あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

重攻の使い魔-01


第1話 『赤き人形』


 透き通ったさわやかな青空の下、トリステイン魔法学院の校庭では本日幾度目かの爆発が起きていた。爆発の原因となっていると思われる少女は諦めずに再度声を張り上げる。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ!」

 必死になるルイズとは裏腹に、周囲にいる生徒達の反応は心底冷ややかなものだった。ルイズを指差しこそこそと笑う者、悪意を隠そうともせずに侮辱する者、どうでもいいとばかりに文句を言う者。この場にルイズの味方はおらず、彼女は孤独だった。
 ルイズの必死の思いを裏切るようにまたしても魔法は失敗、爆発し周囲は灰色の煙に包まれる。今までの爆発に比べて一際大きな爆発だった。油断していたために煙を吸い込み、咳き込む生徒達からは抗議の声が聞こえてくる。

「いい加減にしろよ! 失敗するのはいいけど俺達を巻き込むな!」
「これからはゼロのルイズじゃなくてマイナスのルイズって呼んだ方がいいな……ゲホッ」

 爆風を間近で食らい、煤け乱れた髪を払いながらルイズは悔しさに唇を噛み締める。地面に爪を立て、その細い指が血に滲む。

「……どうして、どうして成功しないのよ」

 使い魔すら召喚できない貴族。普段から魔法の成功率は極めて低かったが、召喚の儀式すら満足にできないとは。これではメイジになる以前に問題外である。ルイズは己の余りの不甲斐無さにどうしようもなく惨めな気分に陥っていた。これまで決して他人の前では弱みを見せまいと努力をしてきたが、それも限界に達し、今にも泣き出しそうな表情になる。煙に覆われ、周囲から顔は見えなかったが、その煙も風に流され徐々に晴れていく。
 完全に煙が晴れ、ルイズが瞳を涙で潤ませながら顔を上げると、爆発で盆状に削れた爆心地には予想外なものが立っていた。

「……こ、これってもしかしてゴーレム?」

 そこには鮮やかな赤色を基調とし、見るからに厳つい体に幾何学的な模様が刻まれた、軽く2メイルを超える大柄な人形が佇んでいた。腕と思わしき所には見たこともない筒状の棍棒が握られている。
 人形は微動だにしないが、それは未だに契約がなされていないためかもしれない。ルイズの顔からは涙が消え、反対に日光を受けた蕾が花開くように明るくなっていく。

「やったぁ! こんな強そうなゴーレムを召喚できるなんて!」

 飛び跳ねながら全身で喜びを表現しているルイズとはうって変わり、先程まで文句を言っていた生徒達は一様に驚いていた。

「ウソだろ!? ゼロのルイズがあんなゴーレムを召喚できるなんて!」
「ちくしょう、なんであいつが!」
「ふん、ルイズが高位のゴーレムを使い魔になんてできるかよ」

 生徒達が嫉妬の声を上げるのは仕方の無いことだった。通常召喚される使い魔は生物であり、ゴーレムのような無機的なものを使い魔にすることは稀である。また、ゴーレムを召喚したとしても、精々が土くれの人形であり、今しがたルイズが召喚した精密に構築されたゴーレムを使い魔にするなど前代未聞である。修行中の身でも明らかな質の違いを感じ取ることはできた。

「あー、ミス・ヴァリエール。喜ぶのは構わないが早く契約の儀式を行いなさい。君の所で大分時間を食っているんだよ」
「あ、ハイ。すいません、今すぐやります!」

 頭の禿げ上がった40歳前後の教師に軽く注意され、ルイズは顔を引き締める。しかし体の中から湧き上がってくる喜びを抑えきることはできず、引き締めたはずの顔は微妙に歪んでいる。早く契約の儀式を行って使い魔にしよう。ルイズはうきうきとしながら赤いゴーレムへと近付く。と、そこでちょっとした問題にぶつかった。

「あの、ミスタ・コルベール。頭に背が届かないので私にレビテーションをかけてもらえますか?」
「仕方がありませんね。はい、これで届くはずですよ」
「ありがとうございます」

 コルベールが軽く杖を振るうとルイズの体はふわりと浮き上がり、大柄なゴーレムの頭(と思わしき部位)に届くようになった。ルイズはコモンマジックが使えないこともどこへやら、目の前のゴーレムを使い魔とできることに狂喜していた。早速杖を振るい、契約の呪文を唱える。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 ルイズがゴーレムの頭に口付けをする。ルイズがしばらく沈黙していると、おもむろにゴーレムの頭や体の各所にあるクリスタル状の物質がカッと光り輝いた。

「きゃっ、なになになに!? ぅおえっぷ!」

 ルイズがきゃあきゃあと騒いでいると、次はゴーレムの体中から白い蒸気が吹き出した。その蒸気をまともに受け、ルイズは咳き込んでしまう。しかしそれも短時間のことで、すぐにゴーレムの異常は収まり、クリスタルの輝きも落ち着いた光度になった。

「サモン・サーヴァントは何度も失敗したけど、コントラクト・サーヴァントはしっかりと成功させたね」

 コルベールは嬉しそうにうんうんと頷いた。出来の悪い子ほど可愛いとはよく言うものである。

「マジかよ……。ルイズが契約まで成功させやがった」

 一方、生徒達にはまたしても大きな衝撃が走ったようであった。今まで下に見ていた人間が大きな成功を収めたことに同様を隠し切れないのも無理からぬことかもしれない。

「ちょっと失礼するよ。ルーンのスケッチを取るからね。……ふむ、珍しいルーンだな」

 さらさらと簡単にスケッチを取ると、コルベールは教室に戻るよう生徒達に号令をかける。生徒達は一斉に浮かび上がり、教室の方向へと飛び去っていった。幾人かの生徒は去り際にルイズへ侮辱の言葉を吐いていく。

「ルイズ! お前は歩いて帰ってこいよ!」
「ちょっとばかりいい使い魔を手に入れたからって思い上がるんじゃないわよ!」

 生徒達が全員立ち去り、校庭にはルイズとゴーレムがぽつんと立つだけになった。今のルイズにとって、負け惜しみの中傷など何の痛痒も与えるものではなかった。自分はこんなにも立派な使い魔を手に入れたのだ。

「名前を付けてあげたい所だけど、早く教室に戻らなくちゃね。ね、あんた、私を乗せて教室に連れて行きなさい」

 そう言うと、ゴーレムはルイズの小柄な体を軽々と持ち上げ、その太い左腕に腰掛けるように乗せた。そこでゴーレムの動きが止まった。ルイズがどうしたのかと怪訝に思うと、具体的な指示を出していないことに気付いた。

「私が指示するからあんたは言うとおりになさい。とりあえずあの棟に向かってちょうだい」

 するとゴーレムが歩くでもなく、地面をすべるように移動し始めた。かなりの速度が出ているようで、風を切る音が耳を叩く。もしかしたら自分は今まで誰も手に入れたことのない使い魔を召喚したのかもしれない。ルイズは見た目に反して軽快な動きを見せるゴーレムを見下ろしながらそう思った。




 この日、ルイズが召喚した赤いゴーレムの正確な呼称は高性能光学兵器装備重攻機体であり、かつて世界中の戦場で伝説と恐れられた特殊重戦闘VR大隊に配備されていたHBV-05の後継機。HBV-502、通称ライデンと呼ばれる機体だった。


新着情報

取得中です。