あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第三話 貴族の使い魔 後編


魔法学院の教室は扇形の部屋が階段状となっていて、格段差に机が設置されていた。右手にある、机の列と向かい合った台は教鞭をとる者が使うためにあるようだ。
教室内のどこを見ても、人及び魔物がいないスペースはない。人間に懐いた魔物、あれが使い魔と判断していいだろう。
知り合いと仲良く談笑している面子でも多くて三、四人の中で、一際目立つ集団がある。
その中心にいるのは、あの猥らな女、キュルケだ。キュルケの足元には尾に炎をともす火トカゲの魔物が寝そべっている。おそらく、キュルケの使い魔だ。
主人だけでもむさ苦しいのに、使い魔まで熱がある。四六時中、発情している女にはお似合いなことだ。
しばらく熱のある女を眺めていたら、キュルケを取り囲む男の一人と、俺は目が合った。そいつは周りの連中に何か言い始めた。
そして、全員が何かに気付いて俺の様子を横目で窺っている。キュルケにいたっては、明らかに俺を誘っている。
俺に『鮮血』の二つ名を勝手に付けたディストに習い、奴の通り名は『お熱』に決定だ。
俺はこいつらの話題の種らしい。教室にいる貴族のほとんどが俺に目を注ぎ始めた。朝食の時と同じだ。誰も彼も、俺の姿を確認した端から騒ぎ始める。
俺は、自己紹介をして、こいつらの疑問に応えてやる義理などない。人の姿を視界から消して、ルイズの足音を追った。

席に座ってまもなく、俺達とは歳の離れた女性が入室する。あれがこの授業の教師のようだ。
帽子を被り紫のローブが身を覆っている、見た目も、おそらく、中身もふくよかな中年の女性。
シュヴルーズと名乗った女性は、召喚に成功した貴族たちに賛辞を送った。
「そして、ミス・ヴァリエール。あなたはここにいる皆さんの予期せぬ友を召喚いたしましたわね」
シュヴルーズの言葉が号令となり、教室中の双眸が舞い上がる。
「ふん、何が友だ。たかだが使い魔風情が我らと同等であるはずがないだろう」
ゆったりと昇るそよ風を引き裂く一陣の風が吹く。人目を纏め上げた男は、口の端から人を挑発しているいけ好かない野郎だ。
「ミスタ・ロレーヌ、彼は学院に認められたメイジですよ。そのような言葉は無礼に当たりますわ」
「彼がメイジであるという証拠が何処にあるのです、ミセス・シュヴルーズ。もしかしたら、ミス・ヴァリエールが我らを欺くために用意した共謀者かもしれませんぞ」
真横で机をぶっ叩く音に触発されて、俺の心が熱を帯び始める。
「な、何よ!わ、私がこいつと何したって言うのよ!」
「わからないかね。さすがは『ゼロ』のルイズ。君がその男を使って、召喚の成功を偽装したと言っているのだよ」
屑って言葉が素晴らしく似合う野郎だ。何が哀しくて、こんな阿呆と悪巧みをしなければならないんだ。
「ふ、ふざけんじゃないわよ!こいつはきちんと私が召喚したのよ!」
ルイズもすっかり煮えくり返っている。これは噴火寸前の火山だな。
「怪しいな。君の『サモン・サーヴァント』は土煙を召喚しただけじゃないか。大方、そこの赤い髪を地中に隠していたのだろう」
「でも、赤い髪の彼は傷だらけだったよ」
言葉は俺を庇っているのに、口調と表情が人を小馬鹿にする色がある。こいつは引き立て役か。
「じゃあ、あそこに彼の墓でもあったのかもしれないな。はは、『ゼロ』のルイズに命が『ゼロ』の使い魔、お似合いじゃないか」
その一言は何人かに笑いをもたらした。こいつは確かに愉快な男だ。ここまで人の心を逆撫でしてくれるとはな。
ルイズも相当なもんだが、このロレーヌとかいう奴は、俺が学院内で出会った貴族の中でも最上級の屑だ。
活火山が二つに増える。これ以上、辛辣な物言いを許すわけにはいかない。

「あいにく、俺の髪は赤いままでな。汚れた跡がないんだよ。地中に潜ってたのはてめえだろう。土色の髪がお似合いのロレーヌ様」
教室の空気が硬直した。そして、視線が土色に絡め取られる。むず痒い静寂に耐え切れなくなった何人かが喉を鳴らして吹き出した。
一度、ある方向に傾いた空気の流れは徐々に教室中を呑み込む。所かしこに失笑が漏れる。俺の耳元からも甲高い笑い声が響き渡る。
「あはははははは。ひ~、可笑しい。あんた面白いこと言うじゃない。そうよ、ミスタ・ロレーヌ。あんたの髪の毛はまるで土を塗り付けてるように綺麗だわ」
今にも爆発してマグマを撒き散らしかねなかったのが、薔薇の花畑になっていた。
形勢を即座に引っくり返されて気が動転しかけたロレーヌだったが、棘に刺された痛みが気を一点に集結させた。
余裕の仮面が剥ぎ取られ、怒りと羞恥心に染まったロレーヌが立ち上がる。
「な、何を言っているんだ。ぼくは日々頭髪の手入れは欠かさないぞ!それが土で汚れているわけがないだろう!第一、ぼくの系統は『風』だ。『土』は関係がない!」
「へ~、そうだったわね。でも、風って土を舞い上げるのに最適な魔法だわ」
緩やかな川が滝に差し掛かった。爆発的な勢いで轟音をがなり立てる水塊が笑い声となり、教室中を揺らした。
「貴様ら!このぼくを侮辱した狼藉、ただでは済まさないぞ!」
ロレーヌの怒りが臨界点に達したようだ。言動から恥の色は消え失せ、全身から激情を放出している。
「ふん、喧嘩を売ってきたのはあんたの方よ。貴族を侮辱したらただでは済まない、ですって。今のあんたを見てると本当にそう思えるわ」
その一言で、ロレーヌの口が縫い付けられた。反論の材料が乏しいことを悟ったのだろう。
それを見てルイズは得意満面そうだ。調子に乗るとここまで付け上がり、舌が饒舌になるとは考えもしなかった。
ルイズは胸の前で腕を組んで、自分の正当性を確固たるものにするがごとく胸を張った。止めの言葉でも刺すつもりだろう。
しかし、ルイズの声が高らかに響くことはなかった。どこぞから吹く風の糸がルイズを捕らえたからだ。
ルイズは口を開く暇さえなく風を操る何者かの人形になり、体重を感じさせないほど静かに席へと座らされた。
同時に、ロレーヌの驚いた声が届く。何事かと首を捻ったら、奴も同様に風に翻弄されていた。
「ミス・ヴァリエール。ミスタ・ロレーヌ・みっともない口論はおやめなさい」
風の主はシュブルーズらしい。右手に杖を握り、争っていた二人を嗜めている。
「はい。申し訳ありません」
ルイズはやたらとご機嫌だ。ロレーヌを言い負かしたことがそれほど嬉しいのだろうか。
「はい……。すみません……」
鬱憤を解消する機会を失ったロレーヌは嵐の前の静けさを思わせる。足元から風が昇っていると錯覚するほどの怒りを帯びていた。
「それに、ミスタ・ファブレ。ミスタ・ロレーヌの言葉は許し難い暴言ですが、それを汚い言葉で返したらあなたも彼と変わりませんよ」
シュヴルーズの言葉は正論だろう。だが。俺は好き放題に蔑まれて大人しくしているほど、品行方正な貴族じゃないんだよ。
「いいですか、皆さん。この場にいるのは共に学問を修める友なのです。ですから、馬鹿にしたり、笑ったりせず、一人の人間として尊重し合うのですよ」
ありがたい話が耳に入っているとは思えないほど喜んでる人間と、俺達を殺気立って睨みつけている人間に、人を尊重の神経はなさそうだ。
「では、授業を始めますよ」

ルイズは俺が考えるより真面目な性格をしていた。しばらくは喜びに浸って自分の世界に閉じこもらなかったのだ。
ルイズは、シュヴルーズの教鞭が始まると同時に真剣な眼差しで机に向かった。
このちょっとした感心は、俺も講義に引き込まれる形で霧散しそうになる。ハルケギニアの魔法の外殻に触れたからだ。
ここの魔法は、『火』『水』『土』『風』の四つの系統を基礎とするらしい。これは第一音素の『闇』と第六音素の『光』の魔法が存在しないことを意味する。
気になったのは、『虚無』と言っていた系統だ。こいつはもしかしたら、第七音素かもしれない。
だが、第七音素は六大音素にプラネットストームを吹きかけることによる、全ての音素が結合した結果。ハルケギニアにプラネットストームがあるようには思えない。

一応、感覚を研ぎ澄ませればレムとシャドウの音素の振動を僅かながらも感知することはできる。第七音素は音はまったく拾えない。
ハルケギニアはどの音素も少量で、俺はろくな譜術ができない。だったら、大した魔法は使えないと推測したが、それも違うらしい。
土系統のメイジだと言ったシュヴルーズは小石を真鍮に変えた。また、彼女の話によれば、ハルケギニアの生活には、魔法がかなり密着しているらしい。
これを真実と採るなら、ここはさしずめマルクト帝国だ。あの国は譜術で民を支えているからな。
問題は、大気中の音素がオールドラントと比較すると微量となってしまうのに、マルクトと同じ事が可能な点だ。
もしかしたら、貴族連中はジェイドの譜眼と同様の、大量の音素を取り込む装置でも体に刻んでいるのか。
もっとも、譜眼は素養のない奴が扱えば死に至る禁術。それをこれだけの人数が扱うとなると、大きな疑問があると言わざるをえない。
あるいは、譜眼ほど危険性がなく、かつ同様の効果を得れる技法があるのかもしれない。
本当にそんな技術があるなら、プラネットストーム停止以降、音素の総量が減るオールドラントの譜業や譜術の大きな助けとなる。
そいつの理論なり何なりを持ち帰れば、これから苦しくなるだろう民の生活を改善できるのではないだろうか。
そこまで考えて、俺は自らの愚を悟った。俺は、もうすぐ音素乖離を起こして死ぬんだ。
オールドラントには帰れない。たとえ、その方法が見つかったとしても、この世界の魔法を解明する時間はない。
俺は、この期に及んで生きようとしている自分自身を嫌悪感したくなる。

「『スクウェア』に『トライアングル』……、術のランクのことか?」
思わず声に出してしまった。今まで考え詰めだったのが影響したか。
「そうよ。ただ、ちょっと違うわね」
口元で囁いただけのつもりだったが、隣の耳に入ってしまった。独り言が聞かれた気恥ずかしさが頬を熱くする。
「何が違うんだ……」
「ランクって言い方も間違いではないんだけど、実際は系統を足せる数を表しているの」
「系統を足せる回数?例えば、『火』に『土』を加えると新たな魔法になるって事か?」
譜術の常識は、こっちの魔法の法則と一致するのか。
「そうよ。物分りがいいわね。今言った、『火』と『土』の二つを足せるのがラインメイジ。その下、『火』単体だけを使えるのがドットメイジ」
俺を何だと思ってやがるんだ。一言多い女だ。半ば意地になって、俺は続く言葉を代弁してやった。
「そして、三つ足せるのがトライアングルメイジ。四つがスクウェアメイジってわけか」
「そ、そうよ。後、同じ系統を足すと、より強力な系統魔法が使えるの」
魔法は俺からして未知の産物ではなかった。多少の差異はあれども、譜術と変わる部分が少ない。
「ルーク、あんたハルケギニアの外から来たのよね。そっちの魔法も私達のと同じなの?」
「多分な。ただ、こっちは、一度使われた術を利用して、系統を足している」
「どういうこと?使われた魔法を利用するって?」
「術を発動した後、その場には音……エ、エネルギーが高い濃度で残留する。そいつを自分の術と組み合わせる。例えば、『土』の術で攻撃した後、そいつを『水』二つの術に取り込めば『水』『水』『土』のトライアングルになる」
音素による変化技の説明をしてしまった。予期せぬ共通項が妙な親近感でも抱かせたんだろうか。
空間を隔てるほど遠いのに、奏でる音は近いハルケギニアに俺を召喚した少女を脇目に捉える。
何故か、爛々と瞳を輝かせていた。そして、唇が引きつっていた。俺は人が感心するようなことを話した覚えはないのだが。そもそも、この陰陽が奇妙に混じった顔は何だ。
「ね、ねえ。い、今の、え~と、一度使った魔法を再利用する方法って、わ、私にもで、できるの?」
「俺は魔法の知識が乏しいから何とも言えん。それより、何でそんな事を知りたがる」
系統が四つとはいえ、ほとんど譜術と扱っても問題ないだろうから、不可能って事はない。ただ、こいつがそれを欲する理由がわからない。
「え、いや、あの……、その」
「ミス・ヴァリエール!」
不意に届いた下からど突かれるほど質量を持った声に、俺もルイズも体が跳ね上がりそうになった。
「は、はい!」
「授業中の私語は慎みなさい」
「すいません……」
何たる失態だ。俺ともあろう者が。僅かな心の緩みでマナーを守れんとは。
「おしゃべりをする暇があるなら、あなたにやってもらいましょう」
「え?わたし?」
ルイズが何をやらされるかは分からない。処罰ではないだろうが、その原因の半分を作った心が疼く。
「そうです、ここにある石ころを、望む金属に変えて御覧なさい」
単なる演習と安堵した俺とは裏腹に、教室中の貴族が猛獣に遭遇したかのごとく、恐怖を貼り付けた顔で俺達を注視していた。

状況を整理することができない。何故、ただの魔法の演習をするだけの事で、敵軍に追い詰められた軍隊の様相を呈するんだ。
特にキュルケは、ルイズにやらせるな、とシュヴルーズを嗜めている。この高慢ちきの何が問題なんだ。
途中に私語をしてしまったものの、それまでは真面目に授業を受けていた。ルイズの授業を受ける態度には落ち度がない。
しかし、当の本人は指名された途端に、帰還困難な戦場へ赴く兵士のごときオーラを放っている。
異様な光景に、俺の頭は危険だという警告を発令しっぱなしだ。
とうとう、キュルケはルイズに自制を促した。しかし、それはルイズの反骨心に火を付けただけかもしれない。
覚悟を決めた女が席を立った。その右手には、俺が渡した譜石が握り締められている。軋み、壊れそうなほどの握力で締め上げられて。

シュヴルーズは魔法の説明をし、ルイズはそれを食い入るほど熱心に聴いている。
「畜生……。何で『ゼロ』のルイズにやらせるんだ」
誰かの言葉が耳に入った。
『ゼロ』。そういえば、ロレーヌって奴が嫌みったらしい口調で口にした単語だ。
二つ名であることは分かる。何を表しているかは不明だ。少し候補を思い浮かべた程度では正答に辿り着けそうもない。
二つ名は、己の特徴を模したものだから、ルイズの魔法を拝見すれば何かしらのヒントは得れるだろう。
とりあえず、今はルイズのお手並みを測ることにした。
教室の最下段に設置された台に隠れたルイズの右手が掲げられる。指先には、詠唱用だろう、杖を挟んでいる。
杖に音素が集約されるのを感知した。これは『土』の講義だから、使われるのは第二音素だ。
しかし、何故か杖を纏う音素に第二音素が存在しなかった。別の音素が放出されているのだ。
疑問を感じだので、感覚を研ぎ澄まして音素の正体を探る。馴染みのある音素だ。俺の体内に同調して振るえる音素。
次の瞬間、脳が指令を出す前に、俺は机から飛び出していた。
こいつは『土』じゃない。俺に届いた音、それは紛れもなく第七音素。
第七音素を媒体にする魔法はそう数があるものじゃない。この音は、全てを破壊し消し去る超振動以外にありえない。
「よせ!ルイズ!」
腹の底から全ての空気を吐き出しそうなほど、全力で叫んだ。しかし、時既に遅し。杖は振り下ろされた。
閃光が瞬く。望まぬ終わりが俺を締め付ける。ルイズの下へ走る間もなく、俺は爆風に飲み込まれた。

超振動の炸裂。至近距離でそいつを食らえば、あの世への階段が拝める。しかし、ルイズのそれは拍子抜けをする威力だった。
せいぜい、机と窓の破片を撒き散らし、人間と使い魔が暴れる程度。怪我人といっても、シュヴルーズが壁に叩きつけられただけだ。
これは中級譜術の下の部類ほどの破壊力もない。
だが、被害がどうあれ、それが超振動であることには変わらない。その事実が俺の体を投げ出させる。
「ちょっと、失敗みたいね」
「何が失敗だ!どうして何も考えずに超振動を使った!」
真横で怒鳴られたことに驚いただけのルイズは俺の神経を逆撫でするには十分だった。

日が最も高く昇る頃、ルイズが滅茶苦茶にした教室に二人の人間の姿が動いている。この惨事の張本人とその使い魔だ。
今、俺達はルイズの超振動で瓦礫の集積場と化した教室の片付けをしている。こうなった原因は俺達なのだから、当然の処置だ。
どうせ邪魔になるだろうから、ご主人様には現場監督を任せてやった。本人もその気になり、司令官よろしく、台の上で足を組んで上官風を吹かしている。
時間を大分食ったが、もう終わりが近い。机を運んで並べる作業が残ってるだけだ。
本来なら、もっと時間を短縮できただろう。暇なのをいいことに、あれこれ聞いてくる監視役さえいなければな。
「何度も聞いてやるわ。チョウシンドウって何よ。教えなさい」
「駄目だ。何度も繰り返させるな」
教室に二人だけ残されてから、ずっとこの始末だ。ルイズが超振動を放った直後は俺が叱っていたのだが。
こいつは俺の言葉が耳に入ってるのに、機嫌を悪くする兆しを見せなかった。
その反面、暗闇の中の光を求めるように、俺に縋ってきたのだ。超振動とは何か、と。
「何よ、いいじゃない。私が何て呼ばれてるか知ったでしょ」
その理由がこれだ。ルイズの『ゼロ』は、魔法の成功率のことだと本人から聞かされた。長年、それをネタに馬鹿にされていたそうだ。
そいつを克服するために、誰にも笑われないようにずっと努力を続けていたらしい。
「だから教えて。私は自分の魔法が何なのか知りたいのよ」
同情できないこともない。しかし、今のルイズに詳細を語ることは無理だ。
こいつは奴と同じ臭いがする。自分を認めさせようとして、町一つを地図から消したあの劣化レプリカと。
「断る」
「何でよ!気に食わないけど、あんたは私の魔法をどうにかできる手がかりなのよ。お願いだから、チョウシンドウの事を話してよ」
どれほど頭を下げられても、金を詰まれても、俺は折れない。
単なる疑問の解明ならいくらでもしてやるさ。だが、超振動を知ってどうするつもりだ。
お前みたいに、己の力を証明する目的で使いかねん人間に教えられるか。たとえ、星の記憶に記されよとも、俺はそいつを突っぱねる。
「あんた、私が生意気だからへそ曲げてるのね。小さい男ね。謝ってあげるから、あなたの知ってること、洗いざらい話なさい」
俺が小さいならお前の態度は巨人並だ。背丈のまま進む平行線が交わることなどありはしない。
数えるのが面倒なほど、同じ話題がループしている。そろそろ、下らなく、生産性のない問答は御開きとしたい。
「ふん、今更黙っても私は引かないわよ。あんたからチョウシンドウのことを聞き出すまで諦めないからね」
どれほど、根気を続かせても、墓の穴までは追いかけられまい。我慢比べは最初から俺の勝ちが決まっている。
「聞きたいことが山ほどあるけど、もう昼食の時間が近いから一旦休憩」
「そのまま休憩してろ」
「いやよ。ルーク、今日中にチョウシンドウについて教えなさい。絶対よ」
拒否させてもらう。絶対にな。超振動の詳細は信頼できる相手でもなければ、口外していい力じゃない。
やたらと机に重量があるのは、次々に増える重荷も一緒に乗っかっているせいだろうか。


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