あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ナイトメイジ-30


ひんやりとした洞窟の空気を首筋に感じ、ルイズは背筋をぶるっと振るわせた。
一方、隣のキュルケはというと全然寒さを感じている様子はない。
火のメイジは体温が高くて寒さに強いという噂を聞いたことがあるけど、それは案外本当かも知れない。
そんなことを考えながら目を懲らすと、闇の向こうには赤い松明の光が揺れていた。
それは先にこの洞窟に入っている盗掘団の灯りだ。
「二人はここで待っていてください。私は先に行って盗掘団を脅かしてきます。その後、私が合図をしたら動いてください。それまでは決して動かず、静かにしていてください。いいですね」
声を潜めるコルベールにルイズは首だけを動かして答えた。
「あれから洞窟には誰も入って来てませんわ」
キュルケは使い魔を連れていない。
彼女の使い魔のサラマンダーは絶えず尻尾で炎が燃えており、暗い洞窟の中では目立って盗掘団にすぐに見つかってしまうからだ。
かわりに外の茂みの影に隠れて見張りをしている。
キュルケは自分の使い魔の目を通して見た事を言っているのだ。
「では、後ろから挟み撃ちに合うことはありませんね」
確認したコルベールはに迷うことなく真っ暗な洞窟の奥に足を進めていく。
少し時間がかかるかと思っていたが変化はすぐに起こった。
洞窟の奥から盗賊達がざわめく音が聞こえてきたのだ。
反響して聞きづらい声を聞き取ろうとルイズは耳をこらした。
すると今度は風を切る音が聞こえ、直後に盗賊達が騒いでいる場所の天井が崩れる音が聞こえてきた。
「今のは警告ですぞ。命が惜しくば立ち去りなさい!」
コルベールの声に盗掘団が慌てるざわめきがどんどん大きくなる。
耳をこらし続けるルイズは、ざわめきの中にある声を聞き取れるようになってきた。
「今の声?まさか、コルベール先生」
聞き覚えのある声がする。
主に教室でよく聞く声だ。
だが、それを遮って聞こえてきたのはもっと聞き覚えるある声だった。
「タバサ、向こうに魔法を撃って。そのあたりよ」
その声を聞いたルイズの頭には、にやにや笑う金色の目が浮かんでいた。
「ピンクブロンドの凶暴なのが居そうな気がするわ」
「誰が凶悪よ!あんた、わかってやってるでしょ」
手近に落ちていた石をひっ掴んで、声の方向に砕けよ顔面とばかりに力一杯投げる。
水平に飛ぶ石は狙い違えて一直線。
「ひぎゃっ」
狙ったベール・ゼファーではなく、ギーシュの頭部をものの見事に直撃していた。


先に洞窟に入っていたのは盗掘団なんかではなかった。
なんのことはない。ルイズが追っかけていたベル、タバサ、シエスタ、ギーシュの4人だったのだ。
「あ、ん、た、ねえ」
ルイズは水に濡れて滑りやすい床などものともせず、噛みつくんじゃないかとキュルケが心配するほどの勢いでベルに詰め寄る。
「ちょっとした冗談よ」
「冗談って、怒るわよ」
「もう怒ってるじゃない」
「それに主人をおいてこんな所に来るなんて!少しは使い魔としての自覚を……」
「主人?主人だって?おい、そりゃホントか?」
そこに知らない声が割り込んでくる。
「誰よ、今の声」
ルイズは闇の中で松明の炎に浮かび上がる顔を確認していく。
聞こえたのは男の声だ。ベル、キュルケ、タバサ、シエスタでは無い。
ならギーシュかコルベールのどちらかと言えばどちらでもない。
だけどここにいるのルイズを含めたらは7人だけ。
──なら、誰の声?
ルイズはちょっと怖い考えになって、もう一度1人1人見回してみる。
ベル
タバサ
ギーシュ
それから
「ここだ、ここ、メイドの娘の背中だ!」
シエスタで視線がとまった。
じっと見続けていると、シエスタの背負っている長い棒のようなものから声が聞こえたように思えた。


「なにそれ、インテリジェンスソードじゃない」
あきれかえったキュルケのおかげでようやく分かった。
松明の光だけではよくわからなかったが、シエスタが背負っているのは長剣だ。
しかもただの長剣ではない。喋るマジックアイテムの剣。インテリジェンスソードだ。
といってもそんなに驚くようなものではない。
喋る石像のガーゴイルはルイズの実家にもある。
ただ、剣を喋らせるのはそんなにあるものではない。
あまり意味がないからだ。
「頼む、そこの娘っ子!いや、お嬢様!助けてくれ!お願いだ!たーのーむーー」
口に見えないこともない鍔元の金具をカタカタさせながら騒がしくわめき続けるインテリジェンスソードにはだんだんうんざりしてくる。
「あー、わかったから。で、あなたは何から助けて欲しいの?」
「よくぞ聞いてくれました。あんた、あの銀髪の使い魔の主人なんだよな?」
「銀髪って、ベルのこと?」
ルイズが振り向いて見ると、ベルは「私がどうしたの?」とでも言いたげに眼をぱちくりさせている。
──あれは絶対演技だ
とルイズは確信し、同時にベルには説明する気はないし手伝う気もないことも確信した。
「ベルが何かしたの?」
「まだなにもしてねえよ。まだな。だけどよ、何かするに決まってるんだ」
「何かって、ベルが何しようっていうのよ」
武器がとてつもなくいやがることとは何か。
武器になったことのないルイズにはさっぱり分からない。
「わからねえよ。だけど何かろくでもねえことするに決まってんだよ」
「わからないわね。はっきり言いなさいよ」
「あんたホントにわからねえのか?」
「なにがよ」
「あいつはなあ、人間とか使い魔とかそんな生やさしいものじゃねえんだよ。あいつはなあ、くそ、どう言ったらいいんだよ。ルケギニアを無茶苦茶にすることだってできる……」
「魔王って言いたいの?」
「そうだよ、それそれ」
はぁ
溜息しか出ない。
ベルは魔王を自称しているがまさかそれを本気にするやつがいるとは思わなかった。
「あなた、名前は?」
「名前か?俺はデルフリンガーだ」
「そう。なら、デルフリンガー。あなたはね、ベルにからかわれているだけなの。あいつが魔王なんて大層なものなわけないじゃない」
「信じてくれよぉ。俺はな、持ったやつがどんなやつがだいたいわかるんだよ。間違いねえよ。助けてくれよお」
目があったら涙目なのだろうが、あいにくデルフリンガーには目はない。
とにかく今はこのインテリジェンスソード、デルフリンガーとは話にならない。
だけどこのままわめき続けさせるわけにもいかない。第一、うるさい。
なので仕方ないけどベルと話をすることにした。
「ねえ、ベル。あのインテリジェンスソードに何かしたの?」
「べつに。なにもしてないわよ」
大変疑わしい。
「だいたい、あんなものどこで手に入れたのよ」
「ここに来る前にトリスタニアに寄ったの。そこの武器屋でちょっとね」
「よりにもよって、あんなみすぼらしいのを」
「見た目よりは面白と思うわよ。あれ」
「うるさいだけよ。とにかく何とかしなさい。いっそのこと捨ててしまいなさい」
「えー」
ベルはまことに不満げな声を上げる。
が、ルイズに賛同する声は意外なところから上がった。
「もう、それでいいよ。そこらへんにぽーんとおいていってくれたらいいからさ。な」
「ああ言ってるし」
どこがいいのかベルはあのうるさいデルフリンガーを気に入っているようだ。
よくわからない使い魔だが、趣味までよくわからない。
「しょうがないわね」
ベルは細い腕を伸ばし、デルフリンガーを掴む。
「ひっ」
そして、引きつるような声を出したデルフリンガーの耳元に口を寄せた。
耳がどこにあるのかはこの際気にしない。
「…………」


ベルが何か一言喋った途端にデルフリンガーは静かになる。
さっきまで泣いてわめいていたのが嘘のようで、まるでふつーのインテリジェンスではない剣のようだ。
「これでいい?」
「……いいけど」
あんまりよくないところがありそうな気もしたけど何となくなので妥協する。
「まったく、剣なんて買ってどうするつもりなのよ」
「宝探しには必要なものよ。宝には番人がつきものでしょ」
「ベル……あんた、そんなことしにきたの?」
だんだん頭が痛くなってきた。
だいたい、宝探しなんて成功するはずがない。
宝に関する話なんておとぎ話かガセか嘘か詐欺に決まっているのだ。
本当の話だったら、その話を聞いた誰かが宝を既に持って行っているはず。
そのくらいのことはルイズにもわかる。
だけど、それがわかっているのかいないのかベルの話に食いついてくる人もいた。
「お宝?あるの?」
キュルケと
「ほほう、やはりそうなのですか」
コルベールだ。
ルイズは半ば忘れていたが、秘宝を探すコルベールの手伝いをするということでここに来たのだ。
キュルケもお宝には興味津々だったし。
「ならば、我々も同行させてもらえませんか」
「そうねえ」
ベルは珍しいことに、まじめな顔つきで、一同を見回し、1人1人指さしていく。
「1,2,3……7人か。ちょっと多すぎるわね」
「多すぎたら何かあるのですかな?」
「宝探しはね、5人でするのがセオリーなの。でも5人目は初心者にはちょっと難しいところがあるのよ。だけど、宝探ししたことあるのって学院には居なくて初心者ばかりなのよね。だから4人で来ることにしてたのよ。それに」
「それに?」
次の台詞がよめた。
近頃この使い魔の考えが少しだけわかってきたような気がする。
「人数が多いと簡単すぎて面白くない、なんて言うんじゃないでしょうね」
「よくわかったわね」
「わかるわよ!」
普通なら使い魔を理解できたのは悪くないことなのだが、その使い魔がベルとなるとあまりいいことに思えないのは気のせいだろうか。
「で、私が行かないって言ったからタバサを入れて4人にしたわけね。でも、なんでタバサにしたのよ」
「近くにいたからよ」
「近くにいたって、犬や猫じゃないのよ」
「犬や猫、ね……首輪はあるのかしら」
「ないに決まってるでしょ」
当たり前だ。
タバサにそんなものをつけてもしかたがない。
「でも、どうしようかしら」
今度は腕組みまでして何かを考え込む。
口の中でぶつぶつ呟いているのは、どうやら何かを計算しているみたいだ。
「ま、いいわ。当日になっていきなり参加者が増える事ってよくあるし。足りなくて中止よりはずっといいわよね」
よくわからないが何とかなるようだ。
「では、参りましょうぞ。まだ見ぬ秘宝を探しに」
「ええ、行きましょう」
秘宝のことしか見えていないようなコルベールとキュルケを先頭に、一同は洞窟の奥へと再び進み始めた。




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