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Zero May Cry - 05


Zero May Cry - 05


「おい」

 ネロは自分に用意された昼食を見て、ドスの効いた声でルイズへ尋ねた。

「な、何よ」

 流石のルイズもネロの機嫌が悪いと察したようだ。
 しかし、それも無理ないことと言える。

「もっとマシな飯はなかったのかよ?」
「だ、だから次からはもっとちゃんとしたのを用意するって言ってるじゃない!」
「俺は『今』まともな飯が食いたいんだけどな」
「今はそれで我慢してってば!」

 ネロの前に置かれているのは黒いパンのような塊と限りなく薄い色をしたスープ。
 両方とも少しばかり口に入れてみたがどちらも食べれたような代物ではない。

「我慢? お前、自分はまともな飯食っといて人によくそんなことが言えるもんだな」
「う、うるさいわね。私は貴族なんだからこれぐらいの食事は当然なの。それにあんたは使い魔でしょうが!」
「ハッ。貴族貴族って、貴族がどうかしたのかよ」

 その言葉にルイズは思わず立ち上がってネロに怒声を浴びせようとしたが、それよりもネロが席を立つほうが早かった。
 ネロはそのまま目の前の飯には目もくれずその場を立ち去ろうとした。

「ちょっと! 何処行くつもりよ!」
「飯にありつける所さ。もっとマシな飯にな」

 そのままネロはルイズの側を離れてゆく。しかしルイズの方もルイズで、腹を立てた彼女はネロをそれ以上呼び止めようとはしない。
 それどころか「もう知らない!」とぼやいている。ネロはその声が聞こえたのか聞こえてないのか、歩みを止める事はなかった。








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 その頃、学院長室にコルベールが訪れていた。その手には分厚い書物が握られている。
 彼はこの学校の学長でもあるオールド・オスマンにルイズが召喚した使い魔―――ネロの事と、彼の左手に刻まれたルーンの事を報告しに来たのだった。

「フム……。その男……傭兵の類なのかね? ミスタ・コルベール」
「恐らくはそうかと。背中に大きな剣と、腰に銃……と思しきものを持っていましたから」

 そして、コルベールはそこまで言って手に持っていた大きな本をオスマンの前へ出す。

「それよりも問題なのは、彼の左手に刻まれたルーンです。調べた所………、これに酷似しているものだったのです」

 そう言って彼がオスマンに見せたのは本の一ページに載せられたルーンだった。
 それを見たオスマンの瞳が細められる。それと同時に、この話を側で聞いていたオスマンの秘書、ミス・ロングビルへ席を外すように指示を出した。

 残った二人は神妙な顔つきで件の本の一ページを眺めていた。

「これは………伝説にのみ存在する使い魔のルーンじゃぞ……。ましてや、あのヴァリエールの三女が召喚するなど……」

 オスマンはそこで瞳を閉じると同時に一旦言葉を切り、コルベールの顔を真正面から見据えて言った。

「これは失われしペンタゴンの一角に関わる事じゃ……」

 オスマンのその一言を受け、コルベールは驚愕の顔付きで呻くように声を出した。

「ま、まさか……!」
「事の真実はどうあれ、この件は一切口外してはならん……!」
「しょ、承知いたしました!」

 普段の彼からは想像もう出来ないオスマンの無言の迫力に、コルベールは頷く以外になかった。









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 食堂を後にしたネロは、何か『食えるもの』にありつけないかと、庭をうろついていた。
 そんな彼の目に付いたのは多くの生徒達とその使い魔達。何事かとネロは彼らに視線を送りつつ立ち止まった。
 屋外に置かれたテーブルやそれに備え付けられた椅子に座って、生徒達は己の使い魔を見せ合ったりそれを種とした話題に勤しんでいる。

 ネロはルイズが口にしていた言葉を思い出す。

(今日は午後の授業はお休みで、召喚したばかりの使い魔とコミュニケーションを取るのよ)

 ―――どおりで騒がしいわけだ。

 そんなことを思いつつネロはその場を後にしようと歩き出す。

 すると。

「ネロさん! どうしたんですか?」
「? ああ……。あんたは、確か………」
「シエスタですよ」
「そうだったな。シエスタじゃねぇか。お前こそどうしたんだ?」

 目の前にいるメイド服の少女の名前を思い出せなかったことに僅かに負い目を感じたのか、ネロは視線をあらぬ方へ向けながら彼女へ逆に質問した。
 それでもシエスタは、屈託のない笑みを浮かべてネロへ答えた。

「ご自分の使い魔と親睦を深めている皆様のお食事などを用意してたんですよ」

 そう語るシエスタの両手にはトレイが握られており、その上には皿に乗せられたケーキがあった。
 それを目にしたネロは反射的にそれへ左腕を伸ばし、ぶっきらぼうに掴み取った。

「あっ! ダメですよ、ネロさん! それは先程ミスタ・グラモン様に頼まれた………!」

 シエスタが言い終える前に、ネロはそのケーキを口の中へ放り込んでしまっていた。
 しかしそんなことをしつつも悪気はないのか、ネロはにやりと笑った。

「気にすんなよ。そのグラモンって野郎に何か言われたら俺に言いな。穏便に済ませてやるからよ」

 ネロの凄みのある笑顔にシエスタが一瞬気圧されたその時。

「おーい! ケーキはまだかい?」

 あまり遠くはない距離に座っている金髪の少年がシエスタに声を上げた。


 ―――今思えば、それがこの少年の不幸だったのかも知れない。


 そんな少年に対して、シエスタが彼に新しいケーキを持ってくるように伝えるより早く、ネロが叫んでいた。

「ハッ、 悪いな坊ちゃん。お前のケーキは腹が減ってたから俺が食っちまったぜ」

 少年に対してネロは自由な左手を大きく広げて挑発するようなポーズを取った。思わず口を開けたままネロを凝視するシエスタ。
 ネロが放った言葉だけでなく、その態度にも少年は腹を立てたようで、勢いよく席を立ってネロに向かって歩み寄った。

「何だね君は!? 人のケーキを食べておいてその態度は許せないな!」

 そこまで言って少年―――ギーシュ・ド・グラモンは己が対峙している青年がルイズの召喚した使い魔であることを悟る。
 するとギーシュの態度はより一層に大きくなっていく。

「君は確かミス・ヴァリエールの召喚した使い魔君じゃないか。流石はゼロのルイズだね。主人が主人なら使い魔も使い魔といったところかな?」
「俺にはそのゼロよりお前の方がよっぽど大したこと無さそうに見えるけどよ」

 その一言に眉をヒクッと振るわせたギーシュは手に持っていたバラの花を模した杖をネロへ突きつけた。
 先ほどからのネロの不遜な態度、そして平民に自分のケーキを取られたという怒りも手伝って、ギーシュはネロのその傭兵めいた外見を気にすることなく言い放つ。

「平民風情がそれ以上の無礼は許さん! ついでに、君に少し貴族に対する礼というものを教えてあげよう……」

 そして彼は高らかに宣言した。

「この僕、ギーシュ・ド・グラモンは君に決闘を申し込む!」

 決闘という単語を聞きつけたのか、次第にネロとギーシュの周りには生徒達の人だかりができていた。
 しかしネロ本人は、ギーシュのその言葉を受けて笑みを浮かべた。同時に心底楽しそうに言い返す。

「いいねぇ。こういう展開を待ってたんだよ」
「フン! ヴェストリの広場で待っている! 精々許しの言葉でも考えてから来るがいい!」

 そう言ってギーシュは行ってしまった。
 その背中を見つめながらネロは相変わらず物騒な笑みを浮かべたままでいる。そんな彼にシエスタが慌てた様子で声をかける。

「ネロさんダメです! 無茶ですよ! 貴族の決闘というのは本当に命をかけて行うものなんですよ! それに……!」

 そこまで言って、シエスタはネロの右腕を見やった。今でも思い出せる。初めてネロと会ったあの日、ネロは右腕を使えずに左腕だけで洗濯をしていた。とても苦労していたようにシエスタの目には映っている。

「ネロさん、右腕怪我してるじゃないですか! そんな体で……!」
「あの悪魔共をブッ飛ばしてから、つまらねぇ相手としか戦《ヤ》ってねぇんだよな……」
「え……!?」

 シエスタは目の前の青年が口にした単語に言葉を失った。
 悪魔―――確かにこの青年はそう言った。悪魔をぶっ飛ばしたと。その言葉が何を意味するのか―――。

「シエスタ。そのヴェストリの広場ってのは何処だ?」
「は、はいっ!?」

 その時、シエスタはできればネロを止めたいと思っていた。
 しかしネロ本人の顔を見たシエスタは、それが出来なかった。

「こ、こちらです………」

 無意識の内にネロから目を逸らし、シエスタはネロに言われるままに彼をヴェストリの広場へ彼を案内した。


 ―――その時のネロの顔には、今後の展開を心待ちにしているような笑みが浮かんでいた―――








―――to be continued…….


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