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ゼロの花嫁-08

ゼロの花嫁8話「使い魔品評会」


学園生徒達が思い思いの時間を過ごす放課後。
しかし、二年生だけは何時ものように自由に振舞う事が出来なかった。
使い魔品評会と呼ばれるイベントが明日開催されるのだ。
使い魔の力量は術者に比例すると言われている。
そのお披露目は、魔法能力の多寡が重要視されるトリステイン貴族社会において、最も重要なイベントの一つと言えよう。
しかも今回は来賓としてアンリエッタ王女も観覧に来る予定なのである。
貴族の子弟である生徒達にとって、この場での失敗は断じて許される事ではなかった。



「行くわよサン!」
「わかったで!」
まずは序章、ルイズが豪快に振り回す剣を、燦は危なげなく受け流す。
ちなみにルイズは迫力を出す為に全力で剣を振るっている。
そんな一撃一撃を、金属であるデルフリンガーで受け流していながら火花一つ散る気配が無い。
まるで双方の剣が柳の枝であるかのような流麗な剣捌きであった。
「二幕!」
ルイズの叫びに合わせてサンの受け流し方が変化する。
正面を向いたまま剣を振るっていたサンが、その場で回転を始める。
ルイズの剣は変化が無い。つまり全力で剣を叩きつけ続けているという事だ。
それを回転による遠心力を用いて、一撃一撃力づくで跳ね返す。
くぐもった金属音が響き、火花が豪快に跳ね上がる。
「三幕!」
ここでサンが攻撃を開始する。
ルイズの剛剣と言って差し支え無い程の剣撃を跳ね返し、吸い込まれるようにルイズの急所へと向かうデルフリンガー。
それをルイズは右に左に体捌きのみでかわす。
攻撃は交互に、勝敗の天秤はどちらともつかない攻防である。
「ラストよ!」
ここでサンが更に剣速を上げる。
サン得意の回転による剣撃もより威力を増し、両者の動きが激しくなる。
舞台もぎりぎりまで使っての大立ち回り。
今度は交互に攻守は入れ替わらず、ある時はサンが、またある時はルイズがコンビネーションを駆使して相手を追い込む。
二人のボルテージが限界まで上がっていき、両者の視線が一瞬絡み合う。
「はっ!」
「せやっ!」
直後、両者お互いに背中を向ける。
無論戦闘終了ではない。
全身のバネを使い、真後ろを通って一回転し、あらん限りの力を込めた一撃を叩き込む。
二人の剣は中空にて激突し、甲高い音を立ててルイズの剣が半ばからへし折れる。
二人は満足気にお互い微笑を交わした後、見物人であるコルベールとタバサに一礼した。



「ルイズが品評会で何やるか聞いたタバサ?」
自らの使い魔サラマンダーに曲芸を仕込みながら、キュルケは隣に座るタバサへと問いかける。
「……ミスタ・コルベールからやり直しさせられてた」
最後の締めのアクションでキュルケが噴出した為、サラマンダーはバランスを崩して引っくり返る。
「ちょっと、品評会は明日よ。間に合うの?」
「わからない。多分今頃三人で相談していると思うけど……」
サラマンダーが恨みがましい目でキュルケを見上げると、片目を瞑ってそちらに謝るキュルケ。
「一体何やったのよルイズは」
「サンがルイズを相手役に剣舞を披露してた」
「へぇ、悪く無い案じゃない。何がまずかったの?」
「大貴族ヴァリエール家の娘がやる事じゃない」
当然思いつくべき事柄であったが、キュルケも失念していたようだ。
「あっちゃ~、サン一人じゃまずいの?」
「いいと思う。けどルイズはその場合の出来に納得していない。かといって他にサンの相手が務まる人も居ない」
眉間に皺を寄せるキュルケ。
「う~ん、ルイズが失敗するのは良い気味だけど、サンも一緒だしねえ。ちょっと様子を見て来ようかしら」
タバサはサラマンダーを見つめている。
「……魔法の精度が格段に進歩している。軍人との戦闘訓練の成果?」
いきなりまるで違う話題を振られて面食らうキュルケだったが、曲芸練習を見ている時から気になっていたのだろうと察する。
「実際に戦闘で用いるって事考えると、今までみたいな荒いやり方だとうまく行かないのよね」
「……そう。あまり必要なスキルだとは思わないけど」
タバサはサラマンダーを見つめたままだ。
キュルケはその横顔を横目に眺めながらさらっと話す。
「ふぅん。自分でやってみて気付いたんだけど、タバサの魔法もそういうやり方してるわよね」
やはりタバサは無言のまま。
試すようにキュルケも無言のままで居ると、すっとタバサは立ち上がる。
「夕食の時間」
これは先ほどの話題の変え方とは明らかに違うとキュルケは感じたが、話すのが嫌ならそれでいい、そう考え追求するのは止めにした。



澄み切った青空に花火が上がり、野外特設ステージには満員のゲスト達。
誰も彼もが今の生徒達にとっては雲の上の人だ。
自分の子供達の晴れ姿を一目見ようとわざわざ遠出してくる貴族まで居た。
そして何といっても今回の目玉はアンリエッタ王女である。
王位継承権第一位、押しも押されぬ王の後継者。いずれこの国の全てを手にする権威と権力の象徴。
そんな天上人を前に使い魔を披露するというのだ、生徒達の緊張は極に達していた。
誰も彼もが震えを収めるのに必死な中、何処吹く風とばかりに暢気におしゃべりをしているのはトリステイン貴族ではないキュルケとタバサである。
「みんな張り切って練習してきたみたいだけど……悪いけど優勝は私がいただくわ」
準備期間が短かった割に自信満々のキュルケ。
「……無理」
まさかキュルケの曲芸を見ているタバサから否定の言葉を聞かされようとは思いもよらず、目を見開いてタバサを見る。
無表情は相変わらずだが、そこからキュルケは何かを感じ取ったようだ。
「へぇ、自信あるんだ」
「審査員次第。でも多分無理」
キュルケは、タバサがここまで言うのだ、恐らく確信に近い何かを持っているのだろうと察する。
「敵に塩を送るとは味な真似してくれるわね……いいわ、もう一捻り加えようじゃない」
「キュルケは私の芸を見ていない。これでおあいこ。先生には私から言っておく、くれぐれも遅れないように」
キュルケが控え室から出ていくと、入れ替わりにルイズと燦が姿を現す。
「あら? キュルケは?」
「仕上げの確認」
この期に及んでの悪あがきに肩をすくめるルイズ。
「で、王女様はいらっしゃってるの?」
「貴賓席に居る。ルイズの準備はどう」
「万全よ! タバサには悪いけど今年は私達がいただくわ!」
ミスタ・コルベールの忠告を無視して剣舞をやるつもりなのだろうか。
そんな失礼な想像をしていたタバサだったが、当然口に出して言ったりはしなかった。



キュルケはその豊満な肉体を誇示するがごとく胸をそびやかしながら入場する。
衆目に臆する事無く、しかし登場したのはキュルケ一人である。
観客席から怪訝そうなひそひそ声が聞こえてくる中、高速で術を唱える。
キュルケの詠唱に応え、舞台のど真ん中に直径数メイル程の巨大な火球が生まれる。
観客達の中で火のメイジが注目したのは舞台自身だ。
未熟な技術でこれを作ったのなら、舞台への延焼は免れまい。
しかし、薄く焦げる程度に留まっているそれを見て、感嘆の息を漏らす。
その中心からキュルケの使い魔であるサラマンダーが、火の粉を撒き散らしながら飛び出してきた。
予想も付かない演出、そしてサラマンダーという優れた生物を使い魔としている事に皆が驚きの声をあげる。
目ざとい者は、この尻尾の特徴からこれが特に質の高い火竜山脈産である事に気付いていた。
舞台中に飛び散った火の粉が、たくさんの火の輪へと形を変える。
サラマンダーはその輪を、ある時は走り、ある時は飛びあがり、体を捻りながらくぐり抜ける。
息もつかせぬ連続アクションの後、サラマンダーは舞台中央前面にゆっくりと歩み寄る。
舞台の端まで来ると、首だけを曲げて上を見上げる。
固唾を呑んで見守る観客達の前で大きく息を吸い込み、炎の吐息ブレスを吐き出した。
空高くへと放たれた炎の弾は、ドラゴンのブレスもかくやという巨大な物で、遙か上空まで舞い上がった後、炎の大きさに相応しい大爆発を起こし、周囲一体に熱風が吹き荒れる。
観客達が風から身を守るべく上げていた腕を下ろす頃には、キュルケとサラマンダーは舞台に並んで立っていて、同時にぺこりと会釈をしてお披露目を終えた。



満足気に舞台袖に戻ってくるキュルケに、ルイズは苦々しい顔で文句をつける。
「最後のブレス、アレ貴女の魔法でしょ」
その隣に居たタバサが解説する。
「舞台の前に歩み出たフレイムに注目を集めておいて、自分はマントで口元を隠して詠唱する。フレイムのブレスと同時に魔法を放てるように」
フレイムとはこのサラマンダーの名前である。
「あら、やっぱりバレた?」
当のキュルケは悪びれもしない。
「審査員も数名は気付いていた。それも含めて演出と判断するか、ズルと取るかはその人次第。私は別に構わないと思う」
タバサは言いたい事を言うと、舞台へと向かう。

『目立つつもりは無かったけど、責任は取らないと』
決闘騒ぎ、これはタバサの判断ミスで起こってしまったと今でも彼女は悔やんでいるのだ。
そのせいで延期させられケチのついてしまった品評会。
これを例年通りの成功ではなく、例年に無い大成功にする事で、迷惑をかけた人達に少しでも何かを返したいとタバサは考えていた。
舞台に一人で姿を現すタバサ。
最初の構成はキュルケと一緒だ。
観客達も今度は何が出るかと、期待に満ちた目をタバサに向けている。
静まり返る会場、そこでタバサはすっと腕を上げる。

「きゅいーーーー!!」

そんな叫び声と共に、舞台の真裏から上空目掛けて飛びあがってきたのは青い風竜であった。
見栄えもさる事ながら、実用性の高さからも使い魔として人気のある竜だが、当然それに相応しい力量の持ち主の召喚でなくば応じる事は無い。
風竜は舞台の上を優雅に飛行した後、翼音を立てながら舞台に向かって急降下を開始する。
急な挙動に観客が驚く前で、翼を大きく広げて減速し、ちょうどタバサの頭上で浮力とのバランスを取る。
その足がタバサの両肩を掴む。
そして見る間に上空へと飛びあがっていく。
風竜の急上昇にもタバサは表情一つ変えず、合図を送ると、何と風竜は空中でタバサを離してしまう。
女性の観客が小さい悲鳴を上げる。
しかし、風竜は急旋回から真下への捻り込みでタバサの下へと回り込む。
タバサが空中で軽く両足を広げると、そこにすっぽりとはまるように風竜の首が差し込まれる。
安堵のため息が漏れる中、タバサの誘導に従って様々な飛行を観客へと見せ付ける風竜。
タバサを乗せた状態のまま、一回、二回とくるくる回転する技は、慣れた飛竜使いでも易々と出来ぬ技で、それを披露してみせたタバサに賞賛の声があがる。
ラスト、舞台に戻ってきたタバサはちょこんと風竜から降り、一人と一匹が同時にお辞儀をして締めとする。
観客達からは惜しみない拍手が送られた。

「……めちゃめちゃ本気じゃないあの子。何かあったのかしら?」
舞台袖で呆気に取られながらそれを眺めていたキュルケの呟きに、ルイズはしかし自信に満ちた表情を崩さない。
「ふん、それでもサンには敵わないわね」
タバサのステージが終わり、次はトリであるルイズと燦の番だ。
しかし燦の姿は未だ見えず。
不審そうにきょろきょろと周囲を見渡すキュルケは、舞台袖端の方で隠れながらもじもじしている燦の姿を見つける。
「あらサンそこに居たの。……ってどうしたの?」
その場を動かないまま、か細い声で答える燦。
「ちょ、ちょっと恥ずかしい……」
しかし燦の主張はルイズに一蹴される。
「何言ってるの。私の使い魔として恥ずかしくない格好してなきゃダメでしょ」
「で、でもルイズちゃん何時もの制服じゃし……」
「学園のイベントでこれ以外何着ろってのよ」
まだゴチャゴチャ言っている燦をルイズは強引に引っ張り出す。
そこに現れた燦の姿に、思わずキュルケは息を呑む。
薄い黄色を基調にしたスレンダーなデザインで、両の肩口は大きく開いており、胸元のレースは白。
足首まで隠れるたっぷりとした大きなスカートは、その縁が花をあしらったレースで覆われており、細く閉まったウェストとのバランスが好対象となっている。
つまる所、燦はドレスを着ていたのであった。
コルベールの助言を無視して剣舞で来ると踏んでいたキュルケは完全に呆気に取られるが、すぐに持ち直し、いや別方向に騒ぎ出す。
「かわいいっ! かわいいわサン! 何よどうしたのよこれ!」
「えと、えっと……ルイズちゃんがせっかくの晴れ舞台じゃからって……」
「最高よサン! 良くやったわルイズ! もうこれで品評会の結果ボロボロでも私が許すわ! というかもう満足! このまま私が持って帰っていい!?」
ルイズは不敵な笑みを崩さない。
「ふっふっふ、サンの発表が終わってから同じ台詞が言えるかしらね」
驚き振り返ってルイズの両肩を掴むキュルケ。
「何!? まだあるの!? コレ以上の何かがまだあるっていうの!?」
自分も参加者である事など忘れてしまったかのようにはしゃぐキュルケに、ルイズは「まあ見てなさい」と余裕の表情で燦と共に舞台へと向かう。

派手なステージが続いたせいか、会場も興奮冷めやらぬといった雰囲気が漂う。
使い魔のグレードもその練度も申し分無く、魅せるという事を意識した舞台構成に誰もが満足していた。
そんな品評会も遂に大詰め。これだけのものがトリではないというのだ。
嫌が応でも期待は高まる。
しかし観客達の期待を裏切り、次の演者は少女が二人。何の芸も無くただ歩いてくるのみ。
二人が並んでステージ中央に立つとルイズが誇らしげに紹介する。
「こちらがルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔、サンです」
緊張からか少し硬い表情で会釈する燦。
その肩を叩いてウィンク一つ。ルイズは舞台袖へと下がっていった。
残ったのはサンと呼ばれた人間の使い魔のみ。
会場がざわめく。さもありなん、人間の使い魔など聞いた事もない。
一体全体どういう事なのか、いぶかしむ観客達に一切の説明は行われず、燦は芸の披露を始めた。

最初は透き通るような高音、それをいともたやすく会場中に響き渡らせる声量は、とてもあのような体躯から発せられてるとは思えない。
ゆっくりと、しかし確実にその高音が動き出す。
時に奏でるように軽快に、時に詠うように朗々と、それらは少しづつ観客達に染み渡っていく。
メロディが始ると、それだけで全ての者が引き込まれる。
共に響く優しさを歌う詩のせいだ。
誰かの為に、何かの為に、この曲のようにただ静かにそうあり続ける女性の詩。
苦労と困難に満ちた生活の中に埋もれ消えて行く、純粋すぎるたった一つの想い。
誰もがかつては持っていたそれを、ただそれだけを歌った、単純でしかし、まっすぐな歌。
観客の何人かが目元を押さえる。
かつてそうであった自分が、それ故にぶつかった幾多の苦難を思い出しているのだろうか。
はたまた思いもよらぬ善意に助けられた美しい思い出に浸っているのだろうか。
善意の大きさは人それぞれ。
それでも、心にほんの一滴でも優しさが眠っているのなら、この歌は全てを拾い上げ、汲み取ってくれる。
そんな燦の歌だった。

歌が終わり会釈をする燦に拍手は無かった。
不安になって顔を上げた燦の視界には、呆然とこちらを見つめる観客達と、泣き崩れ、顔も合わせられない幾人かの姿が映る。
その意味がわからない燦は小首を傾げた後、舞台袖へと下がっていった。
割れんばかりの拍手が巻き起こったのはその少し後の事であった。

舞台袖に戻るなり燦に飛びつくキュルケ。
「最高だったわよ! もう可愛い! 可愛い! 可愛すぎるわサン!」
「ちょっとキュルケ! それは私の役目よ! 離れなさいってば!」
ムキになって抗議するルイズを尻目に燦に頬ずりしているキュルケ。
タバサは既に席を外していた。
誰にも見られないだろう場所まで逃げると、そこで堪えきれなくなったのか涙を溢す。
燦の歌は、積み重ねた苦労が多ければ多い程、大切な何かを捨てていればいるほど『効く』らしかった。



審査は三派に分かれて乱戦の相を呈してきた。
最も声が大きいのはキュルケを推す派手好きな審査員達。
またここには炎のメイジも混ざっており、演出の派手さのみならず炎を操る見事な技術にも評価点が入っていた。
次点は泣き落としで他派攻略を狙うルイズ派だ。
老境に至ってる者が多く、本気で涙を流しながら訴えかけてくるので始末に終えない。
最後に一番冷静な派閥、タバサ派である。
暴走しがちな二派を宥めながら、審査が議論として成立するよう動く随所での配慮が光る。
「観客を意識した見事な演出! 子供であろうと評価しうる程単純で、しかし各所に散りばめられた高度な炎の技術が光るあれこそが珠玉の芸でしょう!」
声高らかに宣言する男に、銀色の髪をなびかせる老婦人が反論する。
「何をおっしゃられますか、心の琴線に触れる感動なぞそうそうお目にはかかれません。あの歌を評価しないなぞ、我が家紋の名誉に関わりますわ」
中年男性が、静かに主張する。
「使い魔品評会であるという事を考えれば、おのずと結論は出ると思いますが……」
炎のメイジである同じく中年程の男性がだんっと席を立つ。
「ええい黙れこのロリコンが! 貴様が彼女を評価するはちんまい背と絶壁な胸部のせいであろう!」
「何だと!? 貴様こそ何だおっぱいスキーが! 揺れる胸と一緒にヘッドバンキングしていた貴様が何を言うか!」
「ちょっと待て聞き捨てならん! 貴様今つるぺたを侮辱したか!? 私はミス・ルイズの芸を勧めるが、ミス・タバサのそれも捨てがたいと心から思うぞ!」
「地獄へ堕ちろペド野朗! おっぱいだろ! ハルケギニア全土と始祖ブリミルとに誓っておっぱいの大きさは全ての価値観を凌駕するのだ!」
「諸君は一体何を話しているのかね! 確かに肌の色艶は甲乙付けがたく、敢えて言うのなら肩甲骨の美醜でこそ女性の美は決まると思っているのだが……」
「ああっ、あの歌を父上にもお聞かせしとうございました……天国の父上、そちらにお尻のきゅーとなレディはたくさんいらっしゃるでしょうか? 居るというのなら今すぐ向かいますが多分いないでしょうな、はっはっは、ざまーみろ」
「太ももだっつーの! 健康的な、それでいてエキゾチック漂うあの太ももに惹かれないとか死んでしまえ貴様等!」
「ロリコンの何が悪い!? ちっちゃい子のぷにぷにしたほっぺをつついてみたいと思うのがそんなにも責められるべき事柄なのか!? 私は断固そのような風潮には逆らい続ける! 反逆だ! 今こそ進化の言葉を刻んでくれる!」

審査が纏まる気配がまるでしてこない。
オールドオスマンの付き添いでこの場に来ていたコルベールは苦笑する。
「オールドオスマン、しばしかかりそうですし我々は一度出直して……」

「お主達いい加減にせぬか! 何故おっぱいも炉も等しく愛せぬ!? エロ道がたった一つと誰が決めたというか! 全てを愛してこそ真のエロ師匠たるが何故わからぬ!」

「……根元から腐っていては、治るものも治りませんか。最近は大人しくなっていたと思ったんですけどねえ」
肌のツヤまで蘇ったかのように活き活きと激論に加わるオールドオスマンを、後ろから蹴飛ばしてやりたい衝動を必死に堪える。
何かもう色んな事がどうでも良くなったコルベールは、隅っこの方で真面目に審査を続ける幾人かに混じって、アレ等と自分は別であると力強く主張するのであった。



後は審査待ちとなり、生徒達はようやく緊張から解放され安堵の笑みを見せ始める。
自然とみんなが行った芸の良し悪しを語る事になるのだが、やはりキュルケとタバサの評価は生徒間でも飛びぬけていた。
しかし、燦の話になると皆が一様に難しい顔となる。
そもそも人間の使い魔というのはアリなのかと。
魔法とはまるで関係の無い『歌』という芸に眉をひそめる生徒も多かったのだ。

タバサは遅めの昼食を取りながら、隣に座る燦を詰問していた。
燦は既にドレスから普段着へと着替え終えている。
「サンの声には力がある。さっきのはそれ?」
ハウリングボイスや眠りの歌の事を言っているのだろう。
「どうじゃろ? 私は思いっきり歌っただけじゃし」
「絶対力を使ってる」
何時に無く頑なにそう主張するタバサ。
キュルケは飲み物だけを口にしながら、タバサに問いかける。
「何よ、私のはアリでサンのはダメなの?」
「ダメじゃない。でも力は使ってる。あれは絶対普通の歌じゃない」
どうやら涙を溢してしまった事を不覚と思っている模様。
もちろんそんな事情を察しえないキュルケもルイズも燦も、タバサの拘りには気付いてやれなかった。

四人は随分前からクラスの人間達と距離を置くようになっていた。
例の決闘騒ぎがキッカケであるのだが、それ以降も何かと四人が一緒にまとまっている事が多い。
もちろん向こうから恐がられ、近づかれないのは決闘が理由だが、こちらから向こうに接点を持とうとしないのには訳がある。
当人達は意識していないが、既に彼等とは見ている場所が違ってしまっているのだ。
タバサは元々だが、ルイズとキュルケは学園内での成績や実力に、最早興味を持っていなかった。
自分の力が外で通用するのか、外で通用するにはどうすればよいのか。そんな事ばかりを考えていた。

といった事情がある為、燦を含む四人は他の生徒があまり顔を出さない場所に自然と集まるようになっていた。
今も舞台から離れ、塔の側でのんびりと結果が出る時間を待っている。
突き抜けるように青い空を見上げながら、四人は並んで芝生に寝転がる。
むき出しの肌に丈の低い草がちくちくと刺さるが、鼻腔をくすぐる草の臭いや全身満遍なく降り注がれる陽光の気持ち良さが不快感を凌駕する。
「ん~~~」
燦は横になったまま背筋を大きく伸ばし、芝生をごろごろと転がる。
全身に葉の欠片がまぶされるも、それが面白いのか何時までも止まらずごろごろ転がり続ける。
ルイズもキュルケもタバサも陽気に誘われたか、燦を追うような事はせずうつらうつらとお昼寝の時間である。
久しぶりに思いっきり歌えて気分の良い燦は元気一杯、芝が切れる場所まで転がっていった。
「ふいー、目が回るでー」
何が楽しいのか、にこにこしながら上半身を起こす燦。
その前には驚いた顔でこちらを見下ろしているロングビルの姿があった。
「……品評会の最中じゃなかったかしら?」
燦の奇行には一切触れない辺り大人である。
「今は休み時間なんです。えっと、ロングビルさんは何をしてるんです?」
塔を見上げながら燦にではない誰かに言うように呟く。
「私も少し……お休み中よ」
その後に続く言葉は心の中だけに仕舞っておく。

『後、少しだけだから。ごめんねテファ……』

後少しだけ、ここに居させて欲しい。
この心地よい風をもう少しだけ感じていたいと、ロングビルは祈るように天に願うのだった。



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