あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-26


 学院の中庭に、剣戟の音が響き渡っていた。
殆どの女生徒が銃士隊の面々の指導の下、軍事教練に励んでいる中で、銃士隊の隊長との鬩ぎ合いをしている者がいるのである。

 女性が持つにはやや大振りなアニエスの剣を、その攻撃を、サーベル片手にいなし、的確に攻撃を加えていく。
アニエスもその攻撃にきちんと対応し、傍から眺めていると互角にも見えないことはない攻防である。
しかし暫くすると、体力の違いが互いの動きにあらわれてくる。

 アニエスはギアを一段階上げ、苛烈に攻め立てる。
保たれていた均衡は崩れ始め、いなしきれずアニエスの重い一撃を受ける度に手の痺れが大きくなる。
限界を感じて体勢を崩す。そんな隙を見逃す筈もなく、アニエスはサーベルを叩き落とすべく一際大きく振りかぶった。

 だがその隙はつくられた隙。敢えて見せた演技であった。
剣が振り下ろされるその瞬間、倒れ掛かる体を立て直して飛び退く。
斬撃は空を切り、地面に勢いよく突き刺さる。

 すぐに逆方向に大地を蹴って、慣性を強引に無視して開いた間合いを一気に詰めた。
地面に埋まった刀身を抜く動作は、アニエスの回避行動と防御行動を封じる。
アニエスの次の行動は早かった。剣を抜くのを即座にやめ、一足飛びに下がりながら腰の銃を引き抜く。

 しかし引き抜いた銃を構えるよりも先に、相手はさらに一歩踏み込んで距離を縮める。
瞬間、首筋付近にサーベルの刃が突き通され、ピタと止められた。


「そこまで、勝負あり!ルイズの勝ち」
黒髪の少女アーカードが終わりを告げる。アニエスは苦い顔をして口を開いた。

「ラ・ヴァリエール殿、これでは訓練になりません」
「ごめんなさい、アニエス。これが終わったら当分闘えなくなるし、あのままじゃジリ貧だったから最後に一矢報いたくて・・・」
窘められたルイズが申し訳なさそうに謝る。

 戦闘中の細かいフェイントは兎も角、戦術としてのフェイントは予めやらないという取り決めであった。
何度も手合わせをする中で、奇をてらった策が通じるのは一回こっきりであるし、そも実戦的な戦闘の目的は基礎戦闘能力の向上である。
パワー、スピード、スキル、スタミナ、反応速度、思考能力、重圧等々。緊張感のある闘争こそが血肉となるのだ。

「まあいいでしょう。それにしてもメキメキと成長されてますな、私も加減が難しくなってきましたよ」
「ありがとう、アニエス。でも、実力ではまだまだ及ばないのはわかってるわ」
そう言うとルイズは戦闘に邪魔な為に、結っていた髪をほどく。
桃色のブロンドが風にサラッと靡き、汗で濡れた肌が涼しく気持ちいい。


「・・・・・・随分と頑張ってるわねぇ、ルイズ」
キュルケが呟き、タバサが頷く。
「元々努力家だったからな、血統も一流だ。ベクトルを変えてやれば頭角を現すのもこれ当然。さらには私がマンツーマンで教え込んでいるのだから伸びない理由はない」
近づいてきたアーカードが言う。

「随分な自信だこと。・・・・・・血統って、ラ・ヴァリエール家はそんなに凄かったっけ?」
「んむ。あれでルイズの母親が凄い。せまりくる敵兵をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、まさにトリステイン無双といったありさまで。
 近づく敵を片っぱしから真っ2ツにして、最終的に全身にカッター・トルネードをまとって敵の空中戦艦全艦ごと吹き飛――――――」

「あ~はいはい」
キュルケは途中から話半分に聞いて、手を振ってあしらう。
「大体私達はメイジなんだから、白兵戦ばっか鍛えてもね~」

 夏休み明けから、ルイズが鍛錬に励んでいるのは周知の事実であった。
しばしば死にそうな顔をしながら、授業に出ていることもあった。しかし魔法は相変わらず。
開き直って戦士として生きていこう、と決めたのかとすら思うくらいにハードな感じだった。

「精神を鍛えるにはまず肉体からと言ってな、それが一番手っ取り早い」
「ふ~ん」
「キュルケ、タバサ。お前達もルイズと一緒に鍛錬せんか?高め合うライバルがいると、より一層修行にも効果が出るからの。どうせ男子生徒達がいなくて暇なのだろう?」

「いや~よ、パス。確かに暇っちゃぁ暇だけど、めんどくさいもの」
キュルケはダルそうに手を振り、タバサは抑揚のない瞳で答えた。
「私もいい。肉体に大きな比重を置いて鍛錬する意味は、あまりない」
「ふむ、まっ・・・・・・仕方ないか」

 元来純粋なメイジであるならば、魔法を組み込んだ戦闘スタイルとなる。
キュルケは家柄から、軍人としてのスタイルを持っている。
タバサも騎士として、独自のスタイルを確立させている。

 そこに毛色の違うスタイルと鍛錬を、無理に割り込ませるには相当のキャパシティが必要である。
二つを貪欲に取り込んで昇華させるなど、半分は博打のようなものだ。


 話の区切りがついたところで、アーカードはルイズとアニエスに目を向ける。
未だ二人は、先の戦闘について色々話していた。
(・・・アニエス・・)

 20年前のダングルテール虐殺事件、疫病と偽られた新教徒狩り。その時の隊長、『炎蛇』のコルベール。
村を焼き、また少女を助けたのは自分であるとコルベールは言った。
その少女こそアニエス、そしてアニエスの仇敵こそコルベールなのである。


「何故そのことを・・・」
「教えない」
コルベールは追い詰められたような表情を浮かべ、顔を下に向ける。

「勘違いするな。罪を贖えだとか説教しにきたとか、そういうわけではない。まぁ上っ面だけの説教がして欲しいなら、別にしてやらんこともないが。
 尤も、そんなものはただの自己満足にしかならんだろう。それでも尚、愚痴を聞いて欲しいと言うなら聞いてやるが・・・、その前に聞きたいことがある」

「・・・・・・なんでしょうか」
「殲滅任務だったみたいだが、生き残りはいないのか?」
アーカードは一体どこまで知っているのか。
臆することなくズバズバと聞いてくるアーカードに、コルベールは答える。

「一人だけ・・・、子供が生きていると思います」
「思う?」
「私が逃しました・・・・・・、毛布に包んで近くの浜辺に置き去りにしました、その後の行方は・・・知りません」
「なるほどのう」

 アーカードは納得のいった顔をすると、薄っすらと笑みを浮かべる。
「ッ・・・・・・何故・・・そんなことを・・?」
コルベールの顔に汗が伝う。

「ちょっと・・・・・・な」


 それ以上のコルベールの言及はなかった。
アニエスもコルベールも、互いが互いに、倒すべき敵と、助けた子供であるということは認識していない。

(まぁいずれ、自力で辿り着くことだろう。わざわざ、善意で教えてやる義理もない)
アーカードは目を細め、左手でフワッと黒髪を梳いた。

「自分の道は、自分で切り拓くものだ」

◇†

「自分の道は自分で切り拓く」
ルイズはそう心の中で呟いた。手を握り、そして開く。それを何度か繰り返す。

 自分でもビックリなくらいに強くなっている。持つべきものは優れた師匠、というのが実感させられる。
実家から帰ると、早速地獄の特訓が始まった。母の「一人でも問題ないよう鍛えてあげて」という言葉が契機であった。
アーカードは私の新たな決意と高まる向上心を確認すると、本格的に鍛え始めた。

 強くなる為には「うまい食事と適度な運動」と、アーカードは言った。
栄養バランスを考えた食事、学院の食事は一切摂取せず毎回アーカードが指定した食事を摂る。
マルトーとか言う人から厨房の一角を借り受け、決して美味しくはない薬膳料理などをわざわざアーカードが作った。
異世界の食材は勝手が違うと思っていたが、大した問題もないようだった。
アーカードは暇な時と言えば、読書や料理や裁縫ばかりやっていたようなので、そのおかげかも知れない。

 肉体的なトレーニングは、必ず1日以上の間隔が空けられた。
スポーツ医学に則た鍛錬。『超回復』という筋繊維の再生を利用するから、連続したハードトレーニングはご法度なのだそうだ。
とは言っても、その一回一回の密度は想像を絶した。思い出すのも苦痛だ。鍛錬した次の日は殆ど動けないというのがザラであった。


 それ以外の空いた時間には、色々な事を教えられた。
剣技から兵法まで、アーカードの知識と経験を詰め込む作業が続く。
そして十分な睡眠をとり、体格を作る。

 またアーカードは「イメージしろ」と言った。
想像というのはこれ、思いのほか重要らしく。訓練の効果も大幅に変わってくるという。
思い込みの威力、人間がリアルに思い描くことは実現する。極まれば正拳突きすら音速を超えるとかなんとか。

 そうは言っても信じられるわけがない。
ある日を境に幼児は火バシが熱いことを知る。
ふざけた大人が熱くない火バシを用事に触れさせると、火傷したとカン違いした幼児がリアルに苦痛を感じるなどと。
極端な例では、その幼児の手に火ぶくれが生じたなんて、信じられるわけがなかった。

 ウェイトトレーニングを一例に取っても、目標とする体型をイメージするのとしないのではどうなるか。
全く同じ種目のトレーニングをしても、結果に圧倒的差が生じることは実験データで明らかになっているらしい。

 思いが実現することなど、信じられるわけがない。不可能であるという思いの方が強烈であり、それが普通だ。


 ゆえに最初、アーカードの目から暗示をかけられた。固定観念を破壊され、「イメージは大事」という刷り込みがなされた。
以降は鍛錬一つとっても、姉であるカトレアの姿を常に、強烈に想像した。
そのおかげなのかよくわからないが、ほんの少しだが背が伸びた。
胸も大きくなった・・・ような気がしただけだった。

 一方で『虚無』に関しては鍛えようがなかった。
デルフリンガー曰く、必要な時が来れば始祖の祈祷書の先が読めるようになるとのこと。
さらには魔力の温存の為に、魔法は使用することすら自重した。
どれくらい溜めればタルブの時のエクスプロージョンができるか、想像もつかないのだ。


 既にアルビオンへの侵攻作戦が始まり、明日の朝には竜騎士が迎えにくる手筈である。
そのまま竜騎士搭載の為の、新鋭の竜母艦『ヴュセンタール』号へと乗ることとなる。
本来はラ・ロシェールから乗る予定だったのだが、アーカードが私の調整と称してギリギリまで学院に残ることを申請した為である。

 『虚無』の担い手である自分にかけられた期待。しかし魔力がどれくらいあるのかわからない。
それでも出来うる限りの精一杯をやる。姫さまの期待に副えるよう、全力で頑張る。
そして学ぶ、戦争から学ぶ、周囲から学ぶ、ありとあらゆるものから学ぶ、万物から学び吸収する。

 必要な時に、必要な力を、必要なだけ扱えるように。
選択を差し迫られた時に、力がなくて後悔しないように。
力によって逆に選択肢を増やせるように。
しかして力に溺れず、選択肢を狭めず、よりよい選択が出来るように。
心身共に気高く、強くなる。

 ルイズは万感の想いを込めて口にした。
「そうだ、強くなる」

◇†

「そう、強くなる」
アニエスは呟いた。
必ず探し出してみせる。そして来るべき日に、仇敵に報いるべく為に強くなる。
その時に力不足で後悔しない為に、なによりも故郷の無念を晴らす為に、そして・・・自分自身が前に進む為に。

 想いは力だ。
ラ・ヴァリエール殿の成長は著しい。
初めて会ったときは、なんてことはない普通の少女だった。
タルブでは、生来備わった『虚無』という力を持て余し、それに頼っていただけという印象だった。

 しかしリッシュモンを追い詰める時、宿屋での攻防では助けられた。
そして今は、心身共に驚くべき成長を遂げている。最早進化と言えるくらいに。

 己も負けていられない。精進し、鍛え上げる。
そして殺す。死を以て償わせる。咎人が今ものうのうと生きていると考えるだけで虫唾が走る。
隊長に至っては名前すらわかっていない。王軍資料庫でもその名簿が破られていた。
だが諦めない。どんな手を使っても探し出す。

 アニエスは静かに、ただ静かに呟いた。
「必ず・・・・・・見つけてやるぞ」

◇†

「必ず・・・・・・見つける」
メンヌヴィルはそう口にする。

 20年前、ダングルテールて思い知った。『炎蛇』と呼ばれたあの男を。
見る者を虜にする、惚れ惚れするような火の魔法。
一帯が炎に包まれているというのに、これ以上ない寒気がした。
味方であるにも拘わらず、体の震えが止まらなかった。
それは微塵の容赦も無く、それは徹底的で、それに魅せられ、それに酔い痴れた。

 気付けば隊長であったその男に杖を向けていた。
期待通り、"奴"は圧倒的な炎で以て俺を焼いてくれた。
自分の肉が焼ける匂いと共に、消えない傷が体と心に刻み込まれた。

 後悔はしていない、"奴"がいたから今の俺がある。
炎の魔法を使う度に、温度を肌で感じる度に、傷が疼く。そして"奴"を思い出す。
当時の俺は若輩で、無知で、馬鹿で、無謀で、怖い者知らずだった。


 そんな俺に畏怖を、恐怖を刻み込んだあの男コルベール。
――――――会いたい・・・・・・会いたい・・。
アイツに会いたい、アイツを焼きたい、成長したこのオレの炎を見てもらいたい。
オレの炎で焼き尽くしたい。その匂いを嗅ぎ尽くしたい。


 この焦がれる想いに比べれば、例え絶世の美女を犯し、焼いて、また犯したとしても足りはしない。
まるで足りない。
――――――会いたい・・・会いたいッ!
満ち足りない、鎮まらない。

 人を焼く狂喜が、その焼けた香りだけが・・・・・・今のオレを静める唯一の方法だ。
だから、蹂躙しよう。

「20年前のように・・・」

◇†

「20年前・・・・・・」
コルベールは心の中で呟いたつもりだったが、思わず口に出ていた。

 決して清算されることの無い罪。
「知らされていなかった」は理由にならない。
死ぬその時まで背負い続けなければならぬ咎。

 真実を知り、――――生き方を変えた。
自分の系統を、その炎を・・・・・・破壊の為には使わないと心に誓った。

 せめてもの罪の贖いの為に、研究に打ち込む。
一人でも多くの人間を幸せにし、発展の為に尽くすことこそが自分に課した義務。
自殺などは赦されない。死んだとしても罪は消えない、どのようなことをしても消えることは無い。

(だが・・・・・・)
アーカードがダングルテールの事を知っていた理由。生き残りを聞いたその理由。
唯一私に死をもたらし、その死を以て私がその手で殺した村の人々への鎮魂へと当てることができる人物の行方。

(あの子が・・・・・・、生きているのだろうか)
コルベールは天井を見上げるように目を瞑る。


 私は臆病者だ。
王軍資料庫の名簿の、自分の名前の部分を破った。―――――人並の幸せを願ったのだ。
「命令だから仕方がなかった」などと、過去の自分を隠して新しく生きようなどと考えてしまった。

 あの時の子供を捜そうとはしなかった、その後の動向も知らない。
そして・・・・・・アーカードに、はっきりと聞く勇気もなかった。

(私は今でも・・・・・・あれこれ理由をつけて、逃げているだけなのかも知れない)
だがそれでも、贖罪の時が来たのならそれを甘んじて受けよう。

「私は私に出来る精一杯をする・・・・・・昔も今もそれだけしかないのだから」





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