あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

アクマがこんにちわ-15 B


翌日。

ルイズが授業を受けている頃、人修羅はコルベールの研究室にいた。
人修羅が小型の黒板に図を書き、コルベールがそれを元に練金していく……

昼頃になると、投げやすい形のナイフが十数個、親指の先端ほどのくず鉄が両手に収まらぬほど出来上がった。

「やはり、焼きを入れた鋼で弓矢を作るのは無理でしたなあ」
コルベールが呟く、見ると、足下やテーブルの上には失敗作と見られる鉄くずが幾つも転がっていた。
「すみません、無理を言ってしまって。でもこれだけ武器があればだいぶ楽になります」
「いや、君の意見は斬新でとても興味深い、見聞を広める意味でもこういった機会が得られたのは嬉しいのだよ。しかし、手加減のために武器が必要だとは、何ともまあ…」
人修羅は苦笑いすると、投げナイフを手に取り、バランスを確かめていく。
武器を持つと、左手の甲に浮かんだルーンが輝き始める…同時に、今までの戦いでは得られなかった『極めて精密な力加減』が人修羅の体へと浸透していった。

人修羅は、研究室の壁に立てかけられた木の板に向けて、ナイフを投げた。
絶妙な力加減で投げられたナイフは、的に見立てた節の部分に命中した。

「このルーンは凄いな。投げナイフなんて扱ったこともないのに、力加減が解る」
コルベールはその様子を見て、顎に手を当て頷いた。
「伝説とされていたルーンですからな。まったく素晴らしいものです。ですが武器だけというのは、些か残念でなりません」
「ああ、コルベール先生もそう思います?」
「戦争と武器だけでは、生活は豊かになりませんから」
コルベールはそう言って笑った、が、それはどこか寂しそうな笑みだった。
人修羅はそれを察したのか、そのことについて追求すべきでないと考え、何も言わなかった。



◆◆◆◆◆◆



そしてその日の夜……。
人修羅は簡易ベッドの上に座り込み、革製のベルトや、道具を入れるポケットを確認していた。
慣れぬ手つきで、革製の袋に針と糸を通し、ベルトに下げられるよう加工していく。
今度シエスタに裁縫を習おうかなぁ、と思いつつ、ちらりとルイズの方を見つめる。
なんだか、ルイズは激しく落ち着きがなかった、立ち上がったと思ったら、再びベッドに腰かけ、枕を抱いてぼんやりとしている。
姫様が来るからだろうか、授業が終わって部屋にこもるなり、ルイズはずっと落ち着きがない。

「焦っても仕方ないぞ」
人修羅が言った、しかしルイズは枕を抱きしめて、じっと黙っている。
ずいぶんと緊張しているんだろうなあ…と考えていると、ドアがノックされた。
規則正しく扉が叩かれる、初めに長く二回、それから短く三回……。
ルイズの顔がはっとした顔になった。
急いで枕をベッドに置くと、身だしなみを整えて、立ち上がりドアに手をかける。

ゆっくりとドアを開くと…そこに立っていたのは、真っ黒な頭巾をすっぽりとかぶった、少女だった。
辺りの様子を伺うと、そそくさと部屋に入り、後ろ手に扉を閉めた。
「……あ」
ルイズは何かを呟こうかと、声を上げたが、頭巾をかぶった少女が口元に指を立て、しーっと沈黙のジェスチャーをした。
そしてすぐ、頭巾と同じ黒いマントの隙間から杖を見せると、ルーンを詠唱して振りかざした。
光の粉が、部屋に舞う。

「あっ、ディティクトマジックは!」
ルイズが慌てたが、頭巾の少女はなんのこともなく、ただ頷いた。
「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」
少女はディティクトマジックで、部屋の中に聞き耳を立てる魔法の耳や、どこかに通じる覗き穴がないことを確かめたらしい。
頭巾を取り顔を見せる…現れたのは、アンリエッタ王女だった。
ルイズは慌てて跪き、王女の顔色をうかがった。
「姫殿下!あの、おかげんは…気持ち悪いとかそういったことはございませんか」


アンリエッタは首をかしげつつも、心地よい声で言った。
「おかしなことを聞くのね、私は元気に…いいえいつもより元気よ、貴方に会えるのを楽しみにしていたのですから。ルイズ・フランソワーズ」

ルイズはほっと安堵のため息をついた。
ディティクト・マジックで人修羅を調べたミス・ロングビルは、とんでもないモノが見えて卒倒してしまったのだから、姫様も同じように気絶する恐れがあった。
ちらりと後ろを見て、人修羅の様子を確認する…、そこには開け放たれた窓のみがあった。

どうやら人修羅は、窓から逃げ出したらしい。


◆◆◆◆◆◆


「うわあっ!?」
どすん!と音を立てて中庭に着地すると、隣から誰かの声が聞こえた。
「あ、悪い。驚かせた」
人修羅は軽い調子で謝ったが、その誰かは驚いて腰を抜かしたのか、杖と花束を地面に落とし、しりもちをついたまま人修羅を見上げている。
「……き、君はなんだね!?ミス・ツェルプストーの部屋から飛び出てくるなんて!」
「へ?いや、俺はルイズさんの部屋から出てきたんだけど」
「なんだと…」
男は、魔法学院の生徒らしかった、杖を拾い上げると寮塔を見上げ、二つ並んだ窓を見つめる。
「では、向かって右側がツェルプストーで、向かって左側がゼロのルイズか。危なかった、勘違いして覚えていたようだ」

こんな時間に女性の部屋を訪ねるとは、夜ばいだろうか?
しかし、よく見ると男は花束を持っている、夜のおつきあいか、紳士的な夜ばいという所だろう。
「ルイズさんの部屋は見ないでくれよ」
「ふん。ゼロのルイズには用はないさ、このベリッソンは灼熱の美女に用があるのだからね!」
そう言うと、ベリッソンと名乗る貴族は、レビテーションを唱えてゆっくりと上昇していく。


ツェルプストーの部屋から炎が飛び出すのは、その二十秒後であった。


◆◆◆◆◆◆


そのころ、ルイズの部屋では…
アンリエッタ王女が、感極まった表情を浮かべて、ルイズを抱きしめていた。
「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!」
「姫殿下、いけませんわ。こんな下賤な場所へ、お越しになられるなんて……」
「ああ!ルイズ・フランソワーズ! そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい!あなたとわたくしはおともだち!おともだちじゃないの!」

<<中略>>

まるで歌劇のように、抱きしめて、離れて、くるくると回って再会を喜んだ二人。
しばらくして落ち着いたのか、二人はベッドに並んで座っていた。

王女アンリエッタが愁いを帯びた表情で呟く。
「ごめんなさいね……、あなたに話せるようなことじゃないのに……、でも、貴方にだけは、私の秘密を共有できるおともだちにだけは、聞いて欲しかったの……」
ルイズはアンリエッタに向き直ると、静かな口調で…しかし力強く言い放つ。
「おっしゃってください。幼い頃から明るかった姫様が、そんなため息をつくのには、姫様だけの苦悩がおありなのでしょう?私をお友達と呼んでくださるなら、私は姫様の…いいえ、アンのおともだちとして話を聞くわ」
「…わたくしをおともだちと呼んでくれるのね、ルイズ・フランソワーズ。とても嬉しいわ」
アンリエッタは決心したように頷くと、語り始めた。

アルビオンの王室が、貴族派に追いつめられていること。
貴族派は、エルフからの生地奪還を掲げる『レコン・キスタ』という組織を形成していること……。
アルビオンが陥落したら、次は間違いなくトリステインが狙われるはず…迫り来るアルビオンに対抗するためゲルマニアと同盟を結ぶことになったこと……。
そのため、アンリエッタはゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったこと……。

「ゲルマニア!あんな野蛮な国に……そうだったのですか……」
ルイズは沈んだ声で言った。アンリエッタの悲しげな口調からも、結婚を望んでいないのが明らかだったからだ。
「いいのよ。ルイズ、好きな相手と結婚するなんて、夢の中でしか許されないのですわ」
「姫さま……」

そうして、アンリエッタは、ゲルマニアとトリステインの同盟を妨害する、ある手紙の存在を話し出した。

それは、アルビオンの皇太子、ウェールズ・テューダーに当てた手紙であった。
内容は話せぬとしておきながらも、アンリエッタがウェールズを思い、目に涙を溜める姿は、その手紙が恋文であると思わせるに十分だった。

しかもその手紙は、今にも倒れそうな王室の、皇太子が所有しているという。

「ああ!破滅です!ウェールズ皇太子は、遅かれ早かれ、反乱勢に囚われてしまうわ!そうしたら、あの手紙も明るみに出てしまう!そうなったら破滅です!同盟ならずして、トリステインは一国でアルビオンと対峙せねばならなくなるのです!」

ルイズは息をのみ、アンリエッタの顔を見つめた。
「では、姫さま、わたしに頼みたいことというのは……」
「無理よ!無理よルイズ!ああ…わたくしったら、なんて事を言ってしまったのでしょう!貴族と王党派が争いを繰り広げているアルビオンに赴くなんて危険なこと、頼めるわけがありませんわ!」
「何をおっしゃいます!たとえ地獄の釜の中だろうが、竜のアギトの中だろうが、姫さまの御為とあらば何処にでも向かいます!姫さまと、トリステインの危機を、ラ・ヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ、決して見過ごすわけにはまいりません!」
ルイズアンリエッタの前み立つと、ゆっくりと跪き、恭く頭を垂れた。
「このわたくしめに、その一件、是非ともお任せくださいますよう」
アンリエッタは目に涙を浮かべると、ルイズの手を取った。
「このわたくしの力になってくれるというの? ルイズ・フランソワーズ!」
「もちろんですわ! 姫さま!」


二人が見つめ合い、お互いに感激に目を輝かせていると、突然部屋の扉が開かれた。


◆◆◆◆◆◆



「何やってるんだお前ら」
「うわ!」「し、静かにっ」

そろそろ良い頃かと思い、ルイズの部屋へと戻った人修羅は、扉にべったりとくっついて聞き耳を立てている二人の生徒を発見した。
すかさず右腕で丸っこい生徒…マリコルヌの頭を抱える。
左腕では、バラの造花を持った生徒…ギーシュの首に腕を回し、ゆっくりと締め上げた。
「 そ れ が 貴 族 の や る こ と か? ああん?」
「~~~~っ!!!!!」「痛ったったったたたっ!」
ギーシュは声も出せず、苦悶の表情を浮かべ、マリコルヌは頭を締め付けられ悶絶した。
「マリコルヌ、お前、誰にも言うなって言ったよな」
「か、勝手に付いてきたんだ、ボクは悪くない!」
「悪いわ!」

人修羅はギーシュに顔を向ける。
「おい、中でなんの話をしているか、聞いたのか?」
「当然だ、こんな夜更けに姫様を見つけたら、気になるに決ま……ぐぇっ」

人修羅は、はぁーと盛大にため息をつく。
そして、行儀が悪いと思いつつも足で扉を開けた。

「立ち聞きしていた不審者をお連れしました」
「まあ!」
「人修羅?そっちはギーシュと…マリコルヌ?」
ルイズは慌てて立ち上がると、人修羅が連れてきた二人を見下ろした、マリコルヌは完全に気絶しているが、ギーシュは人修羅の腕を外そうともがいている。

「外に捨ててきて」ルイズが冷たく言い放つ。
「いや、そういう訳にもいかないだろう」
人修羅は気絶したマリコルヌを床に下ろすと、ギーシュを抱える腕から力を抜いた。
するとギーシュは、ルイズの様子など気にもせず、姫様に向かってまくしたてる。
「薔薇のように見目麗しい姫さまのあとをつけてきてみればこんな所へ……、どうか姫殿下!その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」
「え? あなたは……グラモン? あの、グラモン元帥の?」
アンリエッタが、きょとんとした顔でギーシュを見つめる。
「息子でございます。姫殿下」
ギーシュは立ち上がると、恭しく一礼した。微妙に声が苦しそうなのは気のせいではない。
「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」
「任務の一員にくわえてくださるなら、これはもう、望外の幸せにございます」
熱っぽいギーシュの口調に、アンリエッタは微笑む。
「ありがとう。お父さまも立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるようね。ではお願いしますわ。この不幸な姫をお助けください、ギーシュさん」
「姫殿下がぼくの名前を呼んでくださった! トリステインの薔薇の微笑みの君が!このぼくに微笑んでくださった!」
ギーシュは感動のあまり、後ろにのけぞって失神した。
「首を絞めるまでもなかったなあ…大丈夫かコイツ」
人修羅はギーシュの頭をつつくと、マリコルヌの隣に引きずって、並べた。

「ところで、貴方は…話からするとルイズの知り合いのようですが」
「姫さま、ええと……人修羅といって、東方よりはるか遠くからきた、私の使い魔…です」
ルイズは少し言いにくそうに、人修羅を紹介した。
「使い魔?」
 アンリエッタはきょとんとした面持ちで人修羅を見つめた。
「人にしか見えませんが……あら、不思議な模様が見えますのね、それは貴方の国の装飾なのかしら」
「一応、人です。姫さま」
「装飾じゃないんですが…ルイズさんの紹介の通り、人修羅と言います」
人修羅は床に正座して、アンリエッタに一礼した。
「ふふ……ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね。人を使い魔にするなんて聞いたことがないわ」
「私も驚いてます…」

アンリエッタは人修羅に向き直ると、笑顔を見せる。
「使い魔さん」
「はい?」
「わたくしの大事なおともだちを、これからもよろしくお願いしますね」
そう呟いて、すっと左手を差し出した。
手の甲を上に向けている…これはいったいなんのジェスチャーだろうか?
ルイズが驚いた声で言った。
「ひひひ姫さま!使い魔にお手を許すなんて!」
「いいのですよ。使い魔とメイジは一心同体、この方もわたくしのために働いてくださるのです、忠誠には、報いるところがなければなりません」

人修羅は後頭部を掻いて、申し訳なさそうに視線を下げた。
「すまないが…お手を許すって、どういう意味なのか解らない。ルイズさんから教わっているが、まだハルケギニアに来て間もないので」
ルイズは人修羅の隣に移ると、小声で囁く。
「ええと、お手を許すってことは、キスしていいってことよ。砕けた言い方をするならね」
「キス!?……ああ、手にか、手だよな? びっくりした」
「あんた何想像してるのよ!」
人修羅はルイズに頭を叩かれ、いてっ、と声を漏らした。
その様子がおかしかったのか、アンリエッタはにっこりと笑っていた。それは民衆に見せるような…いわゆる営業スマイルとは違っていたかもしれない。


◆◆◆◆◆◆


人修羅が『風習の違い』という事で、手の甲へのキスを遠慮すると、ルイズは気を取り直してアンリエッタに向き直った。
「では、明日の朝、アルビオンに向かって出発するといたします」
「ウェールズ皇太子は、アルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞き及びます」
「了解しました。以前、姉たちとアルビオンを旅したことがございますゆえ、地理には明るいかと存じます」
「旅は危険に満ちています。アルビオンの貴族たちは、あなたがたの目的を知ったら、ありとあらゆる手を使って妨害しようとするでしょう」


二人の会話を聞いていると、人修羅はテレビで見た皇室の様子を連想する。
よくもまあ、尊敬語とか謙譲語とかで、すらすら会話ができるもんだ…


アンリエッタは机に座り、ルイズの羽ペンと羊皮紙を使って、さらさらと手紙をしたためていく…。
人修羅はその間、気絶したマリコルヌとギーシュをどうしようか考えていたが、いつの間にかルイズとアンリエッタの会話は終わっており…アンリエッタを見送るついでに、二人を部屋に放り込んでおくことにした。


◆◆◆◆◆◆


朝もやの中で、人修羅は季節はずれなコートを身に纏って、ルイズとギーシュが馬に鞍をつけるのを見ていた。
人修羅のコートはオールド・オスマンが用立ててくれたモノで、中にはいくつものポケットや留め具があり、武器や道具を仕舞っておくことができる。

マリコルヌは、早朝にたたき起こし、誰にも喋らないようしっかりと注意しておいた。
まあ、下手をすると戦場を突っ切るかもしれないと理解していたので、マリコルヌはこの任務に付いてこない気だった。
今頃は部屋で二度寝しているだろう。

『それにしてもアルビオンか、相棒、やりすぎて地面を割るなよ』
背かからデルフリンガーが声をかけてきた。
「そこまでしないよ。…たぶん。…おそらく」
人修羅は自信なさげに答えた。
試したことはないが『地母の晩餐』を全力で放てば、大陸ぐらいは崩壊するのではないだろうか。
もし浮遊する大陸で大技を使ったら、どれだけの命が巻き添えになるか想像もできない。
ちなみに人修羅は、馬を借りず、自分で走る予定だ。

そんなとき、ギーシュが、困ったように人修羅へと言った。
「お願いがあるんだが……ぼくの使い魔を連れていきたいんだ」
「ヴェルダンデか? 確か、ジャイアントモールだよな…地面を掘って付いてくる気かよ」
「あんたの使い魔ってジャイアントモールだったの?」
ルイズがそう呟くと、地面がもこもこと盛り上がり、巨大なモグラが姿を現した。
大きさは小さいクマほどである。
「そうさ!ああ、ヴェルダンデ、きみはいつ見ても可愛いね。困ってしまうね。どばどばミミズはいっぱい食べてきたかい?」
嬉しそうにヴェルダンデが鼻をひくつかせる、するとギーシュは頬を寄せて頭を撫でた。
「そうか! そりゃよかった!」
そんな様子のギーシュに、ルイズは呆れたように呟く。
「ねえ、ギーシュ。ダメよ。その生き物、地面の中を進んでいくんでしょう?」
「そうだ。ヴェルダンデはなにせ、モグラだからな」
「いくら早く掘り進めても駄目よ、わたしたち、馬で行移動するし、目的地はアルビオンなのよ」
ルイズがそう言うと、ギーシュは地面に膝をつき、ヴェルダンデと見つめ合う。
「お別れなんて、つらい、つらすぎるよ……、ヴェルダンデ……」

そのとき、ヴェルダンデは鼻をひくつかせ、臭いを辿るようにしてルイズに擦り寄る。
「な、なによこのモグラ…ちょ、ちょっと!」
巨大モグラはいきなりルイズを押し倒すと、鼻で体をまさぐり始めた。
「や! ちょっとどこ触ってるのよ!」
ルイズは体をモグラの鼻でつつきまわされたが、すぐに人修羅がヴェルダンデを引きはがした。
「こらこら、何をするんだ、いきなり。 …なに?良いにおいがした?」
ギーシュはそれを聞いて、納得し頷いた。
「なるほど、ミス・ヴァリエールの指輪に惹かれたんだろう。ヴェルダンデは宝石が大好きだからね」
「解ったから、今度は押し倒す前に止めような! ルイズさん大丈夫か」
「だ、大丈夫よ。ちょっとビックリしたけど。ギーシュ!あんた使い魔のしつけはちゃんとしなさいよね」
「はははごめんごめん。ヴェルダンデは愛らしくて、つい叱るのを忘れてしまうんだ」


うー、と犬のように唸るルイズ。
嫌みのない笑みでヴェルダンデを撫でるギーシュ。

人修羅はそんな二人組みを見て、呟いた。
「大丈夫かこのメンバーで」


バサッ


「ん?」
離れたところから聞こえる羽音に気が付き、人修羅が辺りを見回す、すると、グリフォンに乗った貴族がこちらへ近づいてきていた。
「ルイズさん、ギーシュ、誰か来たぞ」

ギーシュは驚いて杖を抜き、グリフォンを見た。
ルイズも驚いていたが…その様子はギーシュとは違っていた。

グリフォンをルイズ達の手前に下ろすと、その貴族は帽子を取って声を発した。
「僕は敵じゃない。姫殿下より、きみたちに同行することを命じられてね。きみたちだけではやはり心もとないらしい。しかし、お忍びの任務であるゆえ、一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたってワケだ」
灰色の頭髪、蓄えられた髭、長身……非の打ち所のない貴族であった。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」
口を開きかけたギーシュは、相手が格上の存在だと知って、慌てて頭を下げた。
魔法衛士隊は王族の親衛隊でもあり、トリステイン全貴族の憧とも言える存在であった、それはギーシュにとっても例外でない。

「ワルドさま……」
ルイズが、震える声で言った。
「久しぶりだな! ルイズ! 僕のルイズ!」

人修羅はぽかーんと口を開けて、ワルドと名乗る男の台詞を聞いた。
僕のルイズ!という台詞はなんか犯罪的だ。
ワルドは人なつっこい笑みを浮かべると、ルイズに駆け寄り、軽々と抱え上げた。
「お久しぶりでございます」
ルイズは、頬をピンク色に染め、ワルドに抱きかかえられている。
「相変わらず軽いなきみは! まるで羽のようだね!」
「……お恥ずかしいですわ」
「彼らを、紹介してくれたまえ」
ワルドはルイズを地面に下ろすと、再び帽子を目深に被った。
ルイズは緊張しながら、ギーシュと人修羅の二人を紹介する。

「きみがルイズの使い魔かい? 人とは思わなかったな。ぼくの婚約者がお世話になっているよ」
ワルドは気さくな感じで人修羅にに近寄った。
「あ、どうも…って、婚約者でしたか。」
人修羅は苦笑いを浮かべた、ワルドはその様子を見るとにっこり笑い、ぽんぽんと肩を叩いた。
「どうした? もしかして、アルビオンに行くのが怖いのかい? なあに! 何も怖いことなんかあるもんか。この僕がついているさ」
そう言って、ワルドは笑う。

そんな様子を見て……人修羅は、心の中の叫びを口に出さぬよう、必死で我慢し続けていた。

僕のルイズ?
婚約者?

つまり…

ロ リ コ ン だ ー !



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