あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ときめきメモリアル0-3

ぼくとルイズは、爆発によって破壊された教室の修復と掃除を命じられた。
ぼくは新しい窓ガラスや重たい机を運び、元の場所に設置していった。
そして、煤や埃でいっぱいになった床を、丁寧に雑巾で拭っていく。
ルイズは、この原因を作った張本人だったけど、肩を落としながらぼくの様子を見守るだけで、何もしなかった。
だけど、文句を言う気にもなれない。あれだけの罵声を浴びせられて、それでも、気丈に振る舞えなんてことは、いくらなんでも酷だ。だから、ぼくは黙々と作業に取り組んだ。

「…コナミ。さっきはありがとね」

「何が?」

「その、私をかばってくれて…」

今のルイズは不気味なくらいに素直だった。
なんとなく、彼女の心の脆さを垣間見てしまった様な気がして、ぼくは一抹の淋しさを覚えた。
さっきの様子を見る限り、ルイズへのああいった仕打ちは、今に始まったことではないのだろう。彼女は今日に至るまで、ひとりぼっちでそれに耐え続けていたのだ。

貴族とはいえ、意外と可哀相なやつなんだな…。

そう思ったぼくは、にかっと笑ってみせた。
「きみが言ったろ?使い魔はご主人様を守ることが義務なんだって」
いつの間にか、ルイズは校庭の様子をじっと見つめていた。
「ルイズ。きみには悪いけど、ぼくは他の使い魔の様に火を吐いたり、空を飛んだりすることはできない。だけど、ぼくには言葉がある。ぼくは、ぼくなりのやり方で精一杯きみを守ってみせるよ」
ぼくは、この前、歴史の授業の最中に聞いたこの世界の偉人の名を語った。
「始祖ブリミルに誓ってね」
彼女の瞳に水気が増したのを、ぼくは見逃さなかった。普段は、高慢ちきで扱いに困るやつだけど、根は素直で優しい女の子なのだ。
劣等生としてのコンプレックスが、そんな彼女の性格を歪ませてしまったに違いない。


「いやになる。私ってなんでこうも駄目なんだろう…」
消え入りそうな声でルイズが呟く。どうやら、彼女の心は、ぼくが思った以上に、ぼろぼろになってしまっているようだ。
彼女の身体から常に発信されている根拠のない覇気が、今は微塵も感じられなかった。
「何の話?」
「いつも、失敗ばっかり…」
どうやら、ルイズは自己嫌悪の極地に身を置いているようだ。
いたたまれなくなったぼくの頭に三択が浮かぶ。

一つは『ひたすら、励ます』。
非常に妥当な案だ。

二つ目は『ひたすら、けなす』。
阿保か。できるわけがない。

三つ目は『ルイズをおとしめる様な歌を披露する』。
そんな真似をすることはできない。


答えは決まった『ひたすら、励ます』である。

「自分を下卑するのはよくないよ。ぼくの友達がよく言ってた。どんな苦難にもめげず、常に前向きにある人こそ、本当の幸せが掴めるって。
幸せって小さい石ころのようなものらしい。だから、後ろ向きの人はそれを見逃しちゃうんだってさ」
ぼくと同じ美術部員だったあのコの言葉である。
ルイズは校庭を見つめたまま、何も言わない。

「……アインシュタイン」

ぼくは彼女に聞こえるように呟いた。

「アイ…?何それ?」

「ぼくの世界の偉人さ。彼は幼少時代、不遇の時を過ごした。アインシュタインはちょっと変わったやつだったんだ。
それが理由で、周りの奴らからは馬鹿にされ、嘲笑われた。だけど、大人になった彼を馬鹿にできるやつなんて、一人としていなかった。
彼が偉大な…、そう、この世界で言うなら偉大なメイジになったからだ」


鳶色の瞳が、ふっと暗くなった。
「元々、才能があったんでしょ…」
「違うんだ、ルイズ。彼は後にこう語ったんだよ。『天才は1%の才能と99%の努力で生まれる』ってね。ルイズ。きみが、他の誰よりも努力を重ねてきたのを、ぼくはよく知っている。きみは、必ずメイジとして大成するよ。ぼくの勘はよく当たるんだ」
後世の人々に感動を与え続けたこの言葉は、もちろん、全く別人のものである。
慣れないことをしたせいで、ぼくの頭はだいぶ混乱していたのだ。

「あんたなんかに保証されてもねぇ…」
ルイズが微笑む。その顔に詩織の面影を感じた。
ぼくは服に付いた埃を取り除く為、大袈裟にぱんぱんとはたいた。
「さて、全部、終わった。飯を食べにいこうよ。これだけ、頑張ったんだ、肉くらい食わせてくれるよね?」
「癖になるから駄目」
なんてやつだ。
ルイズを励ましたことを、ぼくは酷く後悔した。
落胆をあらわにしたぼくの姿を見て、ルイズが笑った。

「冗談よ」

この日から、ぼくの御飯が豪華になった。

しかし、拾う神あれば、捨てる神あり。
後日、何の因果か、命を賭けた決闘に挑むぼくの姿があった。
決闘の相手はギーシュという名の青年だ。
僕自身、彼に対しては何の悪意も感じていなかったし、おそらく、それはギーシュも同様だろう。
ギーシュと恋仲が噂されるモンモランシーという名の少女、全ては彼女の謀略だったのだ。

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