あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

異聞零魔郷 ~ Servant of Interstice-5


コルベールは頬を打つ冷たい風を感じて、目をゆっくりと開いた。
ぼんやりとしていた頭もすぐに覚醒し、状況を確認しようと身を起こす。
やけに地面がごつごつとしていると思ったらそこは竜の背中だった。
隣には青い髪の小柄な少女が、本を読みながら座っている。

「ミス・タバサ。私はどうなったのかね」
「過労です」

答えはすぐに返ってきた。それによって自分が最後に見た光景が目に浮かんでくる。
触手に捕縛された八雲紫、その紫に上空からコントラクト・サーヴァントしたルイズ。
それを見て安心した自分は目の前が真っ暗になり、倒れたのだった。
今は恐らく治療のため、この使い魔の竜に運搬されている途中なのだろう。

「そうか、行き先は学院だね。ミス・ヴァリエール達はどうなった?」
「オールド・オスマンを交えて話し合いを」
「……ふむ。ヤクモユカリは大人しくなったのか」
「……」
「うん?」

タバサは無言でシルフィードに速度を上げるよう命令した。
何も答えないタバサから関心を外すと、彼に再び眠気が襲ってきた。
もう気を張る必要もあるまい、と考え安心して眠りにつくコルベールであった。

倒れたコルベールをタバサに送らせ、今現在この元草原に立っているのは三人。
オールド・オスマン、ルイズ、そして八雲紫だけだった。
あちこち穴だらけとなった無残な地面を見て、オスマン氏は苦笑を浮かべ、対面に立つ紫に向かって口を開いた。

「派手にやったもんじゃの」
「決闘ですもの」

答えになっているのかなっていないのか判別しがたい返答をし、紫はそっぽをむく。
決闘を邪魔された挙句に唇まで奪われ、少々不機嫌だった紫は左手の甲に目を向けた。
先程の出来事のあと、この部分に鋭い痛みが発し、蛇がのたくった様な紋様が現れたのだ。
興味深くその紋様を観察する紫だが、その表情が段々と険しくなっていった。
その様子を、ルイズはオスマン氏の後ろに立ち、無言で見つめている。
視線に気づいた紫は、表情を笑顔に戻しルイズへと話しかけた。

「改めて挨拶するわね。私の名は八雲紫。私を呼び出したのはあなた?」
「……そうよ。私が貴女を召喚した、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
「ルイズ、ね。何の意図を持って私を召喚したのかしら?」
「使い魔召喚の儀式を行っていたら貴女が現れた。狙ってやったわけじゃないわ。
 それと私の事はご主人様って……えぇと、何でも無いです」

ルイズの言葉を聞いて目を丸くした紫は、期待が外れた事に落胆した。
どんな理由をもって自分は召喚されたのかと楽しみにしていたのに、使い魔ときた。
しかも無作為にやったという。単なる偶然だったのかと、納得しかけた紫の脳裏に疑問が浮かんだ。
普通、術者は自分より強いものを使役したりはしない。
八雲紫にとっての式神・八雲藍のように、自由自在に操ろうと思っても、
術者の実力が伴っていなければ、最悪使い魔に術者自身が殺されてしまうこともある。
余程強力な呪によって、ある決まった行動だけをさせると言うのならともかくだが、今、左手にある紋様には
術者に対する好意を刷り込もうとする不愉快なものを除けば大した強制力は感じられない。
となれば、目の前に立つ少女には八雲紫を使役するに足る実力がある事になるが……

「そうは見えないわよねぇ」
「? 何よ」
「実はあなた、滅茶苦茶強かったりする?」
「……意味分かんない」

ルイズに自覚が無い様なので、とりあえず左手の紋様を調べる事にした。
少しは分かる事もあるだろうと、紫は目を閉じ意識を手に集中させる。
方術と境界を操る能力を活用させ解析をしてみたが、収穫は芳しくない。
まずこの紋様が恐ろしく精密な術式によって編まれている事。
そしてこの紋様『ガンダールヴ』のルーンの効果である『ありとあらゆる武器、兵器を扱う程度の能力』の事。
最後に断片的な単語、エイジス、神の左手、ブリミル。そして虚無。これらの事しか分からなかった。
虚無とは何だろうか。このように便利な力を他人に分け与えることの出来る力など
自分の境界を操る能力以外には中々存在しない。
先程失われた好奇心が蘇り、ルイズに問いただそうとして振り向き、紫は見た。
─なんて事。これが虚無!

オスマン氏は紫について考えていた。
結局ルーンを刻む前も後も目立った変化は見られず、もちろん敵意を向けてくることも無かった。
─やはりコルベールの勘違いか。事態を大きくしおって……減俸三ヶ月。
生徒を守るために命を張った行為を、勘違いの一言で切り捨てるオスマン氏。恐ろしい男である。
哀れコルベールはしばらく貧しい生活を送る事となったのだった。
─まぁ、後で休暇ぐらいはくれてやるか。

意識を戻し再び彼女について考える。
ヤクモユカリという奇妙な名前。背後に見える不気味な『裂け目』
裏では実力派で通っているコルベールを軽くあしらう力を持ち、尚も底を見せることは無い。
メイジの実力は使い魔ではかれ、という言葉がある。劣等生で通っている『ゼロ』のルイズにそんな力が?
「ミス・ヴァリエール。わしに君の魔法を見せてくれないかね」

突然のオスマン氏の言葉に驚いたルイズは、恥を晒したくないのか何とか断ろうとした。
しかし結局彼の放つ圧力に押され、渋々と杖を振るい、そして当然のように起こる爆発。
それを興味深げに見るオスマン氏と、恥ずかしさで顔から火が出そうな様子のルイズ。
そんな二人へ向けて紫から声がかけられた。

「……成る程。私を呼ぶだけの理由はあるわね」
一体何の事なのか、ルイズには紫の言葉の意味が理解できない。
「どういう意味?」
「あなたの虚無が私を引き寄せたと言うことよ」
「はぁっ?」

突然出てきた伝説の系統に驚くルイズと、何故か黙したままのオスマン氏。
紫はルイズに対する推測を述べた。

「この『ガンダールヴ』のルーンとやら、これを作り出したのは『虚無』という力の使い手よ。
 そしてその『虚無』の正体は『物質の根源に作用し、ありとあらゆる現象を引き起こす程度の能力』。
 私の境界を操る力も系統は違えど根源に作用する能力。その強力な力がお互いを引き合い、召喚された。
 私はそう考えたわ。あなたも似たような事を思っていたのではなくて、ご老人?」
「君のような強力な存在を呼べるのは、虚無くらいだとは思っておった。確信は無かったがの。
 しかし、虚無とは驚いた。生きている内に見られるとはな」

二人の会話に全くついて行けないルイズだったが、元々頭の回転は悪くない。
話を総合すると……使い魔凄い→召喚者凄い→しかも伝説の虚無→それが私。
ルイズは咆えた。
「とうとう私の時代がやってきたのね!」

そんなルイズをオスマン氏と紫は生温かい目で見ていた。

「さて、疑問も晴れたことだし、私はそろそろお暇させて頂きますわ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 今の会話の流れでどうしてそうなるのよ!」
「私が帰らないと幻想郷が危険ですもの。あと眠いし」
「え? 何よそれ。貴女は私の使い魔でしょう!?」

用は済んだとばかりにその場を離れようとする紫と、憤るルイズ。
一人は激しく、一人はのらりくらりと言い合いを始めた。
そんな様子を暫く見ていたオスマン氏だったが、そろそろ助け舟をだしてやることにした。

「まぁまぁ。落ち着きたまえ二人とも。
 ヤクモユカリ殿、我々メイジにとって使い魔は、一生を共にするとても大事なものなんじゃ。
 君にルーンが刻まれてしまった以上、ミス・ヴァリエールの使い魔は君以外にありえん。
 どうか彼女についてあげてくれんかの」
「この子に興味はありますけど、私はこれでも忙しいので。
 ルーンがいけないというのなら、お返ししますわ。そーれ」

何とか紫を引きとめようとしたオスマンの台詞に対し、紫は左手の甲をルイズに向けて振った。
すると驚くべき事に、ルーンの文字が薄れていき、消えてなくなってしまった。
唖然とするルイズとオスマンだったが、事態はまだ深刻だった。
ルイズが突然苦しみだしたかと思うと、『ガンダールヴ』のルーンがルイズの左手の甲に刻まれていたのだ。

「な、ななななによこれーーーーーっ!?」
「主と従の境界を弄くってみましたの。まぁ、メイジで使い魔、一回で二度お得ね。
 それではごきげんよう~」
「待って待って待って! メイジが使い魔になっちゃ本末転倒じゃないの!」

『裂け目』に入ろうとする紫の腰にしがみつくルイズ。必死である。
「もう、煩いわね……いいわ。一緒に居てあげる」
「ほ、本当に?」

途端に目を輝かせるルイズに苦笑しつつ、紫はルイズの襟首を引っ掴んだ。
え? とその行動を理解できないルイズに紫は言う。

「私は幻想郷から長い間離れられない。ルイズは使い魔にいてもらわなければならない。
 ならば逆に考えるのよ。使い魔が主と共にあるのではなく、主が使い魔と共にあればいいの。
 一緒に居るという目的は果たされるわね? じゃあ行きましょう」

え? え? と目を瞬かせるルイズと。余りの展開に開いた口が塞がらないオスマン氏。
二人が反応出来ないのを良い事に、紫はルイズをそのまま『裂け目』に放り込み、自身もその中に消えた。
『裂け目』はすぐに塞がり、そこに残るのは立ち尽くすオスマン氏のみだった。

幻想の大妖怪・八雲紫は時として様々な呼ばれ方をする。
「境目に潜む妖怪」
「幻想の境界」
「気味の悪い微笑み」
「妖怪の賢者」
そしてその中でも最も有名な呼び名は──

『神隠しの主犯』である。

ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールはその日、ハルケギニアより跡形も無く消え去った。


「……」
「……」
「……それで、紫様。『ソレ』は一体何ですか?」
「可愛かったからつい拾ってきちゃった。飼ってもいーい?」
「元の場所に帰してきてあげて下さい……」

主の我侭に式神・八雲藍は深く溜息をつき、ルイズはしくしくと泣くばかりであった。


ルイズが消えてから、トリステイン魔法学院は大騒ぎになった。
いくら魔法が使えないとは言え、かの高名な公爵家の三女。
いなくなったではすまされない。
最初の頃は学院に緘口令を敷き、何とかルイズを探し出して
学院内の問題で済ますつもりのオスマン氏だったが、一向に見つからない。
それもそのはず。その時ルイズは遠く離れた幻想郷にいたのである。
あの日から三ヶ月の時が過ぎたが、人の口に戸は立てられず、ルイズが居なくなった事が公爵家に知れたのがつい先月。
それからは毎日のように使者が訪れ、事実確認を求めてきた。
そして今日、全くまともな返事を出さない学院に業を煮やし、ラ・ヴァリエール公爵と公爵夫人が直談判に訪れた。
一応事実は伝えたのだが信じてもらえなかったようだ。

「弱った弱った。どうしたもんかのう」
「もうどうにもならないのでは?」

困った顔で髭を撫でるオスマン氏に冷たく返す秘書のロングビル。
既に彼女はこの学院から逃げ出す算段を纏めていた。
一方のオスマン氏は誰に責任を押し付けるか悩んでいた。
どうしようもない二人である。
─今までのわしの功績から見ても、免責されそうに無い失態じゃしなぁ。
 国家権力は恐ろしいし、いっそ身分を捨てて旅にでようかのー。
 若い頃を思い出すわい。
そして学院長室にノック音が響き渡る。
妄想の中でオスマンの大冒険を繰り広げていた老人と、
逃げる前に宝物庫の中身を頂こうと考えていた秘書兼盗賊は現実に引き戻された。

「ラ・ヴァリエール公爵御一行の、おな~り~」

扉が開くと同時に既に白髪に近い金髪の厳しい顔をした壮年男性と
桃色の髪をまとめあげた美しい貴婦人が現れた。
深い怒りが感じられる腹の底に響く低い声で、公爵はオスマン氏に問いかける。

「さて、オールド・オスマン。
 此度の訪問、何の用かは理解しておられるだろうな」
「……それはもちろん」
「娘はどこだ」
「ええと、そのですな」
「そちらの報告書によると『裂け目の化物』とやらがルイズを連れ去ったそうだが」

正確には裂け目を操る化物なのだが、揚げ足を取る必要はあるまい。

「その通り。ミス・ヴァリエールは裂け目の中に消え、今も行方は分かりませぬ」
「……そんな下らん言い訳は良い。魔法の使えないあの子の事だ。
 きっとここの生徒にイジメ殺されたのだろう? 何故正直に言わずそんな戯けた嘘をつく。
 責任ならばルイズを殺した貴族に取らせればよかろう」

既に公爵の中ではストーリーが出来上がっているらしい。
そもそも殺した生徒などいないのだから責任の取らせようが無い。
どうしようかと頭を抱えたオスマン氏を見て、額に青筋を浮かべた公爵が詰め寄ろうとした時。
中庭から爆音が響き渡った。

中庭で本を読んでいたタバサは、目の前の出来事に理解が追いつかなかった。
突然周りの空気が振動し、目に見える風景が歪んだ時は流石のタバサも驚いた。
続く爆発。濛々とした煙が吹き上がり、向こう側に影が見える。
丁度一陣の風が吹き、煙を吹き飛ばしたかと思うとそこには人間がいた。
しかも見覚えのある桃色の髪を持った人間が。
やけにひらひらしたおかしな格好の上、剣を担いでいたがその人物こそ誰あらん、三ヶ月前に行方不明となったはずの、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールその人だった。

「憎きスキマ妖怪に嵌められ、幾星霜。私は帰ってきた! このハルケギニアに!
 あーいむばーっく! あげいん!」

ルイズってこんなキャラだっけ?タバサは眼鏡を拭きながらそう思っていた。




epilogue

ルイズの帰還によりラ・ヴァリエール公爵の怒りは治まったものの、
消えていた三ヶ月については、誰が聞いてもルイズは答えようとしなかった。
ただ遠い目をして「私は一つ大人になった」だの「生きてるって素晴らしい」としか言わないのだ。

そして、ルイズ本人に大きな変化があった事が皆に困惑を与えた。
彼女は魔法が使えるようになっていたのだ。
『弾幕』と名づけられたその強力無比な魔法が、失われた虚無系統である事を知るのは、その時点ではオスマン氏のみである。

さらに一つ。ルイズはどこへ行くにも剣を背負い、手放そうとしない事が挙げられる。

貴族にもかかわらず、剣を持ち歩く彼女をからかうクラスメイトも居たが、
その時はルイズの左手が光って唸り、轟き叫んで剣を振り回すため、やがて誰もその事に触れなくなった。

後の出来事は本来あるべき史実とそう変わりが無い。
ただ配役が置き変わっただけである。
噂の盗賊を打ち倒すのがルイズで、裏切り者の婚約者を真っ二つにしたのもルイズ。
レコン・キスタと名乗る組織を『文字通り』潰したのもルイズならば
『聖地』を陥落せしめ、東の世界『ロバ・アル・カリイエ』まで踏破したのもルイズであった。


いつしかルイズは『伝説の再来』だの『虚無で使い魔』だの『妖怪』だのと呼ばれるようになり
現代の英雄として崇められる事となった。

いつも単独で行動していたと思われるルイズだったが、彼女の行く先々では必ず謎の金髪少女が現れ
仲良く一緒に旅をしていると思えば、時には殺しあっていたという噂も聞かれる。
真偽は定かでは無い。
やがて彼女は伝説となりハルケギニア史上最高のメイジ(或いは剣士)として名を残す事となる。



……

なによ、また来たのあんた。

えぇ。ご主人様が心配ですので。

ふん、だったらもう少し使い魔らしくしなさいよね。

あら? 私ったらこんなに尽くしてるのに?

毎回毎回、付きまとって酒をたかってるだけでしょうが!
さっさと幻想郷に帰りなさい。藍が泣いているわよ。

藍は泣かないわ。ちゃんと躾けてあるもの。

……可哀想に。いいわ、今回もまた送り返してあげる。

BGM: First kiss

あらあら、聞き分けの無い使い魔はお仕置きね。

いつの間に主従逆転してるのよ!

ルーンをつけてるのはあなたでしょう?

うるさい!

「あんたが目覚めさせたこの虚無の力、その身に味わうが良いわ、妖怪!」
「あなたが呼び出したこの境界の力、その身に刻むと良いわ、人間!」

SET SPELL CARD

ATTACK !


ゼロの使い魔×東方Project
『異聞零魔郷 ~ Servant of Interstice』完


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