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ゼロのロリカード-25


 学院を出て早馬を飛ばし、ラ・ヴァリエールの土地に到着する頃には、既に夜になっていた。
アンリエッタ女王陛下からの任務も、無事終了。夏休みももうすぐ終わる頃、ルイズは実家へと帰ることにしたのである。
道中休みながらきつつも、学院からラ・ヴァリエールの領地までは相当な距離であり、乗っていた馬が潰れるのも当然であった。

 故にその日の夜は領地内の旅籠に宿泊し、次の日の早朝から新たな馬で行くことにした。
乗ってきた馬を預けると、とある宿屋へと案内される。中へ入ると、ルイズにとって嬉しい迎えがきていた。

「・・・!?ちいねえさま!!?」
「おかえりなさい、わたしの小さいルイズ。会いたかったわ」
そう言って、同じ髪の色をした麗しき姉妹は抱き合う。
「あぁ・・・私もです、ちいねえさま。でも・・・・・・何故ここに?」
「文で帰郷の旨を伝えたでしょう?だから馬車で迎えにきたのよ」


 きゃっきゃうふふしてじゃれ合う姉妹を、やや冷めた目で見つめる金髪の女性が口を開く。
「遅い」
その言葉に姉と抱き合ったまま、ルイズは声のした先に視線を向ける。
「エレオノール・・・・・・姉さま・・」
「あら、なにその残念そうな顔は?ちびルイズ」
エレオノールは半眼でルイズを睨み付ける。その目にルイズは体が反射的にビクついた。

「・・・・・・いえ、お久しぶりです。会えて嬉しいです・・・、エレオノール姉さま」
「カトレアとは随分と違う対応の差ね・・・・・・、まぁいいわ」
そう言うとエレオノールは、一拍溜めて大きく息を吸う。

「帰ってくるのが遅い!」
ルイズはぎゅっと目を瞑り、片目を開けて恐々と弁明する。
「で・・でも・・・頑張って馬を飛ばしてきたのに・・・・・・」
「そういうことじゃない!夏休みに入ったらすぐに帰ってくる予定だったでしょ!!
 自分勝手に帰郷を遅らせたことを言ってるの!!!そのおかげで―――」

 エレオノールは思わず口走りそうになったことに気づき、ゴホンと一つ咳払いをする。
「その間、何度も文を送ったのになんの連絡もよこさずに・・・。きっちり説明してもらいましょうか」
「うぅ・・・・・・それは・・書いた通り、姫さまからのお願いで・・・・・・」
「嘘おっしゃいッ!!」
ルイズはエレオノールの剣幕に思わず両目を瞑り、カトレアの豊満な胸に顔を埋める。
カトレアはそんなルイズの頭を、ニコニコと微笑ましく笑いながら一回撫でた。

「ふふっ、エレオノール姉さまはね、あなたの夏休みに予定を合わせていたのよ。
 なのにルイズったら突然拒否したりして、今になっていきなり帰ってきたでしょ?
 エレオノール姉さまはアカデミーに勤めているから、そっちの方を調整するのが大変だったのよ。
 それでもこうやってあなたがここに来るまで、昼からここでわたしと一緒に待っていてくれたのよ」

「カトレア!余計な事は言わなくていいわ」
「エレオノール姉さま・・・・・・」
ルイズはエレオノールの方へと向き直る。
「安心なさいちびルイズ、別に大した労力は使っていないから。あなたを待っていたのもたまたま。私が来るのが少し早かっただけ」


 エレオノールの言葉にルイズはムッと唇を尖らせる。
その時、ここまでずっとナチュラルスルーされていたアーカードが呟いた。

「・・・・・・アカデミー」
その言葉に三姉妹の視線が集まる。
「まあ、まあ、まあ、まあまあ、あなたルイズの恋人ね?」
と、カトレア。
「ッッッ・・・!?ちち、違いますちいねえさま!!ただの使い魔よ!恋人なんかじゃないわ、そもそも女だし!」
「あらそうね、ごめんなさい。わたし、すぐに間違えるのよ。それでお名前は?」
「アーカード・シュヴァリエ・ド・ツェペシュです、以後お見知りおきを」

 アーカードの自己紹介に、カトレアとエレオノールはそれぞれ違った反応を見せる。
「まあ、シュヴァリエ。すごいのね、アーカードさん。私はカトレアよ、よろしくね」
「あら、おちびルイズの侍女じゃなかったの。まぁ剣を背負ってるからちょっと変だとは思ったけれど。
 私は長女のエレオノールよ。・・・・・・しかし人間を使い魔なんて、いつまで経ってもあなたは―――」

 エレオノールの小言が始まりそうなところで、自己紹介を終えたアーカードは再度口をひらいた。
「アカデミーに勤めていると?エレオノール殿」
「ん・・・えぇ、そうだけど?」
「では20年前の『魔法研究所実験小隊』、ダングルテールの事件をご存知か?」

 エレオノールは右手を顎にそえ、暫し考える。
「あぁ・・・少し聞いたことあるわ、疫病がどうとか。あと副長が乱心して、その後に隊長までいなくなったとか・・・・・・」
「疫病・・・・・・、他にはなにか?」
「ん~~~・・・その隊長が凄く優秀だったらしく、たしか・・・・・・『炎蛇』って二つ名だったとか」

 瞬間、アーカードは顔をしかめる。ルイズは疑問符を浮かべた。
「『炎蛇』・・・って、コルベール先生?」
「先生?今は学院の教師をやっているの?」
「えぇ・・・、コルベール先生はうちの教師よ。・・・・・・それで、それがどうかしたの?アーカード」
「いや・・・・・・どうもしない」

 アーカードはそれきり黙り、何かを考えているようだった。
ルイズとエレオノールは二人して首を傾げ、カトレアが手をパンと鳴らす。
「それじゃ、みんなでご飯にしましょう」


 三姉妹とアーカードはテーブルを囲み、運ばれてきた料理を口にする。
「ちいねえさま、今夜は一緒に寝てもいい?」
カトレアは優しい笑顔を浮かべる。
「えぇ、いいわよ。一緒に寝ましょうルイズ」
「ありがとう、ちいねえさま」
「二人で寝るのはいいけど、寝坊しないように。明日は朝一で馬車で向かうのだから」

 エレオノールが釘を刺し、その後も他愛ない会話が続いていく。
(団欒か・・・・・・久しく、とても久しく忘れていたな。・・・・・・んむ、悪くない)
アーカードはフッと笑みを浮かべ、束の間の賑わいを楽しんだ。




 ラ・ヴァリエール公爵邸。
屋敷ではなく城であり、ラ・ヴァリエール家がトリステインでも五指に入るという大貴族であるということが認識させられる。
到着したのは昼頃で、既に食事の準備が出来ているとのこと。到着すると、すぐにダイニングルームへと通される。
そこにはラ・ヴァリエール公爵と公爵夫人が既におり、挨拶と自己紹介とを済ませると食事が始まった。

 一介のシュヴァリエでルイズの使い魔でしかないアーカードが、その席に座ることは当然許されることはない。
かつて王だったアーカードも、その点は弁えている。ルイズの後ろに控え、やや気怠そうにその光景を眺めていた。


 粛々とした食事が続く中、口を開いたのはラ・ヴァリエール公爵であった。
「・・・・・・まったく!あの鳥の骨めッ!!」
苛々しげに言い放つ。
「・・・一体なにがあったのですか?」
機嫌の悪いのがありありとわかる父に、エレオノールは問う。
「つい今朝方、アルビオンへの侵攻作戦が決まり、それについての文が届いたのだよ。
 正式に通達するのはまだ先だが、予め遠征の為の軍備を整えておくようにとのことだ。
 あの枢機卿もとい鳥の骨のこと、まだお若い陛下をたらしこんだに違いない!」

(ほぅ・・・・・・決心したか、アンリエッタ女王陛下。実に、楽しみだ)
顔には出さず、アーカードは内心で笑う。アンリエッタの決断と戦争の愉悦に。

「それで、どうするのですか?」
公爵夫人が食事の手を止め、公爵に聞く。
「軍備などするわけなかろう!私は既に軍務を退き、世継ぎもおらぬ。このような戦争など、非常に遺憾だ」

「と・・・父さまは戦争に反対なのですか?」
ルイズがおそるおそる質問する。
「当然だ、今回の戦は間違っている。よいかね、ルイズ。攻める軍は守る側に比べて約三倍の戦力が必要なのだよ。
 それでもなお、アルビオンを攻めるならば熾烈を極めるだろう。だからこそわれわれは包囲するべきなのだ。
 アルビオン大陸を封鎖し、向こうが根負けするのを待てばよい。攻めて失敗したらなんとする?勝ったとしても犠牲は大きい」

 父の論と静かな剣幕にルイズは黙り込み、公爵はそのまま続ける。
「しかも学院の教師や生徒までも、仕官不足から募るという。数だけ揃えればいいというわけではない。
 このような戦、私は断じて承諾するわけにはいかん。ルイズ、お前もくれぐれもその事を頭に留めておきなさい」


 ルイズは俯く。そして自分の心に問うた。結論は、既に出ている。
「わたしは姫さまの、・・・・・・アンリエッタ女王陛下の力になりたい」
「・・・・・・それはつまり、戦に参加したいということかね?ルイズ」
公爵は威厳のある声で言った。ルイズはその迫力に一瞬気圧されるも、目を瞑って自分の意思を再度確認する。

「・・・・・・はい、そうです父さま。戦に参加することも、辞さない覚悟です」
芯の強い、決意の込められた、ルイズの瞳を見て公爵の目が鋭くなる。その瞬間、エレオノールが口を挟んだ。
「ルイズ!よりにもよってあなた!!戦場がどんなところだか知っているの!?」
「知ってるわ!タルブでの戦だって、姫さまと一緒に参加してたもの!!私は姫さまの信頼に答えたい、私が選んだ私の道なのッ!!!」

 力強いルイズのその言葉に、家族全員が目を丸くした。自分達が知っているルイズとはまるで違う、その姿に。
「タルブの戦に参加してたですって!?あなた勝手にそんなことを!!あなたはいつまで経っても心配ばかりかけて!
 大体、女王陛下があなたの何を信頼するって言うの!?『ゼロ』のあなたに!!」

「あなたたち、少し落ち着きなさい」
ルイズがキッとエレオノールを睨み、食って掛かろうとした瞬間、公爵婦人がそれを制止する。
ルイズとエレオノールは、一旦落ち着き席に座りなおしたところで、公爵が口を開く。
「・・・・・・お前が行って・・・どうするのだ、ルイズ。それとも、得意な系統にでも目覚めたのかね?」
「えっ・・・・・・その・・・『火』、です」

 家族といえども『虚無』のことは言えない。
爆発もある意味『火』だろうということで、ルイズは咄嗟に口走った。
しかし愛する父に嘘をついたという事実が、ルイズの心を締め付ける。


「『火』・・・か。おじいさまと同じ系統だね、ならば戦に惹かれるのも仕方ない。
 勝手にタルブでの戦に参加した事は、無事に帰ってきたから不問にする。
 だがしかし、これ以上戦争に参加することなど認めぬ。断じて認めぬ、これは命令だルイズ」

「そんな・・・ッ!?」
「陛下には、わしから上申する。戦には絶対に行かせぬ、このままここに残るのだ。どうせ学院も仕官募集で、まともな授業もできん。
 この度の戦が終わるまでは、決して城からは出さん。そうだな、ついでに婿を取るといい。お前は少し、自暴自棄になっているのだよ。
 あの・・・・・・ワルドの裏切りの一件でな。そうすれば心も落ち着く。戦に参加するなどと、馬鹿な事も言わなくなるだろう」

 ルイズは絶望する、父の目は本気だ。
いつ終わるともしれない戦争の間、ずっと城に軟禁された上に婿までとる?冗談じゃない。

「ルイズ、わがままもいい加減になさい」
抗議しようと立ち上がった瞬間、公爵夫人が冷ややかに言った。

「そうよ!大人しく父さまの言うことを聞きなさい」
「・・・・・・ルイズ、わたしも戦に参加するのは反対だわ。あなたにもしものことがあったらわたし・・・・・・」
エレオノールがそれに続き、カトレアは悲しげな表情でその本音をルイズに言う。
ルイズは悲しくなる、自分はいつまで経っても家族にとっては子供扱いなのだ。


「・・・・・・少し、横暴なのではないかな?ラ・ヴァリエール卿」
「なに?」
そう言い放ったのは、ルイズの後ろに控えた少女。使い魔であり従僕であるアーカードであった。

「親がなくとも子は育つ。貴方がた家族が思っているより、我が主ルイズは成長をしている・・ということだ」
「・・・・・・言ってくれるな、確かアーカードくんと言ったかね。シュヴァリエ、それも使い魔の分際で」
アーカードの不遜な態度に、公爵は顔を歪める。しかし、アーカードは気にせず続けた。

「まともに魔法が使えない。その所為で家族から呆れられ、学院の生徒からは侮蔑され、嘲笑され、罵倒されてきた。
 家柄、その重圧、自己嫌悪、様々なものがルイズを苛んできた。だがしかし、それでもルイズは曲がらなかった。
 自分の出来る精一杯を、努力を、研鑽をしてきた。・・・・・・んむ、さすがは公爵、公爵夫人。貴方達二人のご息女だ」

 アーカードはその場から動かず、ゆったりと語り続ける。 
「無論・・・家族を心配し守ろうとする、その心根は素晴らしい。言い方はきつくとも、その根幹にある想いは本物だろう。
 だがルイズは真っ直ぐ生きている。貴方達の知らないところで、必死に頑張っている。諦めを拒絶し、人道を踏破している。
 家族といえど、それを妨害する権利などない。そして私はルイズの、『ゼロ』の使い魔だ。主の意志を尊重するのは、これ道理」


「アーカード・・・・・・」
ルイズは少女を見つめる。自分の意思を尊重してくれる使い魔。自分の良き理解者を。
「なるほど、我々の知らないルイズの側面。それをアーカードくん、君は知っていると?」
公爵の言葉に、アーカードはうんうんと頷く。ルイズは父へと向き直り、真摯な表情で見据えた。

「ふむ・・・・・・、確かに我々はルイズの成長を知らない。いつの間にか、系統に目覚めていたことすら知らないくらいに。
 だがねアーカードくん。たとえどんなに成長しても、どんなに立派になろうとも、我が子はいつまでも我が子なのだよ。
 愛娘を危険な戦場へと行かせるなど、到底納得できることではない。娘の命は、親の・・家族の情は、何者にも勝るッッッ!!!」

ドンッ!!!

とでも効果音が見え、聞こえてくるような・・・ラ・ヴァリエール公爵の言葉が部屋に響き渡った。

「ふふっ・・・・・・だとさ?ルイズ」
アーカードは暖かな笑みを浮かべ、ルイズに近づきポンッと頭に手を置く。
口に出されて初めて感じた、父の想い。忌憚ないその言葉に、ルイズは胸が熱くなるのを感じた。

(でも・・・・・・それでも・・・わたしは・・)
「父さまが私を愛し、心配してくれてるのはわかりました。でも私は姫さまの力になりたいんです!!」
ルイズとラ・ヴァリエール公爵は、互いに一歩も退かず視線を合わせ続ける。

 公爵も、公爵夫人も、エレオノールも、カトレアも、家族全員がルイズの態度、その成長に驚いていた。
姉に逆らい、父に逆らい、家族の想いを知った上で尚、進もうとする娘。そんな妹の姿に、一種の感動すら覚える。

 飯を喰らい、気を喰らい、喜びを喰らい、哀しみを喰らい、愛を喰らい、嘲りを喰らい・・・・・・。
繰り返すうち、取るに足らぬハズだった脆弱なる子猫はいつしか、父の視線をもまともに受け止める獅子へと進化を遂げ。
更なる変貌を諦めず、更なる熟成を諦めず、やがてアーカードの主に相応しい、偉大なメイジとしての完成を見る。


 一体どれほどの時間が経過したのだろうか。ルイズと公爵の均衡は破れない。
最早語るべき言葉はない。ルイズの想いと公爵の想い、そのぶつかり合いであった。

「戦は危険、だから行かせたくない。なれば―――」
いい加減に飽きて、持て余したアーカードが横槍を入れる。
「戦争をしても死なない、きちんと生き抜く。それだけの強さがあれば問題なかろう」
「・・・・・・つまり、ルイズの実力を我々がその目で見て判断しろと?」
「いやいや、我が主の手をわざわざ煩わせる必要はない」

 アーカードは腕を組み唇の端を上げた。
「メイジの実力を測るには使い魔を見ろ、と言うらしいな」
公爵を見据えていたアーカードは、その隣へと視線を移した。
「私では、お眼鏡に適いませんかな?」

 アーカードが視線を合わせたのは・・・・・・公爵夫人であった。
「ラ・ヴァリエール公爵夫人カリーヌ・デジレもとい、先代マンティコア隊長『烈風』カリン殿」
アーカードは軽~く、殺意を叩き付ける。すると公爵夫人の目が鋭くなり、ダイニングルームに緊張が走った。

「私はレアな幻獣などではないゆえ、見ただけでは判断しかねるだろう。だから実力をお見せしましょう。
 トリステイン史上でも、指折りの伝説が相手ならば不足はないと思いますが、どうですかな?一つお手合わせを」

 見えない威圧感が部屋中を余さず包み込む。無言の圧力がチリチリと音を立てている気がした。
戦々恐々とした空気の中、口を挟む者はいない。このプレッシャーの中で動けるのは、アーカードとカリーヌだけであった。
「強者は強者を知る。現役を退いて長いようですが、その瞳が衰えていないのは一目でわかります」
カリーヌは目を瞑った。自分がどうするべきか否かを考える。


「・・・・・・いいでしょう、たまには運動するのも悪くありません。わたくしもルイズが大事ですから・・・手加減はしませんよ」
カリーヌはにこやかに笑みを浮かべる。少し楽しみなのも、本音であった。
「ははっ、それでこそ我が主ルイズの母君」

 承諾の言葉を得られ緊張が解けた瞬間、使用人たちは堰を切ったように部屋から逃げ出す。
冷や汗の止まらないラ・ヴァリエール公爵は、制止しようとするも、既に時機が過ぎていることに気付く。
が、それでも妻の全盛期を知る彼は、カリーヌを止めようと口を開く。

「ま・・・待て、待つんだカリー―――」
「あなた、立会人お願いね」
有無を言わせぬ、向けられた者に寒気を感じさせるその笑顔。
そして淡々と、耳に通るその言葉に遮られ、公爵は目を瞑って祈るように諦めた。

「そうそう、私はメイジではないゆえ、魔法を吸収するマジックアイテム。この大剣を使うがよろしいか?」
「わたくしも現役時代の装備で戦いますから、一向に構いませんよ。すぐに準備をしてきますから、少々お待ちになってね」

 アーカードとカリーヌは互いに微笑み合い、他の4人は何かを通り越したのか、揃って薄ら笑いを浮かべていた。




 台風一過よろしく、否、それよりも酷い惨状であった。
人が作った物は、その全てが見る影もなく崩壊し、そこに存在していた筈の森林も、根こそぎ消え去っていた。
アーカードも、『烈風』カリンも、これ以上ないくらいに楽しげに戦い、陽が落ちる頃まで、時を忘れて闘った。

「夢の様だ、人間とは夢の様だ!実に・・・・・・実に楽しい闘争だった」
「・・・そうですね、わたくしもついつい張り切り過ぎました。現役時代を含めても、わたくしとここまで渡り合う者はいませんでしたよ」
烈風カリンは鉄仮面をはずし、答える。

「はっはっは、いやいやそれはカリン殿が加減をしていただいたおかげですよ」
「そういうアナタも、まだ何かを隠しているようでしたが?」
「ククク」「フフフ」と、アーカードとカリンは黒い笑いを浮かべ合う。


「それにしても・・・・・・ルイズはとても優秀な使い魔を召喚したようですね、・・・貴方になら十二分に任せられるでしょう」
「我が主も、私に負けないくらい凄いぞ」
「そういうのは、結構です。確かに成長はしているようですが・・・・・・まだまだなのは見ればわかります」

(タルブであげた戦果は私以上なんだがな・・・・・・)
アーカードはデルフリンガーを地面に突き刺し、頭を掻く。そうは思っても仔細を言うわけにはいかない。

「さしあたって、貴方が使い魔として・・・その盾としてあの子の守るならば、戦場でも問題はありません」
「我が主の命令次第だな、常にルイズに追従して守っているわけではないからの」
「ならば、あの子が一人でも問題ないよう鍛えてあげてくださいな、それはもうビシバシと」
「ふむ、心得た。既にやっているメニューを三倍くらいに―――――」


 遠くから不穏な会話が聞こえて、ルイズは思わず眉を顰める。
一方でラ・ヴァリエール公爵は呆然としていた。エレオノールとカトレアも、母の強さを目の当たりにし同じく呆然としている。

 しかしルイズだけは、少し違っていた。モチベーションが上がっている。自分の素質に対しての期待が高まり、しかめっ面も輝いてくる。
直に見た母の強さ、そして父の武勇。もしかすると、自分はかなりイケるのでは?などと思う。
伝説である『虚無』をその系統とし、強力な使い魔アーカードをその従僕とする。
(もしかしなくても、私って凄い・・・・・・??)

 強き母の姿が自分の理想とする姿と重なる。
カトレアのような美しく豊満な肉体で、エレオノールのように気高くあり、父のような強い想いと、母のように華麗で強くあるそんな姿。
アーカードの主人に恥じぬ、パーフェクトなルイズ・ド・ラ・ヴァリエールを妄想する。

 そう、今は昔とは違う。どれだけ学んでも、どれだけ練習しても一向に上達しなかった魔法。
ひょんな事から『虚無』に目覚め、努力すればするだけ得られるようになった"成長"という名の甘い果実。
本当に少しずつでも、日々進歩していく自分の力に酔い痴れる。
ひいてはそれが敬愛する姫さまの力になるという事実が、さらなる陶酔感をもたらす。

 鍛錬こそすれ、あまり自身の強さに実感が湧かない今日。
しかし今まで同様、諦めず研鑽を積み続けるならばきっと自分の理想に近づける。
今自分の周りに、その根拠たる家族と使い魔がいるのだ。

(理想に近づける・・・?いや、その理想になってみせるッ・・・!)
ルイズの中に、また一つ決意が固まった。


 そんなルイズがその決意を言葉にし、アーカードがそれに感心。
後、地獄を見ることになったのは・・・・・・また別の、もう少し先の話である。




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