第二節「アイ・アム・ナッシングネス」
夜が明け、ルイズの部屋にも朝日が差し込む。
学院内の探検を終え、室内で静かにしていたアルファモンが眺める中、ルイズは目を覚ました。
アルファモンを召喚したことで機嫌がいいのか、なんとも爽やかに目覚めた。
学院内の探検を終え、室内で静かにしていたアルファモンが眺める中、ルイズは目を覚ました。
アルファモンを召喚したことで機嫌がいいのか、なんとも爽やかに目覚めた。
「おはよー、アルファモン」
「おはよう、ルイズ。意外と早起きだな」
「そう?」
「おはよう、ルイズ。意外と早起きだな」
「そう?」
ルイズの場合、早起きが習慣になっているだけだが、それがアルファモンには若干新鮮に見えた。
そして、アルファモンは何故か本棚に目をやり、次に何か言いたげな目でルイズを見る。
それを察したのか、ルイズはこう言った。
そして、アルファモンは何故か本棚に目をやり、次に何か言いたげな目でルイズを見る。
それを察したのか、ルイズはこう言った。
「本を読みたいの?」
「駄目か?」
「イイに決まってるじゃない! どれにするの?」
「駄目か?」
「イイに決まってるじゃない! どれにするの?」
ルイズは本棚から数冊取り出し、アルファモンに手渡す。
本の表紙に書かれた文字の意味を理解した瞬間、アルファモンは違和感を覚える。
本の表紙に書かれた文字の意味を理解した瞬間、アルファモンは違和感を覚える。
「変だな……。初めて見る字なのに、読めるぞ」
「……あっ!」
「……あっ!」
ルイズも異変に気付く。
ハルケギニアとは違う世界から来た存在が、何故今日になってこの世界の字が読めるのかを。
しかし、すぐ原因にも気付く。
何のことはない、コントラクション・サーヴァントでルーンが刻まれた場合、使い魔は特殊な能力を得るケースがある。
アルファモンの場合、元々喋れるので、知能面が大幅に強化されたのだ。
もっとも、アルファモンが得た恩恵はそれだけではないが。
ハルケギニアとは違う世界から来た存在が、何故今日になってこの世界の字が読めるのかを。
しかし、すぐ原因にも気付く。
何のことはない、コントラクション・サーヴァントでルーンが刻まれた場合、使い魔は特殊な能力を得るケースがある。
アルファモンの場合、元々喋れるので、知能面が大幅に強化されたのだ。
もっとも、アルファモンが得た恩恵はそれだけではないが。
「ルーンが刻まれた場合、何かしら特殊な能力がつく場合があるの。人の言葉が喋れたり、異常に頭が良くなったり」
「俺の場合、後者か……」
「俺の場合、後者か……」
制服に着替え(その間アルファモンは後ろを向き、目を閉じていた)、残りの身支度も終えたルイズはアルファモンを連れて部屋を出る。
アルファモンの手には、ルイズから渡された数冊の本があった。
最初は機嫌が良かったルイズだが、同時に外を出たある同級生の姿を見て、一気に機嫌が悪くなる。
アルファモンの手には、ルイズから渡された数冊の本があった。
最初は機嫌が良かったルイズだが、同時に外を出たある同級生の姿を見て、一気に機嫌が悪くなる。
「あらルイズ」
「何であんたも早起きしてんのよ」
「いいじゃない、別に」
「何であんたも早起きしてんのよ」
「いいじゃない、別に」
キュルケの顔を見た際のルイズの表情を見て、アルファモンはルイズは彼女のことが嫌いなのだと判断する。
もっとも、キュルケの方は、単純にからかっているだけに過ぎず、アルファモンもそれに気がついたが。
そうこう言い合う内にキュルケはアルファモンの方に視線を移した。
もっとも、キュルケの方は、単純にからかっているだけに過ぎず、アルファモンもそれに気がついたが。
そうこう言い合う内にキュルケはアルファモンの方に視線を移した。
「貴方が使い魔ね。いつもそんな鎧着けてて、疲れない?」
「言っておくが、俺は元々こんな姿だ」
「……冗談でしょ?」
「言っておくが、俺は元々こんな姿だ」
「……冗談でしょ?」
そういうキュルケに、アルファモンは額に刻まれた純白のルーンを指差し、ダメ出しした。
「よく見ろ、鎧越しにルーンが刻まれるか?」
この一言にキュルケは微妙に納得する。。
「それも……そうね。それじゃ、今から私の使い魔を紹介するわ。フレイム!」
キュルケのこの一声で、彼女の側に虎ほどの大きさのトカゲが出てきた。
よく見ると、尾の先端に火が灯っているように見える。
アルファモンはそれを不思議そうに見ていた。
よく見ると、尾の先端に火が灯っているように見える。
アルファモンはそれを不思議そうに見ていた。
「この子はフレイム。火山山脈出のサラマンダーよ」
得意げに語るキュルケ。
しかし、ルイズの反応は薄かった。
しかし、ルイズの反応は薄かった。
「そう。行くわよ、アルファモン」
「ああ」
「ああ」
二人はそのまま女子寮を出て行った。
ルイズの反応の薄さに面くらい、思わず呆気にとられるキュルケ。
ルイズの反応の薄さに面くらい、思わず呆気にとられるキュルケ。
「……反応が薄いわね。からかいがいがないじゃない。ね、フレイム」
アルヴィーズの食堂。
そこにはアルファモンの姿はない。
入った直後に、アルファモンの分の食事を頼むことを忘れたことに気付いたルイズが、ばつが悪そうに厨房の方に行く様に言ったからである。
そこにはアルファモンの姿はない。
入った直後に、アルファモンの分の食事を頼むことを忘れたことに気付いたルイズが、ばつが悪そうに厨房の方に行く様に言ったからである。
厨房。
そこには、賄いにありついているアルファモンの姿があった。
シエスタはおろか、マルトーを始めとする厨房の人間たちも興味深そうにアルファモンを見ている。
最初、元々甲冑をまとったかのような姿であると聞いた際、シエスタ以外は耳を疑った。
しかし、額に刻まれた純白のルーンと、賄いのシチューを黙々と口に運ぶ光景を見て、納得させられたのである。
そこには、賄いにありついているアルファモンの姿があった。
シエスタはおろか、マルトーを始めとする厨房の人間たちも興味深そうにアルファモンを見ている。
最初、元々甲冑をまとったかのような姿であると聞いた際、シエスタ以外は耳を疑った。
しかし、額に刻まれた純白のルーンと、賄いのシチューを黙々と口に運ぶ光景を見て、納得させられたのである。
「俺みたいなのは、珍しいのか?」
視線が気になったアルファモンが口を開く。
その一言に、シエスタ以外は思わずはっとなる。
そしてシエスタがそれを肯定した。
その一言に、シエスタ以外は思わずはっとなる。
そしてシエスタがそれを肯定した。
「多分そうだと思いますよ」
「それも……そうか」
「それも……そうか」
このときアルファモンは気付かなかったが、シエスタの手の皮膚は、人間とは思えない形状と色合いをしていた。
教室。
この日の授業の担当であるシュヴルーズには年に一度の楽しみがある。
それは、新2年生たちが召喚した使い魔を見ること。
今年はどのような使い魔たちが召喚されたのかを想像する楽しみもある。
教室に入り、挨拶をして、教室の奥の方にいる使い魔たちに目を通す。
真っ黒な甲冑姿で本を読んでいるアルファモンの姿に目が行く
この日の授業の担当であるシュヴルーズには年に一度の楽しみがある。
それは、新2年生たちが召喚した使い魔を見ること。
今年はどのような使い魔たちが召喚されたのかを想像する楽しみもある。
教室に入り、挨拶をして、教室の奥の方にいる使い魔たちに目を通す。
真っ黒な甲冑姿で本を読んでいるアルファモンの姿に目が行く
「ミス・ヴァリエール、これはまた珍しいのを召喚しましたね」
その言葉に笑う者もいれば、得体の知れない者への警戒を抱く者いる。
もっとも、後者は少数であったが。
クラスメートの一人が、はやし立てる。
もっとも、後者は少数であったが。
クラスメートの一人が、はやし立てる。
「ゼロのルイズ! いくら成功しなかったからって、実家から連れてきた従者に鎧を……」
その言葉は、アルファモンから放たれる殺気と、怒りが篭った視線に遮られ、敢え無く途切れる。
これ幸いとばかりに、ルイズは切り返した。
これ幸いとばかりに、ルイズは切り返した。
「うるさいわね。目が見えてるの? 風邪っぴき。額のところにちゃんとルーンが刻まれているでしょ!」
この一言で、はやし立てようとした生徒、マリコルヌは黙る。
それから、何事も無く授業は進んでいったが、シュヴルーズの何気ない一言で、生徒たちは凍りつく。
それから、何事も無く授業は進んでいったが、シュヴルーズの何気ない一言で、生徒たちは凍りつく。
「ミス・ヴァリエール、貴方にやってもらいましょう」
錬金の実演に、ルイズを指名したのだ。
シュヴルーズは発言を撤回する気はなく、止める様に言い出した同級生たちの発言にキレたルイズもやる気満々になる。
それを見ていたキュルケたちは、一斉に机の下に避難する。
何事かと気になったアルファモンはキュルケに話しかけた。
シュヴルーズは発言を撤回する気はなく、止める様に言い出した同級生たちの発言にキレたルイズもやる気満々になる。
それを見ていたキュルケたちは、一斉に机の下に避難する。
何事かと気になったアルファモンはキュルケに話しかけた。
「一体何がおきるんだ?」
「見てれば分かるわよ」
「見てれば分かるわよ」
その一言で、何か良くないことが起きると判断したアルファモンは、ルイズに呼びかける。
それと同時に駆け出す。
それと同時に駆け出す。
「ルイズ! 呪文を唱えちゃダメだ!」
しかし、時すでに遅く、ルイズの「錬金」の一言が響く。
そして真鍮の塊が光りだすのと同時に、アルファモンは右手でそれを握り締めた。
直後、真鍮の塊が爆発し、爆発の衝撃でアルファモンは吹き飛ばされる。
そして真鍮の塊が光りだすのと同時に、アルファモンは右手でそれを握り締めた。
直後、真鍮の塊が爆発し、爆発の衝撃でアルファモンは吹き飛ばされる。
「……!」
かろうじて気絶は免れたものの、右手があるのに、それが有るという感覚が無い。
動かそうにも、右手の指は微動だにしなかった。
爆発の衝撃で一時的に麻痺したのである。
アルファモンがルイズに感じた違和感の正体。
それは、「魔法が使えない」ことであった。
驚いたシュヴルーズの判断により、授業は中止となり、生徒たちは教室を出て行く。
そのうちの何人かは口々にルイズを罵倒しながら出て行った。
動かそうにも、右手の指は微動だにしなかった。
爆発の衝撃で一時的に麻痺したのである。
アルファモンがルイズに感じた違和感の正体。
それは、「魔法が使えない」ことであった。
驚いたシュヴルーズの判断により、授業は中止となり、生徒たちは教室を出て行く。
そのうちの何人かは口々にルイズを罵倒しながら出て行った。
ルイズとアルファモンだけが残された教室。
ルイズは申し訳なさそうに、アルファモンの右手を自分の両手で包む。
またもや失敗し、しかも今度はアルファモンがそれで傷ついた。
ルイズは完全に自棄になる。
ルイズは申し訳なさそうに、アルファモンの右手を自分の両手で包む。
またもや失敗し、しかも今度はアルファモンがそれで傷ついた。
ルイズは完全に自棄になる。
「分かったでしょ、あいつらが何で私のことを「ゼロ」って呼んでいたのか……。何度やっても爆発しか起こせない出来損ない……。笑いなさいよ、馬鹿にしなさいよ、アンタも!!」
泣きながら怒鳴り散らすルイズ。
眼前のアルファモンが寂しそうな目をしたのと同時に、右頬に衝撃が走り、視線が強制的に逸れた。
直後に、アルファモンが自分に平手打ちしたことを悟る。
眼前のアルファモンが寂しそうな目をしたのと同時に、右頬に衝撃が走り、視線が強制的に逸れた。
直後に、アルファモンが自分に平手打ちしたことを悟る。
「君は出来損ないじゃ無い。俺と契約した時、爆発は起きなかった。君が自棄になったら、使い魔である俺はどうすればいいんだ!?」
「アルファモン……。貴方は、どうしてそんなに優しいの?」
「俺は、最初からこんな姿ではなかった。かつて『ドルモン』という、君より小さい毛玉だった頃、俺も一人ぼっちだった」
「アルファモン……。貴方は、どうしてそんなに優しいの?」
「俺は、最初からこんな姿ではなかった。かつて『ドルモン』という、君より小さい毛玉だった頃、俺も一人ぼっちだった」
ルイズに、淡々と過去を語るアルファモン。
X抗体を持つが故に迫害され、共に戦う仲間たちから疑われ、それでも絶望せずにイグドラシルに挑んだ過去。
己の影、デクスモンを敢えて相討ちとなることで倒し、自分の力とイグドラシル打倒をオメガモンに託したことを。
X抗体を持つが故に迫害され、共に戦う仲間たちから疑われ、それでも絶望せずにイグドラシルに挑んだ過去。
己の影、デクスモンを敢えて相討ちとなることで倒し、自分の力とイグドラシル打倒をオメガモンに託したことを。
「ドルモンに戻った俺はトコモンたちと再会し、今度は歓迎された。だが……それから月日が流れたある日、俺はいつの間にかこの姿でリアルワールドにいた。後は、昨日話したとおりだ」
「アルファモン……」
「ルイズ、君はもう一人じゃない。俺がいる」
「アルファモン……」
「ルイズ、君はもう一人じゃない。俺がいる」
その言葉に、思わず涙目になるルイズだが、すぐに拭って立ち上がる。
そして、顔を赤くしながらこう言った。
そして、顔を赤くしながらこう言った。
「あ、当たり前でしょ! 使い魔と主人は一心同体なんだから!」
「それでいい……」
「それでいい……」
ルイズは少しくらい意地っ張りの方がいい。
アルファモンはそう思った。
ルイズから借りた本を回収し、まだ麻痺している右手でルイズの頭を撫でる。
アルファモンはそう思った。
ルイズから借りた本を回収し、まだ麻痺している右手でルイズの頭を撫でる。
「右手、動くようになったの?」
「まだ、だな。しばらくすれば動くようになるさ」
「まだ、だな。しばらくすれば動くようになるさ」
教室を出て、とりあえず昼食の時間まで中庭で過ごそうと考えたルイズは、アルファモンを連れて廊下を歩いていた。
と、そこにたまたまシエスタが通りかかる。
と、そこにたまたまシエスタが通りかかる。
「シエスタ」
「こんにちわ、ミス・ヴァリエール、アルファモンさん」
「こんにちわ、ミス・ヴァリエール、アルファモンさん」
シエスタに気さくに挨拶するアルファモン。
シエスタとは馴染みであるルイズは、ある事をシエスタに頼む。
シエスタとは馴染みであるルイズは、ある事をシエスタに頼む。
「シエスタ、ちょっと頼んでいい?」
「何でしょうか?」
「何でしょうか?」
魔法の失敗による爆発での負傷で、アルファモンの右手の指が一時的に動かないため、彼の昼食は片手で済ませられる物にして欲しいとのことであった。
「それなら任せてください。サンドイッチは得意ですから」
昼飯時の厨房。
アルファモンのためにと、シエスタが腕によりをかけて作ったサンドイッチが並んでいた。
慣れない左手でそれを食べ始めるアルファモン。
アルファモンはしばらくしてから、シエスタがこの場にいないことに気付く。
アルファモンのためにと、シエスタが腕によりをかけて作ったサンドイッチが並んでいた。
慣れない左手でそれを食べ始めるアルファモン。
アルファモンはしばらくしてから、シエスタがこの場にいないことに気付く。
「……シエスタは?」
「アイツなら、デザート配りに食堂に行ったぜ」
「そうか」
「アイツなら、デザート配りに食堂に行ったぜ」
「そうか」
サンドイッチの美味さに、和みながら食べ続けるアルファモン。
しばらくして平らげた直後、急に廊下の方が騒がしくなった。
何事かとマルトーたちが思い始めた直後、いきなりドアが乱暴に開かれる。
ドアが開かれた先には、青ざめたシエスタがいた。
しばらくして平らげた直後、急に廊下の方が騒がしくなった。
何事かとマルトーたちが思い始めた直後、いきなりドアが乱暴に開かれる。
ドアが開かれた先には、青ざめたシエスタがいた。
「ア、アルファモンさん、た、大変です……、ミス・ヴァ、ヴァリエールが……」
「どうしたんだ!?」
「殺されちゃう……。ミス・ヴァリエールが殺されちゃう!」
「どうしたんだ!?」
「殺されちゃう……。ミス・ヴァリエールが殺されちゃう!」
その頃、学院長室。
今朝、リリスモン経由でオスマンから、アルファモンのルーンを調べて欲しいと頼まれたコルベールが報告していた。
今朝、リリスモン経由でオスマンから、アルファモンのルーンを調べて欲しいと頼まれたコルベールが報告していた。
「純白だったので思い出すのに意外と時間がかかりましたが、彼のルーンは『神の本』のそれと全く同じでした」
「うぬぅ……。やはり『虚無の使い魔』であったか」
「うぬぅ……。やはり『虚無の使い魔』であったか」
二人のやり取りを見ていたリリスモンは、気紛れで遠見の鏡を発動させる。
そこには、大変な光景が写っていた。
そこには、大変な光景が写っていた。
「オスマン、コルベール。彼奴の飼い主と、グラモンのバカ息子が決闘をするようだぞ」
「何じゃと!?」
「何と!?」
「何じゃと!?」
「何と!?」
観衆に囲まれ、ルイズとギーシュ・ド・グラモンが対峙している光景が映し出されたいた。
次回、「デジタライジング」まで、サヨウナラ……