あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Zero May Cry - 02


Zero May Cry - 02


 やがて学園の一通りの説明が終わり、ネロはルイズの部屋へ案内された。部屋の内装を見てネロは一言、「悪くないな」と呟く。
 二人は部屋に置かれている小さめの机を挟んで椅子に腰掛けた。ネロの方は行儀悪く大きく脚を投げ出している。

「アンタねぇ………」

 そのネロの態度を見かねてか、ルイズは可愛らしい眉をヒクヒクと震わせながら怒りを押し殺した声で言った。

「ご、ご主人様の御前なのよ……? ももももう少しまともな態度は、とと、取れないの……!?」
「おいおい声が震えてるぜ? 何か怖いものでも見たのか?」
「スッゴイ腹立つものなら今目の前で見てる!」

 ダン!と大きな音をたててルイズは立ち上がると、まるで世も末と言いたげな表情で頭を掻き毟る真似をした。

「あぁ~もぅっ! 何で私の使い魔がこんな傭兵みたいな人間なのよぉ~! ドラゴンとかグリフォンとかもっとカッコイイのがよかったぁ~!」
「別にいいじゃねぇか。あんな化け物みたいなのよりか俺の方がまだ可愛げがあるだろ?」

 そう言いながらネロは昼の儀式の時に目にした他の生徒達の使い魔を思い出していた。
 中には浮遊する目玉のような生き物もいたはずだ。あんなのに比べたらまだ自分の方が見栄えはいいと、そう言い切る自信がネロにはあった。
 確かにネロは、そこいらの美男子、美形の男性と比べても整った顔立ちをしていると言えるだろう。
 しかし悲しいかな、ルイズにとって今重要なのは使い魔の顔などではなくその種族や風格だった。

「何つまらない冗談言ってるのよ!!」
「冗談じゃないぜ? あの化け物の集まりよりか俺の方が全然イイ男だ。顔見たらわかるだろ?」
「………………………もういいわ。とにかく、今はもっと別の事を話さなきゃだし」

 そう言ってルイズは力なく再び椅子に腰掛けた。真面目な顔つきになり、ネロへ質問をぶつける。

 それからは、ネロにとってもルイズにとってもウンザリする程の質問タイムだった。



「ハルケギニアも、トリステイン魔法学校も知らないですって?」
「ああ。そんな地名俺のいた国だと聞いたこともないな」
「呆れた……どんだけ田舎なのよ、アンタの国……」
「そっちが田舎なんじゃないのか? でもまぁ雰囲気はフォルトゥナと似てるな」
「だからそのフォルトゥナって何処の国よ? 絶対そっちが田舎よ」

 ここまで話を聞いて、ネロは己の心の中に段々とある疑問が湧き上がるのを感じていた。
 確かに雰囲気自体はこの国はフォルトゥナに似ている。
 だが………。

 だが、何かが違う。自分がここにいる、その事実が何か違和感を覚えるような感覚。

 そんな疑問を抱えながら、ネロはルイズとの問答を続けた。

「で、アンタはそのフォルトゥナって国で騎士をやっていたの?」

 そう言ってルイズはネロの身なりを確認する。とてもではないが、ルイズ達が知る騎士《ナイト》には見えない。
 ルイズの疑うような視線を気にせず、ネロは続けた。

「ああ。魔剣教団っていうクソみたいな連中に混ざって、俺も踊らされたのさ」

 突然自嘲気味に語りだすネロを見て、ルイズは訝しげな視線を彼に送った。

「………そこで何かあったの?」
「………別に。何でもねぇよ」

 ネロは脳裏にあの教皇の顔を浮かべ、吐き捨てるようにルイズに言った。

「お前も気をつけろよ。普段ニコニコしてるような奴が、裏で何を考えてるかなんて分かりゃしねぇんだからな」
「え? それって……どういう事よ?」
「……何でもねぇ。質問の続きだ。俺はとにかくそこで騎士をやってた」

 そこで一旦言葉を切り、ネロは未だに釈然としない様子のルイズに向かって珍しく真剣な視線を向けた。

 そして、こう切り出す。

「悪魔って信じるか?」
「あ、悪魔………?」

 その言葉を聞いて、ルイズは目を丸くした。彼女の常識では悪魔など空想の生き物で、それこそ本の中でしかお目にかかれない存在だ。
 突然飛び出した場違いな単語に、ルイズはフンと鼻を鳴らしてネロに答えた。

「何言ってるのよ。悪魔なんて実在するわけ無いでしょ。笑わせないでよ?」
「そうか…………」

 ルイズのその返答に、ネロの中での疑問は確信へと変わった。


 ―――悪魔を知らない―――


 それは、ネロの住む世界においてはとても重要な事だった。
 ただ普通の人間として暮らしているのならばともかく、ルイズのように“魔”法を扱う人間ならば一度は目にしていてもおかしくはない。
 魔法という人にあらざる力を行使する人間には、やがて人にあらざる訪問者が訪れる。

 それがこの国の人間―――いや、この世界の人間にはない。

「どうしたの? 何か悪魔に思い入れでもあるの?」
「いや……。どうやら、俺はとんでもない勘違いをしてたらしい」
「………?」

 ネロが放ったその一言に、首をかしげるルイズ。

「どういう事? 勘違いって………」
「俺はこの国が俺の住む国とは別の国だと思ってた」

 ネロの言いたい事が理解できずに、ルイズは怪訝な表情のまま彼の言葉を聞いていた。
 そのネロ本人は不愉快極まりない、と言った表情で続ける。

「この国は、俺の住む“世界”とは別の“世界”の国らしい」
「は…………?」








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「異世界………」
「ああ。悪魔を知らない世界なんて聞いたことないぜ」
「そ、そんな………」

 ルイズは愕然とネロの言葉を聞いていた。
 悪魔の実在する世界。悪魔狩りを生業とするネロの組織。人々を救った伝説の悪魔の存在。
 そのどれもがルイズにとっては御伽噺だった。しかし目の前にいる青年が嘘をついているようには見えない。

「じゃ、じゃあ……あんたは悪魔を相手に戦いをしてたっていうの?」
「そうだ。……何だ、少しビビっちまったか?」
「そ、そんなことないわよ! それに、この世界には悪魔なんて存在するわけないんだから!」

 顔を赤くして反論するルイズを見てネロは薄く笑った。

「そりゃ平和なことだぜ。まっ、俺なんかは廃業になっちまうけどな」
「はぁ。もういいわ。とにかく……あんたにはこれから私の使い魔として暮らしてもらわなきゃならないんだから」

 その一言に、ネロは己の今後を想像してため息をついた。

「……なんでため息をつくのよ」
「何でもないって。それより、その使い魔は何をしなきゃならないんだ?」
「そうね、使い魔には主人の目となり耳となる能力が与えられるんだけど……言ってみれば感覚の同調ね」
「そうなのか? でも俺は何も感じないぜ?」
「うん……まぁ普通の人間だし、それは期待してなかったけど」
「へっ。それで、次は?」

 相変わらず不遜な態度のままのネロに、ルイズは怒りを覚えつつもそれを押し込めて口を開いた。

「次は秘薬の材料なんかを取ってきたりしてもらうんだけど……それも無理よね」
「その材料ってもんを知らなきゃ取ってくるもクソもないぜ」
「そうよね……あーぁ」
「そう暗い顔すんなよ。次ぐらい役に立てるかも知れないぜ?」
「何であんたはそんなに気楽なのよ……。でも確かにあんたが役に立つのは次くらいかな」

 そう言うとルイズは腕を伸ばしてネロの顔の前に手を持っていき、そこで人差し指を「ビシィッ」とばかりに突き立てた。

「最後になったけど、これが一番大事。主人の護衛よ。使い魔は主人を護らなきゃならないの。あ、あと雑用も」
「護る、か………」



 護る。誰かを護る。

 ネロは、この言葉の意味の重さをよく知っていた。
 誰かを護ると言うのはとても難しい事だ。どれだけ強力な力をその身に宿していようと、大切な誰かに危害を加えようとする「敵」を見分ける事も出来なければその大切な人を護る事など出来ない。

「今度のお姫様は、随分と小さなお姫様だな」
「お姫様……って!」

 突然目の前の男が思いもしなかった言葉を口にして照れると同時に怒り出すルイズ。
 お姫様と言ってくれるのは嬉しいが小さいとは聞き捨てならない。

「ちっ、ちちち、小さくて悪かったわね! ど、どどっ、どうせあんたはどこもかしこも大きいのが良かったんでしょ!」
「何勝手に一人で意味の分からねぇこと言ってんだ? 俺は“お姫様”にしては随分と小さいって言ったんだぜ? 誰もお前が小さいなんて言ってねぇよ」

 露骨に顔を赤くするルイズを見てネロは思わずつられて笑ってしまった。

 しかし、そんな彼も心の中では大きな決心をしていた。


 ―――キリエ。ゴメン。何時になるか分からないけど必ず、帰るよ。必ず。だからそれまでは―――


 ネロは目の前でしどろもどろになりながら怒っているのか照れているのかよく分からない態度を見せる少女を見やる。

「ハハッ。こりゃお姫様じゃなくて子猫ちゃんか?」
「だだだだ、黙りなさい!! そそそれ以上主人に無礼な態度は、ゆゆ許さないわよ!!」


 ―――俺はこの小さな姫を護る騎士《ナイト》になろう―――








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「それじゃ私はもう寝るわ。色々疲れたし」
「そうしろそうしろ。俺も昼寝の途中だったから眠いぜ」

 ネロによるルイズの弄りも終わると、二人は色々と疲れも溜まっていたのでそのまま就寝することにする。
 そんなルイズはネロの目の前で服を脱ぎ始めた。その様に流石のネロもその顔を僅かに赤らめ、視線を逸らした。その姿は普段の斜に構えた皮肉なネロとは、また随分とかけ離れていた。

「おっ、オイ。人の目の前で服なんか脱ぐなよ」
「人って……あんたは使い魔でしょうが」
「そういう前に俺は男だぞ? 恥ずかしくないのかよ………」

 そう言ってネロは部屋の扉へ向かった。彼のその行動を見て驚くルイズ。

「ちょ、ちょっと何処に行くのよ!?」
「廊下で寝るよ。女と一緒の部屋で寝るわけにもいかねぇしな」
「な、何をそんなに気にしてるのよ。別にいいじゃない」
「………お前が良くても俺が良くないんだよ……」

 ネロは天を仰ぐように顔を上に上げ、ため息と共に左手で己の額を押さえた。
 そんなネロを見てルイズは何とか彼を引き止めようと声を上げる。

「だ、だって……その……とにかく! 私が部屋で寝ていいって言ってるんだから部屋で寝なさいよ!」

 随分とキツい物言いだがこれでもルイズはルイズなりにネロを気遣っているのだ。
 使い魔とは言えまさか人間を廊下で寝かすわけにもいかないと考えているのだろう。

 ―――しかし彼女の場合はその性格が災いして素直にその事を伝えられないのだが。

「………やれやれ、俺のご主人様も困ったもんだぜ……」
「……何よ。文句でもあるの?」
「仰せの通りにしますよ、ご主人様」

 そう言ってネロはなるべくルイズが視界に入らないような位置を陣取った。
 恐らくネロはルイズが言わんとした事を悟ったのだろう。彼女の精一杯の気遣いを無下にするのも気が引ける。ネロは大人しく部屋で寝る事にしたのだ。

 だが。

「それじゃ、これ洗濯しておいてね」
「いっ!?」

 突然眼前にルイズの服(しかも脱ぎたて)が放り投げられ、思わずネロはそれを叩き落とした。中には女性のパンツも見受けられる。
 しかしそんなネロの態度を目にしたルイズはまたも大声を上げてしまう。

「なっ! ななななんてことするのよ!! 主人の服を叩き落すなんて!」
「お前がいきなり投げつけるからだろ!? もうちょっと気の利いた渡し方を知らねぇのかよ!」
「もも、もういいわよ! とにかくそれ洗濯しといてよ!」

 それだけ言い放ち、ルイズはベッドに横になった。そんなルイズを尻目に嘆息するネロ。

「……ったく、何で俺がこんな目に遭わなきゃならねぇんだよ……」

 ネロは散らばったルイズの服を足でどかしながら、そのまま横になった。
 とにかくこれからの事は明日考えよう、今はとにかく眠い―――。

「それと、朝起こしてね。服の用意もしといて」

 その一言を聞いて、ネロは小さく「Damn it……」と呟いた。
 しかしそんな悪態をついたのも束の間、そのままネロの意識は眠りの中へ落ちていった。

 こうして、ネロにとっての異世界での一日は取り合えず終わりを迎えた。








―――to be continued…….


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