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Zero May Cry - 06


Zero May Cry - 06


 昼食を食べ終えたルイズはネロを探しに庭を歩いていた。そんな彼女の口から漏れるのは不満の言葉。

「もう、私が折角ご飯あげようと思ったのに……」

 ふと、ルイズはあるものを目にする。

 生徒達の集団だ。中には「決闘」「見物」といった単語を口ずさんでいる者もいる。
 ルイズは彼らに歩み寄り、何があったのかを問いただした。

 そして。

「何考えてんのよーーーーー!!!! あの馬鹿犬ーーーーーーー!!!!」

 怒り冷めやらぬルイズの絶叫が辺りに響いたのだった。








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 一方その頃ヴェストリの広場。

「逃げずに来たようだね。その勇気だけは誉めてあげよう」
「そりゃどうも。貴族の坊ちゃんに褒めてもらって光栄だぜ」

 慇懃に言われつつも、ギーシュは冷静を装ってネロの右腕をみやった。ギプスで覆われている件の右腕だ。
 その右腕を眺めながらギーシュはやれやれと頭を振った。

「右腕を怪我してる体で、よくもまぁ決闘を受ける気になったものだよ君は」

 小さく鼻を鳴らすネロ。

「ハッ、坊ちゃん相手には片腕で十分だって分からないか?」

 相変わらず不遜な態度のネロにギーシュはご立腹の様子だ。当のネロと言えば、楽しそうな笑みを崩さずにいる。
 そしてそんな二人の周りには彼らを囲むように生徒達の輪が出来上がっていた。その中には怯えた瞳でネロを見つめるシエスタの姿もある。おそらく彼らの殆どが期待しているのはギーシュがネロのことを痛めつけるシーンなのだろう。

 そのギャラリーの輪からやや外れた所に燃えるような赤い髪の女性と、それと対照的な青い髪の少女が佇んでいる。青い髪の少女は、先程の授業でネロの目に付いた少女だ。大きな杖を持っている。
 赤い髪の女性は面白そうな目でネロを見つめながら、隣の少女に尋ねた。

「ねぇタバサ。あの平民……ギーシュに勝てると思う?」

 タバサと呼ばれた青い髪の少女は手に持っている本から視線を逸らさずに答えた。その口調も見た目通りに大人しい。

「………分からない」

 そう言いながら、タバサは眼鏡越しにネロの方をちらりと見やった。勿論視線を送っただけだったが。
 そんなタバサの心境を知ってか知らずか、赤い髪の女性はネロに視線を送りつつ笑みを浮かべる。

「それにしても彼、何があんなに楽しそうなのかしらねぇ。自分のいる状況が分かってないのかしら」

 そう語る女性―――キュルケの視線の先のネロは、確かに心底楽しそうな笑みを浮かべている。これから起こることが楽しみ楽しみで仕方ないといった風だ。
 しかし彼を見つめるキュルケの思惑も、「中々いい男じゃない」と、そんな場違いなものであったが。





「それじゃあ始めるとしようか。覚悟はできたかい、平民!」
「さっさとしろよ。こっちはまだ朝飯前なんだ」

 どこまでも不遜な態度なネロに言われたギーシュは、その手に持っていたバラの花を模した杖をを高く掲げ―――

「やめて!!」

 ―――突然広場に響いた声にその手の動きを止めた。

 ネロとギーシュ。二人分の視線の先には肩で息をするルイズの姿が。
 彼女はそのまま凄い剣幕でネロに歩み寄ってくる。

「もう何考えてるのよ! この馬鹿!」
「別にいいだろ? ちょっとしたお遊びさ」

 相も変わらず不敵な笑みでそう言うネロに、ルイズはさらに声を張り上げて彼を説得しようとした。

「遊びじゃ済まないわよ! 平民のあんたが貴族に勝てるわけないでしょ!」
「笑えない冗談だな、そいつは」

 ルイズから視線を逸らし、ギーシュを挑発するように彼に向かって笑うネロ。
 そのネロの態度にギーシュの怒りも頂点に達したのか、ギーシュはネロの隣りのルイズに向かって叫んだ。

「ルイズ! 早く離れたまえ! もう決闘は始まっている!」
「ギーシュ! あんたもいい加減にしてよ! 大体、決闘は禁止されているのに……!」
「それは貴族と貴族の場合だ。彼は平民だろう? 問題は……ないはずさっ!」

 言い終えるや否や、ギーシュは杖を横薙ぎに振るった。そこからこぼれた花びらが地面に落ちる……と、それは眩い光を発して人の形を作った。
 その光景を見ていたネロは唇を尖らせて「ヒュウ」と口を鳴らした。

「僕の名は『青銅』のギーシュ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手致そう」

 眼前に現れた甲冑を目にして、ネロの脳裏に魔剣教団が生み出した鎧の人造兵士がよみがえる。
 ネロは唇を皮肉に歪めると、ギーシュを大きく手招きするようにして言った。

「鎧の相手はもうたくさんだが、ヤッてやるぜ。来いよ!」

 ネロの挑発に乗る様にしてギーシュは彼にゴーレムを向かわせる。
 その動きは確かに普通の人間から見れば速い。それこそ、何もする事ができずに腹部にその拳を叩き込まれてしまうほどに。


 ―――だが、今ギーシュの前に立つ男は、断じて『普通』の男ではなかった―――

「フン!!」

 己に迫った拳にカウンターを取るようにしてネロの左拳が繰り出される。
 動きはでたらめな我流とも言えるそれだが、そこに秘められた一撃の重さだけは本物だ。

 ぐしゃりと、異様な音と共にゴーレムの背中からネロの左拳が突き出た。

 その瞬間、広場は暫くの間静寂に包まれていた。
 青銅の鎧を拳で貫く―――普通の人間ではあり得ないことだろう。常識では考えられない事態を前にして、生徒達は一様に銅像のように固まってしまっていた。

「邪魔だ」

 短く言って、ネロは己に寄りかかるようにして倒れ来たゴーレムを蹴り飛ばした。さらに頭部が吹き飛ぶゴーレム。
 頭部を失った、胴体に穴の開いたゴーレムが足下に倒れ込み、それまでの呆けた表情を驚愕の表情に一変させてギーシュはネロを見やった。

「どうした、終りか? これじゃ遊びにもならないぜ?」
「クッ! 舐めるな! 行けぇっ!!」

 今度は同時に六対のゴーレムを作り出すギーシュ。そしてそれを一斉にネロへ向かわせる。ギーシュにとって、これが己にできる最高の攻撃方法だった。
 しかしそれでも、先程よりも圧倒的な不利な立場に追い込まれつつも、ネロはにやりと、より一層に剣呑な雰囲気の笑みを作ってゴーレムの集団へ自ら突っ込んだ。

「ハアッ!!」

 繰り出した左ストレートに正面のゴーレムが砕け散る。続けて放った同じ左腕でのボディーブローにその隣の一体が打ち抜かれた。
 両腕ならともかく、片腕だけでこれだけの威力とスピードを秘めた連携を繰り出せる人間がどこにいるだろうか。この広場の誰もが完璧にはネロの動きを見切れてはいなかった。

「ネリヤァ!!」

 さらに奥の一体目掛けてハイキックを繰り出す。たったの一撃でそのワルキューレは上半身が吹き飛んだ。驚異的な破壊力だった。

「C'mon!」

 下半身だけになったゴーレムの近場にいた別の一体はそのまま流れるように繰り出された蹴りの連打を受けて全身をバラバラにされる。その一連の動きにも無駄や淀みは全くない。

「イィヤアッ!!」

 続けざまに放たれた二連続の回し蹴りが、五体目のゴーレムを弾き飛ばした。
 普通に見ただけではただの回し蹴りだったが、ゴーレムの胴体が吹き飛んだのを見ればそこに秘められた威力も自ずと知れることだろう。

「Be Gone!」

 そしてネロは最後の一体目掛けて地面すれすれから凄まじい勢いを乗せた左アッパーを繰り出した。その動きも、並の人間が捉える事の出来る速度を超えている。
 そんな強烈な一撃を受けたゴーレムはまるで紙くずのように四散しながらその体の破片を宙に散らした。広場へその破片が降り注ぐ。
 六対のゴーレムがネロへ襲い掛かってきて、彼がそれを全て打ち倒すまでの時間は、おそらく十秒にも満たないであろう。

 ネロは己のゴーレムの残骸を見つめながら呆然とするギーシュへ視線を移し、不適に笑って言った。

「Not play,huh?《遊びじゃないのか? ハッ》」

 その一言を受けてギーシュは我に返る。
 悔しげに歯がみしたギーシュだが、実際に自分にはもう戦う力は残されていない。怪物のような強さを持つネロと真っ向から向き合う強さなどギーシュにあるはずもない。

「手品はお終いかい、坊ちゃん?」
「うぅ……!」

 そう判断したギーシュはバラの杖を握る手をゆっくりと降ろしてネロから視線を逸らしつつ言った。

「……悔しいけど……僕の負けだ………」

 ギーシュの言葉に、ネロは満足したように薄く笑ったが、しかし内心では彼が満足していたかどうかは怪しい。
 命令でもなければ攻撃する意志のない者を痛めつけるのはネロの好むところではない。彼がこれ以上ギーシュを攻撃することはないだろう。
 しかし一方でネロにはまだ戦い足りないという思いもある。要は―――ギーシュではネロを満足させるにはほど多かったということだろう。
 どこかくすぶった思いを抱えながらネロは呆けたように驚いているルイズの方へ歩いた。
 対して周りの生徒達は、一瞬の決着に呆気に取られて喚声すらあげる事ができずにいる。
 その生徒達に混じってこの決闘を見ていたシエスタは胸に手をあて安堵の息を吐き出し、遠巻きにこの決闘を見ていたキュルケは熱のこもった視線をネロに向けている。
 彼女の隣のタバサは同じようにネロの方を見つめながらこの少女にしては珍しい驚きの表情を見せていた。とは言っても、他の者から見れば殆ど何時もと変わらぬ表情に見えるだろうが。





「あ…あんたって何者なの? 素手で青銅を殴り壊すなんて聞いたことないわよ……」
「そうか? 別にどうってことねえよ」

 あれほどの動きを披露しておきながらネロの息が切れた様子はない。無論、その余裕のある表情も変わらない。
 ネロは短くそれだけ言うとそれ以上の会話を拒むかのようにルイズに背中を向けてどこかへ歩き出してしまった。慌てて追いかけるルイズ。

「ちょっと! どこ行くのよ!」
「もうここに用はないだろ。退屈しのぎも終わったしな」

 退屈しのぎ―――今の決闘がネロにとっては退屈しのぎ程度のものであることを悟り、ルイズは改めて自分の使い魔のデタラメな強さを思って眩暈を覚えた。








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 時刻はネロとギーシュの決闘が終了する前に戻る。

「決闘?」
「ええ。ヴェストリの広場で生徒達による決闘が行われているらしいのですが……」

 ロングビルからそう報告を受けたオスマンとコルベールは部屋の中に置かれている鏡に広場の様子を映し出すと、それに見入った。

「止めなくてよいのですか?」
「子供の喧嘩じゃろう。少し様子を見て、それから判断すればよい」

 ロングビルの問いにそう答えたオスマン、そしてコルベールは金髪の少年、ギーシュと対峙する白髪の青年を見て目を見開いた。

「彼は! オールド・オスマン! 今すぐ止めるべきです!」
「まぁまぁ落ち着きたまえ、ミスタ・コルベール。彼が本当に“そうなのか”、見極める良い機会じゃ」

 ロングビルはオスマンが口にした言葉に思わず首を傾げたが、それが何なのかは問わなかった。

 やがて始まるネロとギーシュの決闘。
 だが、それは十秒も経たない内に終わりを告げた。

「フム……強いな、彼は」

 ネロの戦いぶりを見ていたオスマンが口を開く。

「彼は己の武器を使いもしませんでしたね……。それに、彼は右腕を怪我していますし……」

 ギーシュがネロに胸倉を掴まれた辺りで平静を失いそうになっていたコルベールも辛うじて口を開いた。

「やれやれ………。とんでもない使い魔を召喚したもんじゃのぅ、ミス・ヴァリエールも」
「全くです。彼の全力がどんなものなのか……想像もつきませんな」

 ため息混じりに呟くオスマンとコルベールの話を耳にして、すぐ側にいたロングビルは顔を蒼白にしていた。








―――to be continued…….


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