緒に、か? ははは、ゼロのルイズは使い魔に優しいな!」

残されたのはルイズと使い魔となった女性のみ。二人っきりなるとルイズは大きくため息をついた。

「それで、貴女の名前は? 無いのなら勝手につけるわよ」
「……エレアノールです」
「エレ……ア、ノール? エレアノールでいいのよね?」

妙に『ア』にアクセントを置いて聞き返す。どことなく苦々しい声色でもあった。

「はい、エレアノールです。それよりも、ここは何処なのです? それに、何故あの方々は空を飛べるのです?」
「そんなことも知らないの? ハァ……、何でこんな世間知らずの平民が私の使い魔になるのよ……」

明らかに年下のルイズのその態度に、女性―――エレアノールはきょとんとして、一瞬後には微笑を浮かべる。

「ええ、世間知らずなもので……出来れば何が起こったのか、状況を詳しく教えていただけませんか?」
「いいわ、どこの田舎から来たか知らないけど、使い魔の心得も含めてしっかり説明してあげるわよ」





魔法の使えないメイジと蔑まされ続けた気高き少女と、
上級貴族でありながら貴族階級の腐敗を正そうとした思量深き女性。

『虚無のルイズ』ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと、
その忠実な使い魔として仕えた『トリステインの賢女』エレアノール。

後世の歴史家にそのように称された二人の英雄は出会いは、激動の時代の幕開けを告げるものとなった……。


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