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ソーサリー・ゼロ第三部-23

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五四

「それで、どうなったの?」
 ルイズは君のほうに身を乗り出し、話の続きをうながす。
「ちいねえさまは無事だったんでしょうね? それに、ちいねえさまのご病気は治せたの? それとも、だめだったの?」
 あせった様子で矢継ぎ早に質問を浴びせてくるルイズに君は、順を追って話すので落ち着くように、と告げる。

 ラ・ヴァリエール公爵の屋敷での事件から、まる一日が経つ(技術点、体力点、強運点を最初の値に戻せ)。
 馬を飛ばして魔法学院に戻った君は、ルイズの部屋で彼女とふたりきりになり、事の顛末を語り聞かせているのだ。
 ルイズは、君と公爵夫人とのあいだでいさかいがあったことを知ると、眉を吊り上げ、
「あんたって人は、どうしてわたしの言いつけを守らないのよ! 母さまには逆らっちゃだめって、さんざん注意したでしょ!?」と怒り、
執事のジェロームの死を知らされると、驚きと悲しみに暮れる。
 ルイズが生まれるずっと前からヴァリエール家に仕えていたジェロームは、平民とはいえ、彼女にとって家族同然の存在だったのだ。
 君はふたたび、ルイズの実家でなにがあったのかを語りだす。

 薬を服まされてからしばらくして、カトレアは眼を覚ました。
 しきりに礼を述べる彼女に体の調子はどうだと尋ねると、気分はよくなったが、体内の病魔が去ったようには思えぬという答えが
返ってきたたため、君はがっくりと肩を落とした。
 DOCの術をかけられたブリム苺の汁は、風大蛇の毒を消し、消えかかっていた彼女の生命の炎をふたたび燃え上がらせたが、その炎は
常人に較べるとずっと弱々しいままなのだ。
 病を治せなかったうえに、厄介ごとに巻き込んでしまってすまない、御者や執事は自分の巻き添えになって死んでしまったのだ、
と詫びる君に、カトレアは
「いいえ、気にしないで。あなたは精一杯がんばってくださったのですから。あなたが責められるいわれはありませんわ」と言って、
優しく微笑んだ。
「でも、ジェロームも、オーギュストも、それにこの子たちも、もう戻ってこないのですね……」
 カトレアはそう言うと、足元に横たわる仔犬の亡骸を抱き上げた。
 怪物が部屋じゅうに振りまいた毒煙によって、彼女の飼っていた獣や鳥の大半が死んでしまったのだ。
 生き残ったのは小熊や大亀など、大柄で頑丈な生き物ばかりだ。
 ルイズと同じ鳶色の瞳に涙を湛えたカトレアに、君は慰めの言葉をかけた。

 公爵夫人はすべての奉公人たちを玄関ホールに集めると、君の身の潔白が証明された、と居並ぶ一同に告げた。
 ジェロームの命を奪ったのは、公爵を狙ってアルビオンから送られてきた刺客であり、曲者は公爵夫人みずからが討ち取った、と。
 公爵夫人の説明は事実といささか異なるが、暗殺者がクロムウェルの≪使い魔≫である恐るべき大蛇であり、狙いは君の命だったと
正確なところを告げても、奉公人たちを混乱させ、いらぬ疑念を抱かせるだけだろう。
 誤解の解けた君だが、客人として屋敷に長居をするつもりはなかった。
 クロムウェルが君を危険視しているということは、『ご主人様』であるルイズも狙われているかもしれない。
 窓が割れてずいぶんと風通しのよくなった客間で、君は急いで学院に戻らねばならぬ、と公爵夫人とカトレアに告げた。
 公爵夫人は、射抜くような眼差しでしばらく君を見つめていたが、
「あなたに問いただしたいことは山ほどありますが、今はその時ではないようですね。いいでしょう、厩舎にお行きなさい。
いちばんの駿馬(しゅんめ)をお貸ししましょう。ルイズが可愛がっていた馬です。学院に戻り、主人であるルイズを守るのです」と言って、
部屋を出ていった。
 あいかわらず冷たくつんけんとした態度だが、今朝のことを思えばずっと柔らかな物腰だと言えるだろう。
 多少の信頼は得たと思ってよさそうだ。
 カトレアは
「残念ですわ、あなたのお国のことや、学院でルイズがどうしているかをお聞きしたかったのに」と、
名残惜しそうにする。
 君が、次に来るときはたっぷり話そうと言うと、彼女は顔を輝かせる。
「ふふっ、楽しみにしていますわ。今度はルイズも一緒にね」
 そう言ったあと、表情を引き締め、君を見つめる。
「わたくしの可愛い妹、大切なルイズをどうかよろしくお願いいたしますわ。異国の勇敢なメイジ殿」

 武器とマントを取り戻すと(幸いなことに、風大蛇に操られたジェロームは、それらを傷つけたり捨てたりはしなかった)、君は馬に跨り、
急ぎ学院を目指した。
 君が借り受けた馬はたしかにすばらしいものであり、一昼夜に及ぶ、ほとんど不眠不休の速駆けにも耐え抜いてみせた。六六へ。

六六

「向こうでは大変だったのね」
 君の話を聞き終えたルイズは、ぽつりと呟く。
 今の彼女からは、普段の無鉄砲なほどの活力が感じられず、意気消沈のありさまだ。
「こっちは何も危険なことは起きなかったけど、主人の身を案じて大急ぎで学院に戻ってきた、その忠誠心は褒めてあげるわ。
ちいねえさまのご病気が治らなかったこと、それに、ジェロームたちのことは残念だったけど、あんたは務めを果たしてくれたわ。
ごくろうさま。今日はもう、ゆっくり休んでていいわよ」
 ルイズはそう言って君をねぎらってくれるが、その表情は見るからに陰鬱なものだ。
 彼女は君のかわりに、自分自身を責めているのかもしれない――君をラ・ヴァリエール家に送り出さなければ、執事も御者も死ぬことはなく、
姉が危険にさらされることもなかったのだと。
 しかし、どうもそれだけではないように見える。
 君の留守中に、何か悲しい出来事が彼女を見舞ったのだろうか? 

 君はどうする?
 場の空気を変えようと、ルイズに話しかけるか(一二七へ)、部屋を出て休息に適した場所を探すか(二二〇へ)、それとも、
学院の誰かに会おうとするか(三二九へ)?

一二七

 君はルイズに、自分が留守のあいだ、何か変わったことはなかったかと尋ねる。
 物憂げな表情でうつむいていたルイズは、ゆっくりと顔を上げる。
「あんたが馬車に乗って出て行った次の日に、姫さまからの使いが来たわ」 
 彼女は言う。
「お昼過ぎには、姫さまにお会いできたわ。タルブに送り込まれた≪レコン・キスタ≫の新兵器らしきものが、不思議な光に包まれて
跡形もなく消え去ったって話は、姫様のお耳にも届いていたけど、そこにわたしたちが居たことは、王宮でもほとんど知られていないみたい。
アルビオンの軍艦を追跡していた竜騎兵が何人かあの光を目撃したそうだけど、被害に遭ったのは小さな村だけだから、本格的な
調査も行われなかったのね。
わたしは姫さまに、すべてをお話ししたわ。わたしたちがあの時タルブに居たこと、≪水のルビー≫を指に嵌めて≪始祖の祈祷書≫を
開いたら、古代文字が浮かび上がったこと、そこに記された呪文を唱えたら光がほとばしって、化け物を消し去ったこと、そしてそれが、
どうやら≪虚無≫の魔法であるらしいこと……あ、キュルケやタバサ、それにシエスタが近くに居たことは、伏せておいたわよ。
あの子たちは何も知らないし、ややこしいことに巻き込みたくないからね」
 そこまで言って、ルイズは一息つく。
 その表情は、あいかわらず陰鬱なままだ。
「姫さまは大変驚かれたけど、すぐに落ち着いてこうおっしゃったの。始祖の力≪虚無≫を受け継ぐ者は、末裔たる王家に現れるという伝説を
聞いたことがある、って。初代ヴァリエール公はトリステイン王の庶子だから、わたしにも少しだけ、王家の血が流れているのよ。
それから姫さまは、わたしの立てた手柄を褒めてくださったわ。あの化け物をあそこで止めなかったら、艦隊が集結しているラ・ロシェールは
大変なことになっていたでしょうからね」

 君はぼんやりと考える。
 ガリア、アルビオン、それぞれの王家の人間であるタバサやウェールズ皇太子にも、≪虚無≫の素質があるのだろうか、と。
 しかし彼らは、≪ゼロ≫と呼ばれたルイズとは似ても似つかぬ、魔法の才能に恵まれた者たちだ(ハルケギニアの王族は一般に、
魔法の素質に優れた者ばかりだという)。
 ルイズが普通の≪四大系統≫の魔法を使えぬことが、≪虚無≫を受け継いだ代償だと考えるならば、彼らが≪虚無≫の系統の使い手だとは
考えにくい――ルビーや祈祷書といった秘宝を持たせて試してみぬことには、断定できぬのだが。二一二へ。

二一二

 ルイズは話を続ける。
「でも、この事を公(おおやけ)にするわけにはいかない、と姫さまはおっしゃったわ。≪虚無≫はあまりに大きすぎる力であり、
真相を知った者はわたしを利用しようとする、世界じゅうから狙われることになる、と。だから、わたしは姫さまと約束したの。
≪虚無≫のことは誰にも言わない、たとえ親きょうだい相手であろうと、って」
 そう言うと、寂しげな微笑を浮かべる。
 結局のところルイズは、やっとの思いで手に入れた力を誇ることもできず、表向きには≪ゼロ≫のままなのだ。
 ある者は厳しく、ある者は優しく、それぞれのやり方で彼女を愛してきた家族にさえ本当の事を話せぬというのは、つらい事に違いない。

「それからね、≪始祖の祈祷書≫は姫さまにお返ししたわ」
 君は、あまりの驚きに言葉を失う。
 ルイズは、タルブで使った術――≪爆発(エクスプロージョン)≫というらしい――の呪文は暗誦できるようだが、それ以外の術は
いまだ使いこなせずにいる。
 どうやら祈祷書は、持ち主の必要に応じて呪文が現れるという、まわりくどい仕組みになっているらしい。
 担い手が簡単に≪虚無≫の術を極め尽くしてしまわぬよう、厳重な予防措置が施されているのだ。 
 つまり、祈祷書を手放してしまえば、ルイズはもはや新たな≪虚無≫の術を習得できぬことになる。
 せっかく手に入れた力を捨ててしまうつもりか、と君が尋ねると、ルイズはそっとうなずく。
「姫さまは、わたしの身を心配してくださったのよ。だから、わたしもそれにお応えしたの。≪虚無≫のことは忘れて、
二度と使わないと誓うことで」
 暗い微笑を浮かべたまま、ルイズは言う。
「大いなる力には大いなる責任と危険がともなうっていうけど、わたしにはそれらを受け入れる覚悟がないのよ。
≪虚無≫としては初歩中の初歩にすぎない≪エクスプロージョン≫で、あれだけのことができるのよ? この先、祈祷書に浮かぶ呪文を
唱えたらどんなことが起こるのか、想像もつかないわ。自分が伝説の系統の使い手だとわかって、とても嬉しかったけど、
それ以上に怖かった。いつか、この力で大勢の人を傷つけてしまうんじゃないかって。絶大な力に酔いしれて、とんでもいないことを
しでかすんじゃないかって。貴族といっても、しょせんわたしは世間知らずの小娘、ただの学生にすぎないんだから。
姫さまの心配もごもっともよ」
 君はルイズに何か言おうとするが、ふさわしい言葉が見つからず、椅子の上でただ身じろぎするばかりだ。
「だから、わたしは≪虚無≫を捨てることにした。≪始祖の祈祷書≫をお返しして、すべてを忘れることに決めた。
≪レコン・キスタ≫が倒されてしまえばハルケギニアには平和が戻るんだから、この力を祖国のために役立てる機会もないでしょうね。
もう二度と……二度と≪虚無≫を……使わない。平穏に生きるために、元の≪ゼロのルイズ≫に戻る……これでいい……そう決めたんだから」
 語るルイズの声にしゃくり上げる音が混ざり、大きな瞳から涙がこぼれ落ちる。一〇六へ。

一〇六

 自分が涙を流していることに気づいたルイズは、きまずそうに顔をそむけ、目頭を拭う。
 君が声をかけると、そっぽを向いたまま
「な、なんでもないわよ。そんなことより、あんたも秘密は守りなさいよ。誰かに喋ったりしたら許さないんだからね」と、
ぶっきらぼうに返してくる。

 魔法が使えぬために屈辱と無念にまみれた人生を送ってきたルイズは、ついに自身の≪系統≫に目覚めた。
 しかし、それが伝説の系統≪虚無≫であったために、彼女はその力を捨てることを選んだ――無用な騒動に巻き込まれぬためには、
そうせざるをえなかったのだ。 
 その悔しさ、失望、そして喪失感は、いかばかりのものだろう。

 君はルイズを多少なりとも元気づけようと、冗談を口にする。
 そういえば姫君からの褒美はなかったのかと言うと、ルイズはぱっと振り向き、信じられぬという顔でにらんでくる。
「姫さまは、あんたのことも褒めてくださったわ。主人を守って勇敢に闘ったのでしょうね、って。あのようなお言葉を頂いただけでも、
身に余る光栄なのよ。それに、爵位や勲章を頂いたら、この一件がおおっぴらになっちゃうじゃないの。秘密は守らなきゃいけないって
言ったでしょ」と言う。
 君は肩をすくめ、こう言う――なりゆきとはいえ結果的に港町と軍を救ったのに、アルビオンでの手紙騒動の時と同じくただ働きとは、
ひどい話だ、と。
 君の言葉を耳にして、ルイズの目つきがみるみる険しくなる。
「あんたねえ、このトリステインの姫殿下をけち呼ばわりするつもり? 姫さまはおっしゃっていたわ。わたしたちに働きに見合うだけの
褒賞を授けたい、それなのに感謝の言葉しか与えられなくて、申し訳なく思っている、って!」
 君はにやりと笑うと、口だけならなんとでも言えるし、言葉に金はかからないからな、と返す。
 その言葉を聞いて、ルイズは顔を真っ赤にする。
「こ、こ、この使い魔は、どれだけ意地汚いのよ! 貴族に対する敬意が欠けているとは思ってたけど、姫さままで馬鹿にするなんて、
し、信じられない! 許せない! その腐った性根、わたしが叩き直してあげるわ!」
 そう叫ぶと箪笥に駆け寄り、抽斗から乗馬用の鞭を取り出す。
 鞭を振り回すルイズから逃げ回りながら、君は思う――やはり『ご主人様』はこうでなくては、と。
 落ち込んでいるよりも、元気に大声を張り上げているほうが、ずっとルイズらしい。五〇〇へ。


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