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Zero May Cry - 04


Zero May Cry - 04


 やがて朝食を食べ終えたルイズは自室へ戻ってくると、窓際から外を眺めているネロを目にした。
 ホントは気遣いの言葉の一つでも投げかけてやりたいのだが、やはり彼女の性格がそれを邪魔する。

「ど、どう? 少しは反省した?」

 ああ、やっぱりこういうことしか自分は言えないのか―――。

 ルイズは口を付いて出た言葉を思わず呪った。
 もしかしたら、片腕を怪我して使えぬ男に雑用をさせているという負い目が彼女の心の中にあるのかも知れなかった。

 しかし、ネロの返答はルイズの思わぬものだった。

「飯は食ったのか? 次は授業じゃないのか?」
「え―――」

 彼の口から出たのは、恨みや皮肉ではない。
 ルイズを気遣う言葉であった。

 ネロの言葉に、束の間の間呆気に取られていたルイズだがすぐにいつもの調子で喋りだす。
 それでも、なるべく言葉に棘が出ないように気をつけて。

「あ、う、うん。そうよね。次は授業なんだけど、使い魔には教室まで見送りに来るのが普通なの」

 いつもより大人しい感じになったルイズを見て、ネロは思わず唇を笑みに歪めた。
 そのネロを見てルイズはまたからかわれたような心境になり、ぷいと背中を向けて言った。

「早くしなさい! ホントに遅刻になっちゃうから!」
「やれやれ……」

 最早、ここまでくると慣れたな……とばかりにネロは笑みを崩さずルイズの後について行った。








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「へぇ……。結構広いな」

 教室へ辿り着いたネロが開口一番に言ったのがその台詞だった。
 ルイズには知る由も無いことだが、この学校の教室を見てネロは、何となくフォルトゥナの劇場内部を思い出していた。

「無駄口叩いてないでさっさと席に着きなさい」

 ルイズに背中を押されたネロはおどけたようにルイズへ言う。

「何処が俺の席なんだ? 悪いけど俺は授業に出るのは初めてでね」
「私の隣よ! 早く来なさい!」

 そう言ってネロの前を歩き始めたルイズを見てネロは最早何度目か分からぬため息をついた。

「どうでもいいけどよ、何で俺まで授業受けなきゃならねぇんだ?」
「あんたは人間だから。ホントは使い魔は外で待ってるんだけど、特別よ」
「俺としちゃ、外で待ってるほうが良かったぜ………」

 ネロはそう言うと周りを見回した。そこいるのは個性豊かな生徒達。しかしその殆どがこちらに向かって好奇の目を向けている。
 その中のいくつかの視線に対してネロは、お得意の睨む様な視線を返した。するとその誰もが思わず彼から目を逸らした。当然と言えば当然かも知れないが。
 それに満足したのか、ネロは彼らに向かって小さく笑うと、再び前を向いた。その横ではルイズがネロから睨まれなかった何人かの幸福な生徒にヤジを飛ばされている。

 そうこうしている内に、教師と思われる物腰の柔らかそうな中年の女性が教室へと入ってきた。
 ルイズへヤジを飛ばしていた生徒達も一旦口を閉じる。

 その後ルイズと教師の女性にマリコルヌと呼ばれた少年による唾棄すべき口論があったが、それ以外はなんの支障もなく授業は進められた。

 とは言っても、ネロにとってはそれらのことは全て興味の範疇外であり、彼は当然の如く授業を聞きはせずに、何とはなしに腰の銃――ブルーローズという名のネロの愛銃だ――をホルスターから引き抜くことなく弄んでいた。
 そんな彼の耳には「属性」「錬金」などの単語が届いていたが、勿論気にも留めない。

 だが、突然ルイズが立ち上がって壇上へ向かって行き、それと同時に周りの生徒が騒がしくなると流石のネロも「何が起こったのか」と周りを見る。
 生徒達の顔は一様に焦りと不満の色が見て取れる。それを目にしてネロは訝しげに首を傾げた。

「おいおい、何かヤバい事でも起こるってのか?」

 冗談混じりに呟き、ネロはふと視界の隅に教室を出て行ってしまう青い髪の少女を捉えた。手には大きな杖を持っている。
 その少女の後を追おうとネロが席を立つのと、ルイズが壇上でルーンを唱えて杖を振り下ろすのはほぼ同時だった。

 瞬間、ネロの耳に轟音が響き、視界は眩い光で覆われた。そんな中でも本能的に回避行動を取れたのは流石と言えよう。

 ネロは弧を描くように大きく跳躍し、突然起こった原因不明――勿論そう思ったのはネロだけだったが――の爆発を避けると同時に壇上の近くへ降り立った。
 爆発は壇上を中心として起こった。ネロは思わず嫌な展開を想像したが……。

「……何だよ。自分でちゃんと立ってるじゃねぇか」
「あ、ネロ」
「何呆けてんだよ。大丈夫かよ? ボロボロじゃねぇか」

 ネロの言う通り、今のルイズの外見は酷い。服は破け、顔は埃で汚れている。ニーソックスも穴だらけだ。
 だが今の爆発の中心地にいながら外傷は殆どない。普通に考えれば奇跡に近かったが、ネロはルイズのなりをみて不謹慎にも笑ってしまった。

「ヒデェな、そのカッコ。まるで悪魔に襲われたみてぇじゃねぇか」
「うるさいわね! ちょっと失敗しただけよ!」

 と、ルイズがそうネロに反発すると―――。

「何がちょっとだよ! いつもこうじゃないか!」
「ゼロのルイズ! 魔法が成功した例なんてゼロのくせに!」

 そのヤジを聞きながら、ネロは隣のルイズへちらりと視線を送った。その顔は平静を保っているいるが、それが見せかけなのは明らかだった。
 ネロは何も言わずに、ルイズの側で目を回しながら倒れている教師の女性へ歩み寄って彼女を介抱をしたのだった。








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 その後、ルイズは己の不始末の処理をさせられていた。無論、滅茶苦茶になってしまった教室の片付け、掃除、他多数といった事である。
 そして黙々と片づけをするルイズの側には、こちらもまた黙々と掃除をするネロの姿があった。片腕を使えぬ身なりに努力して箒を操っている。

 二人の間に沈黙の時間が流れていく。

「………なんで何も言わないの?」

 不意にルイズが口を開く。その口調は言い知れぬ負の感情が感じられる。
 ネロはそんな彼女の方を見向きもせずに答えた。

「くだらねぇ無駄口聞く暇があったら掃除した方がいいだろ?」
「……………………」

 最もな意見だった。口を動かしながら手を動かすよりも手だけを動かした方が物事の効率は良いだろう。
 しかし、今のルイズが聞きたかったのはそんな現実論ではない。

「まだ………!」
「……………?」

 急に声が震えだしたルイズの方を見やるネロ。その顔には面倒事を嫌がる雰囲気は出ているがルイズに対する嫌悪や侮蔑はない。
 しかし当のルイズは顔を俯かせたまま呪いのように言葉を紡いでゆく。

「まだ馬鹿にしてくれた方がいいわよ……! まだ笑ってくれた方がいいわよ……! どうして……どうして、何も言わないの……!?」
「……何言ってんだ? お前」

 ネロは相変わらずの調子で答える。
 その一言でついに激昂したのか、ルイズは顔を上げてネロへ叫んだ。

「そこまで言わせたいの!? いいわ、言ってやるわよ! 私の二つ名は『ゼロ』! そう、魔法が一度も成功しないからゼロ! あんたも他の奴ら見たくゼロゼロ言えばいいじゃない! 普段偉そうなくせに魔法も使えないのかって!!」

 自暴自棄に叫ぶルイズを見て、ネロはまたもため息をついた。

 ―――この嬢ちゃんに会ってからため息ばっかだ。幸せが逃げちまうな。

 そんな場違いな事を考えながら、ネロはルイズから視線を逸らしつつ語り始めた。

「魔法が成功してないなんて、誰が言ったんだ?」
「え……」

 ネロの思わぬ質問に言葉を詰まらせるルイズ。目元を擦りながら彼女は逆にネロに尋ねた。

「……どういう意味よ……?」
「これだけの爆発を起こしたんだぜ? このザマ見て魔法が失敗したなんて抜かす奴は相当な間抜けか、只の木偶の坊だ」
「でも私は錬金をやろうとしたのに爆発させちゃったのよ!? 何時もそう! 爆発じゃなくてちゃんとした魔法をしようとしてるのに……!」
「じゃあお前は錬金なんてしなきゃいい。別に錬金が出来る奴が特別偉いわけじゃないんだろ?」
「でも私は他の事もできない! 空を飛ぶ事も出来ないし……!」
「じゃあこう考えろ。今さっきこの学校に悪魔が襲って来ました」
「何言ってんのよ! 悪魔なんている分けないでしょ!」

 突然ネロが悪魔と言うワードを出したのでルイズは思わず口を挟む。
 しかしそれでもネロは構わず続けた。

「お前はその爆発する魔法で襲われた先生や友達を助けました。そのまま悪魔の群れもやっつけてお前は学園のヒーローになりました」

 その言葉を聞いていたルイズは変わらないぶすっとした表情を見せている。
 しかしそこに負の念はない。先ほどとは違って純粋に子供が拗ねているような顔になっている。
 そんなルイズを見ながら、ネロは微笑して続ける。

「お前は錬金とかが出来なくても、その魔法がありゃもっとスゲェ事が出来るぜ。それこそ悪魔狩りとかよ」
「………うれしくない」
「ハッ。そう言うなよ。これだけの爆発が起こせりゃそこら辺の悪魔共は一発だ。偉そうな顔してる悪魔野郎にもイイ気つけになるだろうぜ」
「偉そうな顔してる悪魔ってなによ……」
「そうだな。体中から炎を出してる暑っ苦しい四本足のでっかい怪物とかか?」
「……もういいわ。嘘か本当かわかんなくなって来たから」
「オイオイ。全部ホントだぜ?」

 ルイズの顔に普段のふてぶてしさが戻ってきたのを感じ取ると、ネロはおどけたように笑った。
 やがて、教室の片付けもあらかた終了する。

「さて、じゃこれから昼食にしましょう」
「いいねぇ。流石はご主人様だ。気が利くな」
「偉そうな口聞いてるとまたご飯抜きにするわよ」

 その一言にネロはかぶりを振って苦笑いした。

「何が不満なんだよ? ちゃんとご主人様って言ったぜ?」
「もっと私を敬いなさい」

 それだけ言って教室から出て行くルイズの背中をネロは追う。ルイズは紅潮している己の顔をネロに見られたくなかったのだ。
 ネロはネロなりに自分を慰めようとしていた―――そんな思いがルイズの胸中に広がってゆく。

 対してネロはルイズの小さな背中を見つめながら思う。

 ―――こんな感じの光景を目にするのも、もう何回目かわかんねぇな。

 顔に浮かべた苦笑いを何時もの仏頂面に変えながらも、心の中では彼は笑っていた。

 その時彼は、自分でも何故か分からないほどに彼女に優しくしている己がいることに気づいて、首を傾げた。








―――to be continued…….


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