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ゼロの黒魔道士-27


「お、俺の左腕を――使い魔ごときにっ!こんな、こんな小童ごときにっ!!」
デルフが貫き、壊したのは、ワルドの左肩だった。
咄嗟に体を捻られてしまい、致命傷にはならなかったみたいだ。
でも、さっきまで杖を持っていた手を、潰せた。
「ワルド……忠告するよ。もう……降参して」
ワルドに静かにデルフを突きつける。
……もう、これで終わりにしたかったんだ、
ルイズおねえちゃんを……悲しませるのは。

―ゼロの黒魔道士―
~第二十七幕~ ただ生あればこそ

「相棒ぉ~、もう一思いに殺っちまったほうが早ぇんじゃねぇか?おれっち今絶好調よ?」
キラキラ輝くデルフが言う。
「でも……でも……」
こいつは、確かに酷いことをした。
でも、それでも。ワルドはルイズおねえちゃんの婚約者だった人だ。
ルイズおねえちゃんは裏切られて悲しんだ。
それは礼拝堂に来る前に、何故か伝わってきた。
礼拝堂に来てルイズおねえちゃんの涙を見て、間違いないと思った。
だから、これ以上、ルイズおねえちゃんを悲しませたく無かったんだ。

「ケェェーッ!!!」
鋭い高音が、ステンドグラスの向こうから聞こえてきた。
『コメット』が破ったステンドグラス、そこから大きな塊が飛び込んできたんだ。
強く激しい風をまといながら。
その塊と、目の前のワルドが重なる。
「ふはははははは!!いつか後悔させてやる!この俺にトドメを刺せなかったことをな!!!
 攻城隊にやられるなよ!!俺自身が復讐してやる!!!」
猛風に目を閉じてしまって、次に目を開けた時にはワルドはもう消えていたんだ。
「チッ、悪運強ぇ髭オヤジだぜっ!ま、アレだな!俺様にビビって逃げたってぇわけだ!だはははははははは――」
「ルイズおねえちゃんっ!!」
ワルドを追うつもりは無かった。今は、それよりもやるべきことがある。
だから、ルイズおねえちゃんに慌てて駆け寄る。
ルイズおねえちゃんは、涙を流して呆然とその場にへたりこんでいたんだ。
「――どうして――ねぇ、どうして?」
「ルイズおねえちゃん……」
無理もない、信じていた婚約者に裏切られたんだ。
目の前で……
「――むっげぇなぁ~、王子さんまで殺すことぁ無かろうによ~?まぁ、アレだ、娘っ子よ!泣いてる暇ぁ無さそうだぜ?」
そうだ、さっきワルドが言っていた。攻城部隊がもうすぐ城にやってくるのだろう。
遠くの方で怒号が聞こえる。
さっき、ボクが乗って脱出する船はもう出てしまってる。
どこかに逃げるか……さもなければ……
「ま!安心しねぇ!おれっち達、今ギッランギランに輝いてっからよ!
 もーパワー全開?これならウン千万人の敵相手にできっぜ!だははははは――」
確かに、『トランス』したままならそれなりに粘ることができるかもしれない。
敵陣を突破して逃げるっていう手もあるかもしれない。でも……
「……デルフ、ゴメン」
「お?どうした、相棒?」
「『トランス』……もう、限界なんだ……」
光が、ボクの体を覆っていた光がしぼむみたいに消えていく。
「ぬぉぃっ!?相棒、どうしたってんだよぉ~!?これからってぇときに!!」
『トランス』の力は、強力だけどせいぜい持つ時間は1度の戦いの間、それも長期戦は無理だ。
「ゴメンね……でも、なんとか、するから!絶対、なんとか、するから!」
必死に頭を回転させる。
着地で痛めた左足が、トランスの反動でものすごく痛む。
このままじゃ、みんな死んでしまう。
嫌だ。
ルイズおねえちゃんを守れないなんて、嫌だ。
だから考えたんだ。今この場所から、トリステインまで逃げることを。

「ちっきしょ~!!相棒がギラギラってんならともかくっ!このままじゃおれっち見せ場ないままそこの王子さんと一緒にあの世行きかよっ!!」
デルフが耳元でわめく。
「――どうして――私――どうして?」
ルイズおねえちゃんの目は焦点があっていない。
あぁ、本当にどうしたら……
「――勝手に……殺さないで、くれる、かな?――ゲホッ――」
小さく、か細い声。
それが昨日まで元気に笑っていた声だって気づくのは、時間がちょっと必要だった。
「ウェールズ王子!?」
「お、なんでぇ、生きてたか!?しぶてぇな~!!」
ルイズおねえちゃんもピクッと反応する。
「――幸い、急所は外したら、しいね――まだ、記憶になるわけにはいかないようだ――」
胸から血を流しながら、それでも気丈に笑顔を浮かべようとする王子様。
その笑顔が、とても痛々しかった。
「王子!や、休んでて!ぼ、ボクがなんとかするから!!!」
「そうだよ!見てたろ?おれっち達の大活躍をよー!もうちっと休んでたって――」
「――あぁ、君の勇気が、煌めくのを、見た――ゲホッ――だが、君も怪我をしている――だろ?」
服を真っ赤に染めながら、ウェールズ王子が体をゆっくり起こそうとする。
「よ、横になってて!ねぇ、大丈夫だから!!」
「おいおいおい、これってマジやべぇんじゃねぇか?」
「――城からの、秘密脱出孔を――ク――を教える――君達、だけで――」
「ダメよ!!!!!!」
ルイズおねえちゃんが突然大きな声をあげた。
「殿下も、ウェールズ殿下も一緒に!!」
「――足手まといは――捨てて、行きたまえ――いいか、良く聞きたまえ、ここを出て左に――」
「そんな!殿下は!姫が!姫が待って――」
ルイズおねえちゃんが必死に食い下がって、ウェールズ王子の声が聞きとれない。

もう少しよく聞かないと、逃げることだってできないかもしれない。
だから、ウェールズ王子に少し近寄った、そのときだったんだ。
地面からカリカリと引っ掻く音、それと何かが床を持ちあげるような振動。
「敵っ!?」
地面に向けてデルフをまっすぐ向ける。
足は怪我をしている。
ウェールズ王子はもっとひどい怪我をしている。
こんな中で、ルイズおねえちゃんを守らなきゃいけない。
「っちぃ、次から次に問題が――おもしれぇーことになってきやがった!」
デルフにはちょっと同意できなかったんだ。
ともかく、そんな緊張感の中、地面からの反応を少し待っていると、突然
「モグーッ!!」
と間の抜けた声と一緒に、モソモソと動くものが地面から生えてきたんだ。
それに続いて、長い爪と、その後に生えてる毛むくじゃらの体。
そして……
「モグモグーッ!!!」
クルクルッと空中に飛び出した毛の塊は、綺麗に宙返りをして得意げに礼拝堂に着地したんだ。
ポーズまで決めて……
「おいおい、これって確かギーシュの野郎の――」
「ヴェ、ヴェルダンデ!?」

「――久方ぶりの光だ――まったく、ヴェルダンデ、君はすばらしいよ!あ、いてててててて――」
「いいからさっさと進みなさいよ!後ろがつっかえてんでしょ!!」
「邪魔」
ヴェルダンデの空けた穴から、ギーシュ、キュルケおねえちゃん、タバサおねえちゃんが続けざまに出てきた。
何が、どうなってるの?
「あ、あんた達――どうして!?」
ルイズおねえちゃんが目をパチクリとさせて聞く。
「フッフッフ、ヴェルダンデの素晴らしい能力をお忘れかな?そう、かくも美しく聡明な我が使い魔はその華麗なる――」
「えーと、つまり、宝石捜す力であんたが持ってるっていう『水のルビー』探させて、地面掘ってきたってわけ?感謝しなさいよ、ルイズ」
ギーシュの長くなりそうだった説明を、キュルケおねえちゃんが簡単にまとめてしまう。
ヴェルダンデ、すっごい。
「――つまりその卓越した感覚こそ我がヴェルダンデの――あいたっ!?」
「緊急事態」
タバサおねえちゃんが、まだまだ続きそうだったギーシュの話を杖で殴って止めた。
「そうね、もうこのお城囲まれてるわよ?シルフィード待たせているから早く逃げないと――」
「な、何よっ!た、たまにはやるじゃない!」
ともかく、なんとかなりそうだった。
ちょっとホッとして力が抜けてしまう。

「応急処置」
タバサおねえちゃんが、ウェールズ王子、ボクと順番に杖を向け、呪文を唱える。
スゥっと痛みがひいていく。
まだ、ちょっと違和感はあるけど、歩いたりする分には問題は無さそうだった。
「よし、それでは、出発するぞ!みんな、この僕に続け――いたぁっ!?」
キュルケおねえちゃんの手刀は、ムチみたいにしなるんだなぁって思った。
「バカ言ってないで、さっさと脱出するわよ!」
「殿下も、お早く!」
ルイズおねえちゃんのせかす言葉に、ウェールズ王子は、体を支えていた右手で口元の血をぬぐって、
ゆっくりと、だけどとってもしっかりとした笑顔でこたえたんだ。
「いや――僕は、行けない」
「どうして!?もう、足手まといではありません!姫が、待ってます!!だから――」
ルイズおねえちゃんは、ウェールズ王子の服をグイグイと引っ張る。
王子様は、そのルイズおねえちゃんの腕をゆっくりとつかんで、言ったんだ。
「足手まといではないからこそ――行けないんだ。僕には、なすべきことがある――」
そのゆっくりとした小さな声は、沁み渡るように礼拝堂に響く。
「――愛する人を守るために――やらねばならない――」
その言葉に、ルイズおねえちゃんの腕が力なく地面に垂らされる。

「――小さな騎士君!君には、勇気をもらった!」
「は、はいっ!?」
突然、ボクに声がかけられる。
「――伝言を、頼めないか、指輪と共に――」
小さく、息を吸い直すウェールズ王子。
応急処置はタバサおねえちゃんにしてもらっても、やっぱり苦しいのかもしれない。
「『死しても貴女の記憶となろう、ときどき思い出してくれるだけでいい、だから』――」
もう一度、ゆっくり息を吸う。
顔が、少し青い。
「――『生きていてくれ!』と!」
「……う、うん!」
必ず、伝えようと思った。
何があっても。

「――さぁ、急ぐよ、諸君!ヴェルダンデ!来るんだ!」
「ほら、ルイズ、あんたも急ぐ!」
「脱出」
「うぇ、ウェールズ王子、あの、その……お元気で!!」
「なんか違わねぇか、相棒?ま、いっか!そいじゃーなー!!」
ヴェルダンディの掘ったらしい穴は、おっきな岩とかを避けたのかクネクネしててなかなか進みにくかった。
足下から、風が吹いているのが分かる。
……ルイズおねえちゃんが、ずっと無言なのが気にかかる。
「きゅい~!!」
穴の先では、シルフィードがその場に留まって待っていてくれていた。
今は、高いところが怖いとかそういうことを言っている場合じゃなかった。
そんなに遠くないところに、大砲がたくさんつきだした軍艦が何隻も見える。


シルフィードの上は、しばらく無言だった。
みんな疲れていたし、何より、ウェールズ王子の笑顔が心に残っていた。
「――ビビ」
「……何、ルイズおねえちゃん?大丈夫?」
ボクは、なるべく下を見なくて済むように、帽子を深めにかぶっていた。
そしたら、ポンッとちょっと重めの荷物が背中にのしかかるような感じがしたんだ。
「――ちょっと、こうさせてて」
それが、ルイズおねえちゃんの頭だって気づくのにそんなに時間はいらなかった。
「……うん」
少しだけ、体を動かしてルイズおねえちゃんがもたれかかりやすいようにする。


ボクの小さな背中は、ルイズおねえちゃんを守れたんだろうか?
ルイズおねえちゃんを悲しませることしかできなかったんじゃないか?
だから、ボクは、そこからラ・ロシェールに到着するまで、
身動きせずに背中を向け続けていた。
ルイズおねえちゃんの涙を、なんとなく、見ちゃいけない気がしたから……



ピコン
ATE ―死神の幕引き―

「さて――と!!グ――やっぱり、痛いなぁ――」
若き王子の服は紅に染まり、
血は十二分に失うも、
なおも気丈に立ちあがる。
なんとか生きながらえた、
まだ立ち上がれる。
だからこそ、立ち上がる。
「――死しても記憶になる、か。結構だ――だが――」
そう、彼は一国の王子なのだ。
何より、愛する人のためでもある。
まだ、生きながらえる時間はある。
防衛指揮系統に混乱は無いか?
最悪、その場に立つだけでもいい。
士気が少しでも上がってくれればいい。
一刻でも、憎き『レコン・キスタ』の者どもを食いとめる時間が欲しい。
その後であれば、喜んで記憶になろう。
そうだ、愛する人の記憶になって生きるのだ。
使い魔の少年、ビビ君と言ったか、
彼は見事その勇気を、若きウェールズ王子の脳裏に焼きつけた。
ならば、年長者として、王子として、愛しき人への想いに答えるため、
「――せめて、記憶以外に、残さねばな――」
自分の血の匂いにむせそうになる。
だが、まだ体は動く。
まだできることはある。
記憶になるのはまだ早い。

「――宴の終わりは気の抜けた麦酒の如く――」
詩が、聞こえた気がした。
これは亡びゆく国を憂えた、精霊たちの鎮魂歌とでも言うのだろうか。
「――泡沫に散る星屑とともに飲み干さん――」
それにしては、いやにはっきり聞こえる。
お迎えにしては早すぎるし、
夢にしては、胸の傷が痛む。
これは決して幻聴の類では無さそうだった。
「――見事な舞台でしたよ!やはり、貴方が主役であるべきだった!」
死を啄ばむ銀色の孔雀。
そんな単語が脳裏に浮かぶ。
視界にゆらりと入ってきた男は、どうやら幻覚ではないらしい。
独特の香水の香りがする。
血の匂いと混じり、それは吐き気に近い嫌悪感をもたらした。
「――何者だ、どこから入ってきた?」
先ほどは抜き遅れた杖を抜き、眼前の男に突き立てる。
敵ならば、ここで相討ちも悪くない。
せめて一矢報いてくれよう。
だがおかしい。
こんな男の侵入を許すとは。
それに何だというのだろう、この静けさは。
防城戦前だというのに――

「これは失礼を、王子様。手前共の三流脇役が、麗しき愛の物語の邪魔をいたしまして――」
目の前の男の優雅な一礼は、あまりにも大袈裟で芝居がかっていた。
そう、芝居だ。
まるでカーテンコールに答える役者のような仕草。
舞台はもう終わりだと名残惜しむようなその所作。
「――何の、話だ?」
本格的に目の前が揺れ始める。
もう少し持ってくれ。
せめてこの得体の知れぬ敵を倒すまで。
「――憐れ、遠く離れた戦地での結婚式は己の殺害を目論む茶番劇!
 自身の真愛は暁の露と消えようとするも、幼き勇気の輝きに導かれ、
 王子は姫への愛を誓い立ち上がり、なおも歌おうとする!!――実に素晴らしい!!」
歌うように語る死神の言葉は、称賛と同時に同情の響きを伴っていた。
憐れむ、だと?誰をだ?
王子の疑問は尽き無くとも、向けられた杖は揺るがずまっすぐ相手を狙い続ける。
「――是非、このクジャめの舞台に加わっていただきたい、と言いたいところですが――
 生憎、僕の依頼者が先に貴方を欲してしまっているようだ――ハァ」
残念至極、という大仰な身振り。
ご丁寧にわざとらしい溜息までつけてだ。
この男は何が望みだ?
「――依頼者、だと?」
「そう、依頼者。まったく、主役の貴方をよりによって死体役で欲しいそうだ――ハァ、気が進まないねぇ――」
男が指を鳴らす。
それが合図だったのか、何体もの鎧甲冑が、
ガシャガシャと無骨な音を立てて礼拝堂に入ってくる。
顔の無いそれらは、死を予感させるのには十分な効果を発揮した。
「まぁ、いいさ。手はある――安心してください、他の方々と同じく扱いますから――」
その言葉に悟る、静けさの意味を。
「貴様――まさか、私の部下を!!!」
「あぁ、最初の質問に答えてませんでしたね――正面から、入らせていただきましたよ。堂々とね」
不自然な動きの鎧共、ゴーレムか。
その一体に、血の痕がついているのが霞む視界に映った。
「少々、荒事はありましたけど、皆さん大人しく退場なさいましたよ――滅びゆく舞台から、ね」
ゴーレムが割れたステンドグラスを踏む。
乾いた音が礼拝堂に響く。
狙いを定めていたはずの杖が細かに震えだす。
「貴様――貴様、何を!私の部下に、何をっ!!貴様何者だ!!」
呪文の詠唱は、詰問の声の後となった。
それが仇となる。
風魔法より速く、周囲を鎧ゴーレムが取り囲み――
「――幕を引きに来た支配人代理ですよ、主演俳優殿」
眼前の男の右手は軽やかに天を指し――
「貴方の舞台は、ここで一度幕、です」
静かに、降ろされた。
「く、ぐぁぁぁぁぁぁぁっ――」

風、吹き抜けるアルビオン。
静かな礼拝堂に、もう人影は無く、
午後の日が割れたステンドグラスを通り白い日だまりを作る。
小さな想い、『最期に貴女を抱き締めたかった』という記憶を残し、
始祖の像だけが、顔も無いのに終幕のアルビオンを見つめていた。


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