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ゼロのしもべ第2部-18


18話

 ここで幾人かの行動を点景として記していく。

 樊瑞と呂尚の永久の別れは突然やってきた。
 樊瑞が火傷に効く薬を作るため、薬草を集めていると、山の向こうで轟音が響いた。
 すぐさま樹に駆け上り、音のした方向を見る。
「おお!」
 目に飛び込んできたのは巨大な戦艦。それが百合の紋章をつけた戦艦に、一斉射撃を行っているところだった。
 樊瑞の目の前で、戦艦は爆破炎上をし、艦隊は見る間に散り散りになっていくではないか。
「いかん!お師匠様が!」
 樹を駆け下りた樊瑞は、矢のような速度で師匠の眠る山小屋へと向かった。呂尚の身体は癒えきっていない。そのようなところで
あのような爆発音を聞けば、ショックでどうなるかわからない。あるいは何事かと思わず外に飛び出してしまうかもしれない。
 果たして、駆けつけた樊瑞の目に映ったものは……悪い予感が的中し、何事かと外へ出て、そのために心臓に負担が来たのか、
横死した呂尚の姿であった。
「師匠!師匠!」
 無残な姿となった呂尚を抱える樊瑞。
 実際には呂尚はアルビオンによる攻撃が始まったのを確かめようと外に出て、そのさいに心臓麻痺で死んだのであるが、アルビオン
に恨みを持つ樊瑞の見解は違った。あのにっくきアルビオンが、父や兄のみならず、師である呂尚の命までもを奪ったと思い込んだ。
場合によれば、師匠はアルビオンの陰謀に巻き込まれて大怪我を負ったのかもしれない、とさえ考えた。
「師匠。師匠の敵はこのわしがとります。今からわしは混世魔王樊瑞と名乗り、師匠と父、そして兄の仇をとりに向かいます。」
 呂尚を埋葬し、墓にそう誓った樊瑞は、混世魔王と化し、空を行く異形の大艦隊を睨みつけた。
「このわしが20年余をかけ身につけた仙術。貴様らにたっぷり味合わせてくれよう。」
 艦隊はタルブ草原へ向かい進路を変えたようであった。復讐の魔王と化した樊瑞は、疾風の如くその後を追った。


「来たぞ!来たぞ!来たぞー!!」
 見張りが甲高い声を上げて、木の上から転がり落ちてきた。ガバッと立ち上がり、将校らしきメイジに
「ラ・ロシェール方面から敵艦多数接近。数不明。大きさから見て旗艦は『ロイヤル・ソヴリン』!」
 村人を森に避難させろ!という怒声のような声が響き渡る。兵士が追いやるようにして、村人を森へ移動させる。敵の目的は
艦隊の着陸点としてこの草原を奪取することにある。すなわち、村を占拠して、そこを拠点に周囲を制圧。ラ・ロシェールに進行する
というものに違いない。
 逆に言えば村の攻防こそが戦いの肝になる。小さいといえ、村は村である。バリケードをはり、多少なりとも要塞化して立て篭もれ
ばある程度は持つ。敵にとってはこの村を占拠できなければ戦艦を着陸させることはできない。そうなれば、いずれ尽きる風石の魔力
に従い、本国へと帰還せざるをえないだろう。
 特命を受けこの村へ移動してきた部隊はただの300。それに村の領主の手兵が200あまりである。
 指揮官は、極秘にマザリーニ卿から「必要とあれば村の者を動員し、村に堀を作るなり、バリケードを建てるなりして構わない」と
言われていた。それは事実上の命令であった。彼は仕方なくその命令に従っていた。
 が、いまいち腑に落ちてはいなかった。それはこの村を支配下に置く領主も同様らしかったが、「命令でございますから」と本人も
納得していないことを盾に、村人や兵士を動員させざるをえない状況に嫌悪感を覚えていた。そのため、堀もバリケードも中途半端
にしか完成していない。ことここに至り、全てを理解した彼は、自分の怠慢を悔やんだが、全ては後の祭りであった。
「わずか500の兵力で戦うしかありませぬ」
 彼は泣きそうになりながら、この地方を治める領主に宣告した。領主は、真っ青な顔で頷いた。
 アニエスは、移動してきた300の中にいた。異例なことに、女だらけの部隊を率いている。皆、剣こそ挿しているものの、使えばそれ
に振り回されそうであり、おそらく腰の拳銃やマスケット銃が主力武器なのだろう。
 この時代の銃は命中精度が悪い。また、当たっても破壊力が小さく、場合によっては致命傷を与えることもできない。それよりは
弓矢のほうが威力も命中精度も高い場合が多い。だが、足止めにならば使えると、その場にいる人間は見ていた。もはや戦場では
あいつらは女だとかそんなことを言っていられない雰囲気が出来上がっていた。
「来たぞ!」
 艦隊を目を皿のようにして見張っていた人間が叫んだ。露払いの竜騎士が、戦艦から飛び出して村へ飛んでくるのが見えた。
「……なんだ、ありゃ?」
 その後ろを、ゆっくりと、巨人が小さな船をかついで降りて来るのが見えた。
「……ゴーレム、か?」
 アニエスは、唾を飲み込んで、言った。


「……なんだ、これは。」
 中年の男が不機嫌そうに、船に乗り込みながら言う。
「ゴーレムならば何度も見たが、これはゴーレムというよりはロボットではないか。いったいどういうことだ?」
 一緒にいた老人が答える。
「ふむ。ひょっとすれば、この世界は我々の思った以上に危険な世界なのかもしれぬな。ロボットまで作る技術があろうとはな。」
 そして、外を顎でしゃくる。
「それに見たか、船底を。吊るされているのもロボットのようじゃったぞ。」
 ふん、と中年が煙の出る妙なものを加えた。自然に火がつき、煙が出る。それを吸い込んで、吐き出した。
「まったくこの世界は意味がわからぬな。あまりにも歪すぎる。そうは思わぬか……おっと!」
 乗り込んできた別の男に肩が当たる。文句の一つも言おうかと思った中年の鼻が、異臭をかぎつける。
 当たった男は、こじきというか。我々で言えばヒッピーのような姿をしていた。
 たしかにこの2人、名無しと言われる傭兵も奇妙な格好であったが、その男はさらに奇妙な男であった。どう考えても戦いに出る
部隊に紛れ込むよりは、街角で物乞いをしているほうが似合いそうだ。
 おまけに、その男は士官室へと入って行くではないか。どうやらこの部隊の司令官はあの男らしい。
「あんなやつが司令官だと?」眉をひそめる中年。
「よほど指揮官不足なのか。あるいは……。」
「ふん。まあいい。我々はいつもの通り暴れるだけだ。指揮官は関係ない。」
 船の扉が閉まる。船体が浮く感覚があり、やがてゆっくりと落下して行った。


 トリステイン魔法学院に、アルビオン宣戦布告のほうが入ったのは翌朝であった。王宮が混乱を極めたため、後回しにされたのだ。
出発は翌日では?と訝しむルイズたちの前で、王宮からの使者は半死半生の状態で開戦を告げ、再び連絡に馬に跨り駆け出した。
「タルブといえば、シエスタの村だ。」
 ゼロ戦を試し乗りしようとしていたバビル2世とルイズは、思わず顔を見合わせた。
 何も言わず、バビル2世はゼロ戦に乗り込んだ。ロプロスはポセイドンを運ぶ役目がある。それにタルブまではこれで充分だろうと
考えたのである。
「さあ、行くわよ!」
「……ちょっと待ってくれるか。」
 当然のように乗り込んだルイズのほうへ顔を向ける。
「降りたほうがいい。」
「ノゥ!」
 ふたたび反逆するルイズ。腕にはしっかりと始祖の祈祷書を抱えている。
「ビッグ・ファイアがいればアルビオンの連中なんておちゃのこさいさいでしょ?危ないことなんてないわ。」
 むふー、と鼻息も荒く言うルイズ。たしかに、3つのしもべがあればなんとかなるかもしれない。だが、相手にはヨミがいるのだ。どう
なるかわかったものではない。
「おーい、どうしたのかね?早く飛ばさないか?」
 コルベールがのんびりした声をあげる。まだ戦争が起こったと知らない彼は、テストフライトをするのだと思っている。ゆえに、乗せる
乗せないで揉めている二人が、じゃれているだけにしか見えないのだった。
「これ以上、コルベール先生を待たせてもいけないか。」
 適当なところで降りて、ロプロスに移ろう。ルイズがフライを使えない以上、飛び移るまではできないはずだ。
「わかった。じゃあ、行こうか。」
 ジッとエンジンを透視するバビル2世。そして念動力で、エンジンを始動させる。
 プロペラが回り始める。速度がどんどん上がっていく。
「いまだ!」
 機体全体に、念動力をかけた。ふわっと、空中に浮かんだ。念動力を停止しても、飛行機は落ちることなく空を滑っていく。
「やった!やったぞ!飛んだ!すごいぞ!」
 地上でコルベールが、叫びながら踊っている。
 バビル2世は旋回し、方向を変えて速度を上げた。目指すはタルブの村。アルビオン艦隊。


「やはり弓矢では無理か!」
 高速で襲い掛かる竜騎士へ、懸命に矢を射掛けていた兵士が叫ぶ。
 次の瞬間その男の身体はマジック・アローで貫かれ、絶命した。
 敵はできるだけ村を無傷で手に入れたいのだろう。炎で焼き払うわけにもいかず、魔法で立て篭もる傭兵を攻撃してくるので
手一杯という雰囲気である。それは理由があり、
「撃てッ!」
炸裂音と共に、竜騎士の身体が紅に染まって血に落ちた。つまり、銃だ。高速で飛び交うがために、普段はなんともないはずの弾丸
が、竜騎士の身体に深く食い込むのだ。傷ついた竜騎士は意識を失い、落竜して地面に身体を打ち付けるはめになる。
 おまけに、号令の元一斉に射撃をしてくる。そのため傷はますます深くなり、気を失わなくても戦闘不能となり帰還せざるをえない。
「アニエス隊長!さらに1機の撃墜しました!」
 兵士の一人が叫ぶ。澄んだソプラノだ。つまり、この兵士は女であった。
 そう、世界でも有数の実力を誇るアルビオンの竜騎士部隊を追っ払っているのは、いまのところのこの女兵士たちであった。彼女
たちが襲い掛かってきた竜騎士を、次々撃墜していくため敵との感覚が開き、今のところ防衛に成功している。
 よほど訓練された部隊なのだろう。一つ一つ個性が違う銃が、全て同じ規格であるかのように、見事に命中していく。
 成果を見て真似するほかの部隊もあったが、この部隊ほど命中率はよくない。それでも戦果は上がっており、竜騎士は攻めあぐ
ねているようであった。
「くそっ!あいつらめ!」
「こちらが村を攻撃できぬのをいいことに……」
 空中を旋回しながら罵る竜騎士隊。先鋒を任せられながら、一向に成果が上がらないことに全員焦りを感じているのだ。
「しかたがない。村を焼くぞ。」
 隊長らしい騎士が命令を出す。
「しかし、軍の方針は!」
 村を残すことでは?と部下の一人が叫ぶ。隊長は頷いて
「その通りだ。しかし、落とせぬようでは村などいくら残っても意味はない。」
 そしてアニエスたちがいるところを指差した。
「あそこだ!被害の大きい、あの建物。あの建物を焼き払う!そうすれば連中も士気を失うに違いない。いいか、一部だけ焼き払い、
敵の戦意をくじくのだ。」
 隊長が、勢いをつけて突っ込んだ。そして、
「ブレスだ!」
と愛竜に命じる。竜が口を開き、業火を吐き出した。
 業火を浴びた建物が、一瞬で炎で包まれた。
「きゃあああ!」
「隊長!」
 悲鳴が起こる。
 いくら訓練された兵士とは言え、まだうら若き女性である。炎に包まれ、一瞬でパニックに陥った。
「みんな!落ち着け!口元を布で覆って、身を低くして脱出するぞ!」
 全員に檄を飛ばすが、誰一人として指示に従わない。炎に囲まれ、全員アニエスの声など聞こえていないようだった。
「くそっ!また火か!また火なのか!忌々しい!」
 真っ青な顔で、剣を振るアニエス。強がっているものの顔は歪み、怯えたような表情を見せている。なにか、トラウマでもあるという
のか。
 炎が梁に燃え移り、崩れ落ちてくる。
「いかん!脱出するんだ!」
 正気を取り戻し、アニエスが叫んだ。だが、無情にも梁は隊員めがけ……
「きゃああああああああ!」
 叫び声。

 目を閉じ、顔を伏せる隊員たち。だが、いつまで経っても梁は落ちてこないではないか。
「は、早く逃げな……」
 目を開ける。アニエスも、声の方向を見た。
 どこかで見た顔がそこにはあった。
「へ、久しぶりだな、姉ちゃん。」
 にやっと笑う。2mを超える、赤毛で長髪の男。胸にはさそりのマーク。
「貴様!」
「へ、どうした?オレの金玉を切り取るつもりか?もっとも、切り取る前に早く逃げてほしいんだがな。」
 男は梁を支えている。燃え盛る炎が、男の身体にまで移り、肉を焦がしている。
「き、貴様…」
「いいから逃げろ。はっ、金玉切り取るとまで言われて、逃げてられるか。ここで男らしいところを見せなきゃ、かっこ悪いままだろ。」
 歯を見せて笑う。兵士たちが逃げ出し、男が外を顎でしゃくった。
「なーに。お前らが今のところあいつらを食い止めてるんだ。活躍してもらわないと、困るだろ。気にすることはない。お前たちも、すぐ
にこっちへ、くる、さ……」
 支えきれなくなり、男が炎に包まれた梁に潰された。
「う、う、うわあああああああああああああ!!」
 アニエスの脳裏にフラッシュバックが起こる。火で包まれた村。家。焼け焦げ、炭となって死んでいく村人。
 ガッと自分の腕に歯を立て、噛み千切った。痛みが、自分を現実に引き起こす。
 今、ここで死ぬわけには行かない。自分意は死んではいけない理由があるのだ。
「全員、あの建物に移動して、再度攻撃に移る。いいな!生き残りたければ相手を殺せ!サーチ&デストロイ!見敵必殺だ!」
 その瞬間、足元に揺れを感じた。
 まだ攻撃を受けていない、納屋が揺れている。
 何事か、と注視していると、納屋の屋根を突き破って、腕が飛び出してきた。
 屋根に手を突っ込んで、納屋を引き裂いた。
 中から現れたそれは、周囲に電撃をほとばしらせながら、両腕を大きく広げて、吼えた。
「がおおおおおおおん!」
 現れたそれは、例えるならば鉄の巨人であった。

 流れはトリステイン側に傾いていた。
 突如現れた鉄のゴーレムが、竜騎士隊に襲い掛かったのだ。
 炎をものともせず、魔法を弾いて、空を飛んで襲い掛かった鉄の巨人は、竜の身体を引き裂いて竜騎士を握りつぶし、暴れまわった。
 たちまち竜騎士部隊を蹴散らした鉄の巨人は、唸りを上げて降下部隊に襲い掛かった。
ドスン!
 と、降下部隊の乗った船に突撃し、空中で船体を引き裂いた。中から人間が弾け飛び、バラバラと地面に落ちていく。
「見ろ、まるで人間がゴミのようだ!」
 兵士の誰かが叫んだ。たしかに、まるで空中でゴミをばら撒いたように、人間が飛び散っていく。
 2隻、3隻と次々船を沈めていく。だが、それはごく一部に過ぎず、落としても落としても船はどんどん降りてくる。
「しぶといわね、あのゴキブリども!」
 誰かが背後で叫んだ。
 振り返ると、そこにはあきらかにメイドがいた。
 ただ、メイドじゃないかもしれないのは、目が完全に逝っちゃっていることである。ぐるぐる渦巻き目玉になっているのだ。
「1匹見たら、30匹。こうなったら全滅させてくれるわ!」
 どっちが悪役なのかわからない、物騒な台詞を叫ぶ少女。どうやら、この少女があの鉄の巨人を操っているようだ。
「行け、鉄人28号!今に見ていろアルビオン幻人!全滅だッッ!」
 少女が雄たけびを上げた。


 船体が大きく揺れる。
 船底を突き破って、巨大な腕が現れた。
 それは、割り箸でも割るかのように船を真っ二つにした。
「ぬう!」
 船を粉砕された衝撃で、中年の男が1人空に投げ出された。
 と、思った瞬間。男は瓦礫を一つ掴み、それを基点に体勢を入れ替えた。掌が一瞬輝き、身体が浮き上がる。
 そして落下するゴーレムの肩に飛び乗り、悠々と地面を目指し始めたではないか。
「どうやら、あれは鉄人らしいな。」
 もう1人。すでに別のゴーレムの肩に飛び乗っていた老人が、別の船めがけ飛び去った鉄のゴーレムを見やって呟く。老人の乗った
ゴーレムは、空中を滑空するようにして移動し、中年の元へ寄る。
「鉄人か。なぜあれがこの世界に。」
 中年が忌々しげに鉄のゴーレムを睨み付けた。
「おそらくあの廃墟弾事件で我々同様この世界へ飛ばされたのじゃろう。さもなければこの世界への通路を偶然見つけたか、じゃな。」
「ならば!」
 うむ、と2人とも頷き合わせた。
「巨大ロボットの相手はわしに任せるが良い。おぬしは、操縦者を見つけよ。そやつが何か知っておるかもしれぬ。」
 中年の男が、老人の言葉を聞くや高度数百mから飛び降りた。
 老人は、バラバラになり落下していく船体に今一度飛び乗った。
「ふふ。金剋木というが、なーに別に勝つのが目的ではない。しばらくの足止めが目的じゃ。こいつで充分だろう。」
 老人が、空中の鉄人を見上げて笑った。



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