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革命的な使い魔


「皆さん! 静粛に」

草原に、少女の勝ち誇ったような声が響く。
トリステインの生徒達が遠巻きに見つめる先には、青い甲冑で武装した騎士の一団、
そして、両腕を縛られた大きな胸の少女と、得意げに周囲を見回す小さな胸の少女の姿があった。

「これより、クルデンホルフ司教ベアトリスの名において、異端審問を執り行います」
「異端審問だって!」

少女の口から飛び出した物騒な言葉に、辺りが騒然となる。
勿論、上級生である水精霊騎士団の面々には、この茶番が、審問の名を借りた深刻なイジメである事は判っている。
だが、相手はトリステイン国内でも最大の実力を誇る、クルデンホルフ大公国の令嬢・ベアトリス。
更に、いかに形だけの者とはいえ、異端審問は、異教徒を粛清しブリミル教徒の団結を図る為の厳正な裁判、
下手に横槍を入れようものならば、その者もまた異端者と見なされ、最悪、一族にまで累が及ぶ危険があった。
加えてまずい事に、審問に掛けられている少女・ティファニアが、
人類の仇敵であるエルフの血を引いている事は、動かしがたい事実であった。
居合わせた一堂は、今はただ、この馬鹿げた騒ぎが本当の惨劇にならぬよう、固唾を呑んで見守るしかなかった。

「審問の方法を説明するわ。
 まずは、あの煮立った釜の中に……」

「待ちやがれッ!」

少女の説明を遮る怒声に、皆が後方を振り返る。
そこには、大きく肩で息を付く、黒髪の少年の姿があった。

「ヒロキ……」

ティファニアが、思わず安堵の涙を流す。
その、パーカー姿の冴えない眼鏡の平民こそ、ティファニアの使い魔にして最初の友人、狩谷広樹であった。

「お前等! 何をやってるんだ?」

怒りに震える両肩を隠そうともせず、ずんずんと広樹が進む。
その前に、級友のギーシュがずいっ、と立ち塞がる。

「ヒロキ、気持ちは分かるが、今は堪えるんだ」
「何だと? 何を言ってやがる ギーシュ!」
「これは異端審問だ 異教徒を庇えばその一族は……」

言いかけてギーシュが気付く、この男は天涯孤独の身だと。
異世界から召還されたという広樹の言葉を信じている訳ではなかったが、
少なくとも彼の身内は、大公国が手出しをできる場所にはいない。

妙に得心の言った風のギーシュをどかすと、広樹は騒ぎの中央、ツインテールの少女の眼前へと立った。

「今すぐ、このバカ騒ぎをやめろ」

「……フン、流石はエルフの使い魔。物の道理を分かってらっしゃらないようね?」

「何だと?」

「言いこと? エルフは始祖ブリミルの時代以来の人類の仇敵よ!
 彼女を生かしておけば、我々の未来に禍根を……」

「フザケた事を抜かしてんじゃあねぇッ!」

草原に響き渡る少年の咆哮に、ビクン、とベアトリスが一つ震える。
少年の凄まじい怒りの前に、さしもの歴戦の空中装甲騎士団すらも、ただならぬプレッシャーを感じとっていた。

「テファが人類の敵だと?
 ふざけるな! フザけんじゃねぇ!

 こんな 最 高 の お っ ぱ い の持ち主が、人類の敵なワケあるかァ!」



「………… ………… ………… …………え?」


……。
…………。
………………時間が、止まった。


恐ろしいまでのマヌケ面で、あんぐりと口を開けるベアトリス。
涙目で顔中真っ赤にしながら、その革命的な胸部を隠そうと、必死で身をよじらせるティファニア。
呆れを通り越して、ある種の畏敬の念まで感じてしまっている空中装甲騎士団の皆さん。
「ヒロキだ」「ああ、いつものヒロキだ」と頷き合う水精霊騎士団の面々。
この世に神は居た!とばかりに、何故かまぶしい視線を広樹に向けるマリコルヌ。
欲望の一切を隠そうともしない漢の叫びに、思わず胸がキュンとなるキュルケ。
ないない、アレは無い、とタバサ。

その場に居合わせた者たち全てが、生まれて初めて、本物のバカと言うものに遭遇していた。

 ・
 ・
 ・

「こッ この! ヘンタアアァァアアァァイッ!」

胸元が残念な桃色頭の少女が、広樹めがけて拳大の石を投げ付ける。
それを契機として、凍り付いていた周囲の時間が動き出した。

「死ね! エロヒロキッ」
「このおっぱい魔人ッ!」
「セクハラ大王ッ!」
「何考えてんのよッ! アンタは?」

「や、やめろ! お前等ッ!? 今のは物の弾みデュおわッ!」

(主に胸元の寂しい)女の子たちから次から次へと投石を浴びせられ、たちまち広樹が血まみれとなる。
そんな眼前で繰り広げられる喜劇を、しばし呆然と見つめていたベアトリスだったが、
やがてハッ、と正気に返ると、コホン、と一つ咳払いをした。

「皆さん、静粛にッ!」

少女の声にギャラリーの動きが止まり、たちまちその場に緊張が戻る。

「――やれやれ、主も主なら、使い魔も使い魔よね
 本当にお似合いのコンビだわ あなた達」

「何だと!」

「いいことッ!」

ベアトリスが、人差し指をピシリと突き立てる。

「貴方が彼女に召還されたという事実こそが、彼女がメイジでは無いという何よりの証よ!
 何故なら普通のメイジは、平民の使い魔を召還したりはしないもの
 ましてやその使い魔が、異世界から来たなんてのたまう狂人とあってはね!」

「ぐっ……」

「……だいたいねェ、たかが胸の大きさで、何が分かるって言うのよ」

ジッ、とベアトリスはテイファニアを睨み付けると
彼女の容姿の中でもっとも気に入らない部分である、その、たわわな果実へと片手を伸ばした。

「痛ッ! は、離してッ!」

「フン! こんなモンはねぇ、単に重いだけの脂肪の塊よ!」

「や、やめろおおおおおおおォォ――――ッ!
 テファから手を離せッ!」

「大方、貴方の大好きな『メグ姉』さんとやらも、こんな脂肪の塊なんでしょうね
 おお、やだやだ、汚らわしいこと……」

その言葉を聴いた瞬間、プツン、と、広樹の中の何かが音を立てて切れた。

広樹の放つただならぬオーラに、思わずひっ、と級友達が後ずさる。
普段の広樹は、乳の事さえなければ気の良い友人であったが、
彼の前でやってはいけない事が二つある事を、彼らは長い付き合いで知っていた。

――ひとつは、『メグ姉』『タチバナ』を侮辱する事。
――もうひとつは、おっぱいを侮辱する事、である。

世間知らずの大公国の少女は、先の不用意な一言で、自らの死刑宣告に判を押してしまったのだ。

「キサマッ! もう一度言ってみろォ――!」

「なッ! 何よッ 
 やってしまいなさい! 空中装甲騎士団ッ」

「クソッ! こうなったらやるしかない!
 行くぞ、水精霊騎士団! あのバカを死なすなッ!」

広樹の叫びを契機に、たちまち周囲が大乱闘の場と化す。
敵は、トリステイン最強とも噂される、クルデンホルフ空中装甲騎士団の精鋭である。
寄せ集めの少年騎士団では、本来ならば太刀打ちできる相手ではない。

――が、

「うおおおおおおおおおおおおおおお――ッ!」

「な! なんだ、このプレッシャーはッ!?」
「コイツ! 本当に単なる平民かッ?」

裂帛の気合を放つ黒髪の少年に、歴戦の騎士団が思わず怯む。
その一瞬の隙を突いてギーシュ達が前線へと飛び込む。
戦場に突如開いた大将への一本道を、凄まじい勢いで少年が駆ける。

「メグ姉のおっぱいが脂肪の塊だとォ~~ッ!」

「ヒッ、な、何だって言うのよ? クルデンホルフ大公家に楯突けばどうなるか……」

「そんな事をほざく乳は、こうしてくれるゥ―――ッ!」

「イッ、イヤアアアアアアァァァアアアァァ――ッ!」

 ・
 ・
 ・

ぷにょん。

その瞬間、取っ組み合いを続けていた両騎士団が動きを止めた。

やった。
やってしまった。
冴えない平民の使い魔が、あろう事か、トリステイン随一の貴族、
クルデンホルフ家の箱入り娘の、その、ささやかな乳を揉みしだいたのだ。

あのバカは打ち首だ。
いや、アイツだけを死なせはしない。
その時は、自分も共に腹を切ろう。
水精霊騎士団の団長を務めていたギーシュは、咄嗟にそんな事まで考えた。

――が、

「イヤッ! は、離して!」

それまでの高飛車な態度とは打って変わった可愛らしい悲鳴をあげ、
ベアトリスが広樹を突き飛ばした。

予想外の反応に、一同がおや?と首を捻る。
今の悲鳴は、決して本心から嫌がっている感じの「イヤッ!」ではない。
むしろ今のは、本当にやめたら却って失礼になる感じの「イヤッ!」だった。
広樹のヤツ、単なる巨乳好きの童貞だと思っていたのに、どこでそんなテクニックを身につけたのか。
ゴクリ、と、悪友達が生唾を飲み込む。

だが、本当に驚愕していたのは、他ならぬベアトリス自身である。

眼前の平民の汚らわしい手が胸元に触れた瞬間、彼女が感じたのは、溢れんばかりの『幸福』だった。
この人は、本当におっぱいの事を愛しているんだと思った。
こんなにもおっぱいを愛している人とめぐり合えるなんて、自分のおっぱいは、本当に幸福なおっぱいだ。
そんな馬鹿げた事まで考えてしまっていた。
自らの感情を否定する、圧倒的な幸福感に、ベアトリスは、胸元が締め付けられるような苦しみを感じた。

いや……。

「え……? きゃっ!」

締め付けられるように、ではない。
本当に締め付けられているのだ。
どくん、どくん、と言う心臓の鼓動に合わせ、ささやかだった筈の膨らみが革命を起こし、
小さめの制服を内側から押し上げていく。
Yシャツは既に限界まで伸びきり、双丘は痛いぐらいに圧迫されていたが、それでも革命は止まらない。
やがて……

ブチィッ、

と言う音と共にボタンが爆ぜ、見事な谷間が大衆の前に飛び出した。

「み、見ろ! お前等ッ!」
「お、お嬢様のおっぱいが……!」
「あらゆる魔法を使い、あらゆる秘薬を飲み、あらゆるマジックアイテムを試し
 それでも尚、一向に成長の兆しを見せなかった、お嬢様のおっぱいが!?」
「あんなにも、ご立派なお姿になられて……!」

「これが……私? わたしの、おっぱい……」

半ば呆然と顔をあげ、穏やかな声で、ベアトリスが広樹へと声をかける。

「あなたは一体…… 私に、何をしたの?」

「証明したのさ」

「え?」

ゆっくりと、広樹が顔をあげる。

「ティファニア・ウエストウッドが召還したのは、ただの人間じゃない
 こんなイカレた能力を持つ奴、この星の生物ですらない
 だから、人間じゃない生物をテファは、ただのメイジだ…… そうだろ?」

「……あなたは? あなたは何者なの?」

広樹は大きく辺りを見回し、やがて、その問いを発した。

「なあテファ、それにキュルケ。
 お前等、少し変だと思ったことは無いか?
 『なんで自分は、こんな冴えない平民の少年を、本気で好きになってしまったのか?』ってな」

「……ッ!」
「なッ!」

呆れるほどに傲慢で自信過剰な台詞に、思わず二人が顔を上気させる。

(……でも、悔しいけれど、彼の言う通り。
 私は彼が好き。
 今まで様々な色男を手玉に取ってきたこの私が
 まともに声をかける事もできない。
 目を合わせる事もできない。
 恋文一つ渡す事すらできやしない。
 こんな事は、物心付いた時から、今まで一度たりとも無かった。
 まるで初心な少女みたいに臆病になってしまうほどに
 彼の事が好きで好きで堪らないなんて……。)

(何故なのヒロキ?
 貴方は何故、そんなに悲しい瞳をしているの?
 できる事ならば、貴方の抱いている悲しみの全てを
 私の胸で、優しく包み込んであげたい……)

「ちょ、ちょっと待ちなさいよッ!」

何事か考え始めた二人に代わり、胸元が絶望的な桃色頭の少女が声を上げる。

「それじゃあナニ? 触っただけでおっぱいを大きくできるのも
 一部の女の子がアンタにぞっこんなのも、みんな、アンタが宇宙人だからだって言うの?
 バカも休み休み言いなさいよ!
 一体ドコの星に生まれれば、そんな能力……」

そこまで、口にしたところで、ルイズがはたと気付いた。
彼女自身の言葉の中に、ハッキリと答えはあったのだ。

改めてルイズが思案に耽る。
彼に熱を上げていたのは、ティファニアやキュルケだけでは無かった筈だ。

――テファが呼び出した使い魔を、まるで本物の弟のように溺愛していたフーケ。
――右も左もわからない少年を、実の母親のような優しさで庇護し続けたカトレア。
――主が止めるのも聞かず、種族を超えた執拗なアタックをかけ続けていたシルフィード。
――冴えない平民の彼に、伝説の勇者の姿を重ね合わせていたアンリエッタ。

逆に、彼を毛嫌いしていたのは誰だったか?

――モンモランシー、タバサ、そして自分……!

「――気付いたか、ルイズ?」
「……ヒロキ、アンタ、まさか?」
「ああ……」

 ・
 ・
 ・

おもむろに、広樹が眼鏡を外す。
深い悲しみを宿した瞳から、熱いものが一筋、頬を伝う。

「お前の想像の通りさ
 俺は……
 オレ、狩谷広樹は…… 『 お っ ぱ い 星 人 』 だ !」


……
………お
…………っ
……………ぱ
………………い
…………………星
……………………人。

…………………………実在したのか。

そんな、呆然とした考えしか、一同は思い浮かばない。
同情して泣いてやればいいのか? それともこれは、思い切り笑い飛ばすべき事態なのか? それすらも判断がつかない。
辺りが水を打ったように静まり返る中、広樹の独白が続く。

「――たまに、巷にいるだろ?
 『いあ~ オレっておっぱい星人だからさ~』みたいな軽いノリで
 あらゆるセクハラが許されてしまうナンパ野郎が

 ああいう奴らって、実は全員『本物』なんだぜ
 ハハッ! 笑っちまうだろ……」

……まったく笑えない。
眼前で繰り広げられている一人芝居は、悲劇にしては冗談が過ぎ、喜劇としては余りに衝撃的過ぎた。

「ヒロキが…… おっぱい星人、ですって……?」

かろうじてキュルケが呟く。
彼が相当なおっぱい星人である事は、早い段階で分かっていたが、
まさか、本当に『本物の』おっぱい星人であろうとは、思いもよらない事態であった。 

「本当に、おっぱい星人……なの? ヒロキ……?」

「正確に言えば、おっぱい星人の父と、地球人の母との間に生まれたハーフさ
 ハハ テファと同じだね」

「そんなの……」

そんなのと一緒にされても困る。
と、喉まで出掛かった言葉を、かろうじて飲み込む。
だが、おっぱい星人の血を引く人間が日常に溶け込んでいた事を思えば、
エルフの血を引いている人間が居た事なんて、本当にどうでもいい事かも知れない。
その場に居合わせた者達は、皆、その見解で一致した。

「……出来れば、この事は誰にも知られたくなかった
 ただの平民のフリをしながら、つつがなく日々を過ごして
 その内に、元の世界に戻る方法が見つけられればって、そう思っていた……」

だが、もう平民の日常には戻れない。
最高のおっぱいと引き換えに、彼は、平民としての日常を失ってしまったのだ。
これからは良くも悪くも、おっぱい星人としての日々が始まってしまうのだ。

彼は孤独だ。
喜劇と悲劇は紙一重、とは良く言ったものであるが、
何を言っても喜劇にしかならないという悲劇が、現在の彼を孤独にしていた。
大好きだったメグ姉も、かけがえの無い理解者であった立花も、この世界にはいない。

「そんな事は無いわ ヒロキ!
 私は…… 私はあなたの事を……!」

「君が俺の事を思ってくれるのは、俺がおっぱい星人だからなんだぜ? テファ……」

「! そ、そんな……」

捨て鉢な広樹の言葉に、ティファニアが絶句する。

嗚呼。
せめて彼が、適当でナンパな男であったなら良かったのだ。
それならば、世界は幸福だった筈だ。
彼も、ハルケギニアも、そこに住まうメロンちゃん達も、
幸福なファンタジー世界の日常を続けられたであろうに……。

だが、彼は誠実で繊細だった。
誠実ゆえに悩み、繊細ゆえに傷つき、大きく道を間違えた果てに……、

彼は、ハルケギニアの世界を揺るがす選択をした。

「……フ、フフ、そうさ、そこそこに幸福で、そこそこに不幸な平民の日常は、今日で終わりだ……」

「ヒ、ヒロキ……?」

キッ、と、広樹が顔を上げる。
強大な決意と覚悟に満ちた、本物の野獣の目をしていた。

「これからの俺は、本物のおっぱい星人として生きるッ!」

「え え え え え え え え え  え え え――――ッ!」

 ・
 ・
 ・

言葉の意味は良く分からない。
だが、本能的に嫌な予感を感じ取った二つの騎士団は咄嗟にタッグを組み、
脳みそが煮えまくった広樹の前へと立ちはだかった。

「よ、よ、よせッ!
 少し頭を冷やすんだ ヒロキ!
 今のお前は、どう見ても人としての軸が……」

「どけえぇぇェ―――ッ!」

友人・ギーシュの必死の忠告を遮り、広樹が獣の如く大地を蹴る。
直後、その胸元に、記すのも憚るほどにおぞましい形のルーン文字が浮かび上がる。

「うおおおおおおぉぉぉおおおぉぉッ!
 もう、ハルケギニアの未来なんぞ知ったことか――ッ!

 ど い つ も こ い つ も 巨 乳 に し て や る ぅ ―――!!」

「な! 何だ!? コイツのパワーは!」
「魔法が! 魔法が利かない!?」
「バカなッ! トリステイン最強を誇るクルデンホルフ空中装甲騎士団がッ!
 ただのおっぱい星人ごときにィ~~~!?」

「やめるんだ! ヒロキッ! 小ぶりなおっぱいだって、それはそれで魅力的だヴァアァァァアアッ!!!!!」
「ギッ! ギィシュウウゥゥゥ――ッ!?」
「近づくなレイナール! 今のアレはヒロキじゃないッ!」

「早く、今のうちに女生徒を! 特に貧乳な娘を優先して逃がすんだッ!」
「ダ、ダメ…… あんなに野獣めいた瞳に見つめられたら、私、は……」
「早く逃げてタバサ! あんなのに掴まったが最後、たちまち見事なボインちゃんにされてしまうわ!」
「見事な…… ボインちゃん……」
「おっぱい! おっぱい!」
「自重しろマリコルヌゥ―――ッ!!」

「メグ姉の…… 立花の居ないこんな世界なんてェ――ッ!
 お っ ぱ い で 埋 め 尽 く し て や る ッ !!」

 ・
 ・
 ・

――以上が、ハルケギニア全土に一大おっぱい革命をもたらす契機となった事件、『ベアトリスの乳審判』の顛末である。

騒ぎの中心人物であるティファニア・ウエストウッドの使い魔、ヒロキ・カリヤについては
未だに解明されていない部分も多く、その正体は謎のヴェールで包まれている。

革命の拡大に合わせ、彼の名前は瞬く間に各地へ伝播し、様々な『伝説』として語られるようになった。

――曰く、ジョゼフⅠ世の使い魔を篭絡し、ガリア戦役終結の立役者となった。
――曰く、トリステイン-ゲルマニア百年戦争の火種となった。
――曰く、自力でサモン・サーヴァントを習得し、異世界の恋人二名を召喚した。
――曰く、ハルケギニア初のブラジャーを考案した。
――曰く、エルフと乳の因果関係を調査するためサハラに渡った。
――曰く、竜の羽衣に乗って故郷へ帰った。
――曰く、当時の女性の平均バストサイズが、約20cm増加した。

など、彼に関するこれらの伝承は、事件より千年の時を経た現在も尚、ハルケギニア各地で散見される。

トリステインのアカデミーに残る人名録には、彼の業績について、ただ一言【記す事憚る】、とだけ記述されている。



尚、予断ではあるが、彼を取り巻く女性達の中で、友人のルイズ・フランソワーズのみが
生涯ささやかな胸部を守り抜いた事で知られている。

虚無の影響が豊胸を阻んだとも、強大な魔法の使いすぎでエネルギーを奪われたとも
一部の騎士達の知られざる闘いがあったとも、元々無いものは増やしようが無かったとも言われるが、真相は定かではない。
いずれにせよ、この歴史的事実が、後世の聖女信仰における、メロン派とレモン派の深刻な対立を生み出すのである。

両派閥の和解には、更に三百年の時を待たねばならなかった……。


『僕と彼女のホント』より、狩谷広樹を召喚


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