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絶望の街の魔王、降臨 - 11.5


ルイズ達、大使一行が出発する前日。
 ワルドは、偽情報に踊らされていた。
「え? もう出発しただと?」
 既に昨夜には出立した、ラ・ロシェールで船を徴発、無理矢理アルビオンに航る。それがワルドが手に入れた情報だった。
 すぐにグリフォンを伴った偏在で追うが、追い付くはずはない。目標は原点から一歩も動いてないのだから。
 ルイズが動いていないのを知るのは、偏在とグリフォンがアルビオンに到達し、ジルが高音と共に学院を発った、かなり後だった。
「な!? まさか情報が違うのか?」
 アンリエッタによる、ほぼ完璧な情報統制。それは、たわいもない風の噂で綻びを見せた。
 慌てるワルド。アルビオンまでの道で疲弊したグリフォン。王党派と接触してしまったがために消せない偏在。どう頑張っても追い付けない相手の移動速度。新たに偏在を使おうにも、精神力は有限であり、常に偏在を、しかも何体も出せば、たとえスクウェアでも
すぐにスッカラカンになってしまう。ただでさえ、ロンディニウム、ニューカッスル、雑用、情報収集にそれぞれ一体、計四体を動かしているのだ。
「くそ、どうする……せっかくの王族のスキャンダルが……」
 トリステイン・ゲルマニア同盟阻止の材料となる何かが、ニューカッスルにあるらしい。レコン・キスタに属する者としては、喉から手が出る程欲しいものだ。
「あのアホの子のアンリエッタにこんな知恵があるとは思えん……誰かの入れ知恵だ……マザリーニか?」
 完璧に後手に回ってしまった。そして、城では本格的なスパイ狩りが始まっているだろう。今動くのは得策ではない。今はただ、ニューカッスルでルイズを待つしかなかった。



 高空から、彼女達は非常識なそれを追っていた。
「すごいわね、風竜ですら追い付くのがやっとなんて」
「きゅい! きゅい!」
 滑空など愚の骨頂、常に羽ばたかなければ追い付けない。蒼い風竜は『重量オーバーで最高速が出せられない』相手に、全力を出さなければならない。無論、かなり疲れている。
「やっぱりかっこいいわ。そこらの男より断然素敵よ」
 男の趣味が悪くなった友に頼み込まれ、少女は人知れず溜め息を吐く。
「ねえ、もっと近付けないの?」
「無理」
 今まで距離を離されなかったのが奇跡なくらいだ。今回ばかりは、おしゃべりな使い魔を褒めてもいい気になった。
「ああ、どこに行くのかしら? フーケとギーシュまで連れて、面白いことになりそうね」
「不安」
 少女は一言だけ、その予感を言葉にして返す。
「あら?」
 風竜がだんだんと高度を落としてゆく。羽ばたきの回数も減ってきている。そして目標は────
「あ……まって!」
 だんだんと小さくなり、消えた。
「ああん、もう! どうしたのよ!?」
「限界。疲れてる」
 完全に羽ばたくのをやめ、滑空している風竜は、息も荒くどうにか姿勢を保っている。
「ああ……ジル……」
 趣味が悪くなった訳ではなかったらしい。道を誤っていた。



 アンリエッタは執務室で報告を待っていた。言うまでもなく、諜報の成果を。
「あの衛士の方……ジルの言う通りでしたわね」
「我々にはない発想でしたな。眼から鱗です」
 傍らに控えるマザリーニは、アンリエッタから聞いた話を反芻していた。話術とは、かくも簡単かつ効果的に相手に情報を吐かせるのか、甚だ不思議でならなかった。


 平民を密かに登用し、諜報員としての初歩的な訓練を施し、一部は盗聴させ、一部は監視をさせ、一部は使用人の振りをさせる。貴族は貴族には警戒するが、余程の事が無い限り平民を空気扱いする。或いは、気に入った平民に自ら秘密をぶちまけたりする。平民に
は力が無い、そんな思い込みからの無警戒だった。
「平民を蔑ろにできないいい例ですな。今回はそれに救われましたが」
「思い込みと慣れは恐ろしいですわね。ああ、そうでしたわ。貴族も絶対強者ではありませんでしたわ」
「ほう、なにかあったと見えますな」
 アンリエッタはマザリーニの言葉に、自虐的に微笑む。
「ルイズの使い魔、いえ、平民の衛士に一瞬で組み伏せられましたわ。杖を取り出せていたにも関わらず、ディテクトマジックすら唱えられませんでした」
「成程、それは……」
「ジルは、驕ったメイジなど敵にはならないでしょう。いえ、驕らずとも、彼女は敗けない、そんな気すらしますの。例え幻獣やオーク鬼や、吸血鬼さえも彼女には敵わない」
「大きく出ましたな」
「ええ。もしかしたら……」
 と、ノックの音がアンリエッタの話を遮る。
「姫殿下、ケイシーです。報告に参りました」
 使用人諜報班で最も優秀な男が戻ってきた。



 オスマンは泣いていた。いや、比喩などではなく。
「ミス・ロングビル……君の偉大さが身に沁みる気分じゃ……」
 机の上には書類が堆く積み上げられ、オスマンの椅子の周りにも、彼を囲む檻の如く積み上げられている。
 ロングビルが適所に振り分け、オスマンの仕事を最小限にしていたのだが、彼女が抜けた穴はひたすらに大きく、その結果がこれだった。
 オスマンは身動きが取れない。下手に動けば書類に襲われ埋もれてしまう。
「うおおーい! だれかたすけてくれんかー!?」

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