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絶望の街の魔王、降臨 - 11


「……Contact.Two tangos in hallway」
「見回り?」
「うんにゃ。サボってだべってる」
「聞こえる?」
「おう。えーと……」
 デルフが代弁する。

『貴族が三人と平民一人か。怪しいな』
『貴族派に参加する傭兵では?』
『いや、流石に子供は連れていかないだろう。戦い慣れてそうな女がいたが、子供の方は論外だな』
『余計に訳が判りませんな。そう言えばマストを吹き飛ばした妙な大砲はどうなりました?』
『いや、皇太子殿下達が船員を取り調べているらしいが目ぼしい情報は……』

 突然、ジルが通路に躍り出る。
「へっ!?」
「てきしヴ……!?」
 延髄に踵を叩き込まれた空賊が意識を一瞬で手放し、反応が遅れた空賊は杖を抜こうとするが、首にデルフの切っ先を当てられ、断念する。
「貴様……何者だ?」
「質問するのはこっちよ。アルビオン王党派ね?」
「くそ……聞いていたのか?」
「最初から疑わしかったわ。粗野に振る舞ってたつもりかも知れないけど、あなたたちは空賊にしては高貴すぎたわ。まだ色々と突っ込みたいけど、取り敢えず本題に入ろうかしら」
 デルフを首から離さし、しかしジルはデルフを鞘に戻さない。
「それで、本題とは何だ?」
「私達はトリステイン王国の使者よ。アンリエッタ姫の命により、ウェールズ皇太子殿下への書状を持ってきた、ね」
「な!?」
 トリステインの使者。これが真実であれば大変な事だ。彼らは謀らずしてそれを監禁してしまったのだ。
「むう……」
「伝えておいて。あなた達のボスに」
 考えている貴族に背を向け、ジルは堂々と歩きだす。
「おい! どこにいく」
「牢に戻るだけよ。そろそろ、我が儘な御嬢様が痺れを切らす頃だろうから」
 貴族はその姿が通路の角に消えるまで、止める言葉を見つけられなかった。
 余談だが、デルフは初めて武器として使われた事に感動して静かに泣いていた、らしい。



「ただいま」
「戻ってきてどーすんのよ!?」
「んー……種を撒いてきた?」
「何のよ。まったく」
 牢に戻ってくるなり騒がしいルイズを軽くあしらい、隅に座り込むジル。対角にはギーシュとロングビルが寝転がって、片方は唸り呻き、片方はいびきをかいている。
「で、何があったの?」
「果報は寝て待つものよ。すぐに判るわ」
 腕を組み、眼を閉じる。数分もしないうちに寝息をたてはじめた。
「……真似できないわね。どうしようかしら」
 牢の扉は開いている。しかし出てしまえば危険。こちらには装弾数二発のデリンジャー。しっかりジルに騙されたが、魔法の起爆装置たる杖は奪われたまま。どうやってガードしろと?
 今できる最善は、デリンジャーの装填練習くらいか。器用ではないにしても、開いて出して入れて閉じる、これだけの動作。器用不器用の問題では……
「あれ?」
 ポロポロと落ちる45Magnum弾。
「た、弾が悪かったのよ」
 拾い上げ入れ直すが上手く入らない。
「こ、これもだめみたいね……」
 装填にこうもくそもないのだが。
「ふぬ!」
 焦る、いや、苛ついている。
「こなくそ!」
 イライラが筋肉に変わりつつある。
「イヨォー!」
 間抜けな悲鳴のような怒声を撒き散らし、しかしルイズはそれでもできない。
「すたぁ……きゃ!?」
「うるさい」
 頭を叩かれたルイズが、ヒュプノス第三形態に似た悪鬼の表情から一転、元の美少女の顔に戻り、可愛らしい悲鳴を上げた。
「バラバラとまあ、散らかして。リロードの練習?」
「う……そうよ! 何か文句ある?」
「深呼吸。落ち着きなさい」
「すー、はー」
「はい、ゆっくりと入れ直す」
 言われた通り、バレルに弾を入れる。
「入った……」
 先程まで弾の侵入を拒んでいたバレルは、今度はあっさりと銃弾を受け入れた。
「ね、焦りは禁物よ。緊張したら不器用になるでしょう、ルイズ?」
「な、なんでそれを!?」
「力みすぎ。入るのが当たり前なんだから」
 ピンと45Magを親指で弾き、空中で掴み、流れるようにデリンジャーに装填した。
「何でも全力でやろうとする意思は素晴らしいと思うけど、力の要る作業と要らない作業をちゃんと分別しないと。頭はいいけど、要領が悪いんだから」
「うう……」
 何も言い返せない。
「さて、そろそろかしら」
「何が?」
 突如のジルの言葉に疑問を返すルイズ。
「ウェールズ皇太子」
 外から複数の足音が聞こえてきた。



「は……」
 艦長室。そこにはルイズが知っている人物が二人いた。
「ワルド様、なぜここに……」
「君達の護衛をするようにと命令が来てね。先に着いてしまったから皇太子の手伝いをしていたのだよ」
「アンリエッタ姫の御命令ですか?」
「ああ、そうだ」
 デリンジャーに手が伸びる。しかし、それは届くことは無かった。ジルが囁いたのだ。
『泳がしなさい』
 その真意は判らない。黒幕を捕まえるためか、或いは現行犯で捕まえるか、もしくはそれ以外か。
「ということは、ここにおられるウェールズ殿下は……」
「まごうことなく、本人だ」
 視線の先には、微笑む金髪の青年。
「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。といっても、大陸の端まで追い詰められて空賊なんてこともしてるがね。ようこそ、大使殿。用件を伺おうか」
「あ……私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと申します。アンリエッタ姫殿下より密書を言付かって参りました。彼女は……」
「ジル・ヴァレンタイン。ルイズの衛士よ。よろしく、皇太子殿下」
 全く物怖じしせず、いつも通りの態度で接するジル。ルイズは冷や汗を流していたが、ウェールズはそれを全く気にしていなかった。ちなみに、ルイズが案じたのはジルの生死ではなく、ウェールズを肇とする貴族達の安否だった。攻撃されたら、ジルは容赦無く反
撃して殲滅するだろう。死なせはしないだろうが。
「よろしく、ミス・ヴァレンタイン」
 寛大な心は命を長らえさせる。その実例を見た気分だった。
 残りの二人、ギーシュとロングビルだったが、ギーシュはまともに動けない、ロングビルは王族に因縁があるらしく顔を出せない。牢にこもることになった。
「では、密書を」
 一礼して、ルイズは密書手渡す。花押に接吻し、封蝋を解き、読み進める。
「……結婚するのか、私の可愛い……従妹は」
 その顔は後悔とも怒りとも悲しみともとれない表情だった。
「了解した。しかし手紙はここには無い。ニューカッスル城にあるんだ。すまないが、城までご足労願えるかな」



 手紙はすぐに渡してもらえた。
「敵に奪われそうになったら、すぐに燃やすわ。その点、文句はないわね?」
 それはジルがアンリエッタに言った言葉と全く一緒だった。ジルにしてみれば、この場で即処分したいのだろうが、そうすれば手紙を取り戻した証拠もなくなってしまう。ルイズが言えば全く問題は無いのだが、敵が手紙をでっち上げた時に逃げる術が無い。トリステインから見れば、処分したとしてもどう処分したか判らない以上、偽物か本物か判らないのだから。
「ああ、判っている。アンリエッタを……トリステインを危険にさらすより遥かにましだからな。確かに返却したぞ」
 しかしウェールズはその提案を苦い顔をしながらも了承してくれた。
「あの、ウェールズ殿下、王軍に勝ち目はあるのですか?」
 無駄な質問だとは思っていたが、ルイズはせずにいられなかった。
「無いよ。こちらは三百、相手は五万。これだけの兵力差は……」
「あら、たったそれだけなのね。もう少し絶望的かと思ってたけど……」
「な!?」
 驚くルイズの声とは対照的に、ジルの声は余りにも暢気だ。まさに勝てるとでも言わんばかりに。
「たった? たったと言ったか。一人百五十人倒したとしても……」
「たった百六十七人。しかも普通の生物相手、完全に殺さなくても無力化できる。そしてこちらはこんな大きくて入り組んだ城にいるの、正面からぶつかる必要は無いわ。ゲリラ戦でひたすら相手の戦力を削り、疲弊させる。これなら、対等程度には戦えるわ」
「だが……我々の名誉は……」
「勝てる可能性を捨てて、自ら無駄死にを選ぶの?」
「ぐ……」
 反論できない。希望が見えてきた。それは勝てば名誉は保たれるが、敗ければ不名誉。究極の選択だった。
「あと、見せて貰いたい場所があるの。もしそこにあれば、できれば貰いたいわ」
 悩んでいるウェールズに、しかしジルは暇を与えない。
「どこだね。最早未来など無いこの城のものなら、何でも持っていくといい」
「ふふ……あなた達が生き残るために、いえ、勝つために必要なものよ」



 ルイズはジルについて行くことにした。そのジルは、ウェールズに案内されるまま城のあちこちにある宝物庫や倉庫を見て回り、なにやらガラクタらしきものを拾っては、どこの部屋にもある錆びた鉄の箱に入れていた。どうせガラクタではなく、今ルイズのスカー
トのポケットに入っているデリンジャーに類するものだろう。
 そんなことを繰り返しているうちに、ある部屋にたどり着く。そこの扉が開かれると、ジルの様子が変貌した。
「まさか……いえ、確かにこれも兵器には違いないけれど」
 そこには、硝子の筒に満たされた水に浮かぶ、禿頭の巨人がいた。



 ジルは城の全容を調べるために走り回っていた。気になることがあったのだ。
 石造りの城だが、構造は中世のそれと大差は無い。しかし、変なのだ。脈絡なく置かれている不自然な彫刻や装飾、やたらと曲がりくねった通路、建造されて以来開かないと謳われる扉、時折聞こえる足元からの反響音。
 そして何より、距離だ。部屋の四辺に比べ廊下がやけに長かったり、明らかにデッドスペースが多すぎるのだ。
「まるで、あの洋館みたい……」
 そこで気付く。『みたい』ではなく、『あの洋館』なのだ。ジルの脳内に投影されたマップは、デッドスペースにあるであろう部屋が一気に表示された。
「あった」
 床に一部分、色が違う場所があった。
「なら……この近くに」
 石像があった。
「ふふ、初歩的な仕掛けね」
 石像を押して、色の違う場所にずらす。

 カチ

 小さな音がたち、百年以上忘れ去られていた扉が、重い音を響かせ、開かれる。
「さて、忙しくなるわ。そちらの準備は?」 不思議な独り言を普通に言い放ち、ジルは城中の仕掛けを解くために奔走を始めた。窓の外には、朱に染まった太陽が浮遊大陸の地平線に接しかけていた。



「なっ……なんだって!?」
 その報告は、ウェールズに驚愕をもたらした。
「これなら、名誉に傷はつかないし、ひたすら相手を虚仮にして戦争に勝てるわ。敵将を直接狙うんだから」
「しかし……」
「少なくともニューカッスルと、ハヴィランドは地下通路で繋がっているわ。それに両方ともジョージ・トレヴァー建築よ。絶対に仕掛けや隠し扉があるわ。ほとんどの戦力がニューカッスルに張り付いている今、ハヴィランドは手薄だろうしね」
 饒舌に作戦を語ったジルは、ウェールズの様子を見る。顎に手をやり、思案していた。
「名誉も何もないやり方なら、今すぐできるけれど」
「なに!?」
「既にオリヴァー・クロムウェルの身柄を確保する準備はできてるの。私が命じれば、一時間もせずに首を取れるけど、それじゃ面目丸潰れでしょう?」



 結果、ウェールズはジルの案を採用することにした。採用せざるを得なかった。名誉を護り生き残れるのみならず、勝てる手段があるのだ、このまま最終決戦に突入するなんて馬鹿な選択肢を取ることは、上に立つものとして許されるべき行為ではなかった。
 事の手順はこうだ。
 まずイーグル号で非戦闘員を非難させ、少数の人員で城門周辺から城内至る所にクレイモアをはじめとする罠を仕掛ける。その間に選りすぐりの50名程度の『絶対に信頼できる』兵力を地下通路・地下施設に展開、ハヴィランド宮殿地下まで進軍する。そしてジルが
全ての隠し扉を閉じる。残り250名はニューカッスルに残り、超粘着質なゲリラ戦で陽動及び時間稼ぎをする。地下部隊がクロムウェルを確保し、地下部隊の大半を残し可能な限り速くニューカッスルに連行、停戦あるいは終戦を呼び掛ける。残された地下部隊は地下
通路の存在を知られぬためにハヴィランドを制圧、占拠する。
 この作戦に於けるウェールズの命令はただ一つ。
「無駄死にだけはするな!生きてアルビオンを立て直すために!二度と反逆など起きぬように!」
 ただ、それだけ。だが、それだけで充分だった。戦士達に焔を灯すには充分すぎた。
 一瞬の静寂、そして咆哮。パーティー会場にあった悲壮感は一気に消え去り、変わりに希望が満ち溢れた。
 臨時司令官としてジルが陽動部隊に置かれ、オブザーバーとしてギーシュがウェールズに付く。ルイズは足手まといになりかねないので、顔を隠したロングビルに護衛を頼み、隠し部屋に押し込んだ。パーティー会場はブリーフィングルームと化し、作戦説明がジル
により行われる。
「いいかしら、地下と城の仕掛けはここに居るものだけの秘密よ。これが敵に漏れたら間違いなく終わり。無駄死によ。だけど成功したら、たった三百の兵が五万に勝ったと、後々まで語り継がれるわ」
 この美女も鼓舞がうまい。それを見ていたウェールズの率直な感想だった。
 それから、隠し部屋の追加された(一部は隠蔽されている)城の地図を広げ、罠と後退戦の説明がなされた。説明が終わると卑怯だと数名の貴族から意見されたが、全く動じない。
「ゲリラ戦は立派な作戦よ。卑怯というなら敵を見なさい。数の暴力で制圧する、これ以上の卑怯は無いわ。しかし戦争はそれが許されるの。なら、ゲリラ戦が許されない道理は無いわ。生き残りなさい。生きていれば汚名をそそげるけど、無様を晒して死んだらそれ
までよ」
 デルフを振り、独裁者顔負けのデモンストレーションで演説をする。
「反逆者に鉄槌を」
「反逆者に鉄槌を!」
「夜明け前に作戦を決行するわ。0500時に総員戦闘配置。工作班は今から罠を仕掛けにいく。各自、罠にかからぬよう、城の見取り図を頭に叩き込むこと。後退経路を間違えたら死を覚悟しなさい。解散」
 ジルの宣言と同時に、全員が散らばる。中には城の見取り図をかじりつくように睨む者もいた。
「ジル、君は……何者だ?」
 ウェールズが問う。
 隠された城の秘密を暴き、宝物庫のガラクタの使い方を知り、絶望的な状況から勝てる希望のある作戦を立て、平民という立場を貴族達に忘れさせ、今こうして貴族達を熱狂させ、命令を下している。
 ただの平民ではない。いや、まるでそれは────
「元警察よ」
 ウェールズの知らない単語が返ってきた。



「クレイモアの前に味方がいるときは間違っても起爆しないこと。ランチャーを持っている物は使い方を間違えない。不発のランチャーは敵に向けて投げること。間違っても持ち歩かない。C4は敵が集まったところで起爆させなさい」
 城壁内の広場で、工作兵に対し、兵器のレクチャーが行われる。工作兵に選ばれたのは、比較的若い貴族だけだ。柔軟な発想ができるからだ。老兵に最新兵器を与えても、使い方を覚えるまでが長い、そう言うことだ。
「ジル、質問があるのだが」
 一人の貴族が挙手する。
「Ok、何かしら?」
「本当に効果があるのか?」
「見てなさい」
 一つのクレイモアを城壁に向け、地面に置く。
「誰か、頑丈な鉄の像をあそこに錬金して」
 言われるまま、クレイモアの前に中身の詰まった像が作られる。
「耳をふさいで口を開けなさい。いいわね」
 その手にあるリモコンを押し込んだ。
「は!?」
 爆音は手を通り越して鼓膜を痛いくらいに振るわす。視界に一瞬光が見え、像は爆煙に消える。
「爆弾なのか?」
「ただの爆弾ならまだかわいいわ」
 煙が晴れる。
「…………」
 誰もが無言。
 そこにあった筈の鉄の像は、足から上が消え去っていた。残された足も穴だらけだった。
「お望みなら、全部の威力をみせてあげられるけど」
 ずらりと並べられた、Mk.II手榴弾、M84スタングレネード、デイビークロケット、C4、セムテックス、Tプラス、スメルボム、CSガス催涙手榴弾、AN-M14/TH3焼夷手榴弾……
「これなんかおすすめよ。数個で屋敷が吹き飛ぶの」
 その必要はなかった。



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