あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

装甲騎兵ゼロ-05

第5話「理由」

朝食が終わり、昼食の時間までは授業となる。
ルイズたちが教室に入ると、食堂のときと同じ視線が向けられた。静かな笑いも聞こえる。
蔑視と嘲笑を、片や仏頂面で受け止め、片や無表情で流し、段上になっている席へと向かう。
ルイズは椅子に座ると、「メイジの席だから、使い魔はダメ」と、キリコに床へ座るよう促す。
するとキリコは特に何も言わず、ルイズのすぐ隣の石段に腰を下ろした。

「……。」
片ひざを立て、黙って床に座る自分の使い魔をルイズは眺める。
(そういえば『使い魔のことは了承した』って言ってたっけ……。)
だったらその立場や扱いというのも、ある程度分かっているのかも知れない。
本心はどうであれ、素直に命令を聞いたキリコの行動に、ルイズはそう自分を納得させていた。

時間が経つにつれ、教室の椅子は生徒で埋まっていく。あちこちに使い魔もみうけられる。
その間も、二人は幾度となく見られては笑われていた。
しばらくして、一人の中年女性が教室に入り、教室の一番下の段にある教壇に立つ。
(格好がいかにも『魔法使い』だな。)
入ってきた女性を見ながら、キリコの頭にはそんな感想が浮かんだ。
「皆さんおはようございます。今日は使い魔を召喚してから初めての授業ですわね。
 全員無事に成功しているようで、このシュヴルーズも教師として喜ばしい限りです。」

そういって教室全体を見渡すシュヴルーズ。あたりには多種多様な使い魔たちがひしめいている。
彼女はこの光景を見るのを、毎年新学期の楽しみとしていた。
ふと、シュヴルーズは見慣れない格好の人間がいることに気づく。
コルベールや他の教師の話を聞いていた彼女は、すぐに思い当たった。
「あら、随分と変わった使い魔を召喚されましたね、ミス・ヴァリエール。」
そのシュヴルーズの言葉で、他の生徒達ががどっと吹き出した。

笑いで教室が包まれる中、誰かが言い始める。
「どうせその辺を歩いてた平民でも連れてきたんじゃないか~?」
「魔法が失敗したからって、インチキするのはよくないぜ。ゼロのルイズ!」
「ホントホント、貴族がズルなんてなぁ。」
何人かの生徒が代わる代わるルイズを馬鹿にしていく。
耐えかねたルイズが声を上げようとしたとき、ルイズを馬鹿にした生徒たちの口に赤土で蓋がされた。

見れば、厳しい目つきで杖を振ったシュヴルーズがそこにいた。
「いい加減にしなさい、お友達を悪く言うのは何事ですか。
 罰として、あなた方はそのまま授業を受けなさい。いいですね?」
先ほどの赤土は彼女の魔法だった。成り行きを見ていたキリコは驚いていた。
一定量の土の塊を複数個、手も使わずに飛ばすなど、彼の元いた世界では考えれらない現象である。
(確かに、魔法でもなければできないような芸当だ。)
改めて、ここが魔法の存在する『異世界』だということを思い知るのであった。


やがて授業が始まった。学年が上がってから最初ということで、基本の復習とやらが中心らしい。
シュヴルーズの講義内容(本人は否定してるが、やや『土』系統を贔屓している)に、生徒達は耳を傾ける。
先ほどの罰のせいか、お喋りをする生徒は一人もおらず、実に静かな授業風景となっている。
しかし彼らの使い魔達にとっては退屈でしかない。
それに加えて静かともなれば、昼寝には最高の環境だ。すでに殆どの使い魔は昼寝を始めていた。

その中で唯一、あくび一つもせず、真っ直ぐシュヴルーズに眼を向けるものがいる。キリコだ。
端から見れば、まるで授業を聞いてるようだ。本当に聞いてるかはわからないが。
そんなキリコの様子を、ルイズは横目で眺める。
(てっきり居眠りでもするかと思ったけど……ひょっとして意外と真面目?)
眠るそぶりも見せない、無愛想な自分の使い魔を見ながらルイズは思った。

そんなキリコを、シュヴルーズは誰よりも真面目な授業姿勢(彼女にはそう見えた)だと感心していた。
「ミス・ヴァリエールの使い魔は、実によく授業を聞いているようですね。
 主人であるミス・ヴァリエールも努力家だと聞いていますから、きっと早くも主人に似たのでしょうね。」
笑顔でシュヴルーズは語る。褒められたルイズは嬉しかった。
内心では、キリコと自分が似ているというのには、ちょっと納得いかないようだが。
「そうですわ。ミス・ヴァリエール、あなたに『錬金』をやってもらいましょう。」
シュヴルーズの提案がなされた瞬間、瞬く間に教室の空気が凍りついた。

キュルケが恐る恐るシュヴルーズに言う。
「先生、その……、危険だからやめといた方がいいと思います。」
「どうして危険なのですか?」
シュヴルーズはキュルケの言っている意味がわからないといった顔になる。
「ルイズを教えるのは今日が初めてですよね?」
「えぇ。ですが先ほどもいったように、彼女は努力家だとも聞いています。さぁ、ミス・ヴァリエール。
 あなたの努力を見せてあげなさい。例え失敗しても、それを恐れては何もできませんよ。」

当のルイズといえば「やります。」と教壇に向かっていく。他の生徒は一斉に机の下に隠れだした。
「……?」
成り行きを見守っていたキリコが、周りの様子に疑問を抱いた。
「キリコ、あなたもはやくこっちに!」
呼ばれたほうをみれば、キュルケが手招きして自分を呼んでいる。
状況がさっぱり理解できないキリコだが、とりあえず言われたとおりに向かった。

「一体なにが起こるというんだ?」
生徒達のただならぬ様子に、思わずそう聞くキリコ。
「すぐにわかるわ。」
と、キュルケからの回答はよくわからない。
だがなにやら危険だということを、キリコは周りの空気から感じ取る。そのときだった。
教壇から、教室の隅にまでとどくほどの、実に盛大な爆発が起こった。
「っ……!どうなってるんだ……。」
「あの子、魔法を使おうとすると、いっつもこうなるのよ。」
キリコは机の下からでて辺りを見回す。


教室の有様は酷いものだった。
窓ガラスは割れ、机もボロボロ。椅子にいたっては殆ど吹き飛ばされている。
また爆発音により、寝ていたところを起こされた使い魔が騒いだり、パニックになっていた。
教壇の方を見れば、至近距離で爆発をくらったシュヴルーズがのびている。
その直ぐ近く、爆発引き起こしたルイズも、服があちこちボロボロだった。
ルイズはで汚れた顔をハンカチで拭きながら、涼しい顔で言う。

「ちょっと失敗しちゃったみたいね。」
その言葉に、たちまち生徒たちの非難が飛んでくる。
「どこがちょっとなんだよ!ゼロのルイズ!」
「いつでも魔法失敗で、成功回数ゼロじゃないか!」
教室が非難と混乱で騒がしくなる中、キリコは立ち尽くすルイズを見つめていた。


ルイズたちの教室が、爆発で大騒ぎになるのと同じ頃の図書館。
その中で教師のみ閲覧可能な書物のある、『フェニアのライブラリー』にコルベールの姿があった。
(あのルーンの形状……確かに見覚えがある。)
彼はキリコの左手にあったルーンが、どうしても気にかかってた。
それを調べるため、今朝から殆ど休まずに図書館の本を漁り続けている。
やがてコルベールは一冊の古書にたどり着いた。タイトルは『始祖ブリミルの使い魔たち』。
(これならば、もしかしたら……。)

書棚から古書を引き抜き、手早くページをめくっていく。
そしてある記述に目が止まり、ページをめくる手もその動作を止めた。
コルベールは恐る恐る、ポケットから先日とっていたルーンのスケッチを取り出す。
そしてそのスケッチと、本に記述されている『あるもの』を見比べる。
(やはり……、これは間違いない!)
何かを確信したコルベールは、慌てた様子で図書室を飛び出す。
脇に先ほどの古書を抱えて、オスマンのいる学院長室へと駆けていった。

コルベールもいなくなった図書室は、完全に無人となっていた。
『フェニアのライブラリー』では、片付けられないままの本が、乱雑に散らばっている。
コルベールが読んでいた本の種類は様々で、中には非常に胡散臭いものも混じっている。
その中の一冊に、現在でも解読不能な言語で書かれた書物が埋もれていた。
だが、その本が読まれることになるのは、まだずっと先のこと。
今はただ、誰も読めない謎の書物として扱われるだけであった。


キリコとルイズは、爆発で散らかった教室の片付けをしている。
先の爆発からしばらくして、騒ぎを聞きつけた教師たちが駆けつけた。
授業は中止となり、騒ぎの原因を作ったルイズに対しては、罰として教室の片付けが言い渡される。
『魔法を使わずに』という制約つきだが、元々使えないルイズにはあまり意味がなかった。
どの道自分の手でやるしかなかったのである。
ちなみに掃除をする前、ルイズとキリコの間でこんなやりとりがあった。


「先に言っておくが、俺に全てやらせる気なら断る。」
「ま、まだ何も言ってないじゃない!?」
何も言って無いのにずばり自分の考えを当てられ、尚且つ拒否されたルイズは固まる。
もっとも、今までの彼女の行動からすれば、容易に想像がつきそうなことではあるが。
「……じゃあ、手伝いなさいよ。使い魔なんだから。」
どこか諦めにも似た気持ちでそう言うと、キリコは箒を取って床を掃き始めた。

(なんで使い魔に命令するだけで、いちいち言葉を選ばなくちゃいけないのよ……。)
ハァ、と思わずため息が出るルイズ。
そういった主人の心情など欠片も考えることはなく、キリコは掃除の指示を出す。
「俺は破損した机やガラスの運搬、交換をやる。ルイズは雑巾で汚れた場所を拭いてくれ。」
「~っ、使い魔のくせに、主人に対して普通に命令してるんじゃないわよ!」
そんなこんなでどうにか掃除を終わらせ、二人は食堂へ向かう。


今日一日の食事を抜かれていたキリコは、食堂に入らず外を歩いている。
何処か、食事を提供してくれそうな場所を探しているのだ。
(考えられるのは、やはり厨房か。)
もらえるかどうかは分からなくとも、頼むだけ頼んでみるつもりらしい。
そんな思惑でキリコが厨房を探していると、見覚えのある顔に出会った。
「あ、キリコさん。」
彼女のほうも気づいたようだった。

「シエスタか。」
「どうなされたんですか、こんなところで。」
「厨房を探している。飯を提供してもらえないか頼もうと思ってな。」
「そうでしたか。厨房なら、私も行くところだったのでご案内しますわ。」
歩き出すシエスタに、キリコも付いていく。

「でもご飯の提供って……ミス・ヴァリエールから、頂けなかったんですか?」
「あの後口論があってな。結果として朝から抜かれた。」
「まぁ、朝からですかっ!?」
朝から何も食べていないのかと思い、シエスタは驚く。
「一応、携帯できる食料が少しあってな。朝はそれで間に合せた。」
「そうだったんですか……。」
シエスタは心配そうな顔でキリコを見る。
話しているうちに、二人は食堂の裏手にある厨房へとたどり着いた。

「ちょっと待っててくださいね。」
そういってシエスタは、小走りで厨房の奥へと消えていく。
少しして、皿を運んで戻ってきた。見れば皿には、暖かいシチューが入っている。
「余りもので作った賄い食ですけど、よかったら食べてください。」
「すまないな。頂こう。」
早速シチューを食べ始めるキリコ。一口食べると、動きを止めた。


「あ、もしかして、お口にあいませんでしたか……?」
シエスタは急に動きを止めたキリコを見て、料理が不満だったのだろうかと不安になる。
「……いや、そうじゃない。ここまで美味いものを食うのも、随分と久しぶりだと思ってな。」
「ほっ……そうですか。そういってもらえると、なんだか嬉しいですわ。」
黙々とシチューを食べるキリコを、安堵したシエスタは笑顔で眺めていた。

「助かった。」
空になった皿を返し、率直に礼を述べるキリコ。
「お腹がすいたら、またいつでも来てください。今みたいな賄でよければお出しできますから。」
「また飯を抜かれるようなことがあれば、そうさせてもらう。」
「はい、是非。」
まだ仕事があると言って、シエスタは再び厨房の奥へと姿を消した。
キリコも食堂へと戻るため、厨房を後にする。


食堂では、まだ大勢の生徒が食事を取っていた。
キリコは人の邪魔にならないよう、適当な壁に背を預ける。
(……まだかかりそうなら、ATを見てくるか。)
そう思い、自分の行き先をルイズに伝えておこうと、キリコは食堂を見回してルイズを探す。
(あれか。)
ルイズを見つけたキリコは歩き出した。そこで彼の足に何かが当たる。

「……?」
床を見て、キリコは何が自分に当たったのかを確かめる。
見れば、小瓶が転がっていた。拾ってよく見てみる。
瓶の中では紫色の液体が揺らめいていた。
(飲料……薬か?)
顔の辺りまで持ち上げ、光に透かしながらしばらく眺めていた。

「ちょっと、そこのあなた。」
呼ばれたキリコが振り向くと、そこには二つの巻き髪をもつ少女―モンモランシーが立っていた。
「なんだ。」
「その小瓶、なんであなたが持ってるの?」
モンモランシーはキリコの小瓶を指差しながら尋ねる。
「落ちていたのを拾った。」
「そう。それ私のなのよ、拾ってくれてありがとう。」
モンモランシーが手を差し出したので、キリコはその手に小瓶を渡す。

小瓶を受け取ったモンモランシーは、さっさとキリコの脇を通り過ぎていった。
キリコも特に気にせず、ルイズの元へ向かう。
一方ルイズは、昼食後のクックベリーパイに舌鼓を打っていた。
「~♪」
今朝に比べれば、随分と機嫌がいいようだ。至福の一時なのだろう。
「……?なにかしら。」
食堂の一角から、なにやら言い争いが聞こえる。そこにルイズも見知った顔がいた。


「ルイズ。」
見ていた一角から目を離し、ルイズが呼ばれた方に顔を向ける。そこにキリコがいた。
「あら、どうしたのよ。」
「まだ食事の時間はかかるか?」
「……?まぁ、もう少しかかるけど。それがどうしたの?」
「時間がかかるなら、言っておくことがあってな。」
キリコが話を切り出そうとしたときだった。

「そこの君。」
またもや呼ばれるキリコ。
呼んだのは、他の生徒とは少し違うシャツを着て、手に薔薇を持っている少年だ。
「ギーシュじゃない。どうしたのよ、顔が赤く腫れてるみたいだけど?」
「あぁ、そうか……ルイズ、君の使い魔だったか。いやなに、ちょっとそこの彼に話があってね。」
ギーシュは手に持った薔薇で、キリコを指して言う。

「君が瓶を拾ったせいで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
「「……?」」
最初、キリコとルイズにはさっぱり意味が分からなかった。
少しして理解できたのか、ルイズが口を開く。
「あぁ、今モンモランシーと一年の子とで何かやってたけど、そういうことだったのね。」
「説明してくれ。」
呆れた顔になるルイズに、いまいち状況を把握しかねるキリコが尋ねた。
ルイズと、一部始終を見ていた生徒達が説明する。

まずキリコの拾った瓶は、モンモランシーが自分のために作っている香水だという。
それをギーシュに送っていたということは、二人は付き合っているということになるようだ。
だが当のギーシュは、ケティという少女にも手を出していたらしい。
要は二股をしていたことが、キリコが小瓶を拾ったことがきっかけでバレたとのこと。
ギーシュはその責任を、キリコにとれといっているのだった。

「本はといえば、あんたがその瓶を落としたのが悪いんじゃない。」
「言い掛かりも良いところだ。」
ここにきて、何故か妙に息の合った二人。ギーシュの言い分を正論で粉砕する。
「ぐっ……。」
言葉に詰まるギーシュ。何かいうことが見つかったのか、再び口を開く。
「ふんっ。所詮は魔法の使えないゼロのルイズと、その使い魔である田舎ものの平民か。
 そもそもそんな君らに、貴族の機転を期待する僕のほうが間違いだったね。」
気障なポーズをつけ、二人を馬鹿にするギーシュ。

「な、なんですってぇっ!?」
「乗るな。安い挑発だ。」
馬鹿にされて怒るルイズの肩を、キリコが手でつかんで制す。
「でも!真正面から馬鹿にされて黙ってちゃ、貴族の名が廃るわ!」
(面倒だな、貴族とやらは……。)
口には出さないが、心の中でそうつぶやくキリコだった。


そんな二人を見て流れが自分に向いたと思ったか、ギーシュはさらに言う。
「ふむ、だったらどうするんだい?」
「そ、それは、どうするって……。」
言ってはみたが、具体的にどうするとまではルイズには考えられない。
ニヤリ、とギーシュが静かに笑う。
「では、決着をつけるために一つ提案をしよう。決闘だ。」

ギーシュのその提案に、食堂にいた生徒達にどよめきが走る。
「決闘って……何言ってるのよ。それは学院の規則で禁止されてるじゃない。」
「まぁ待ちたまえ。いくら僕でも、ルイズ、君と決闘なんかするわけないだろう。」
ルイズの反論に、逐一気障な仕草でギーシュはそう返す。
「じゃあ一体どういう……。」
ギーシュの言わんとしてることがわからず、ルイズは首をかしげる。
だがキリコのほうは分かったようで、その思惑を口に出す。
「こいつが決闘したいのは、どうやら俺のほうらしい。」

さらにざわめきが広がり、同時にギーシュは待ってましたといわんばかりの表情になる。
「そのとおりだ。確かに決闘は禁止されているが、それは貴族同士の場合だ。
 貴族と平民、もしくは使い魔の間での決闘は、特に禁止されてはいないからね。」
得意げな表情で、ギーシュは言葉を続ける。
「そ、それはそうだけど……。」
言いよどむルイズ。
「まぁそうでなくとも、君らが謝れば許すことを考えよう。」
「……っ!」
当然、そんなギーシュの提案を、ルイズが簡単に呑むわけもない。

しかし使い魔であるキリコに、決闘をさせて怪我をさせたくないともルイズは思う。
(ここでは)平民だが、それでも彼女の使い魔である。
(悔しいけど……ここはっ。)
『許すことを考える』とギーシュはいった。たぶん、そんな簡単ではないだろう。
しかし謝れば、この場は解決するかもしれない。ルイズはそれが一番良いと判断した。
そして謝るために頭を下げようとしたルイズだが、それをキリコは手で制す。
「え?」
「ん?」
ルイズとギーシュは同時に声を上げる。

「俺が勝ったら、お前は謝るのか?」
キリコの言葉に、一瞬間の抜けた顔になるギーシュ。すぐに先ほどの表情に戻る。
「ハハハッ、何を言い出すかと思えば!いいだろう、君が僕に勝てたら謝るよ。」
余裕な調子でギーシュは答える。
「約束は守ることだ。場所はどこだ。」
「勿論守るさ。ではヴェストリの広場で待っているよ、使い魔くん。」
そういってギーシュは去っていく。多くの生徒も、それに続いて食堂を後にする。


「ちょ、ちょっとあんた!何勝ってなことしてるのよっ!」
一連の流れにしばし呆然としていたルイズ。
何事かをようやく把握したようで、自分を抜いて話を進めたキリコに詰め寄った。
「俺もお前も、謝る理由がない。」
「それは、そうかもしれないけどっ……。」
キリコの言い分ももっともだが、だからといって戦わせるわけにもいかない。
なんとかして決闘だけはやめさせようと、ルイズは説得する。

「聞いて。メイジが相手じゃ、平民のあんたは絶対に勝てないの。」
「魔法が使える、使えないの違いか。」
キリコの予測を、ルイズは続く言葉で肯定する。
「そうよ。下手をしたらあんたは死ぬかもしれない。
 だから早いうちに謝っておけば、きっとギーシュだって許して……。」
「あいつの何にあやまるのか、俺には分からないな。」
「だからっ、それは……とにかくっ!」

なおもルイズはキリコに食い下がる。だがキリコの決意は変わらない。
「相手が魔法を使うなら、こちらも相応の準備が要るな。」
言ってキリコは歩き出す。ルイズもその背中を追う。
「あ、待ちなさいっ!」
歩むキリコの頭は、『メイジ』という未知数の相手とどう戦うかを考えていた。
日が傾き始めた午後。キリコの眼は、傾いた日差しより、鋭い。



予告

人は戦うとき、それに求めるものは何か。
あるときは、勝利という栄光を。
あるときは、金銭という賞品を。
あるときは、寵愛という心情を。
しかしどれも、命というチップに遠く見合わない。
危険という名の快楽求め、粗暴なギャンブルが始まる。

次回「決闘」
その値打ちもまた、二束三文ですらない。


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