あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

毒の爪の使い魔-22


「…なんだ? もう終わってんじゃねェか…」

ゆっくりと歩いて来た為、時間が掛かった。ジャンガは、ざっと周囲を見回す。
草原は、いたる所が炎に焼かれ、風に抉られ、物理的な衝撃に粉砕されている。
こっちの戦闘も相当激しかった事の証明だ。

自分の直ぐ近くの地面に目を向ける。
そこには気障ガキとドリル頭の姿が在った。

気障ガキは意識が無いのか、うつ伏せに倒れたままピクリとも動かない。
全身に無数の傷が付いているが、致命傷のようなのは見受けられない。単純に気絶しているだけだろう。

その傍らにドリル頭。荒く息を吐いており、限界に近いのが解る。
だが、その瞳は死んでいない。自分を怒りの篭った目で睨み付けている。


今度は前方に目を向ける。
人形娘に雌牛が(何時の間に来たのか分からないが…)覆い被さるようにして倒れていた。

人形娘の方は比較的無傷だったが…雌牛の方は酷い火傷を負っている。
恐らく……と言うよりは、確実にジョーカーの炎にやられたのだろう。

そして…、雌牛が人形娘に覆い被さるようにして倒れている事や、人形娘が泣いてる事から察するに――
(庇ったのか…)
ジャンガはそう思い至った。…他に考えようが無い。


「ジャンガちゃ~ん♪」
場の雰囲気にそぐわない、能天気な声にジャンガはため息すら出なかった。
声の主に視線だけを向ける。
「…ン?」
「もう、つれない返事ですネ~? ワタクシ、ジャンガちゃんが無事でいたのが嬉しいだけですよ。
いやいや……あの大爆発が起きた時は、本気で心配したのですがネ…」

爆発…と聞いて、先程のコルベールが起こした”あれ”を思い浮かぶ。
(まァ…確かに俺自身、よく生きてたと思うゼ…。……別にくたばっても良かったとは思うがよ…)
――そんな事を考えていると、耳障りな怒鳴り声が聞こえてきた。


「ちょっと!ジャンガ!?」
目を向ければ、ケイジィに捕まった桃色髪のクソガキが怒鳴っている。――特に何の感情も浮かばない。
「……何だよ?」
その様子にルイズは妙な違和感を覚えた。
普段のあいつなら、今のような怒鳴り声に、こんな気の抜けた返事はしない。
それこそ「あン?」とか言いながら睨み付ける位はするはずだ。
嫌々ながらも、一緒に過ごしてきたルイズには確信を持って言える事だった。
だが、今はそんな事は置いておくべきだ……先に聞くべき事がある。
「コルベール先生はどうしたのよ!?」

ルイズの言葉にモンモランシー、キュルケ、タバサの三人もハッとなる。
そうだ……ジャンガは丁度、学院を挟んだ反対側でコルベール先生と戦っていたはずなのだ。
それが、ジャンガはここにいて、コルベール先生は姿が見えない…。
…一体どういう事なのだ?

――答えはジャンガの口から直接聞かされた。



「――あいつなら死んだよ…」



四人が四人とも呆然となった。

…こいつは今、何て言った? 

四人が四人ともそう思った。

解らない……のではない。理解したくないのだ…、認めたくないのだ…。

四人が四人ともそうだった。


「あいつは…コルベールは死んだよ。…俺が殺した」
言葉を失い、呆然となる四人に対し、ジャンガは特に何の感情も込めずに再度言い放つ。
その言葉にモンモランシーが呆然と呟く。
「嘘……」
ジャンガは座り込む、巻き毛の少女を見下ろす。
「嘘じゃねェ」
やはり感情の籠もらない言葉だった。
モンモランシーは小刻みに肩を震わせる。
「嘘よ…」
「嘘じゃねェよ。…信じらんねェなら、向こうへ行ってテメェの目で見てくりゃいいゼ。…奴の骸があるからよ」
「嘘よ!!」
たまらずモンモランシーは叫んだ。僅かに浮かんでいた涙が零れる。


その様子にルイズも叫び声を上げた。
「ジャンガ!!あんた……あんた……」
「……」
ジャンガは何の感情も表さない顔でルイズを見つめる。
「あんた……なんて、なんて…事を……」
ルイズもまたモンモランシーのように涙を流す。
向こうではキュルケもタバサも一様に暗い表情をしていた。
そんな四人を見てもジャンガは表情を変えない。
視線を下に向ける。モンモランシーは本格的に泣いていた。

「何で…何で…」
「どうして泣きやがるんだ」
「え?」
モンモランシーは思わず顔を上げる。
自分を見下ろす月目と目が合った。
「テメェは別にアイツをそんなに慕ってはいないはずだろうが。
この前の授業も対して興味を示していなかったし…、別に泣く理由は無いだろ。
それなのに……何で泣くんだ?」
「それは……確かに、コルベール先生の授業は先生の妙な発明の発表とか…火の平和利用とか、
興味は余り湧かないのばかりだったわ…。でも……」
「でも……なんだ?」
「やっぱり悲しいわよ…死んだなんて…。だって先生は私達を…助けようと思って…」
そう言って、モンモランシーは俯き、声を押し殺して泣く。
それをジャンガはただ黙って見下ろす。



「ジャンガちゃん?」
「………ンだよ?」
ジョーカーの声にジャンガは気の抜けた声で返事をする。
「まァ、無事で何よりと言う事で……そろそろ、こちらも仕事を終えたいのでして」
「…それで何だよ?」
「そのお二人……片付けてくれませんか?」
「ッッッ!?」
ジョーカーの言葉にモンモランシーは反射的に顔を上げる。
ジャンガは黙って二人を見下ろす。その顔に浮かぶのは殺意も哀れみも無い、空っぽな表情だ。
モンモランシーは杖をジャンガに突きつけた。
「ギーシュには……手は出させないわ」
「……よせよ。テメェはもう限界間近なんだろうが?それに…この距離なら、テメェが唇を動かした瞬間、
そのか細い首を削ぎ落とせるゼ?」
言いながら、爪をモンモランシーに見せ付ける。
だが、彼女は怯む気配も見せず、ジャンガを睨みつける


「先生に続いてギーシュもなんて…絶対にさせないわ」
「……安っぽいな」

だが…、と呟き、ジャンガはキュルケとタバサに視線を移す。
(そんな安っぽいのが……妙に眩しいゼ)
ジャンガはモンモランシーから離れ、キュルケとタバサの方へと歩み寄る。
ジョーカーの不思議そうな声が聞こえたが、気に留めない。

二人の傍へと歩み寄り、見下ろす。
キュルケは火傷の痛みを堪えながら、ジャンガを睨む。
「…ジロジロ見ないでくれる?あなたに見せるには…もったいなさすぎるわよ……この身体は…」
「……テメェの言っているような意味で、女に興味なんざねェ…」
言いながらジャンガはキュルケの身体を改めて見た。
…火傷は相当酷い。一歩間違えれば即死もあったはずだ。
直ぐに手当てなり、なんなりしなければ命に関わってもおかしく無さそうだ。

ジャンガはタバサに視線を移す。
「どうしたよ…この様は?」
タバサは答えない。
「言わなくてもいいさ……大体解ってるからよ。…助けられたんだろう?」
タバサは答えない。
「お前の事だ…、こいつ相手でも全力で相手をしたんだろう。…殺す気でな。
…だが、こいつは……お前の親友はお前を見捨てなかった。それどころか、身を挺して助けた…。
自分を殺そうとしたはずのテメェをだ…」
タバサは答えない。
「なァ…一ついいか?」
「……何?」
ようやくタバサが口を開いた。
ジャンガはその碧眼を覗き込む。
「このまま人形でいるか…、後戻りをするか…、どっちにする?」
「……」
「人形のままでいるんなら、俺が今直ぐ全部終わらせてやる…。
テメェに覆い被さってる女と向こうの二人……直ぐにだ」
「……」
「……で、後戻りをするんなら……」
「……するなら?」
「この先はテメェ次第だ…」


ジャンガの言葉にタバサは悩んだ。
このまま人形のままでいる……それは今までの生き方を変えない事。
簡単な事だ…、安易な道だ…、今までと全く同じ事を続けていけばいいのだから。でも……

――失う物だって多い……――

ならば、後戻りをするか?
…これは難しい。難しいと言うより……怖い。
こんな…自分と母とを守る為に続けて来た事を止めて…、
今更別の道を行こうとする事が周りに許されるかどうか…、
親友が…、共に学院で学んだ皆が…、何の変わりも無く受け入れてくれるか……

――とても…怖い…――


黙るタバサを暫く見つめていたジャンガは、唐突にキュルケに声を掛ける。
「オイ?」
「……何よ?」
「お前は……コイツを、親友と今も思っているのか?」
「当然よ…」
迷いも何も無い瞳でジャンガを見上げながら、彼女はそう答えた。
「この子は……ただ、不幸なだけ…。…少しだけ道を踏み外して――いや、”踏み外された”だけよ。
悪いのは…この子を不幸な目にあわせて……まだ不幸を与え続けている連中よ…」
そこまで言ってキュルケはタバサを見つめ、その頭を優しく撫でる。それは母親が娘にするような…そんな感じがした。
「私は……この子を最後まで見捨てるつもりは無いわ…」
そのキュルケの言葉にタバサは再び静かに涙を流し、ジャンガは目を静かに閉じた。

パチ、パチ、パチ

小馬鹿にするような、乾いた拍手の音が響く。
拍手の主はジョーカーだ。
「いやいや……実に素晴らしい。本当に素晴らしい…」
賞賛しているように感じる言葉だ。…が、ジョーカーは片目の形を変え、さも可笑しいといった表情を浮かべる。
「…お涙頂戴の三文芝居にしてはネ~」
ジョーカーの言葉に、モンモランシーとルイズは頭に血が上る感覚を覚える。
キュルケの思いに裏表も無いのは明白だ。それなのに……このピエロは…。

ジャンガは閉じていた目を開き、タバサを見る。
「…こいつはこう言ってるがよ」
タバサはジャンガを真っ直ぐに見据える。
「…テメェはどうする?」

――どうする…?

――どうするって…

――そんなの…決まってる…

――ここまで私を信じてくれているのに…

――迷い悩む必要がどこにある…?



事は一瞬だった。
キュルケを跳ね除け、起き上がったタバサは素早く詠唱。
巻き起こった”氷嵐”をジョーカー目掛けて放った。
悲鳴を上げ、ジョーカーは地面に落下した。


”おや……、北花壇騎士殿。これは一体…どういうつもりかしら…?”
ガーゴイルの声が響く。
”飼い犬が主人にはむかおうというの?”
「…勘違いしないで。あなた達に忠誠を誓った事など一度も無い」
タバサは上空のガーゴイルに杖を突きつけ言い放つ。その碧眼には最早、迷いも悩みも無い。
”あなたの裏切りは報告するわ。それに…獲物はきちんと戴いていくわよ”
言うが早いか……ガーゴイルはルイズを捕らえているケイジィを掴み、全速力で離脱を図る。

ズバンッ!!!

ガーゴイルの身体が左腰から右肩までを袈裟切りにされ、
ケイジィもまた、翼と頭の付いたカゴ状の身体の上の部分が輪切りにされる。
ガーゴイルはそのまま地面に落下し、ケイジィは細かな粒子のようになって消滅した。
「きゃあ!?」
解放され、地面へと落下するルイズは悲鳴を上げる。が、その身体を淡い光が覆い、ルイズの落下速度が揺らいだ。
タバサがレビテーションを掛けたのだ。
ジャンガが笑いながらタバサに声を掛ける。
「キキキ…、鮮やかな手際だな?」
「…あなたも」
その言葉にジャンガは不適に笑った。
ガーゴイルとケイジィを切り裂いたのは、ジャンガの放ったカッターだった。

地面に落ち、最早飛ぶ事など適わない身体であるにも拘らず、ガーゴイルはもがいている。
ジャンガは静かに歩み寄り、その頭を踏み付けた。
力を込めて踏みつけると、ミシミシと音が響く。
”おやおや……、あなたもその出来損ないの飼い犬と同じように、私達を裏切ると言うのね”
ガーゴイルのその言葉にジャンガは「はァ?」と言い、何の事か分からないと言った表情をする。
「おいおい……テメェ、あいつの今言った言葉…理解できてるのかよ?」
”…どういう意味?”
「あいつは”忠誠を誓った事は一度も無い”と言ったんだゼ?
裏切りってのはな…相手との信頼関係か、相手に対する忠誠心が存在する者が、
それらを捨てる行為をする者を差すんだよ。
つまりだ……タバサ嬢ちゃんも、俺もテメェ等には微塵も、信頼も忠誠心も存在しねェからな…、
裏切りとは言わねェんだよ。解ったか?」
”…屁理屈を”
ガーゴイルの言葉にジャンガは笑った。
「キキキキキ!おいおい…何言ってるんだよ?テメェが勝手に勘違いしたのが悪いんじゃねェか。
”神の頭脳”が聞いて呆れるな…とんだ間抜けだゼ、テメェは。
”神”じゃなくて”紙”なんじゃねェか?ペラペラな白紙のような頭って事でよ。
…ああ、いや違ったな。テメェの所の王様は”無能”とか言われてるんだよな?
そんな奴が今の王様なんだ……同じような”馬鹿”が出てきてもおかしくねェよな。キキ…悪ィ悪ィ」
そこで一旦言葉を切る。
ガーゴイルは暴れるのを止めていたが、こころなしか…歯軋りのような音が聞こえる気がする。
…何れにせよ、操り手は相当怒っている様子だった。
それを感じ、ニヤリとした笑みを顔に貼り付け、目を見開いて叫んだ。

「ま、何にせよだ……何でもかんでも本気にすんじゃねェって事さ、バーーーカッ!!!」

グシャッ!

硬い物を踏み砕く音が周囲に響き渡った。


頭を破壊され、完全に動きを止めたガーゴイルを一瞥し、背を向ける。
そこでジャンガは、キュルケやモンモランシー、ルイズが自分を見ている事に気付く。
その疑いの眼差しにジャンガは自嘲気味な笑みを浮かべた。
キュルケが口を開く。
「あなた……何のつもり?」
「何のつもり?」
「惚けないでよ……、あなた…コルベール先生を殺しておいて……今更――」
「別に……何も無ェよ?俺は俺のためにあのガーゴイルを潰した……それだけだ」
「……」
ジャンガの言葉にキュルケは黙る。
その時、地面に落下したジョーカーが身体をようやく起こした。

「……流石に、今のは効きましたよ…シャルロットさん?」
言いながらジョーカーはタバサを睨みつけた。その表情には怒りの色が浮かんでいる。
タバサは油断無く、杖を構える。
と、そんなタバサを腕で静止し、キュルケはフラフラしながらも立ち上がる。
「…キュルケ?」
「…悪いわね。こいつは…、わたしの相手よ…」
ふら付きながらも、キュルケは杖をジョーカーに向ける。

その光景にジョーカーは思わず笑ってしまった。
「ぷぷぷ……これはこれは、実に実に無謀な…。そんなボロボロなお体で、ワタクシに勝てるとお思いですか?
自信過剰は良くありませんネ~」
そんなジョーカーに対し、キュルケはいつもの小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「それはどうかしら…ね…。第一…あなたの炎、全然熱く感じないわよ…?
あれなら、まだ…夏の日差しの方がこの身を焼いてくれるわ…」
その言葉にジョーカーは笑いを引っ込める。…その表情は笑みを形作ったままだが。
「…安っぽい挑発ですネ。ですが…まぁいいでしょ」
そう言って目を紅く輝かせる。
「そ~んなに相手をしてほしいのであれば、してあげますよ…」
魔力が集中し、高熱が生じる。陽炎が生まれ、ジョーカーの顔が歪む。
「今度は手加減抜きで放ちますからネ……消し炭一つ残りませんよ!!?」
叫び声と同時に目の輝きが増す。
収束させた魔力が大気に火を点ける。
発生した火球は魔力の供給と大気との摩擦とで、見る間に巨大になっていく。
ジョーカーとほぼ同じ大きさまで成長し、火球は炎球へと変化する。
口の端を更に吊り上げ、ジョーカーはニヤリと笑う。
「では…さよならですよーーー!」
ジョーカーの叫びと同時に、巨大な炎球がキュルケ目掛けて放たれた


迫り来る炎球。しかし、キュルケは避けようともしない。
ただ、静かに詠唱する。
(見せてあげるわ……この”微熱”のとっておきを)
詠唱が完成し、杖を突き出す。
杖の先端に小さな火の玉が発生する。
それを見てジョーカーは笑った。
「のほほほほほほ!そんな小さな火の玉で何をしようというんですか――って、え?」
目の前の光景にジョーカーは絶句した。
発生した直後は小さな火の玉は瞬く間に膨張し、ジョーカーが放った物よりも一回り巨大な炎球になる。
火、火、火。火の三乗。
ホーミング性能を排除し、破壊力と速度を追求した物。
それは、ただ純粋に進路上の物を焼き尽くす炎の塊。
『バーニングボール』と言うトライアングルスペル。キュルケの隠し玉だ。

キュルケはジョーカーに妖艶な笑みを浮かべてみせる。

「この一発は…熱いわよ?」

「え?」

瞬間、巨大な炎球は杖の先端を離れ、凄まじい速度で飛んだ。

「ええ?」

向かって来た炎球を容易く飲み込み、更に大きさと激しさを増す。

「えええぇぇぇーーーーー!!?」

避ける暇も無かった…。巨大な…巨大すぎる炎球はジョーカーを、あっと言う間に飲み込んだ。――そして、爆発。



「あぁぁぁーーーーーれぇぇぇーーーーー!!!?」



ジョーカーの悲痛な叫び声が響き渡る。
超特大の大爆発が、夜空を一瞬…夕焼けのように赤く染めた。


大爆発を見届け、キュルケは微笑み――その場に崩れ落ちる。
その身体をタバサが受け止めた。
「無茶をしすぎ」
「…ふふ…そうね…、流石に疲れたわ…」
今の一発で精神力、体力共に底をついたキュルケは、そのまま意識を失う。
「キュルケ!?」
「ちょっと、しっかりしなさいよ!?」
ルイズとモンモランシーも慌ててキュルケの下へと駆け寄る。
モンモランシーは残った精神力を振り絞り、可能な限りの『治癒』を掛けた。
「これで……少しは…大丈夫……でしょ…」
モンモランシーもまた、限界が来たのだろう。キュルケ同様、意識を手放す。

ぶっ倒れた二人と、向こうで既に倒れている一人。
計三人の気絶者を見て、ジャンガはため息を吐く。
「ったく……ガキの分際で、無茶する奴等ばかりだゼ…」
その言葉にルイズが食って掛かる。
「何よ!?あんた…これで今までのを帳消しにとか、言う気じゃないでしょうね?」
ジャンガは静かにルイズの目を見つめる。
「な、何よ?」
「…別に、許しを請う気は無ェ。――あいつを殺したのは事実だからな」
「……やっぱり、本当なのね…」
「……ああ」
そこでお互い黙ってしまう。
その沈黙を破ったのは――

「くくく……まさか…こんな事になるとは…ね……」

三人は一斉に顔を向ける。
そこには、元の姿…元の大きさに戻ったジョーカーが立っていた。
全身ボロボロ、炎と爆発による火傷が全身に広がっており、じつに痛々しい。
半死半生なのは間違いなかった。
その様子に驚きながらも、ルイズは問いかける。
「あ、あんた……生きてたの?」
「まぁ…何とか…」
「…まだやる気?」
「のほほ…いえ、流石にもう動けませんよ…」
油断無く杖を構えるタバサと問いに、ジョーカーは座り込みながら苦しそうに言う。
「……ああ、まさか…まさか…、このワタクシが負けるなんて……コケルなんて……、
メゲルなんて……、挫けるなんて……、信じられませんよ……」
実に悔しそうに呟き、ジャンガを見る。
「ジャンガちゃん…」
「……」
「何で…ですか?」
「……」
「何で……助けたんですか…その方達を…?ワタクシの知るジャンガちゃんは……そんな事は――」
「テメェの知る毒の爪はもう死んだ……それだけだ」
「……のほ……のほほ……のほほほほほ」

苦しそうに…、

悲しそうに…、

悔しそうに…、

ジョーカーは笑った。


「そうですか……ワタクシの知るジャンガちゃんは……とっくに毒されてたんですネ…。
この平凡極まりない……退屈極まりない……下らない事この上ない……日常に……」

――ドクンッ!

心臓が脈打つような音が響く。

――ドクンッ!

また音が響く。
見れば、ジョーカーの身体は真っ白く輝き、明滅を繰り返している。

――ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!

音が、明滅が、規則正しいリズムを保ったまま、そのテンポを速めていく。

「ジョーカー!?テメェ!?」

「ジャンガちゃん……ワタクシの中では……いつまでも、残虐非道の…毒の爪ですよ……」


――ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!



「のほほほほほほほほ!!!ジャンガちゃ~~~~~ん!!!」



――ドクンッッッ!!!



一際大きい音が響き、白い閃光が辺りを照らし出す。
直後、巻き起こる大爆発。
爆風は周囲の土を巻き上げ、吹き飛ばす。
ルイズとタバサはキュルケとモンモランシーを抱えてうつ伏せになる。
ギーシュは飛び出したジャンガが、爆心地から更に引き離した。

爆風が収まった後には、巨大なクレーターが生まれていた。
ルイズもタバサも何も言えなかった。ジョーカーの余りにも壮絶な爆死。
敵とは言え……やはり、気持ちの良い物ではなかった。

ジャンガは……ただ静かに爆心地を見つめ続けていた。



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