あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゴーストステップ・ゼロ-07b


王都の門の前に一旦着陸したシルフィードは4人を降ろすと近郊の森へと飛び去って行った。
現在、門は開け放たれており街道を往来する馬や馬車がひっきりなしに出入りしている。一応関所を兼ねているのだろう、中に入る際に手形を見せる人々と武装した衛兵達の姿が見えた。
周囲を観察するヒューにルイズが声を掛ける。

「ヒュー、私達はこっちよ。」

ルイズ達がいる場所は貴族専用なのか、先程まで見ていた人々と違い身なりが小奇麗に見える。
まぁ、ヒューから見ると大昔の舞台で役者が着ている舞台衣装にしか見えないのだが…。
ルイズ達は身の証になるものを見せて悠々と王都の中へ入っていった、ちなみにヒューはルイズの従者という扱いである。


ゴーストステップ・ゼロ シーン07b “錆びた相棒とガンダールヴ”

    シーンカード:バサラ(意思/まったく新しい情報や状況の判明。イマジネーション。)



「そういえばルイズ、なんでまた王都まで来ようなんて思ったわけ?」
「ヒューの着替えとか、寝具、それに武器が欲しいって言ってたから、その辺の調達が主な目的になるかしら。
 後、時間があったら王都を色々と案内しようと思ったのよ。」
「へぇ、で。ヒューとしてはこのトリステインを見た感想はどうなのかしら?」
「ん?ああ、活気があって良いんじゃないか?」
「あら、そうなの意外ね。」
「意外って何が?」
「だって、さっきまで聞いていたヒューの話だと、私達の国の街並みなんて時代遅れも甚だしいでしょう?」
「確かにね、あれはあれで便利だし、金さえあれば快適な街だからな。
 ただ、前提からして違うものを比べてどっちが優れている、なんて言う気は無いよ。大体歩いてきた歴史も技術体系すら違うんだ、なら比較をする事自体間違いだろう?
 肉と魚と果物、どれが一番美味いかと議論するようなものさ。」
「ふぅん、中々興味深い意見ね。」
「ただ」
「ただ、何?」
「この間、ルイズお嬢さんにも言った事なんだが、さすがに6千年は寝過ぎじゃないかと思うよ。
 多分、魔法っていうある意味、万能の道具があればこその話だったんだろうけどね。」
「あら、じゃあヒューの所の歴史ってどれ程なのかしら?」
「そうだな、“災厄(ハザード)”でごたごたした件もあるし、いいとこ2千5百年いってないんじゃないか?
 後、技術が発達し始めたのはごく近年の出来事のはずだから、技術革新という点でみると千いや大体7,8百年ってところか。
 まあ、それ以前にも文明はあったらしいけどな、そこら辺の詳しい記録は残ってないからこれは別と考えていいだろう。」
「なるほど、そういった話を聞くと確かに6千年は止まりすぎね…。」
「多分、魔法の限界に関係があると思う。」
「え?タバサもそう思ったの?」
「何よ、2人して分かっちゃって、私にも分かるように説明してくれない?」
「恒常性や持続性の問題。」
「よく考えてみなさいなキュルケ、私達が使う魔法は基本的に個人の精神力頼みでしょう?
 確かに王族同士で組み合わせるヘキサゴンスペルとかあるけど、それにしたところで威力の上昇こそあれ、持続性という点で見れば普通の魔法と変わらない上に精神力頼みなのは間違いないわ。」
「そっか、そういえば貴女やヒューが持っている道具は精神力なんて使わないものね。
 マジックアイテムにしたところで動力を得る事は難しいし。」
「ええ、これもヒューに聞いた話なんだけど。ヒューが住んでた場所の近くにある“日本”っていう国では、空の彼方に光を集める道具を置いて、その力で電力を賄っていたそうよ。」
「は、ははは。もう何て言ったらいいか分からないわね。」
「ええ、私だってさっきの『ディティクトマジック』でマジックアイテムじゃないって分かるまで半分位信じてなかったもの、無理ないわ。」

そんな話をしながら一行は寝具や服を揃えていく。
寝具を購入し、さて服を購入しようと言う話になるとルイズとキュルケの間で意見の衝突が勃発した。
購入してもらう立場のヒューとしては下着とそこそこの古着でいいかと思っていたのだが、ルイズの「ヴァリエール家の郎党としてみっともない格好をさせる訳にはいかない!」という怒号と共に服を仕立てようという話になったのだ。
しかし、ここでヒューを気に入ったキュルケがルイズにちょっかいをかけ始める。

「ちょっと!人の使い魔になんて物着せようとするのよ!」
「あらいいじゃない、私からの個人的なプレゼントなんだから。人である以上貴女の趣味を押し付けるっていうのはどうなのかしら?」
「あー、お嬢さん達、肝心の俺の意見は…」
「黙ってなさい!御主人様の見立てに文句は言わせないんだから!」
「あーら、最近の流行から取り残されたトリステイン貴族のファッションセンスなんて高が知れてよ?」
「何ですって!」
「…店員さん、ちょいといいかい。」
「はい、何か御用でしょうかお客様。」
「今着ているものと大体同じ様な物は作れるかい?」

ヒューの質問を聞いた店員は全身を眺めやった後、問題無いという返答を返す。

「助かったよ、じゃあトリステイン魔法学院のルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール宛てに、…そうだな3着程、送ってくれ。」
「畏まりました、では寸法を頂戴いたしますのでこちらへどうぞ。」

店員に寸法を測ってもらったヒューが店内に戻ってくると、ルイズとキュルケは呆れた事に未だ口論を続けていた。
よくもまぁ、ネタが尽きないものだと呆れて見ていたが、流石に昼近くになると腹の具合が寂しくなる、見ると2人もネタ切れなのか肩で息をしながら膠着状態に陥っていた。
しかし、ここである意味救いの神が現れる。神は睨み合っている2人の腹から出てきた。

くぎゅうううう、きゅるるるる

ステレオで起きた休戦の喇叭は店内に響き渡り、2人の少女の頬を赤く染めていく。

「ルイズお嬢さん、キュルケ。いい加減昼にしないか?」
「そ、そうね今日のところはこの辺で勘弁してあげる。」
「あら勘弁してあげるのは私の方よ。」
「いいから早くいく。」
「「はい」」

未だ口論を繰り広げようとする2人を、タバサの底冷えする様な声が遮り、めでたく昼食となった。

「ルイズお嬢さん、服の方はこっちで手配しておいたからな。昼からは武器屋に行こう。」
「ちょっとヒュー何勝手に!」
「お嬢さん達に任せてたら武器屋に行けなくなりそうだったからな、しょうがないだろう。
 それに俺はもう28だ、派手なのは勘弁してくれ。」
「・・・まあ、しょうがないわね。
 服は個人の好みもあるし、いいわよもう。」

ヴァリエールとツエルプストーという珍しい面子で囲んでいた食卓ではあったが、何事もなく終了する。
そうして武器屋へと行く道中、キュルケとタバサから疑問が上がった。

「そういえばヒューって魔法は使えないって言ってたじゃない?」
「ああ。」
「じゃあギーシュの『ワルキューレ』を切断したのって、何かの武器っていう事よね?」
「そうなるわね。」
「あれだけの威力の武器持っているのなら、別にハルケギニアの武器なんていらないじゃない。
 何でまたわざわざ武器を買おうなんて思ったわけ?」
「必要だからに決まっているじゃない。」
「なによ、教えてくれたっていいじゃない。」
「できるだけ秘匿したい?」
「まぁ、そうだな。そこら辺の事情は今夜まとめて教えるよ。」
「期待する。」
「ええと、秘薬屋の近くだから…ああ、あそこね。」

ルイズが指差した場所には剣が交差した看板を掲げている店があった。扉はくたびれているが武器をあつかっている為か、かなりしっかりした造りになっている。
3人の女生徒は始めて入る場所に緊張しつつ、ヒューを伴って店内へと入って行った。
中は様々な武器や道具が積み上げられており雑然とした雰囲気を醸し出している、カウンターの奥にはパイプを咥えた初老の域に至ろうかという男性が場違いな客をねめつけた後、相好を崩し満面に愛想笑いを浮かべた。

「これはこれは貴族の奥様方、うちは真っ当な商売をしてまさぁ。
お上に目をつけられるようなことなんざ、欠片もありませんや」
「客よ。」
「へ…?」
「何、貴族が客じゃあ何か変なの?」
「い、いえいえ!ただ樵は斧を振る、陛下はお手を振りなさる、それでもって貴族の方々は杖を振ると、ワシ等平民の間じゃあそれが相場って物でして。へい。」
「私じゃないわ、使うのはこっち。」

と店主の言葉にルイズはヒューを指し示す。
店主はその言葉を聞いて、改めてヒューをジロジロと観察する。全体的に細身なヒューを見て大振りな剣は無理かと少々残念に思いはしたが客は客である、話を聞こうと改めて愛想笑いを浮かべる。

「なるほど、剣を振られるのはそちらの従者さまでいらっしゃる。
 失礼ながらそちらの方の体格ですとこちらのレイピア等はどうでしょうか、これであればそこそこの力でも振れますし。
 特にこのレイピアなら貴族様の従者に相応しい風格もあろうというものです。
 そういえば最近では貴族の方々の間で従者や下僕に武器を持たせる事が流行っている様ですねぇ。そういった方々はこの様なレイピアや、そちらにあるハルバードなんかを好んでご購入されますよ。」

店主が示したレイピアやハルバードを見ると、それは宝石や金銀で飾り立てた実に見事な品だった。ルイズは一目見て気に入ったが使うのはあくまでもヒューだ、服と違って自分の意見を挟むより本人に任せる方がいいだろうと思ってヒューを見ると、当人は店内を珍しそうに見回している。

「ヒュー、使うのは貴方なんだから自分で決めて頂戴、私としてはこれとか良いと思うんだけど。」

と、さっき見て気に入ったレイピアを指し示しながらヒューに話しかける。

「ん?ああ、どれどれ。…ルイズお嬢さんこれは駄目だろう。」
「何でよ?綺麗だし格好良いじゃない。」
「いや、俺が欲しいのは実用品だ、こんなピカピカしたもの日常的に持つなんて勘弁してくれ。」
「おっと、旦那そいつは聞き捨てなりませんな。これはかの有名なゲルマニアのシュペー卿が鍛えたものでして、鋼鉄ですら切り裂けるって業物でさあ。」
「なるほど魔法がかかってるって事か、じゃあちょっと見せてもらえるかな?」
「へい、怪我をされないよう気を付けて下さいよ。」

レイピアを受け取ったヒューは刀身の腹を数箇所叩いた後、店主に向き直る。

「親父、残念だがこいつは何回か使っただけでポッキリ逝くぞ?」
「な、なんですってぇ?そんなはずは。」
「こいつの刀身を何箇所か叩いたら所々で妙な音が聞こえた、多分刀身の強度にばらつきがあるんだ。
 例え魔法で強化されていてもあまり使いたい代物じゃあないな。」
「ちょっと、ヒュー見せて貰っていいかしら?」
「キュルケ?どうした。」
「ウチとシュペー卿は取引があるのよ、そのシュペー卿の失敗作が出回ってるなんて言われたら黙ってられないわ。」
「なるほど、じゃあどうぞ。」

ヒューは軽い感じでキュルケにレイピアを渡す。受け取ったキュルケはためすがえつ確認をした後、一つ大きな溜息を吐く。

「で、どうだった?」
「そうね、シュペー卿のサインも間違いなく本物だわ。確か以前シュペー卿から戒めとして残しておいた失敗作が盗まれたって話を聞いた事があるから多分これの事ね。
 御主人これの他にシュペー卿の作品はあって?」
「い、いえ。ウチにはそれ一本だけでさあ、流れの傭兵から手に入れたって仲買い人からの紹介でして。」
「そう、それは良かったわ。
 これは私が買い取ります、おいくら?」
「い、いえ!そんな代物とは知りもしなかったんで。引き取って戴けるんならタダで結構です!」
「駄目よ」
「へ?」
「これはシュペー卿の信用の問題です。もしこういった代物を卿が作って売り払っていると知られて、広まったりたらあの方の信用は失墜してしまうわ。」
「ではこれほどで。」
「いいでしょう、ではくれぐれも。」
「分かっております、…やれやれ何てこった。」
【はっ!ざまぁねぇなぁ親父!そんな剣として使えるかどうかも疑わしいヤツを買った罰が当たったってぇわけだ!】
「何だと!おい!デル公お客様がいらっしゃるんだ、ちったあ黙ってろ!」
【客だと?貴族の娘っ子とヒョウロク玉だけじゃあねえか!こんなのは武器屋の客じゃねえよ!】
「うるせぇ!黙らねぇと貴族様に溶かしてもらうぞ!」
【面白れぇ!やれるものならやってみやがれ!こちとら長く生きててうんざりしてるんだ!】

いきなり響いてきた第6の声にヒューたちは周りを見回す。
すると樽の中で鍔元の金具をカタカタ動かしている奇妙な剣が見つかった。

「何これ?インテリジェンスソード?」
「へえ、どこの貴族様が作ったのかは知りませんが、何しろ口が悪いの何の、ほとほと困っている所でさあ。」
「確かに」
「こっちにもバディ搭載の武器があるのか、どれ。」

物珍しさも手伝って、樽の中からヒューがインテリジェンスソードを引き上げる。
出てきたのは刀身に錆が浮いている長さ150サント位の片刃の長剣だ、ヒューが見た感じトーキョーN◎VAで時折見かける斬魔刀に似ているが刀身の幅は此方の方が遥かに広い。
ヒューは先程のレイピアと同じ様に刀身を何度か叩き、次いで軽く振ってみる。
強度は問題ない。しかし一番驚いたのは重量だ、恐らく斬魔刀以上の重量があるだろうと思って振ってみるとその意外な軽さに驚きを覚える、見たところ刀身は錆びているものの刃の部分にはシミ一つ無かった。
錆の件は何か作為的なものを感じるが、武器として使う分には問題は無いだろう。そう思っていると不意に手元から話しかけられる。

【ん?おめぇもしかして“使い手”…か?妙だな、感じとしては“使い手”だが何か…。まぁ、いいや、おいお前】
「ルイズ、これを買おう」
【て、おい!人の話を聞きやがれ!…って買ってくれんの?】
「え?いやよそんな錆だらけの剣。どうせならもう少し立派な剣にしときなさい。」
「いや、これは中々お買い得だと思うがね。そうだ親父さん、こいつで苦労してるんだろう?」
「へ?ええ、武器を買いに来る客は馬鹿にするわ、喧嘩を売るわで。」
「この樽の中にある武器はいくら位になっている?」
「そうですな、大体一本100エキュー金貨ってところでしょうか。」
「じゃあ、こいつとナイフを3本。後は砥石とかの武器の手入れ道具一式、それとこいつの鞘を入れて100はどうだ?」
「え?そこまで入れてですかい?」
「商売を邪魔されて苦労してるんだろう?金をもらえて厄介払いまで出来るんだ。良い取引だと思うんだけどな。」
「ん、う~ん。いいでしょう!さっきのシュペー卿の剣の事も旦那が来なければとんでもない事になってたんだ!
 お買い上げありがとうございやす!」
「えー?ヒュー、本当にそれにするわけぇ?」
【うっせぇぞ娘っ子!相棒がオレサマを選んだんだ、ごちゃご言ってんじゃねぇ!】
「奥様奥様、煩いようでしたらこの通り鞘に入れちまえば」
【あ!なにしやがる親父てm…】
「静かになりますんで。」

店主は意外な事件に巻き込まれはしたが、そこそこの値段で買い取ってもらった事と厄介払いが出来た事で、その日は美味い酒にありつけたという。

当初の目的を済ませた一行はシルフィードに乗り、魔法学院へと帰還したのだった。

そして魔法学院の夜、ルイズの部屋に2人の来客があった。
キュルケとタバサである。

「こんばんわ」
「お邪魔するわよ。」
「いらっしゃい、クッションがあるからそこら辺に座って頂戴」
「ああ、そうそう。これ長くなりそうだからお茶請け持って来たわ、遠慮なくつまんでね。」

ルイズ・キュルケ・タバサ・ヒューがお茶請けを中心に車座になるように座る。

「じゃあ、約束だから話すけど昼間にも言った通り他言無用よ?いいわね。」
「わかってる。」
「安心なさいな、話して良い事と悪い事の区別はつけてるつもりよ。」
「じゃあタバサ、盗み聞きされないようにサイレンスを扉と窓にかけてもらえるかしら?」
「わかった。」

「さて、じゃあ何から聞きたい?タバサから順に一つづつ質問を聞いていこう。」
「ちょっとヒュー、主である私が最初じゃないの!?」
「ルイズお嬢さんには昨日、色々と話したからな。それに一応、今日はタバサとキュルケにした約束を優先するべきじゃないか?」
「なら一つ目…」


ルイズ達の質問に答え終わったヒューは、今日購入したインテリジェンスソードを持って学院の裏庭へと来ていた。
周囲に誰もいないことを確認すると鞘から抜き放つ。

【っぷあ!何だい何だい、いきなり鞘に押し込みやがって!】
「よう」
【お、相棒じゃあねえか。ひでぇなあおい、折角かび臭いとこから出られたと思ったらこんな扱いするなんてよ。】
「ああ、悪かった、どうにも御主人サマは騒がしいのは苦手らしくてな。」
【はっ!一番騒がしいのは何処のどいつだってぇ話だなそいつは、おっとそういえば自己紹介がまだだったな。
 オレサマはデルフリンガー、気軽にデルフとでも呼んでくれや。】
「そうか、じゃあこれからはデルフって呼ばせてもらう。これからよろしくな、俺の…」
【おおっと!皆まで言うな。使い手の事は大体分かるのさ、お前さんはヒュー・スペンサーだろう?
 しかし、オレサマも色んなヤツに使われてきたが、何だね相棒ボロボロじゃねぇか!よくもまぁこんな状態で生きていられるもんだ!】
「掛かり付けの医者が凄腕だったからな。
 しかし、使い手というのが何か分からんが、お前には所持したヤツの情報を読み取れる能力があるのか?」
【おう、…のはずなんだけどなぁ。なんかはっきりしねぇのさ。】
「どういう事だ?」
【ああ、お前さんの事は分かるといえば分かるんだが、あくまで表面的なものなのでね。
 こいつはあれだな、ルーンが上手い事働いてないんだ。】
「ルーン?」
【お前さんの左手に刻まれているヤツの事さ。】
「色々と知ってるようじゃないか、デルフ。」
【とは言ってもな、結構長い事生きてたもんでほとんど忘れちまったよ。】
「忘れる?というとどこか故障してるっていうことか?」
【さあ、どうだろうな。オレサマにも分かんね。】
「ふぅん…、どうにも釈然としないな。」
【何がだい相棒。】
「それだ、その相棒っていう呼び方、それにお前さんを覆っている錆だな。」
【どっか変なのか?自分の持ち主を相棒って言うのならおかしくねぇだろう。】
「じゃあ、俺の前に使ってたヤツの事はどう思っていた?」
【そりゃあ“お前”とか“旦那”とか…あれ?そういや相棒ってのはお前さん位だな。
 そういや錆がどうとか言ってたけど、どっかおかしいか?いやまぁ武器に錆が浮いてるってぇのは褒められた事じゃないけどよ。】
「不自然だ」
【どこが?】
「錆は刀身全体を覆っているのに、剣としての肝心な部分…刃の所にはシミ一つ浮いてないじゃないか。
 流石にこいつはおかしい、意図的なものを感じる。」
【そうかいタダの偶然だと…】
「それは無いな。」
【何でだよ。】
「金属が錆びたり腐食したりするのはごく普通の化学反応だ、なら特定部位のみ免れるというのはどうにも理屈が合わないだろう?
 しかもデルフ、お前はメイジに作られたインテリジェンスソードだ。なら武器として劣化しないよう処置を受けているのは当然だ。何しろ様々な物を切るために作られたんだからな、そこら辺は間違いないはずだ。」
【…】
「俺に誤魔化しが効くと思うなよデルフ、これでもN◎VAじゃあ名の売れたフェイトだったんだ。」
【…、おでれーた!参ったね。今回の相棒は中々どうしてやりずらいじゃないか!ええおい、ガンダールヴ!】
「ガンダールヴ?」
【おうとも、相棒の左手に刻まれているルーン。そいつは“ガンダールヴのルーン”だ、ありとあらゆる武器を使いこなせるようになるって代物さ。】
「武器の使用方法が理解できるようになるって事か?」
【おう、大体そんなところだな。後は武器を持ったら肉体的にも強化されるはずだ・・・はずなんだが、おっかしいなぁ。
 相棒、身体が軽くなったりとかは?】
「無いな。いや、痛みとかはかなり楽になっている。」
【痛みの方はあれだな、使い魔になったせいである程度、生命力が強化されたんだろう。しかし、身体能力の強化がされてないのは何でだ?】
「まあ、何とはなしに覚えがある。」
【へぇ、聞かせてくれるかい?】
「ああ、この間といっても3日程前の話だが。とある騒動に巻き込まれて戦ったんだが、その時<IANUS>が妙な反応をした。」
【<IANUS>ってえのは・・・ああこれか?相棒の頭ン中やら神経にひっついてる。】
「ああ、そいつから“詳細不明の”<サイコアプリケーション>があるって報告を受けた、多分それがデルフのいう“ガンダールヴのルーン”とやらだろう。」
【なるほどな、その<IANUS>が相棒の精神に閂かけているせいで、上手い事ルーンが働かない訳だ。
 で、どうするんだい?】
「どうするって?」
【閂を外すかどうかって話だよ。分かってるんだろう?ルーンを使えばかなり強くなれるって。】
「ああ、けどな。そうそう使う機会があるとは思えないんだが。」
【いいや、そいつはどうかな?】
「どういう事だ、デルフ」
【“ガンダールヴ”ってぇのは普通の使い魔じゃあねえのさ、使い魔になって何日か過ごしたんだろう?何か感じなかったか?相棒】
「そうだな・・・、人間の使い魔が俺だけってところか?」
【そうさ、普通のメイジが従えるのは普通は動物、良くて幻獣ってところだ。だけどな相棒の“ガンダールヴのルーン”は人にしか発現しねぇ。】
「確かにな、動物が武器を使えた所で口に咥えるのが関の山だ。」
【そうだとも、それにガンダールヴの本当の凄さはそこじゃあねえのさ】
「どういう事だ、まだ何かあるのか?」
【ああ、ガンダールヴは“心の震え”を力に変える事ができるんだ】
「“心の震え”?感情の揺れ幅が大きいとそれだけ力が出せるという事だな?」
【そうだ。怒りや悲しみ、そういった感情を感じる事で出せる力が大幅に変わるのさ、動物とかでもこの手の感情はあるんだろうけどな、そこら辺の複雑さはやっぱり人間が一番強いんだろうよ。】
「なるほど、しかしそいつはまた難しい話だな。」
【だよなぁ、相棒枯れっちまってるもんなぁ…。戦闘力じゃあピカイチなんだけど“心の震え”って点から見ると最弱だよな…】
「そうそう美味い話は無いって事さ。」
【とりあえず、相棒の話はこんな所だ。次はお嬢ちゃんの話だな】
「ルイズの?」
【ああ、相棒がガンダールヴだってぇのは分かったな?じゃあそんな特別な使い魔を使役するメイジは本当に普通のメイジなのか?って話だよ。
 そう、違う。特別な使い魔を使役するのは特別なメイジなのさ!お前さんみたいな人間を使い魔にできるのは“虚無”のメイジだけなんだよ!これだけは断言してみせるぜ。この世界は今、混乱期に入ろうとしてるんだ!
 ブリミルの時代から長い事眠り続けてきた世界だ、揺り返しはきっととんでもなくデカイ物になるぞ、それこそ世界を巻き込んだ大騒動だ。
 さて、違う世界から来たお前さんならもう分かるだろう?】
「ああ、戦争・・・だな?」
【そうだとも、きっと今頃いろんな所で色んな火種が燻ってるはずだ。
 まぁ、オレサマはただの剣だからな、相棒がどうするかは相棒が決めてくれ。閂を外すも外さないも相棒の心一つさ。】
「心一つか…、とりあえずは使わないのが無難か…。
 そういえば妙な事を言ってたな、“虚無”のメイジがどうとか」
【ああ、言った。
 お前さんの主は“虚無”の使い手さ】
「その“虚無”っていうのは普通の魔法とは違うのか?」
【ああ、かなり違う。
 普通の魔法…面倒だから系統って言うがな、こいつは基本的に4元素を模した現象を発現できる。まぁ組み合わせる事で色々とバリエーションが出来るんだ。
 対して“虚無”っていうのは基本的に系統とは全く異なる魔法なのさ。長々とした呪文は必要になるものの、その威力は系統と比べると雲泥の差があるし、何より詠唱を途中で止めてもある程度の効果がある。
 まぁ、使う精神力も半端じゃないんだけどな。】
「となると今のままじゃルイズは」
【普通に考えると系統は使えねぇよ。コモンにしたところで“虚無”に目覚めねぇ限り使えないだろうしな。】
「セキュリティがかかっている状態か…。何がしかの処置を施さない限り使えないという事だな?」
【ああ、お嬢ちゃんは多分王家の血を引いてるから“虚無”の使い手になっちまってるんだろう。
 となると、後必要なのは王家に伝わるルビーと始祖伝来の秘宝だな、それさえあればお嬢ちゃんは晴れて伝説の仲間入りってわけだ。
 どうする?お嬢ちゃんにこの事話すか?きっと喜ぶんじゃねぇのか?】

デルフの試す様な問いにヒューは暫く考えた後、首を振った。

【へぇ、そいつはまたどうしてだい。】
「俺はルイズ達にしてみれば外様だからな、ルイズ達は自分の方が魔法の事を理解していると考えてる。
 恐らく信じはしないだろう、その時というかもう少しうまいタイミングを考えるさ。」
【相棒がそう判断したのならオレサマはそれに従うさ。】
「すまん。後、何か隠している事とかあったりするか?」
【そうだな、後はオレサマのステキ能力位か?】
「例えば?」
【うむ!錆を出したり消したり出来る。】
「他には?」
【そうだな、メイジの魔法を吸収したり。その魔力で相棒を動かしたり強化できるってところか?持ち主の情報読み取りは言ったからな、そんなところだろう】
「なるほど、中々便利じゃないか。」
【だろう?伊達にガンダールヴ専用を謳っちゃあいねえさ。で、どうする錆は取っとくかい?】
「ああ、そいつは頼む。どうにもルイズの受けが悪いからな、捨てられて妙な武器をあてがわれるのも困る。」
【あいよっと、どうでいこれがデルフリンガー様の本当の姿だ。】

一瞬の光の後に現れたのは、眩く煌く剣だった。

「なるほどな、こいつはあの親父に悪い事しちまったかな?」
【はっはっは!いいって事よ!今頃は今日の売り上げ持って酒場でご機嫌に決まってるんだ。良い夢は見れるときに見せとくもんさ。】
「そうだな。デルフ、もう少し光を抑えてくれるか。普通の業物に見える程度に落としてくれると助かるんだが。」
【あいよ…っと、こんなところか?】
「うん、そんな所だろう。すまんなデルフ」
【良いって事よ、これからよろしくな相棒。】

そう言うと、デルフはもう話すつもりもないのか黙り込んでしまう。
ヒューは夜空を煌々と照らす双月を見上げながら溜息を一つつくのだった。



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