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ゼロの黒魔道士-21


夢の中で、「あぁ、夢なんだ」って思うことって、何回かあるよね?
今回も、そんな夢だったんだ。
ボクは、多分、水の中にいたんだ。
水面には、小舟が浮いていた。
その上で、小さな女の子が、
ボクよりも小さい女の子が、膝を抱えてさらに小さくなっていた。
一人ぼっちで、悲しそうに、寂しそうに、
シクシク泣いていた。
助けたい、そう思ったんだ。
もがくんだけど、手足が思うように動かない。
水の底に引きずられるようにズルズルと沈んでいってしまう。
この水は、あの女の子の涙?
水の底の闇は、あの女の子の悲しみ?
ボクは、あの女の子を助けることはできないの?
焦りの中、女の子のいる水面ごとあたりは黒く濁っていって、
ボクはその暗い暗い水の底へ――

ドサッ
「うわっ!?」
水の底はベッドの下だったんだ。
「いたたた……あれ?もう、朝……?」

―ゼロの黒魔道士―
~第二十一幕~ 足りない何か


「あ、ビビちゃん、おはよ~!昨日はゴメンなさいね~?」
昨日は遅くまで起きていたし、慣れない馬で疲れちゃってたから、
1階に降りてきたときには朝ごはんはもう終わっているみたいだった。
でも、昨日の夜にしっかり食べたから、朝ごはんは食べなくても別に大丈夫、かな?
(こんなこと言ったら、クワンおじいちゃんに、
「何を言っているアルか!!食は生活の基本!朝を食べずして――」って怒られるんだろうなぁ……)
「あ、うん、大丈夫だよ?……キュルケおねえちゃんは大丈夫?あの後……」
昨日、結局このお店のワインがほとんどなくなるまで飲んだあと、(お店の人が泣いてたなぁ)
キュルケおねえちゃんはタバサおねえちゃんに引きずられるようにしてお部屋に戻ったんだ。
酔っ払ってたしなぁ……身につけているものを脱ごうとしたり、通りに出て踊ろうとしたり……
「んー、ちょっと頭が痛いぐらいね。うん、平気平気。水もしっかり飲んでるし」
キュルケおねえちゃんって、かなりタフだと思う。
……あとは、もうちょっと加減してくれると、うれしいなぁ……すぐ抱きついてくるところとか……

「あぁ、やっと起きたのか。ねぼすけ使い魔君!」
「あ、ワルドおじさんと、ギーシュ、どこに行ってたの?」
水と、サラダの残り(すっごく苦い野菜が混じってたのでそれだけは避けた)を食べてると、
正面の入口から二人が帰って来たんだ。
「今日飛べる船が無いかと念のためワルド子爵と探しにいったんだよ。結局、無駄骨だったけどね――」
「キュルケ君、私の婚約者とタバサ君は?」
「さっきまで一緒に朝市を見てまして、今はお部屋に戻ってるはずですわよ。――“ハシバミ草オイル”なんてどうするつもりなのかしら、タバサったら」
……みんな、朝から色々やってたんだなぁ。
昨日の夜、あんなに騒いだりしてたのに……

「そうだ、使い魔君、ちょっといいかね?」
「え、どうしたの?ワルドおじさん?」
部屋に戻ろうとしたところで、ワルドおじさんが声をかけてきたんだ。
「は、ハハハ……その、『おじさん』はやめてほしいな。こう見えてもまだ若いんでね」
「あ、ゴメンなさい……それで、何か用ですか?」
……ワルドおz……じゃないや、ワルドおにいさんのこめかみがちょっとひくつくのが気になる。
「あぁ、君、『ガンダールヴ』だろ?」
声をひそめて、ボクにそっと耳打ちをする。
「え、ど、どうしてそれを!?」
オスマン先生が秘密にしておけって言ってたし、
知られて無いと思ってたのに……
「ふむ、フーケ討伐の件、僕の耳にも入ってね。八面六臂の活躍だったそうじゃないか?」
「え、うーん……ボクは、別に……」
あれは、ボクというよりも『猫の手ラケット』のお陰だし……
「謙遜かね?美徳ではあるが、君はその力を誇ってもいいと思うがね?
 ともかく、王宮に申請されたシュヴァリエの件は学生には時期尚早として却下されたが、
 その際に聞いた君の武勇伝、並びに、君の左手のルーンの件が噂としてだが耳に入ってね。それで僕なりに調べた、というわけさ」
……有名なんだなぁ、左手のこの模様って……隠した方が、いいのかなぁ?
「えーとー……ワルドおじs……おにいさん、ゴメンなさい、このことは秘密に……」
オスマン先生が言っていた。『大きな力は知られるとロクなことがない』って。
……よく分かるんだ。ガイア全部を巻き込んだ、あの戦争を思い出すと……
「ハハ、謙虚だな、君は!まぁ宣伝するつもりは無いがね、少し付き合ってくれないか?」
ワルドおにいさんがボクの肩をポンポンと叩く。
「付き合う……?あの、どういう……?」
帽子がちょっとズレたから、しっかりとかぶりなおす。
「伝説と呼ばれた『ガンダールヴ』の力、試してみたいと思うのが武人としての心でね。ついでに言うと、君の使い魔としての力も気になる」
「使い魔としての?」
ワルドおにいさんの顔が獲物を狙うタカのように鋭くなる。
「そう、僕の婚約者を守る、使い魔としての力が君にあるか、気になるのでね。どうだい、ここの中庭で手合わせなど」
ボクの肩をつかむワルドおにいさんの手が鉤爪みたいに深く強くえぐってくる。
なんだろう、『手合わせ』っていう軽いものじゃないみたい……断ることを許さない、ってことかなぁ……?
「え、あ、う、うん、分かりました……じゃぁ、ちょっと準備してきます……」
ワルドおにいさん、何かを……焦ってる?
何をだろう……

「相棒ぉ!なんでおれっちじゃなくてそっちのナマクラ使うんだよ!?」
「え、だって、ボクの力を見たいんだったら、デルフ使うのは……ちょっと卑怯じゃない?手合わせ、だし……」
「うむ、魔法を吸収するというのは対メイジでは卑怯すぎるとは思う。しかし、あのワルド子爵との手合わせだぞ?卑怯とも言えないんじゃないか?」
部屋から中庭に向かう。
ボクの手にあるのは、練習用の青銅の剣。
デルフはギーシュに預かっててもらう。
「ん~……でも、『使い魔としての力』を見られるんだったら、こっちの方がいいかなって……」
それに、朝見た夢が気になった、っていうこともあるんだ。
ボクは、誰かを助けられるのか、誰かを守ることができるのか、
ボク自身、気になることなんだ。
「ちぇ、相棒ぁそーいう変なところが真面目くさってていけねぇや!まぁいいけどよぉ~、イザってときはおれっちを使えよ?な?」
「いいかい、ワルド子爵の強さは本物のはずだ、僕との特訓の成果、見せつけてやるんだ!」
「う、うん……」
なんか、ボクよりもギーシュやデルフの方が気合が入ってるなぁ……

「よし、来たかね、使い魔君」
「ワルド、本当に戦うの?」
「ルイズおねえちゃん?」
中庭には、ワルドおにいさんと、ルイズおねえちゃんが来ていたんだ。
なんで、ルイズおねえちゃんも?
「決闘には介添え人が必要だ。そこで、僕の婚約者にお願いした、というわけだよ。依存は無いだろうね?」
「え、け、決闘って、手合わせじゃ……」
「そうよ、ワルド!やめなさいよ、任務の前に――」
「何、ただの手合わせさ。それとも、君は自分の使い魔には力が無いと言うつもりかね?主を守る力もない、と」
その言葉に、昨日の夢を思い出す。
ボクには誰かを守る力がない?……それは、嫌だなぁって思ったんだ。
「ルイズおねえちゃん、ボク、がんばるから……」
帽子をきゅっとかぶりなおす。
「ワルドおにいさん……よろしく、お願いいたします。」
「ふむ、それでは、はじめようか!」


互いに、距離をとり、向かい合う。
「岩砕き、骸崩す、地に潜む者たち
         集いて赤き炎となれ! ファイア!」
ボウッと炎の球が地面を抉る。
そこに立っているはずのワルドおにいさんはそれをアッサリと避ける。
「ほう、これは、なかなかのいりょk っ!?」
「まばゆき光彩を刃となして
         地を引き裂かん! サンダー!」
避けるだろうと思っていた方向に、サンダーを叩きこむ。
でも、それもやすやすと避けられる。
だけど、それも予想の範囲内なんだ。
「えぇぃっ!!」
魔法による詰将棋。
ギーシュとの特訓で学んだこと、魔法による攻撃をあえて陽動に使うということ。
ファイアもサンダーも、剣の一撃のための布石に使った、
はずだったんだけど……
「なるほど、そういう戦い方をするのかね、君は」
上から叩きつけて繰り出した剣は、ワルドおにいさんの杖で横になぐように弾かれる。
「く、えぇぃっ!」
弾かれたその勢いのまま、体をひねって回転斬り。
でもそれもワルドおにいさんに杖の切先で止められる。
「太刀筋は、悪くない。魔法による威力もなかなかだね。戦略も及第点と言える。だが――」
ワルドおにいさんの反撃、それは、突風のように鋭く速い杖の嵐。
とてもじゃないけど全部を剣でさばききれなくなってしまう。
「え、く、う、うわっ!?」
「致命的とも言える弱点が、君にはある――」
たまらず、後ろに下がって距離を取ろうとする。
もう一度、魔法の詠唱をはじめようと……
「君には、『速さ』が足りない!!『エア・カッター』!!!!」
風の刃が、詠唱する隙を与えないままボクに叩きつけられる。
このままじゃ、やられる!
「こ、このっ……あぁっ!?」
剣を構えて前に出る。そちらにしか、活路が無かったから。
でも、それは詰将棋の決まり手。
ワルドおにいさんの杖が、ボクの目の前につきつけらていた。
魔法を詠唱する暇も、剣をふりかざす暇ももう無い。
ボクは……負けたんだ……

「……ボクの、負けです……」
剣を地面に落とし、降参する。ギーシュ、ゴメンね。特訓の成果、見せれなかったや……
「君の力、年齢の割には大したものだと言えるだろう。だが、今の君では――」
ワルドおにいさんが杖をしまいながら、ルイズおねえちゃんの方に向き直り、帽子を斜めにかぶりなおす。
「今の君では、誰ひとり守れないだろう。君には、その力はない」

その言葉が、杖よりも、風の刃よりも、深く心に突き刺さったんだ。
ボクは……誰も守れない?誰も助けることができない?
ボクは……何もできないの、かなぁ……?
空の青さがまぶしくて、地面をしばらくじっと見つめていた。


「そんな落ち込みなさんなって、相棒!おれっちの見たとこじゃ、そう悪いセンじゃなかったぜ?」
「そうそう、ワルド子爵も言っていたじゃないか、『太刀筋、戦術、威力は良い』って――」
夕食の時間、ギーシュの言葉も、デルフの言葉も頭に入ってこなかった。
ボクは、ルイズおねえちゃんを守りたい、それだけを思っていたんだ。
できることをやりたい。せめて、手の届く範囲は守りたい。
ボクの憧れだった、ジタンみたいに、なれればいいな、と思っていたんだ。
ボクは、いつまでも弱虫のままで、勇気のない、臆病者で、
最後の瞬間まで、自分自身のことしか考えていなくて……
でも、ジタンは違ったんだ。『誰かを助けるのに理由がいるか?』
そう言って、危険な場所へ、しかも敵を助けるために一人で向かった、
ジタンみたいになれればいいなって思っていた。
だから、せめて、生まれ変わった今、ボクも、変わりたいって思ったんだ。
もう一度、生きられる。
まだ、やれることが、できることがある。
だから、ジタンみたいに、かっこよくなれたらいいなぁと思ってたんだ。
そう思って特訓してたし、使い魔としてやれることはやろうと思ってた。
でも、今のボクは誰も助けることができない。
今のボクでは、結局誰かに助けられてしまうだけだ。
今のボクでは……

ゴンッ
「あたっ!?」
「まったく、それでも僕を倒した男かい、君は?」
ギーシュがボクをデルフで小突いたんだ。
「そーだぜ、相棒ぉ!足りねぇんなら、足しゃぁいいんだよ!速さだけだろ?足りねぇのぁ!」
「え?ど、どういうこと……?」
ちょっとだけズレた帽子をかぶりなおす。
「おれっちが足してやるよ!お前さんは、使い手で、おれっちの相棒だ!ウジウジしてる相棒なんざ見たくねぇんだよ!」
「僕のライバルとしては、立ち止まったままなんて許さないからね?ビビ君」
……そっか。
勝手に一人だって思ってたのかもしれない。
足りなければ、足せばいいのかもしれない。
今はまだ、だけど、今からは、なのかもしれない。
言い訳かもしれないし、目の前のことから逃げているのかもしれないけれど、
ほんのちょっぴり楽になった気がするんだ。
「……ギーシュ、デルフ、ありがとう……ちょっと、落ち込んでたね、ボク……」
「フッ、バラはライバルのためにも咲くのさ!」
「カカカ、気にしなさんな、真面目すぎるのが相棒らしさよ!」

「ビビちゃ~ん、ルイズがまだ降りてこないんだけど、知らない?」
「え?ルイズおねえちゃん?」
ルイズおねえちゃんはまだ1階に降りてきてなかったんだ。
……だから、さっきまで「見捨てられちゃったのかなぁ」って思って落ち込んでたんだけど……
「おや、ルイズなら僕よりも先に部屋を出たはずだが?」
ワルドおにいさんも見てないらしい。
どうしたのかなぁ……?
「あ、じゃボク、ちょっと探してくるね?」
椅子からぴょんと飛び降りて、階段に向かう。
ルイズおねえちゃん、どこにいるんだろう?


ルイズおねえちゃんはバルコニーにいた。
ほとんと重なったような2つの月をボーっと見ていたんだ。
……もしかして、勝手に手合わせとかしたから、怒ってるのかなぁ?
「あ、あの……ルイズおねえちゃん?」
「――ん?なんだ、ビビじゃない。どうしたのよ」
「えっと……今日は、その、ゴメンなさい……勝手なことばっかりして……」
ルイズおねえちゃんは、きょとんとした後、クスクスと笑いはじめたんだ。
「何?そんなこと気にしてたの?バッカじゃない?もう――あれは、ワルドが言いだしっぺって分かってるから、何とも思わないわよ」
あ、良かった、笑ってくれた……でも、どうしたんだろう?何か、寂しげだなぁ……
「でも、だらしないわねぇ、ワルドに手も足も出なかったじゃない。そりゃ、ワルドが強いんでしょうけど――」
「う……」
痛いところを指摘されてしまう。
でも、仕方がないことかもしれない。
「ルイズおねえちゃん……ボク、がんばるから。使い魔として、もっともっと、がんばるから!」
足りないところは、足せばいい。デルフの言うとおりだと思うんだ。
ルイズおねえちゃんが、またキョトンとする。そして、また笑う。
でも、さっきよりももっと寂しそうな笑顔。何かを悩んでいる、のかなぁ?
「――あ、あたりまえじゃない!私の使い魔なんだから、しっかりやりなさいよ!」
そう言って、ボクに背を向ける。
何か、あったのかなぁ?様子が変だけど……
ボクも、一緒になって月を見る。
寄り添うように重なる2つの月は淡く雲を照らしていた。

「――ビビは、強いわよね――」
ルイズおねえちゃんが、ふっと言葉をもらす。
「……ルイズおねえちゃん?」
その声が消えそうだったから、おもわず聞き返してしまう。
「自分のやりたいこと、できることがハッキリしてるもの、強いわよね――」
月がルイズおねえちゃんのシルエットを形作る。
それが、どことなく、儚いって感じがしたんだ。
夢の中の、ボクよりも小さな女の子みたいに……
「あのね、ビビ、私、私――」
ふいに、シルエットがかき消される。
ドォンという大きな音と共に……

「ルイズおねえちゃん、危ないっ!?」


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