あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの伝説-01


 その日、トリステイン魔法学院では、春の使い魔召喚の儀式が執り行われていた。
 生徒達は自分の使い魔となる生物の容貌を期待に胸を膨らませたりしているが、彼らの系統を判断するための大事な儀式なのだ。
 大方の生徒達は召喚を終えたが、派手な爆発を繰り返すだけで、一向に使い魔の姿を見せない召喚を繰り返している生徒がいた。
 召喚に全く成功しない彼女を、周りでその様を見ている生徒は指差し、声に出して嘲り笑う。
 普段から魔法の成功を見せたことのない彼女を馬鹿にする者は少なくない。彼女は半ば自棄になって召喚に挑んだ。

「宇宙の果てのどこかにいる私の下僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに応えなさい!」

 何度目かも判らない召喚に、とうとう彼女の使い魔は現れた。だが、その使い魔の容貌は他の生徒の召喚したもののそれと大分異なっていた。
 赤く立派な馬を繰り現れたのは、剣と盾を背負い、緑色の服と帽子とスカートのような衣装を身に纏う、金髪の青年だった。
 一見すれば彼は、ハルケギニアで魔法の使える貴族からすれば、身分の低い平民だった。

 ―ゼロのルイズが平民を召喚した!

 取り巻きが、いつもの調子で彼女――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールを馬鹿にしようとしたところで、
青年の、人間とのある違いに気が付いた。ハルケギニアの人間との、決定的な違いに。
 その違いに気付いた時、彼らは驚愕し、開けた口を塞ぎもせず、無様に腰を抜かし、震え、中には逃げ出す者や穏やかならぬ物腰で杖を構えるもいた。
 ハルケギニアの人間には無い、長く尖った耳。それを持つとされている者は、この大陸では、少なくとも人間にとっては脅威の存在だった。
 生徒の一人が、未だその使い魔の正体に気付いていない他の生徒に、叫んだ。

「エ ル フ だ ぁ ぁ ぁ あ あ あ !」

 そこからはもう大騒ぎだった。
 転びながら必死に逃げ出す生徒もいれば、大声を上げて泣き出す者もいた。
 彼を召喚した当の本人であるルイズには、とんでもないものを喚び出してしまったという後悔の念を抱いていた。
 今回の召喚式の監督官を務めていた教師ミスタ・コルベールは、この恐怖すべき存在を目の当たりにして、
最初は頭が真っ白になったが、すぐに生徒に避難するよう指導した。


 一方、突然に召喚された、エルフと呼ばれた青年は、何が起きたのか理解出来ていなかった。
 自分は平原で馬を走らせていた。愛馬の散歩のつもりで。それが突如として目の前に出現した鏡に馬ごと突っ込み、
気が付いたら見知らぬ格好をした者達に包囲されていた。彼らに敵意は無さそうだったが。
 暫く周りを見渡した後、自分の知る土地ではないと直感的に判断すると、目の前に突っ立っていた桃色髪の少女に
ここは何処かと尋ねようとした時、彼らの一人がいきなり叫び出した。
 だが、それが何を意味する言葉かは解らなかった。自分の知る言語ではない。では、他の大陸に来てしまったのだろうかと青年は考えた。
 青年が呆気に取られていると、いつの間にか自分を見ていた者達は殆どいなくなっていた。彼は馬から降りると改めて目の前の少女に優しく尋ねた。

「ア|,ココH├コテΓiΠ?」

 だが、尋ねた後で、そういえば言葉が通じないのだったと思い出し、苦笑する。
 一方、尋ねられたルイズは言葉にならない呻き声を上げるにとどまる。その時、彼女の後ろから悲鳴のような声が飛んできた。
「ミス・ヴァリエール! そのエルフから離れなさい!」
 その言葉にルイズは正気に戻り、青年から離れる。その様子を青年は不思議そうに見たが、今度はミスタ・コルベールに尋ねようと、馬を引いて歩み寄る。
 近寄る青年に対してミスタ・コルベールは後退る。一歩進めば一歩下がる。埒が明かないので、
腰を抜かして逃げ遅れていた男子生徒に、他人に道を訊くかのように手を上げると、彼はヒッと呻いて持っていた杖を顔の前に持ち、しかし意識を失ってしまった。
 よく見れば、皆が皆、杖を持っていたことに気付く。服装からすると魔術師だろうかと青年は考える。

 攻撃してくる気配を見せないエルフと思しき青年の真意を、ミスタ・コルベールは探る。
 しかしそれは、青年から離れ逃げた筈のルイズが再び青年の前に飛び出してきたことで中断された。 
「ミス・ヴァリエール!? 戻りなさい! エルフは危険だ! 使い魔の召喚ならやり直しを……」
 ミスタ・コルベールが制止するが、ルイズは振り向かずに言った。
「……召喚の儀は神聖なもので、やり直すなどという行為は許されない筈です。
 それに、彼を喚び出したのは私です。やらせて下さい、コントラクト・サーヴァントを!」
「ミス・ヴァリエール! 危険です!」
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
 早口にそう唱え、青年に契約のキスをしようとしたが背が足りない。震えていたが迷いのない両手で青年の頬を挟み、
その顔を自分に近付け、近付いてくるルイズの顔に彼が何かを言う前にルイズは契約のキスをした。

 突然キスをされたことに青年は驚き、ルイズの両肩を掴み引き剥がす。それと同時に左手の甲に激しい痛みと熱さを感じ、思わず右手で抑える。
それが治まった直後、今度は左手ほどではないが右手の甲にも痛みと熱さが彼を襲った。
 普通のコントラクト・サーヴァントでの使い魔の様子とは違うことに、ミスタ・コルベールは疑問に感じた。何故、両手とも抑えたのか。
 二度目の痛みが治まり、青年の様子が落ち着いたことにルイズは安堵した。
 だが次の瞬間、いつの間にか抜刀されていた青年の長剣の切っ先は、彼女の首まで1ミリメイルもない位置にあった。
「何をした」
 青年は冷たい声で問うた。
「答えろ」
「つ、使い魔のルーンを刻み込んだのよ」
「何だ、それは?」
 困った。このエルフはそんなことも知らないのだろうか。いや、人間のやることなすことなど知りたくもないといった敵対心の現れだろうか。
 それにしても、だ。
「貴族が使い魔を使役することぐらい、知っているでしょ?」
「ツカイマ……?」
 そこから説明しなければならないのだろうかとルイズは思ったが、ヘルパーみたいなものだと告げると、青年はとりあえず剣を下げ鞘に仕舞った。
 間違っても「奴隷なみたいなものだ」などと言っていれば、間違いなく殺されていたに違いない。エルフと人間との関係を考慮に入れれば、
それはルイズに限らずハルケギニアの人間にとっても確信だった。
 その時、青年は周りの生徒が何を言っているのかを聞き取ることも、その意味を理解することも出来た。
「ほ、本当に大丈夫なのかよ。エルフを召喚するだなんて、危険なドラゴンや植物よりも質が悪いぞ」
「馬鹿、目を合わせるな、声がデカい」
 エルフとは何のことだろうか、ドラゴンなら、魔力を与えられて動き出した巨大な何かの竜の骸と一戦交えたことはあるが。
 召喚という言葉も気になる。青年はルイズに尋ねた。
「自分の種族も分からないの? あなたみたいに耳が長い人のことを、こっちではエルフって呼ばれてるのよ。召喚は、使い魔を呼び出すことね」
 暴れる様子のない青年を見てほっとしたのか、ルイズはご主人様然とした態度で返した。
 種族という言い方に疑問を覚えたが、今は気にしないことにした。エルフとはこの土地での、自分のような容姿を指す言葉だろう。
 青年はそう考えたが、ここに来させられた理由がまだよく解っていないことに気付き、ルイズに尋ねた。
「あたしがあんたを使い魔として召喚したからよ」
「あそこにいる奴らは、」
 言いながら、先程の生徒に指を差す。差された二人が少し悲鳴を上げた。
「ドラゴンも召喚されるみたいなことを言ってるが」
「勿論、召喚したのも居るわ。ただ、私が召喚したのが偶々あなただっただけ」
「人間と魔物の召喚される可能性は平等にあるということか」
「そう、人間と魔物は……え……?」
 魔物というハルケギニアでは聞き慣れない単語に、ルイズは魔法生物のことと解釈した。だが、彼は最初に何と言った。
「俺以外に召喚された人間もいるのだろうな。それにしても、魔物の方が多いな。人間が見当たらない」
「あ、あなた、エルフなのよ?」
「この地方ではそう呼ぶらしいな」
「その長い耳は何なの? 飾り?」
「馬鹿を言え、生まれつきだ。それにハイリアの人間は誰もが長く尖った耳だ」
 青年が自らを人間、人間と繰り返し言うのにルイズは、彼はもしや耳の長いただの人間なのではないかという危機感を抱いた。
 そしてそれは、ルイズが青年に尋ねた質問の答えによって決定的となった。
「あんた、魔法使える?」
「魔法力はあるが術の方は駄目だ」
「そんなぁぁぁああああ!!!」
 少女の悲痛な叫び声を、トリステインの青い空は嘲笑うかのように見下ろしていた。



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