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ゼロの黒魔道士-23


「こらビビ~、起きなさい!アルビオンが見えてきたわよ!」
船室から顔を出すと、周りは茜色に染まった大きな雲だったんだ。
「すっごいでしょ?ほら、もっとこっち来てみなさいよ~!」
おっきなマシュマロの塊みたいな雲の上に、おっきな陸地がのっかっている。
チョコボの空中庭園よりも巨大で、それは綺麗で幻想的で、すっごい光景だった。
でも……
「あ、あのさ、ルイズおねえちゃん、そんなに乗りだしちゃ危ないよ?……こ、ここからでも十分見れるし……」
高い所って、やっぱり怖いなぁ……


―ゼロの黒魔道士―
~第二十三幕~ 白の王国 アルビオン


流石に、ルイズおねえちゃんみたいに甲板から身を乗り出すことはできなかったけど、
お日さまがゆっくりと上がってきて、周りが朝やけのオレンジ色の雲で囲まれるっていうのは、
心が揺れて、旅をしてるなぁってワクワクしてくる。

ボクたちが乗っているハルケギニアの飛空挺は、『風石』っていうのを燃料にしつつ、
帆船みたいに風を受けて燃料を節約したり、舵をとったりしてるんだって。
ガイアみたいに『霧』がないから『霧機関』もないし、『ジョウキキカン』もないみたいだ。
こっちの方が、ガイアの飛空挺よりゆっくり飛んでくれるし、静かなのはいいけど、
大きな風が来るとすぐ揺れるのはイマイチだなぁって思う。
「カカカ!相棒、船室でガタガタ言ってたしなぁ~」
……デルフの怖いものって、何か無いのかなぁって思ってしまう。
「やれやれ、使い魔君にも怖い物があるとはね」
ワルドおにいさんも苦笑いだ。

「右舷前方の雲より船っ!!」
にわかに甲板上が騒がしくなる。
「あら、変な船ね、真っ黒で旗が無いわよ?ビビ、こっちきて見てみなさいな」
「え、ぼ、ボクはいいってば……」
ルイズおねえちゃんみたいに、甲板から体半分乗り出すなんてことは、
もう一度生き返ったとしてもできそうにないな、と思うんだ。
それにしても、なんだろう?
船員さん達はみんな、走り回っているか、叫んでいるかだ。
なんか、嫌な予感がしてきたんだ。
「おっとぉ~?キナくせぇにおいだなぁ、おれっちワクワクしてきたぜ!」
デルフの発言が、より嫌な予感を確実なものにしてしまう。
……デルフの鞘、宿屋さんに忘れてきちゃったなぁ、そういえば……

ドォーンッ
突然、大きな音がボク達の乗っている船の上を通り過ぎた。
「威嚇射撃っ!!」「やはり空賊かっ!」
かろうじて聞き取れた船員さん達の怒号から、状況がやっと分かった。
「……もしかして、この船、狙われてる?」
「あぁ、そうだな。使い魔君」
「えっと……もしかして、かなりマズい状況?」
「あぁ、そうだな。使い魔君」
……なんで、こうなっちゃうんだろう?

「そんなっ!ワルド、なんとかできないの?」
「魔法は、この船を浮かべるために打ち止めだよ。あの船に従うんだな」
昨日の夜、この船は飛ばないはずだったんだけど、
ワルドおにいさんが『風石』の魔力を補うのと、
通常の2倍のお金を払うことでなんとか飛んでもらうことになったんだ。
だから、ワルドおにいさんは今は魔法が使えない。
つまり、ルイズおねちゃんを守るには……
「ルイズおねえちゃん、えっと、向こうの船を落とせばいいの?」
ボクがなんとかしないといけない、そう思ったんだ。
「! そうよ、あんたがいるんじゃない! ビビ!きっちり沈めてきなさいっ!任務のため、邪魔な障壁は排除よ!」
「う、うん……」
ルイズおねえちゃん、こんな勢いがずっと続くってすごいなぁ……
やっぱり、お友達のお姫様のため、だからかなぁ?

「えっと、あ、あれかな?」
「おら、相棒っ!しっかり狙い見定めやがれっ!ビビんじゃねぇぞ!」
「……デルフ、黙っててくれる?」
「お、おぅ、すまねぇ」
雲の隙間から近づいてくる真っ黒な船が、こっちに沢山の大砲を向けていた。
悪い人達が乗っているおっきな船。
確実に落とす必要があるかな、って思ったんだ。
「時は来た。許されざる者達の頭上に……」
だから、『メテオ』の呪文を詠唱しはじめたんだ。
「使い魔君、慎重に頼むよ?」
「カカカ、大丈夫っての!相棒はやるときゃやんだからよ!しっかし、これだとおれっちの出番ねぇなぁ~……」
「星砕け降りそs」ドッゴオォォッン「うわっ!?」「きゃぁっ!?」「おぉっ!?」「な、なんだなんだ!?」
もう少しで詠唱が完成するところで、ボク達の乗っている船が突然揺れたんだ。

「い、威嚇射撃が着弾!?」「くそ、あいつら卑怯なっ!」「航行不能!航行不能!」
「浮いているのがやっとです!」「舵がやられたっ!!」「消火消火ぁぁっ!!」
帽子をなおしていると、船員さん達の叫び声がさらに激しくなっていたんだ。
「――どうやら、空賊の船とはいえ救助してもらう他ないようだね」
ワルドおにいさんがさっきの揺れでコケたルイズおねえちゃんを助け起こしながら言う。
「な!? な、なんとかならないのっ!?ビビはまだ魔力があるはずだし――」
「この船はもはや空に浮くガレキらしいからね。口惜しいが、ここは諦めて――」
「そんな!!」
「娘っ子よぉ、優先順位ってぇの考えな?任務も大事だがよ、命あってのものだねっつーぜ?あぁ、ちきしょ!おれっちの出番は無ぇのかー!」
……ときどき、ホントにときどき、デルフの言うことはその通りだなぁって思うんだ。
「剣にセリフを取られたね――まぁ、そういうことさ、ルイズ。ここは堪えよう。婚約者に怪我でもさせたら僕は生きていけないよ」
船尾からは煙があがってきていた。


空賊達の船っていうから、もっと汚くてゴチャゴチャしてるかなって思ってたんだけど、
ボク達が閉じ込められた場所は思った以上にスッキリと片付いていたんだ。
もしかしたら、ボク達がラ・ローシェルから乗ってきてた貨物船よりも綺麗かもしれない。
「……でも、すごい臭いだよね……」
「うむ、積み荷の硫黄と同室とはな――」
船員さん達と、ボク達と、積み荷の硫黄。
船員さん達は別室に閉じ込められているみたいで、ボク達は硫黄と一緒に船倉に閉じ込められたんだ。
「人質は少ししかとるつもりなかったからよ?まぁ貴族のお嬢ちゃん方にゃ悪いが、人命救助分の代金だ。狭くて臭いのは我慢しな!」
ってルイズおねえちゃん達の杖とデルフを回収した空賊は言ってたなぁ……
「なんで!!なんでこんなところで空賊なんかにっ!!」
「国家が荒れるときは、えてしてこういう愚か者どもが出るものさ。ルイズ。今は待とう。機会は向こうから来るはずだ」
やきもきしているルイズおねえちゃんをワルドおにいさんが諌める。
今は、待つしか無い、か……

ちょっとだけ、うたた寝をしちゃっていたら(昨日はあんまり眠れなかったし)、
船倉の扉がバタンと開いたんだ。
「おらぁ!貴族様方よ!お頭が面見たいって呼んでっから、来い!」
空賊の1人がそう言って入ってきた。
……どことなく、無理してセリフを言っているような感じがするなぁ?

「あまり、殺しはしたくない。だからお前らを救助した、そこまではいいな?」
空賊のお頭の部屋は、質素な造りではあったけど、置いてある道具はどれも高そうで、いかにも偉い人の部屋って感じだった。
インテリアの趣味で言えば、ギーシュよりもいいかもしれない。
(ギーシュの部屋はあのクジャの宮殿と同じぐらいゴチャッとして変な香水の臭いがしたんだ)
「と、トリステインの大使として言うわ!!即刻、私達を解放しなさい!!」
ルイズおねえちゃんが足をふんばって大きな声で言う。
今、身分を明かしちゃったりしていいのかなぁ……
あ、やっぱりワルドおにいさんが慌ててルイズおねえちゃんの口をふさいだ。
「ほほぅ?大使、ねぇ?お前さん達、貴族派かい?」
空賊のお頭がニヤリと笑って机の上の足を組み直した。
「あぁ、僕達h「王党派よっ!!誰が、あんな貴族の風上にもおけない薄汚い連中になんか!」る、ルイズ!?」
ワルドおにいさんが口をふさいだのは無駄だったみたい。
……もしも、ここで戦闘になったら、ボクがなんとかするしかない。
「(肉体をむしばみ、魂の器に満ちる毒……)」
だから、こっそりと『バイオ』の呪文を唱え始めておいたんだ。
ハルケギニアの魔法は杖がないと使えないみたいだし、
油断しているところを攻撃して、隙ができたら逃げる、そういうつもりだった。
「ハハハ!正直はいいことだがね、お嬢さん!命が惜しいならそんなことは言うもんじゃねぇな!俺達が貴族派ならどうするつもりなんだ?」
「反乱軍に名乗るぐらいなら、舌を噛み切って死んでやるわよ!」
「ルイズ!!」
呪文の詠唱は完成している。もし、戦闘になったら……
ドアの向こうにもこいつらの手下がいるだろうけど、どうしよう……
そんなことを考えながら、魔力を込めた掌をそっと後ろに隠して時を待っていたんだ。
「――最後のチャンスだ。貴族派につかねぇか?お前らをもってけばそれなりの金になるし、お前らも勝ち馬に乗りゃ稼げるぜ?」
「お断りだわ!死んでも、最低の連中になんか与するものですか!!」
その言葉に空賊のお頭が机から足を降ろして立ち上がろうとする。
いよいよか、と思ってボクは両手を構える。

「ハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
突然、お頭は笑い始めた。
どういうことか全然分からなくて、構えた両手の降ろしどころが分からなくなった。
「ハハハハハ――いやいや、突然笑いだして失礼。その気概がある貴族があと5人でもいれば、こんなことをしなくても良かったのだがね」
そう言ってボサボサの髪の毛に手を伸ばして、自らそれを取り払ったんだ。
……カツラだったの?ツケ髭もつけていたみたいで、ベリッと剥がすときちょっと痛そうだった。
ボクは、唖然としてしまって、両手に込めた魔力が散ってしまわないように留めておくので精いっぱいだった。
「ほぅ――」
ワルドおにいさんは何かに気づいたみたいだった。ニヤリと口の端っこをもたげた。
「自己紹介がまだだったね。アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。アルビオンへようこそ!気の強い、可愛い大使殿!」
「「え」」
ルイズおねえちゃんと声が重なった。
「「えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」」

「こいつぁおでれーた」ってデルフの声が聞こえそうな気がした。
……王子様やお姫様って、行動的、なのかなぁ?
アンリエッタ姫や、ダガーおねえちゃんもそうだったけど……

あんまりにも驚いて、『バイオ』を込めた両手を自分に向けてて、危うく自分にかけるところだった。


ピコン
ATE ―舞台演出家―

空賊船が廃船となった貨物船を離れ、ゆっくりと進路をアルビオンに向けた頃のことである。

「やれやれ、やっと動き出したようだ。これで、舞台は完全に整ったわけだ!」
雲に紛れ、風龍が一頭、そっと頭を出す。
「――いっそ、あの船落としてりゃ話は早かったんじゃないのかい?」
風龍の尾側にまたがる人物がそう尋ねる。
「ん?船を落とす?あぁ、それもできなくは無かったけどね」
そう言って頭側の人物が掌から白銀の光球を浮かび上がらせる。
見るからに強力な魔力の塊だ。船を落とすなんざ造作もないだろう。
それを呪文も杖もなしに、だ。
マチルダは思いっきり溜息をつく。
逆らうだの、逃げるだの考えるのもバカバカしくなってくる。
散るのが船ではなく自分になるだけだ。

「あいにく、主役級の役者達がご搭乗だしね。何より、ドラマチックな出会いを演出をした方がいいだろ?裏方としてはね」
唇を歪ませて光球をもみ消す男。
貨物船の舵を、雲の反対側から1撃で破壊した光球をだ。
精度も、距離も、ハルケギニアの魔法常識から外れている。
その気になれば、ここから乗客1人1人の頭を確実に吹き飛ばせたんじゃないか?
「主役級、ねぇ――あんたがご執心なのは、例のとんがり帽子のガキだろ?ビビってったっけ?」
最初に捕まったときに、トドメを刺した人形みたいなガキを思い起こす。
不思議な格好の小坊主ではあったが、そこまで熱心になる理由が理解できない。
「でもさ、あのガキ、強いには強いけど、そこまで熱心になるほどかねぇ?」
確かに、あのガキは強い。変な魔法を使う。剣の達人らしい。
とはいえ、あくまでも『ガキの割には』とつくのは事実だ。
ガキのうちから英才教育でもするつもりならともかく、
あんなガキ雇うぐらいなら、魔法衛士隊の1人でも懐柔させた方がてっとり早い戦力になるだろう。
「それとも、まさか『将来性にかけてオーディション合格』てなとこかい?」
「ほう?彼の実力を全て見たのかい、君は?君から見て、彼はどういう力を持つのかな?」
風龍の頭をなぜながら、振り向かずにそう問う男。
一々癇に障る物言いをする男だ。
「ワルドとかいう髭オヤジと戦ってるのは覗いたけどね、下見ついでに――ボッコボコにやられてたよ、あのガキンチョは」
自分のゴーレムがボッコボコにやられたことは伏せておく。
「ワルドに?なるほどね――仮説は立証されつつあるようだ」
唇に指先をあて、ほくそ笑む男。野郎のくせにしなやかな挙動がまた妙な色気を出している。
そういった色気がマチルダは一層嫌いだった。
過剰な男の色気など、吐き気以外の何をもたらすというのだ?
「仮説、ねぇ?偉大なる演出家様は何をお考えでしょうかねぇ?」
皮肉混じりに聞いてみる。
男性が饒舌にしゃべるときは情報収集のチャンスである。
だからこそ、酒場で売りたくもない媚を売ったし、セクハラにも耐えた。
とはいえ、この男の長く鬱陶しい言い回しは耐えれるものでは無かったが。
「――彼はね、まだ眠ぼけているのさ。光の扉に触れたときから、彼はゆるやかで穏やかなまどろみの中にいるんだよ」
これだ。この芝居がかった言い回し。腹が立つし腹も減る。
そういえば、昨日から何も食べていないと気づく。
「極上のワインと同じさ。花開くには栓を開けてしばし待つ必要がある。だが、目覚めればその香りは誰にでも分かる――」
ワインか、それも悪くない。だが、アルビオンの酒場なら、麦酒の方がいいものが揃っているだろう。
昼飯を麦酒にするかワインにするか、そんなことを考えてしちめんどくさい言い回しに耐えようとする。

「――目覚めの後に待つのは、悪夢かもしれないけれどね」
ぞくっと寒気がして、子羊ローストの妄想から思考が引き戻される。
大きな手振りで告げた静かな一言は、幼き日に見た悪夢そのものを連想させた。
「さて、舞台演出に戻ろうか。主役がお待ちだよ!」

とんがり帽子の使い魔に、マチルダは心底同情した。
どういった因縁かは知らないが、こんな妖しい男に目をつけられているのだ。
だが、自分も同様であるという忌まわしい考えが浮かびそうだったので、
同情するのも束の間で、あとは風龍の背中で目を閉じ、
再び蜂蜜ソースのかかった肉へと思いを馳せることにした。


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