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ゼロのしもべ第2部-21



 老人が落下していく。
 残月と戦っていた中年男が、必死に落下する老人を追う。
 信じられぬ高さまで飛び、その身体を受け止めた。
「ぐはぁ!」
 受け止めた老人が、口から血を吐く。
「う……効いたわぃ。さすがは、バビル2世……」
「しっかりしろ!傷は浅い!」
 草木を撒き散らし、煙を立てて着陸する男。グッとロプロスを見上げる。
「やはりあれはロプロスか!」
「間違いない……。我々の要注意観察対象No.1900701。すなわちバビル2世の忠実なるしもべ…」
 地面に降ろされた老人がよろよろと立ち上がる。
「だが、われわれの力ならば、あの攻撃も避けることはできたろう。なのになぜ!?」
 まともに食らったのだ、と問いかける男。老人は目を閉じ、顔を伏せた。
「わからぬ。なぜか、身体がまったく動かなかったのだ。そう、この少年を攻撃してはならぬと、本能が告げたような…」
「本能だと?」
 バカらしい、と鼻で笑う中年男。
「我々は人造人間だぞ?我々に本能などあるものか。あるとすれば、それは『宇宙にとって危険な文明を排除せよ』というプログラムにすぎん!」
「じゃが、すくなくともわしの身体はバビル2世と戦うことを拒否した…。」
 老人が、ロプロスを見上げた。
「マーズが狂ったようにわしの身体にもなにかバグが発生したのかもしれん。」
 中年の男は、ロプロスを見上げながら、老人の言葉を黙って聞いていた。

 ポセイドンの巨体が、地響きを立てて着地した。
「うわあ!」
「なんだ、このゴーレムは!?」
 突如現れたポセイドンにより、アルビオンの兵隊は一時的にパニックに陥った。
「おちつけ!いくら巨大と言ってもしょせんゴーレム!魔法で倒せぬわけがない!」
 士官らしいメイジが杖を振り上げ、兵を静める。
「わしが手本を見せてやる!マジック・ミサイル!」
 魔法の矢がポセイドンの膝や足首めがけて放たれた。ゴーレムはその巨体ゆえ、下半身を攻撃されると非常にもろい。すこしヒビが入っただけでも
自重で傷を広げ、亀裂となり、ついには自壊する。
 何十個もの花火を同時に打ち上げたような爆裂音が炸裂する。
「どうだ!」
 土煙が上がり、ポセイドンの姿が視界から掻き消える。次の瞬間――
「う、うわー!」
 どうん、とマジックアローを放ったメイジが踏み潰された。まったく効いていない。
「くそ!同時にかかれ!」
 叫び声と同時に、わっとメイジたちが杖を振り下ろした。魔術の塊が、尾を引いてポセイドンへ襲来していく。
 ばん、ぼん、ばん。ポセイドンにぶつかり、魔法が炸裂する。しかしまったく効果なく、ポセイドンは平然と進んでいく。
 ポセイドンが前にならえをするように、腕を持ち上げた。
 タタタタタタタン、という連射音と共に終結していたメイジたちの身体がミンチになった。
 顔の上半分が消えたもの、上半身が吹っ飛んだもの、身体がバラバラになったもの。それが吹っ飛んでアルビオン軍に降りかかる。
「うわあ、ミンチよりひでえや!」
 血肉の雨が降りかかり、パニックに陥るアルビオン兵。そこにさらに追撃が。
 5本の指先から、青白い光の矢が放たれた。
 レーザー光線だ。
 音もなく、身体を切断されて人間が転がっていく。逃げ惑うアルビオンを踏み潰しながら、着陸している強襲揚陸艦へ進んでいく
ポセイドン。ポセイドンが着地してわずか1分足らずの間に、アルビオンは兵の2割を失っていた。


「いいぞ、ポセイドン!」
 バビル2世が操縦かんを引いて、機体を上空に持ち上げる。
 ロプロスの顔横をかすめ、機体がどんどん昇っていく。
「ロプロス、右だ!」
 空中に待機していたアルビオン空軍の戦艦が、突如現れた化け物のような鳥めがけ、狂ったように砲弾を放ちはじめた。
 ロプロスがまともにその砲弾を受ける。が、ミサイルでもびくともしないロプロスの装甲には、蚊が刺したほども効き目がない。
「ロプロス、敵の大砲を狙うんだ!」
 命令に応えて、ロプロスのくちばしが大きく開かれた。
 口からロケット弾が連続発射され、戦艦の大砲に襲い掛かった。
 一瞬で戦艦が炎に包まれ、火薬に引火し大爆発を起こす。反応する間もなく、空で藻屑となって消えた。
 残る艦船から次々と何かが飛び出してきた。竜騎士だ。
「おのれ!いくら化け物といえどもたかが一匹!全員でかく乱しつつ攻撃すれば……っ」
 竜騎士が、隊列を組んで、一斉にロプロスへ襲い掛かった。
 三方向に分かれ、上下正面からロプロスの首を狙う作戦だ。
 きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃン。
 耳には聞こえぬが、身体を震わす音。
 叫び声をあげる間もなく、竜騎士が竜ともども風に飛ばされる砂細工のように消え去った。
 超音波攻撃。その威力は分子を直接振動させ、あらゆる物体をバラバラにしてしまうのだ。
 まともに浴びなくても、周囲にいるだけで、気が狂いそうになってしまう。次々と竜騎士と竜が気絶し、草原めがけ落ちていく。
「こ、こっちに来たぞ!」
 竜騎士が発進した艦の中で、比較的突出していた戦艦めがけ、ロプロスが体当たりを食らわせた。ロプロスの全長は並みの戦艦以上である。
 おまけに装甲と速度は圧倒的。木片と鉄くずになって消えた。
 ルイズはバビル2世の後ろで『敵に回したくないわね…』と考えていた。

「報告します!バビル2世です!バビル2世が現れました!」
 血相を変えて飛び込んできた士官が、そう告げた途端、司令部の空気が張り詰めた。
「敵は北23度から飛来。ポセイドンとロプロスの攻撃で、すでに戦艦2、メイジを含む600以上の兵が死傷!被害はなおも拡大中!」
「映像をモニターに!」
 上座に座っていた男、ヨミが指令を下す。
 ただちにモニターに暴れまわるポセイドンとロプロスの姿が映される。
「間違いない。3つのしもべだ。」
 ギリ……と奥歯を噛み鳴らすヨミ。
「よし、V2計画の最終段階を始動させる。V2ドラゴンを切り離せ。そしてサンダーのコントロールをオンにして、改めて人工知能に命令を行え。」
「はっ。」
 戦艦レキシントンに吊り下げられた怪物を縛る結界が、ゆっくりと外された。


「いいぞ、ロプロス!ヨミの野望を食い止めるんだ!ポセイドンも負けるな!」
 すでに戦艦6を落とし、アルビオンの降下部隊3000のうち半数以上が何らかの理由で戦闘不能と化していた。
 司令官であったサー・ジョンストンからしてわれ先に逃げ出し、軍の統制は明後日に逃げ出していた。
 そこへ襲い掛かったのがトリステインの兵2000である。
 甲冑をならし、剣で頭を叩き潰し、魔法で吹き飛ばす。怒号を上げながら、敵を蹴散らすポセイドンを追いかける。
「みなのもの!あれは我らに勝利をもたらさんと、始祖が遣わした戦の神に違いない!空飛ぶ鳥は、伝説の鳥、クィーン・フェニックスであろう!この
戦、我らの勝ちぞ!」
 マザリーニが兵を叱咤激励しながら、杖をふるって指揮を執る。兵は目を血走らせて、すでに敗残寸前となったアルビオン兵に襲いかかる。マグマの
ような奔流にアルビオン兵は飲み込まれ、のたうち、悶え苦しむ。
「枢機卿……始祖の遣わした使者とはまことですか?わたしは聞いたことがありませんが」
 そっと尋ねるアンリエッタに、マザリーニがいたずらっぽく笑った。
「真っ赤な嘘ですよ。しかし、今は誰もが判断力を失っておる。こういうときはこんな神話のほうが帰って現実味があるもの。使えるものはなんでも使
う。政治と戦の基本ですぞ。覚えておきなさい、殿下。」
 アンリエッタが頷く。枢機卿のいう通りだ。今は、考えるのは後回しである。戦争に勝つことだけを考えればいい。
「ですが、まだ敵には旗艦レキシントンが…」
 不安げに呟くアンリエッタ。それを制止するマザリーニ。
「殿下。不安を顔に出してはいけませぬ。今は勝利を確信し、悠然とすべきときです。」
 そのとき、ラ・ロシェールの方向から、巨大な戦艦が姿を現した。
 快進撃を続けてきたトリステインの兵の足がピッタリと止まり、慌てて退避し始める。なぜならば、戦艦にいくつも光が現れたからだ。
 タルブ草原でいくつも爆発が起こる。逃げるのが間に合わずに、何十人も兵が吹っ飛ぶ。

「あれは!」
「ロイヤル・ソヴリンだ!」残月が叫ぶ。
 衝撃波でズタズタにされた傷はすでに治り始めているではないか。おそるべきバビル2世の血である。
「アルビオン空軍の切り札…。叛乱の始まりの船…。」
 苦々しげに呟く残月。その顔は残月ではなく、亡国の皇太子、ウェールズ以外のなにものでもなかった。

「ロプロス!」
 バビル2世の命令で、ロプロスがレキシントン目がけ飛んで行く。
 ロプロスはすれ違いざまに口からロケット弾を吐き、レキシントンを炎上させる。
「そうだ、その調子だ、ロプロス!」
 無人の野を行くように、縦横無尽に暴れまわるロプロスにガッツポーズをするバビル2世。
「あ……あのねぇ……」
「ぐえっ!」
 バビル2世の喉を、後ろから杖が押さえ込んだ。
「さっきから……なんて動きしてるのよ……」
 真っ青な顔で、ルイズがバビル2世を締め上げる。それは発射5秒前、というか、貴族でなくても女性にしては致命的な…つまり口からのリバース寸前の
顔だ。
「く、苦しい……。わ、わかった、わかった」
 ルイズが杖を外す。ゲホゲホと咳き込むバビル2世。
「あのねぇ、わたしが乗ってるってこと忘れてない!?」
「ああ、忘れてた。」
 ガツン、と杖が頭へ振り下ろされた。
「す、すまない。今度から気をつけるよ…」
 目から火花を散らして、頭を押さえるバビル2世。
 「もっと丁寧に操りなさいよ!」と頬を膨らせるルイズ。
 「むちゃを言わないでくれ」と言い掛けたバビル2世の目に、異様な光景が映りこんだ。
 レキシントンめがけ突撃したロプロスの周りを、無数の飛行物体が囲んでいるのだ。
「なによ、あれ?」
 ルイズも気づく。見るとそれはまるでドラゴンのような、怪鳥のような、真っ黒なロボットであった。


「ふふふ。V2号よ、おまえたちの力を見せてやれ。」
 ヨミが不敵に笑う。

 十数体のドラゴンが、一斉にロプロスに襲い掛かった。体当たりをまともにうけて、さすがのロプロスも吹っ飛ぶ。
「ああ、ロプロス!」
 そのまま大地にしたたかに身体を激突させた。よろよろと、ロプロスが身体を起こそうとしている。
 そこへ、超高熱線が襲い掛かった。ロプロスの周囲があっという間に炎に包まれた。
「まさか、これは…」
 バビル2世はこれと同じような兵器を覚えていた。そうだ、間違いない。宇宙ビールスによりパワーアップしたヨミが3つのしもべに対抗すべく作り出した
怪鳥ロボットだ。
「ヨミめ。さてはあのロボットを量産化したな。」
 ロプロスの装甲は、今は効き目がないように見えるが、このままくらい続ければどうなるかわからない。バビル2世は慌てて、
「逃げろ、ロプロス!」
 ロプロスが大空高く飛び上がった。V2号は熱線を放ちつつ、ロプロスを追いかける。
 そして近づいては体当たり。離れては熱線を繰り返して、執拗にロプロスを痛めつける。

「ふはははは。バビル2世よ。さすがのきさまもなにもできまい。」
 モニターに映し出されたゼロ戦を見ながらヨミが勝ち誇る。
「そこで3つのしもべがなすすべなく敗れるさまを見ているがいい。3つのしもべを破壊した後で、きさまの命は奪ってやろう。」
 視線を別のモニターに移すと、そこにはポセイドンの姿が…

「ちょっと、あれ!下、下!」
 なにかに気づいたルイズがバビル2世の肩を揺さぶりながら叫ぶ。言われて視線を下げたバビル2世は叫び声を上げた。
「ああ!?」
 いつのまにかポセイドンはギリシャ神話の兵士のような姿をしたロボットに取り囲まれていた。
 ロボットはポセイドンより少し小さいが、これだけ数がいればその程度の大きさは問題ではないだろう。
「ポセイドン、レーザーだ!」
 慌てて命令をするが、敵ロボットはレーザー光線を弾き返すではないか。
「くそ!ヨミのやつ、こんなものまで作っていたのか。」
 ロボットはポセイドンに取り付き、組み伏せようとする。両腕を押さえ込み、胴体や頭を殴りつける。
「いくらポセイドンとロプロスが頑丈だといっても、これではいつか破壊されてしまう。」
 ポセイドンが攻撃に抗い、ロボットを投げ飛ばす。だがすぐに別のロボットがとりついてくる。
「くそ。これじゃあきりがない。」
 地上と空をせわしく見比べながらバビル2世が叫ぶ。
「ロプロス!ポセイドン!一体一体でいいから倒していくんだ!」
 ポセイドンが腕を振りほどき、目の前のロボットに手刀を叩き込んだ。
 ロプロスが高熱線を浴びながら、カウンターで敵の頭部へ体当たりをした。
 破壊した瞬間、V2号は両者とも大爆発を起こした。
「げぇっ!」
 ロプロスが切りもみしながら落下していく。ポセイドンが爆発で吹っ飛び、地面にたたきつけられた。
「くっ。ヨミめ、破壊されると爆発するようにしているのか!これじゃあうかつに破壊できない!」
 忌々しげにバビル2世が言う。
「おまけにあの動きは人工知能が搭載されているのだな。たとえレキシントンを沈めても、しもべを破壊するまで動きつづけるのだろう。」
 空を覆い尽くすようなレキシントンを睨みつける。それはまるで空に浮かぶ島のようであった。アルビオンが大陸ならば、これはその人工島なのだ。不沈
空母なのだ。


「ふむ。やはり3つのしもべはしぶといな。」
 いくら攻撃をうけてもまいったそぶりのないしもべに感心したように頷くヨミ。
「どうでしょう、ヨミさま。ここはひとつしもべでバビル2世を攻撃しては……」
 ワルドが車椅子の上から提案をした。背後にはあいかわらずフーケが控えている。
「ふふふ。わしも今それを考えていた。よし、ドラゴンの攻撃目標をゼロ戦に変更しろ。ロプロスよ、小僧を倒せ!」

「むむ?」
 とつぜんロプロスへの攻撃をやめ、こちらにドラゴンが向かってくる。ロプロスが一瞬空中で固まり、遅れてこちらへ向かってくる。
「あの動きは……まさか」
 ロプロスと、V2号の編隊が一斉にバビル2世めがけ攻撃をしてきた。
「やはり、ヨミがそこにいるな!ロプロス!」
 ヨミに操られたと判断したバビル2世が、あわててロプロスに支持を下す。
 ふたたびロプロスの体が硬直し、方向転換する。

「小僧め、気がついたか。だが、それならばこっちには策がある。ポセイドン!」
 ロボットに囲まれながら必死の抵抗をしていたポセイドンの動きが止まる。
「トリステインの連中を攻撃しろ!」

 地上でロボットの軍団が組みつくのをやめ、ポセイドンを解放した。
「む。まさか!?」
 ポセイドンが指先を森に向けた。
「ポセイドン!」
 あわててポセイドンに指示をする。ポセイドンが腕を下ろした。

「ロプロス!」
 ヨミが叫ぶ。

 ロプロスがバビル2世に襲い掛かる。それを必死の旋回でかわすバビル2世。
「くそっ、ヨミめ。ぼくがあやつるしもべを絞らせない気だな。」
 V2号から放たれた高熱線を必殺竜鳥飛びで避ける。
「そして集中力を乱し、その隙を狙ってしとめるつもりか。」
 ブルーインパルスのような動きでV2号の体当たりをかわす。
「……そういえばルイズは?」
 普通の人間なら気を失うような動きの中で考える。
 「もっと丁寧に操りなさいよ!」と怒っていたルイズを。気絶でもしたのだろうか。
 だが後ろを振り返ることはできない。振り返っている暇はない。
 ゼロ戦がいまのところ落ちずに済んでいるのは奇跡でしかない。普通の人間ならばとっくの昔に消し炭になっているはずだ。
 その奇跡を起こしているのは何なのか。バビル2世は、自分の左手で光るルーンに気づいていない。気づく余裕がなかった。
「ちょっと、ごめん!」
 突然、後ろで透き通るような声が響いた。ルイズの声だ。
「ルイズ、気絶していなかったのか!?」
「してないわよ。うっさいわね。」
 ごそごそと座席の後ろから、隙間をくぐって前に出てくる。
「うわっ。あ、危ないぞ。」
 ルイズは器用に前へ移動して、バビル2世の前に座った。その手には水のルビーが嵌められ、しっかりと始祖の祈祷書が握られている。
「ちょっと、これをあの戦艦に近づけられる?」
 その言葉を聞き、しばらく黙っていたバビル2世が口を開く。
「エクスプロージョン、か。」
 一瞬目を丸くしたルイズが、こくりと頷いた。
「そういやあんた心が読めるんだったわね。わかるでしょ。」
「だがあの戦艦を落として、こいつらが動きを止めるかどうかわからない。それにその魔法の威力も不明じゃないか。」
「大丈夫よ!」
 ルイズが叫んだ。
「こういうときは、最後に一発逆転の必殺技が出るものなのよ!」
「そうだろうか?」
「そういうものよ!」


 根拠のない自信を主張するルイズ。ルイズの頭の中は伝説で一杯だ。伝説の魔法。伝説の虚無。伝説のブリミル…。
 その威力を疑う余地はないのだ。
「たしかに、今はほかに方法はない。それに賭けてみよう。」
 覚悟を決めるバビル2世。そして機首をレキシントンに向けた。
「ロプロス!おまえはポセイドンを捕まえて、向こうに行け!」
 ゼロ戦を追うそぶりを見せていたロプロスが急ブレーキをかけ、あわててポセイドンへ向かった。
 そしてポセイドンを捕まえて、遠くへ逃げるように飛んでいく。

「バビル2世め。とうとうしもべによる攻撃を諦めたな。」
 逃げ出したロプロスとポセイドンを見て満足そうに微笑むヨミ。
「よし、ドラゴンとサンダーの攻撃目標をゼロ戦に変更しろ!全精力をかけてバビル2世をやっつけるのだ!」
 拳を握り締め、叫んだ。
「バビル2世さえ倒せば恐れるものはない!わしが世界に号令するときがやってくるのだ!」

 掴みかかるサンダーの腕を避ける。
 風石の力により浮遊したサンダー軍団が加わって、バビル2世を追いかける。
 それを必死にかわすゼロ戦。ドラゴンは速度が速すぎたおかげでレシプロのゼロ戦を捕まえるには至らなかった。
 だが、サンダーの速度はゼロ戦とほぼ同レベル。むしろやっかいな相手といえた。
 ギリギリの操縦をするバビル2世の後ろで、ルイズは詠唱を行っていた。

   エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ

 普通なら舌をかみそうなものだ。かまなくても振り落とされかねないのだ。たいしたものだと舌を巻く。

   オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド

 レキシントンを盾にして、V2号から逃げるゼロ戦。だが、レキシントンからは散弾砲が雨霰とあびせられる。
「精神動力だ!」
 散弾が全て明後日の方向へ飛んでいく。だが散弾は次から次へと襲い掛かってくる。使いすぎればどうなるかわからないのだ。

   ベオーズス・ユル・スヴェエル・カノ・オシュラ

 精神動力をフルに使った結果、なんとか散弾の嵐の中を抜け切った。だが、その先にはドラゴンが炎を吐き出さんと待ち構えている。
 慌てて操縦かんを倒すバビル2世。ゼロ戦が唸りをあげて横滑りしていく。

   ジュラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル……

 長い詠唱の後、ついに呪文が完成した。
 その瞬間、ルイズは己の呪文を理解していた。
 あらゆる人間を、ものを、巻き込む強力な呪文を。
 選択は二つ。殺すか、殺されるか。破壊すべきは何か―――。
 ルイズは、己の衝動に従い、宙の一点めがけ、杖を振り下ろした。

「なんだ……あの光は……」
 樊瑞はよろよろと身体を起こす。背中には血が滲んでいるが、それを服で縛って無理矢理止血している。
「まるで……太陽ではないか。」
 現れたそれを見て、樊瑞は呟く。
 なにかとてつもなく神聖なものを見た気がして、気がつくと樊瑞は再び、地面に跪いていた。

「むう。これは……!?」
 残月が叫んだ。突如現れたそれは、ロイヤル・ソヴリンをつつみ込んでいくのだ。
「核……いや、だが、違う……」
 ショウタロウが全てを焼き尽くすという、広島と長崎に落ちた恐怖の名を呟く。
「……きれい」
 狂気に満ちた瞳で、シエスタは笑った。怖いよ、君。

 アニエスは、それを見ながら思い出していた。
「あなたにはしばらく後、祝いの日を迎えんとするとき、転機が訪れるでしょう。南へと向かうことになるはずです。南の地で、光を見るときに、恐れ退く
ことがなければ、あなたの悲願を叶える道は開けるでしょう。」
 孔明と名乗った男は、たしかにそう言った。
 祝いの日……結婚式。
 南……タルブ草原。
 その予言はことごとく的中していた。
 そして、その最後のキーワードが目の前に現れたのだ。
「ダングルテール……」
 ギリッと唇をかみ締め、呟く。その顔には、喜びとも怒りとも取れる表情が浮かんでいた。

 アンリエッタは信じられない光景を目の当たりにした。突如現れた竜、巨人、そして戦艦レキシントンが光の玉に包まれていく。
 上空に突如現れた光の球。まるで太陽のようなそれは、膨れ上がって敵を飲み込んでいく。
 ユニコーンがおびえ、首を振る。
「大丈夫よ、大丈夫…」
 ドレスを握り締め、呟く。それはユニコーンを落ち着けるためではなく、自分に言い聞かせたような…そんな声であった。

「ぬぅ!」
「あ、あれは……」
 ラ・ロシェールに向かう山中。ここまで逃げてきていた二人が同時に唸る。
「見たか。」
「うむ。」
 中年は咥えていたものを地面に落とし、足で踏みにじる。出ていた煙が消える。
「間違いない。あれは全エネルギー停止現象……。」
「アンチ・シズマ・フィールドの光……。」
「なぜあのようなものが……。」
 うぬぬ、と老人が光の球を睨みつける。
 男たちの表情は、光ではなく闇を見たように――冷たく険しいものであった。



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