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魔法陣ゼロ-07


7 決闘


「しっかし、広いなあ」

 学院の門に立つ衛兵からトイレに関する情報を手に入れたあと、二人は本塔の周りを歩いていた。
 そびえ立つ塔を見上げたニケは、首が痛くなった。

 一部の地域で『学校』というものを見た事はあった。だが、ここまでゴツい物ではなかった。
 中央にそびえる巨大な本塔を5本の塔が囲み、それぞれの塔が渡り廊下と城壁で接続されている。
 このトリステイン魔法学院は、ちょっとした城のような規模だった。

「ねえ、あっちに人がたくさん集まってるよ」
「ホントだ。なんだろ?」

 塀と渡り廊下に囲まれた広場には、多くの生徒達が集まって騒いでいた。
 何かをとり囲んでいるようだが、人垣に阻まれて全く見えない。
 近くにいた男子生徒に、ククリが尋ねた。

「ねえ、ここで何か始まるの?」
「青銅のギーシュと平民が決闘するらしいぞ。その平民が、ギーシュを侮辱したとかなんとか。
 ところで、見かけない顔だね。誰かの妹さんかな?」
「ありがとー。それから、違うよ」

 前をスタスタと歩くニケに追いつこうと、ククリは走りながら答えた。
 ニケが人ごみを掻き分け、ククリがすぐ後ろをついていく。
 なんとか一番前までたどり着くと、輪の中心には一人の男が立っていた。
 その男はすぐこちらに気付き、急に表情を変えた。

「遅いぞ、平民! このギーシュ・ド・グラモンを待たせるとは、いい度胸だ!」
「あ……やばっ」

 ニケは引き返そうとしたが、人々に押し返されて出れない。

「おいおい、ギーシュと決闘するんじゃなかったのか? もう待ちくたびれたんだ、早く始めてくれよ」
「け、決闘? ニケくんが!?」
「ええ!? 無礼な平民って、あんたのことだったの!?」

 驚いて自分を見つめるククリとルイズに、ニケは返事をできなかった。

(ま、まずい……すっかり忘れてた)

「さあ来い、決闘だ!」

 ギーシュがバラの花を振ると、花びらが一枚飛び出した。
 地面に舞い落ちるその瞬間、花びらは光を放つ。そして、甲冑を装備した人形に変化した。
 人形はニケに向かって一歩前進し、拳を構える。

「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?
 青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
「ちっ、仕方ないなあ」


 ニケは、広場の中央に向かって歩き出した。
 ワルキューレは女の姿をしてはいるが、ニケよりもかなり背が高く、重さもありそうだ。

(こいつに殴られたら痛そうだな……)
「行け、ワルキューレ!」

 ワルキューレが、ニケに向かって突進してきた。
 しかし、スピードは一般人程度。

「よっと」

 ワルキューレのパンチを、ひらりとかわす。
 さらに二度三度と攻撃してきたが、ニケに避けられない攻撃ではなかった。

「ふん、随分とすばしっこいね」

 ギーシュが再び杖を振る。ニケの背後に、ワルキューレがもう一体出てきた。
 二体のワルキューレが、ニケを前後から襲った。ニケは、後ろに大きくジャンプして避ける。
 着地すると、二体目のワルキューレのすぐ後ろだった。

「チャンス!」

 ニケは腰の短剣を抜き、目の前の背中に突き立てる。
 観客から歓声がわいた。


~~~


「すごいじゃない。あんなに深く刺さって――」
「刺さってない」

 ニケの意外な強さに関心したキュルケを、隣に立つ小柄な少女が否定した。

「あら、本当ね」

 それを聞いたルイズが、驚いて叫ぶ。

「ど、どうゆうこと!? だって、ニケの剣が――」
「刺さっているように見えるだけ」
「え?」
「ゼロのルイズ、あなたは視力もゼロなの? 剣をよく見なさい」
「えーと……あっ!」

 確かに、刺さってはいなかった。


~~~


「しっ、しまった! 剣が折れてたんだった!」

 昨日戦ったのは、やたらと固いモンスターだった。
 それを知らず攻撃した時に、剣が折れてしまっていた。
 折れた剣がワルキューレの背中に当たる様子は、遠目には剣が刺さっているようにも見えた。

「なんだい、その剣は? 僕をバカにしているのか?」

 二体のワルキューレが、突進して来た。さっきよりも速い。

「ちょ、ちょっと待て! タンマ!」

 しかし、待てと言われて待つワルキューレではない。
 なんとかギリギリで攻撃をかわしたが、そろそろ疲れてきた。

「そ、そうだ! 光魔法『キラキラ』!」

 光魔法の最高峰『キラキラ』は、勇者のみが使える、自然界のあらゆるものから剣を取り出す魔法だ。
 自分自身からエネルギーを取り出せば、自分をかたどった光り輝く剣が生み出される。

 ニケは、右手に意識を集中させた。
 ニケの姿をした剣が、右手に現れ――

「なんじゃこりゃあ!?」

 なんかムキムキとした剣が、右手に現れた。
 ギラギラと黄金色に輝き、筋肉を見せつけるようなポーズをしている。

「なんだそれは!? 何かのマジックアイテムか?」
「すごい、キラちゃんがレベルアップしてる! でも、あんまりかわいくない……」
「なんだか分からないけど……行け!」
「ヤーカリカリ!」

 『自分の剣』は凄まじい速度で伸び、ワルキューレに向かって突進していく。
 以前より遥かに強烈な反動に、ニケは驚いた。
 本来なら、体が後ろに倒れてしまうほどの反動だ。しかし、不思議と余裕で耐えられた。

(よし、この勢いなら倒せるかも!)

 剣の頭がワルキューレの腹に突っ込み、ワルキューレが吹っ飛んだ。
 胴体がグシャリと潰れて折れ曲がり、もはや使い物にはならなさそうだ。

「くっ! なかなかやるな……。
 この僕も、ちょっと本気を出す必要がありそうだ」

 ギーシュは、さらに5体のワルキューレを作り出した。今度のワルキューレは、それぞれの手に武器を持っている。
 それに対して、ニケは――

「……! ……!」

 頭を抱えて、うずくまっている。


「ん? どうしたんだ? 僕の圧倒的な実力を見て、怖くなったのかな?」
(う~~~! 痛い痛い、頭が痛い!)

 『自分の剣』の攻撃が当たった瞬間、ニケの頭に激痛が走っていた。
 あまりの痛さに、動けないほどだ。

「降参するかい? 今謝るなら、君の勇気に免じて、命だけは助けてやろう。
 このまま続けてもかまわない。僕の杖を奪うか、降参させたら君の勝ちだ。
 だが、そんな事が平民にできるわけがないだろう?」

 ワルキューレ達が武器を構える。それを見たニケは、この戦いに疑問を持った。

(7対1とか、反則なんじゃ……奴は中ボスじゃなくてザコ敵なのか?
 ――え? あれ?)

 ふと、ニケは気付いた。今自分はうずくまっている。
 にもかかわらず、ワルキューレ達が構える様子が『見えて』いる。しかも、こちらに向かってはいない。
 ワルキューレの向く先には、うずくまる自分自身が見えた。
 『自分の剣』の長い胴体が、こちらまで伸びている。

(こ、これって……『自分の剣』の視界なのか!?)

 視覚だけではない。ワルキューレが動くたびにカチャカチャと出す音もはっきりと聞こえた。
 手を動かそうと思うと、その通りに動く。指の一本一本まで自在に動かせる。

(あのバラの花が、杖なんだろうな。じゃあ――)

「あと10秒だけ待ってやる。それまでに降参しなければ、一斉に攻撃するぞ!」

 ギーシュはこちらに向かって杖を向けたポーズを取ったり、観客の女の子に向かってウインクしたりしている。周りを警戒している様子は一切無い。
 『自分の剣』を、ゆっくりと伸ばしてみた。

「10、9、8、――」

 地面を這わせて、ギーシュの足元までたどりついた。まだギーシュは気付いていない。
 光っているせいでかなり目立つのだが、ギーシュは自分に酔っているようだ。

「ねえタバサ、あれって何なのよ?」
「分からない」

 ギーシュの背後で、剣を上に伸ばす。杖を持つ手の、すぐ後ろまで来た。
 周囲から飛んでくるヤジが、謎の物体を怪しむ低い声に変化する。それでもギーシュは気付かない。

「3、2、1――」

 ガシッ!

 『自分の剣』の小さな手が、ギーシュの杖を掴んだ。
 すぐに剣をシュルシュルと縮め、杖を手元に引き寄せる。
 ワルキューレ達は力を失い、その場に崩れ落ちた。


「な、何をした!?」
「見ての通り、杖を奪ったんだよ。
 これでオレの勝ち、だろ?」
「ひ、卑怯だぞ! 怖がるふりをして、油断させた隙に杖を奪うなんて……!」
「お前が勝手にカウントなんかしてるからいけないんだ」
「で、でも――」
「ギーシュ、往生際が悪いわよ? 負けを認めなさい」
「そ、そうよ! あんたの負け!」
「うぅ……わかったよ、キュルケにルイズ。僕の負けだ」

 野次馬達がどよめく。ドットメイジとはいえ、貴族が平民に負けたのだ。
 あのマジックアイテムのおかげだ、いやギーシュがバカなだけだ、と議論している者もいる。

「ニケくんっ!」

 人垣の中からククリが飛び出した。
 その後から、ルイズも歩いてくる。

「大丈夫? ケガしてない!?」
「ああ、痛かっただけでケガはしてないよ」
「あんた、本当に強かったのね……。
 で、何なのよあれは? さっきの閉じ込められたのと合わせて、ちゃんと話してもらうわよ」

 ルイズに連れられ、ニケとククリは立ち去った。
 それを眺める、キュルケと小柄な少女。

「光を放ち、自在に伸びて手先も動く人形……聞いた事ないわね。
 手の中に隠し持っていたのかしら。タバサ、どう?」
「違う。初めは持っていなかった」
「杖も呪文も使ってないから、ゴーレムじゃないのよね」
「彼は『光魔法』と言っていた」
「もしかして、先住魔法……?
 ククリも変な魔法を使ってたし、あの二人は気になるわね」
「気になる」
「あら、あなたも? じゃあ、さっそく――」



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